タイトル:───パンにはパンを3マスター:成瀬丈二

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/13 01:40

●オープニング本文


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 海を漂うラストホープに、日本の北海道、千歳基地の防衛ラインから、末期の息の様な救援要請が届いた。
「こちら、ボリス特務曹長。全高10メートルの巨人が2体前線に投入されて来た。バグアのキメラらしい。しかし、従来のキメラと違い、対戦車ライフルでも、秘蔵のロケットランチャーでも、かすり傷ひとつ負わない。通常のものより数段上の、電磁フィールドを展開しているらしい───あくまで推測の域を出ないが、SESを使っても、有効打を与えられるという希望に縋るしかない。頼む、函館の陥落に伴い、戦略的状況の悪化が最早、戦術的勝利を重ねても───巻き返せない所まで来ているが、戦術的敗北を重ねるよりましだ。エゴだ、下らないプライドだと笑ってくれても構わない」
 ボリスがそこまで言った所で大地を揺るがす地響きの音。
「どうやら巨人が対戦車地雷を踏んで転倒したらしい。しかし、転倒によるダメージはないようだ。とにかく時間を稼ぐので、1秒でも早く来て欲しい」
 ミッション4スタート。

●参加者一覧

鳳 湊(ga0109
20歳・♀・SN
リリアーナ・ウォレス(ga0350
15歳・♀・SN
鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
ナレイン・フェルド(ga0506
26歳・♂・GP
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
比留間・トナリノ(ga1355
17歳・♀・SN
オルランド・イブラヒム(ga2438
34歳・♂・JG
ヴァルター・ネヴァン(ga2634
20歳・♂・FT
不破 梓(ga3236
28歳・♀・PN
三田 好子(ga4192
24歳・♀・ST

●リプレイ本文

「この力を得た時から、死は元より覚悟です。
 戦う事を恐れていてはバグアとは戦えませんので───」
 飛行艇が舞い、雪が荒ぶ、千歳の大地を見下ろしながら鳳 湊(ga0109)はひとりごちる。
 そして、半ば目を瞑る様にして。
「とはいえ、死なないように冷静に戦う術を師から教わりました。
『落ち着いて戦えば道は、見えてくる』と」
「うっうー‥‥! じ、地獄です‥‥」
 比留間・トナリノ(ga1355)は天然にも湊の言葉にボケ返す。
「こんな戦場でも、前向きでいられるなんて、湊さんのハートは地獄製ですか?」
 全身を使い捨てカイロで温め、ぬくぬくモードのトナリノは人外の異能のモノでも見るかの様に湊を返す。
「言ってみただけです。その術がどれほど優れたかは論じるは愚かなモノです」
 戦わずに死んだ所で、老いとの戦いが始まっている。終着点は墓の中だ‥‥(運が良ければ)。
 リリアーナ・ウォレス(ga0350)が普段の屈託無げな表情とは打って変わり、死線をくぐり抜けようとしているのを自覚している様であった。
 作戦の手はずを最年長のオルランド・イブラヒム(ga2438)と打ち合わせる。
「えー、あたし達の作戦これでいいんだよね?」
 部隊を前衛を務めるA班、B班と、後衛を務めるC班の3班に分け、役割分担を。
 此方は後衛のスナイパーとしてC班に所属。主に陽動や敵の足止めを行う。
 予め罠に必要になりそうな道具、ワイヤーなどを、とにかく少量でもいいから準備。
 また、対戦車地雷が敵を転倒させられるということが判ったので、それを用意。
 備蓄が無ければ埋まっているものを、場所はボリス曹長に訊いて掘り起こして使用。
 塹壕跡地を落とし穴に見立て、底に採取した対戦車地雷をワイヤートラップと共に設置。それを罠として用いる。
「そうだ、誘導さえ成功すれば、身長10mの巨人相手なので確実にイニシアチブを握れる。この方針で行動する」
 鼻に引っかけた黒いサングラスの位置を直しながら、オルランドは───。
(地獄のソルジャーIN北海道も3回目か‥‥。
“あの”特務曹長が生きていようがいまいが事実を淡々と受け入れねばな、もちろん。優秀な人物には生きていて欲しいとは思うが‥‥ね。しかし、人前で公言するのははばかられる事だな)
 愛用の装備の点検に余念のないヴァルター・ネヴァン(ga2634)は───。
「戦場では間合いの見切りが肝心だな。従来の硝煙の時代は元より、この原始人レベルにまで退行した中で、相手が様々な大きさと多様さを持っていると、過去の軍拡時代に等しくなるな。つまる所は生きて返すな───見敵必殺の境地にならざるをえないか」
 不破 梓(ga3236)は着地のショックをサスペンションが受け止めた反動でやや腰を浮かしつつ、真っ先に北海道の空気を吸い、血飛沫がついている軍用コートに身を包んだ、ボリス特務曹長と副官が出迎える。。
「お久しぶり‥‥と、言うべきか? 以前は少々醜態を晒したので、その分の借りを返しに来た。詳しい話はオルランドあたりからあると思うが‥‥可能な限り協力を頼みたい。ああ、それと‥‥来たからにはこれ以上誰も死なせん‥‥絶対にな。」
「てっきり、この末期的状況に嫌気がさして、別の戦線で戦っているものだと思いこんでいたがな───本当に自分も含めて誰も死なせない、と言い切る覚悟があるなら来い!」
 三田 好子(ga4192)は───
「‥‥10m‥‥どう考えてもナイトフォーゲルを使うべきだと思うんですが‥‥ここが死に場所になるかも‥‥なんて言うわけないでしょう?」
 断言!
「保健の先生の私を殺せると思ったら大間違いです。
 もちろん他の人だってそう‥‥誰ひとり欠けることなく無事に帰ってきます」
「残り27名になった。明日の夜明けには死にそうなのがひとりいる? どちらを取る、『癒し』か? 『戦闘補助』か? 両方取るなんてのは、贅沢人の返答だ」
 ボリスは好子に問いかける。
「それでも───私は両方を取ります!」
 そんな感情を沸騰させた好子にどう声をかけていいか判らないまま、時任 絃也(ga0983)はボリスに問いかける。
「こう迄して此処を護ろうとする理由は何だ? どうにも腑に落ちんのでな」
「それは言いたくない‥‥言っても詮無き事だ」
 尋ねても渋る様子に絃也は激高し!
「俺達には知る権利がある筈だ! ───敵を仕留めたら再度聞く」
 絃也は全長10メートルの巨人が原始的な質量兵器───そこいらの岩だのスクラップだのを放り投げる様を見て───。
 ともあれ、ナレイン・フェルド(ga0506)がコンパクトを開ける暇もなく、戦闘状態に突入しているのを見て───。
「私の力、役に立てそうね」
 と、薬用リップクリームに覆われた唇をひと舐めする。
「きっと、落とし穴にはまった巨人って見物よね♪」
 鳴神 伊織(ga0421)は懐中の懐中時計を当てると。
「前回の懸念通りになってしまいましたね‥‥。
 もう戦線の維持は無理でしょうが、このままやられてばかりと言う訳にもいきませんから‥‥。
 今回のキメラも作り出すのにバグア側にも通常のキメラとは比較にならない位のコストが掛かっていると思いたい所ですし、撃破すれば、多少は痛手を被るでしょうね‥‥。
 本当はKVが使えれば良かったのですがこればかりは仕方無いですね。
 敵のフォースフィールドはかなり強力だそうですが、どこかに穴等は無いのでしょうか‥‥ただ強力なだけであれば無理にでも攻撃を通すしか道が無いのですが‥‥。
 危険な依頼のようですが頑張らなければ」
 早速の戦闘に一同は艇内で打ち合わされたとおりのフォーメーションを組む。
「わ、私難しい事はわかりませんけど‥‥。
 死んだら何もかもおしまいなのはわかります‥‥!
 だから、この戦いを勝って、絶対に生き残りましょう! うっうー!」
 トナリノは一同に微妙な檄を飛ばし、士気を傭兵、自衛隊の面々ともに上げていく。
 伊織は口に出しては『いざ、参ります』の一言であった。懐中時計に想いを込めて。

 予め作戦は無電で伝えており、塹壕の一部を巨人達の膝まで落とせるレベルに深くし、中には泣け無しの爆発物を埋めてある。
 梓はA班として巨人の片割れを塹壕へ誘導し、塹壕へ落とし込むのが狙いとして動く。
 落とせなければ、足止めのために陽動・攻撃を続行する。
 最初は2体を引き離すのが第一の目的であるため、正面から接近して注意を向けさせる。
「デカブツが‥‥。私に攻撃を当てられるものなら‥‥やってみろ!」
 しかし、巨人の投げつけてきた装甲車の残骸が梓を包み込む。
 ヴァルター・ネヴァンはその残骸を持てるコンボ、豪力発現と豪破斬撃のコンボで高められた膂力を以て、半ばまで斬り捨てる、
 しかし残った半ばで、ふたりは致命的なダメージを受ける。エミタが活性化していなければ死んでいただろう。
 絃也は疾風脚と瞬天速で自分を的にしていた積もりが囮と看破されていた様だ。
「この時期にふざけた物を投入してくれたものだ」
 戦闘で気分が高揚すると、戦闘自体を楽しみはじめる。
 しかし、奇妙な現象を確認する。銃弾の音からして、好子の練力により、強化されたSES弾が巨人目がけて打ち込まれるのだが、着弾地点に不思議な幾何学模様が一瞬浮かび上がるのだ。
 湊がとっておきの弾頭を用いる。傷らしい傷も負わせられなくては、後が続かない。
 更にオルランドは信じられない光景を目にした。
 筋肉で止まっていた弾丸が周辺の組織が渦巻くと、ぽろりと落ちていくのだ。

 一方で、伊織とナレインは───。淡々と遮蔽物に隠れて進もうとする伊織に対し、正面から走り込んでスピアで棒高跳びの要領で、グラップリングに持ち込もうとしたが、郷里は足りず、華麗な蹴りを一発はなった反動で(この時も幾何学紋様が空中に浮かび上がった)、そして落下。自爆である。

 リリアーナは廃ビルから単身スナイピングに挑んだが、いかんせん距離が遠すぎた。
 こうして相手が自分たちの戦闘本能が満たされた所で、揚々と戻っていった。
 傷は全て回復してである。
 戦線は抜かれなかったが、好子が一同の手当と、負傷兵の手当をあらかた終えたところで、帰還の時間となった。
「次はナイトフォーゲル投入を依頼する。あれでは勝てん」
 このボリスの最後の言葉が終わりの始まりの顛末である。
 ミッション4エンド。