●リプレイ本文
ナイトフォーゲルS−01で熊谷真帆(
ga3826)が名古屋を徘徊するさまよえるヘルメットワームを求めて、名古屋北部を天翔ながら───。
「敵残存ワームを求めて庄内川を遡上中、こちら北部セクション、ガーベラ! ‥‥聞こえているの?」
りんとした声で真帆がレシーバーに声を荒げる。彼女のTAC『ガーベラ』───花言葉は神秘───に相応しい紫の瞳と、腰まで伸ばした烏の濡れ羽色の髪をヘルメットに収めて、学校的な立ち位置で言えば、学級委員長的なポジションの彼女に、自分と組む筈と思っていた新条 拓那(
ga1294)のナイトフォーゲルR−01機に応える。
「聞こえてる。しかし、相手ももうお祭りは終わってんだから。今更ジタバタするなんざKYだってーの!」
彼はヘルメットワームの位置把握の為に索敵を行う。担当地区は都市区南側である港、南、瑞穂、熱田区を探す。彼がバックアップを努める、哨戒中のヒカル・スローター(
ga0535)のナイトフォーゲルS−01から返る谺は───。
「スクラップのふりを続けるなど、せこいマネをする」
───という一言であり、剃刀を思わせる鋭利な刃物の様に、バッサリとヘルメットワームの行為を一蹴する。
そこへ真帆と同じく北部を担当する九条・運(
ga4694)の明るい笑い声が聞こえてくる。
「いいじゃないか、いろいろバグアの連中は落とし物をしていったんだ、落し物はキッカリと家に届けてやらないとな〜〜。地獄というスィートルームにな!! もっとも、向こうさんは一割くらいは返すつもりでいるみたいだけどな」
「こちらガーベラ、ゴールドドラゴンへ、作戦遂行中だ───無駄口を叩くな、遊んでいる場合ではない」
「こらこら、ひとのTACを勝手につけるな」
と運がクレームを入れる。彼はビーストマンとして、覚醒すると二対の翼と一対の尾を持つ龍に変化するいっそ首も3本位になれば潔かったかもしれない。ともあれ、そんな運のコクピットは特注である。それでも貴重な戦力である能力者には報いられて然るべきである。
それはさておき、真帆の突っ込みを聞いて、西部を探索しているヴィス・Y・エーン(
ga0087)のナイトフォーゲルS−01からの野放図な声が皆の鼓膜をゆさぶる。
「こちら『SilverStar』聞こえてるわよ。それにしても、何てーのかなー、あのヘルメットワームって命冥加って奴? 素直にそのまま壊れてれば面倒も無かったのにねー。AIにも魂ってあるのかな? おっと、これ以上やっていると無駄口だし、それに宗教論争ってダメなのよね、口より先にトリガー引いちゃうから」
ヴィスはトルコの元レジスタンスであり、相当に複雑で厄介な問題も抱えているのだろう。もっとも、それが深刻なトラブルを起こさないのは彼女自身がこうやって予防線を張っているからだ。
リーダーとして、ヴィスをさりげなく制する、ナイトフォーゲルR−01を駆るリヒト・グラオベン(
ga2826)は無駄口を許していた。緊張した時ほど人間はジョークを言いたがる。そして、それを押さえればストレスとなり、ジョーク以上に精神的なプレッシャーとなる事を知っているからだ。ともあれ、頃合いを見計らう必要がある。
「こちら『白狼』。オチはついた? ついたなら後で聞かせて───ごまかしてもボイスレコーダーにはしっかり残っているわよ。ところで、だけど。野外を探索している自衛隊の普通科からは返答はない、という事は市街地の廃墟ですか‥‥無用な被害が出る前に、終わらせておきたいところですね」
と、温厚に締めくくる。
「こちら東部のリズナ、廃墟の下に潜り込んでいる。クリストフくんがフォローしているから、急いできて」
と、ナイトフォーゲルR−01を駆るリズナ・エンフィールド(
ga0122)がCAUTION!の赤文字をヘッドアップディスプレイとヘルメットのバイザーに転送しながら、クリストフ・ミュンツァ(
ga2636)が廃墟の虚を利用しながら、ヘルメットワームに微かずつダメージを与えている。まだ、額面通りの少年であり、更に童顔という要素も相まって、リズナはクリストフに向かって───。
「大丈夫ムリしちゃだめよ───クリストフはまだ子供なんだから」
「エンフィールドさん、ありがとうございます。でも、この場にいるのは僕なので、精一杯任務を果たします」
と、マニュアル通りの(どこに売っているか等と聞いてはいけない)返答を返しつつも、スナイパーライフルで遠距離狙撃に入る。微妙に発射位置をずらしたり、跳弾を利用したりして、相手にこちらの位置を掴ませない
激しい光条がつい今し方まで自分のいた位置を破壊するのを見て、リズナが思わず盾になる。
「子供が死んでいくなんて間違っている! でも、私は死なない───私の脳裏から消えても、魂に焼きついている家族みたいな悲劇を二度とは味合わせない!」
リズナは過去にバグアとの戦いに巻き込まれ、精神上か、脳の方に何か負荷がかかったのか、幼い頃の記憶はおぼろげにしか思い出せない。クリストフは守る。しかし、自分の様な生き方はしてほしくない。
矛盾だろうか? だが、全てを貫く矛と、全てを弾く盾を持てば人は幾らでも強くなれるのだ。
「エンフィールドさん!」
一同はその呼び声に応えて、上空まで舞い上がると練力を解放し、超音速の騎士となった。
目指すは名古屋城公園。クリストフのスナイプもそれが限度であった。
「海まで引っ張るわよ!」
歩行形態に変形したナイトフォーゲルR−01/ナイトフォーゲルS−01達が、ようやく浮上する事を思いついたヘルメットワームを頭上から押さえる。それまでリズナは歩行形態に変形して、ガトリングで速射を浴びせる。
「頼んだよグラオベン‥‥これだけ移動速度が落ちてるんなら、戦闘機形態よりこっちの方が当て易い‥‥!」
降下しながら、ヴィスが頭上からスナイパーライフルを打ち下ろすと、ヴィスは予定通り、海へ海へと追い立てていく。
「前の防御に手を取られて───背中ががら空きよ」
多分、背中と思われる位置に素早く移動したリズナはディフェンダーを切り下ろす、超金属同志の擦れ合う女のすすり泣く様な音が聞こえてきた。
さすがにヘルメットワームも危機感を感じたのか、大急ぎで海上へ飛び出した。
「甘い!」
リズナのナイトフォーゲルR−01からアグレッシヴ・ファングを上乗せして、H−12ミサイルが乱打される。ワントリガー45発のミサイルが、まるで納豆を振り回した様なランダムな回避軌道を取りつつ、ヘルメットワームを直撃する。
盛大な爆発の火の玉が幾重にも膨れあがる。
「蒼空に無骨なワームなんざ似合わねぇよ! そのまま大地に沈んどけ?」
そこへ真帆も割り込んでくる───。
「新条さん、いくわよ! くらえ必殺レーザー無双!」
ふたりのパワーでダブるアグレッシヴファング、3.2cm高分子レーザー砲で装甲に穴を穿つ。
「今宵の3.2cmレーザーは血を御所望じゃあ! 乾坤一擲!」
ぶすぶすと煙があがった所で、自慢のコブシを利かせる。
「今日もレーザーの雨が降る〜♪
庄内橋レーザー慕情〜。
ああ、涙流れて名古屋
ああ、他がためにバグア〜
ああーぬれそぼる〜」
「さすが、うまいな。だが、俺のショーを見てくれ!」
運のディフェンダーが2振り目ヘルメットワームに突き立てられる。
「完全破壊してくれれば、とどめは譲るのじゃ。ささ」
ヒカルがやや枯れた雰囲気で皆に必中を促す。
グラオベンもH−122長距離バルカンでとどめを狙うが、今ひとつ。反撃のフェザー砲を本能的な反射神経で躱しつつ、ホバリングしながら、3振り目のディフェンダーで敵の傷口を更に広げていく。
「手伝った!」
「最後の一発、行きます───」
クリストフが開いた穴に最後のスナイパーライフルを叩き込み、一同が離れる間もなく爆散させる。
「やれやれ、これでは援軍も呼ぶ事もできまい」
ヒカルが納得すると。本部から警報のレベルが下がった旨、通達がある。
「良くやった」
という声と共に。
それを聞いたヴィスは───。
「そー言えば、こないだの大規模作戦の時、味噌煮込みうどんってのを食べそこなったんだよねー」
と、希望者を募り、ヒカルがきっちり領収書を取って、打ち上げに回るのであった。
ただ、名古屋の平和はいつまで続くか判らない。
ミッション6エンド