タイトル:Ja Faust Nein SES05マスター:成瀬丈二

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/14 23:33

●オープニング本文


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 ここは欧州、某国、マドーナ市のレンネンカンプ市長閣下の執務室。
「つまりだ───ナイトフォーゲルで探査しに向かっても、噂の全長500メートルの巨大ドラゴン『ファフナー』に気付かれ、機体ごとミッシング・イン・アクションというのがPOAの見解という事ですな。
 あれはフォースフィールドの能力により電波をはじき返す天然のステルス能力を持っているという仮説が立てられていたようですな。
 そちらの方にアイゼンファウストも線路を延ばしはじめたとか? いやぁ、我々としてもPOAの善意を仇や疎かに扱えませんとも」
 ここでひとつ呼吸を置くレンネンカンプ氏。
「ファフナーの探索とは別に、向こうのメルジーネ少年と接触して、情報を一元化したい所、あの第二次世界大戦の遺物、時代錯誤も精々21世紀の礎になってもらいましょう」
「口の汚い事を仰る、今は使える手札は幾らでも使う───という事にさせて置いて下さい」

 ミッション14スタート!

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
斑鳩・眩(ga1433
30歳・♀・PN
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT
忌咲(ga3867
14歳・♀・ER
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG

●リプレイ本文

 ブリーフィングルームで、白鐘剣一郎(ga0184)曰く───。
「ファフナー。500mにも及ぶ“竜”ならば、ステルス能力はいざ知らず移動するのも簡単ではないと思われるが」
 剣一郎は断言する。
「これまでの経緯を踏まえれば、目撃された位置からファフナーは大きく移動してはいないと俺は見る。
 よって前回目撃された地域を中心に、仲間から出た意見を元に事前探査を行い、目標の居場所を絞り込む事は出来るだろうか?
 ステルスが強力という事は“レーダーに写らない場所”がはっきりと存在するのでは? もしくはフィールドの影響などで、周辺に異常を来たしている場所があるかを探知出来ないだろうか。この点から考えを発展させたい。軍の手助けはアテに出来ない以上、自分たちの手でやるしかない」
「この間のドラゴン‥‥ファフナーでしたっけ。生身で近寄りたくないんですがね…」
 ふるえを隠せないまま、首の後ろで束ねた髪をもてあそびつつ、周防 誠(ga7131)は手持ちの機材で遠距離から強力なフォースフィールドが周囲に与えているであろう影響を観測しようとしたが、ナイトフォーゲルでも無ければ無理な相談であり、後は運良く双眼鏡の視界に入るのを期待するしかなかったが、これは成功だったようだ。
 谷間に横たわるファフナーの姿を視認する。
 その後、山の方に向かって全員で出発する。
 とにかく生還することを重視。必ず情報を持って帰る事を期して、辰巳 空(ga4698)とコンビを組む誠。彼にしてみれば、ひとりで行動できないのは不本意だったが、イロイロとそこには込み入った事情もあるのだろう。
「あ、少し待って下さい」
 と空。
 アイゼンファウストの情報収集の為にメルジーネに連絡を取ってみようと思いたち、以前に連絡を取ろうとしたメールから返信して、メルジーネに電子メールを送る。
 内容は、今まで血液検査などで知り得た情報として、メルジーネは普通の人間であって、強化人間だったり等の疑念は無い事と、後は親子関係の判定が残っているものの、比較対象となるサンプルが無い事は伝えておいた。
───別にその様な調査は微塵もしていないが。
 続いて、『元主治医』として定期検査とかと理由をつけてアイゼンファウストと電子メールのやりとりをし、メルジーネ個人がアイゼンファウストで使用しているメールアドレスを入手、定期的な健康相談と称して接触を図ろうとしたものの、アイゼンファウストにも医者はいる『不要』。と、一言の元ではね除けられる。
 ここで使用したのはUPCとは無関係な筈の、この街で新規取得したメールアドレスであるため、UPC関係で除外されたわけではないようだ。
 斑鳩・眩(ga1433)も空のメールに興味を持ち。
「‥‥なーんか臆病で狡猾な市長さんに死亡フラグが立ってきているような‥‥て、なんの話をしている私」
「それはどこかずれてますね。まあ、死亡フラグなら傭兵の自分たちに、よほど立っているような」
「そりゃそうか。ともあれ、いかに強力な兵器といって臆してもあれですし。それに私は機械に使われるよりは機械を使いたいですしね」
「どうも意味不明ですね? メルジーネ君にメール一文でも送りますか?」
 空の言葉に照れながら眩が返す。
「‥‥メール‥‥。いやいや。私は結構ですよ」
 その後、しばらく空気を凍てつかせた後。
「じゃあ『ガンバレ』と」
「判りました」

 南雲 莞爾(ga4272)と共に緋室 神音(ga3576)は先んじて───。
「地図通り、っと」
 神音が地図から割り出し、莞爾が先導した谷間には巨竜が横たわっていた。
 莞爾が足跡は無論、木々や周囲の破壊状況から推測して足取りを予測。
 遠距離かつ木々にまぎれて身を隠す形で双眼鏡を用いファフナーの動向を監察する。
 無理な情報収集を行わず、可能な限り集める事が完了次第即撤収することにしていた。
「戦闘になったら相手にならないわね‥‥」
 と、汗を滴らせつつ、続けて口にする神音。
「さすがにこれはナイトフォーゲルでもないと‥‥手に負えないか」
 周囲の木々も食い散らかされ、その巨体の維持に莫大なエネルギーが要求される事を暗示している。
 剣一郎と、眩もやや遅れて到着し、同時に自分たちと同じように、風下から様子を伺う影に気がつく。
 正確には2種類。それぞれにスモックを着込んだ10人ほど。計20人。眩は頭を抱えた。如何に自分ひとりが民間人でございというフリをしていても、相方の剣一郎が小銃を抱えていた日にはそんな偽装は第三宇宙速度で吹き飛んでしまう。
 片方のグループが口火を切った。
「我々はUPCの者だ───ヘルメットワームの回収をしに来た、傭兵が派遣されているのは確認済みだ。この場から撤収してもらいたい」
 その声に残ったもう一グループは無言で得物を取り出す。サブマシンガンのストックをのばして、戦闘形態に移行する。
 サイレンサーに押し殺された、ため息の様な銃声が歌う。
 それより一瞬早く傭兵達は一斉に覚醒モードに入る。
 傭兵達はファフナーから全員が200メートル以上の距離をとっているが、ファフナーが眼を覚ませば一歩の距離である。
 剣一郎が全身が淡い黄金の輝きに包まれ、強い相手を求めて修羅の如く戦いに臨むようになる。
 そして、眩は闘気が視覚で認知可能になり、肩から背中にかけて投影され二対の朱い羽のように見えるのであった。
 更に神音は瞳が金色に変化し輝く。全身を纏う様に燐気と呼ばれる虹色の燐光が発生し、背中に一対の翼がある様に見える。
 一方、莞爾は覚醒しても代わり映えした様に見えなかった、そこを弱点と見て砲火が集中する、しかし、冷静に躱していく。
「───悪いが御前達に付き合う道理などない、そこをどけ」
 空は目が真紅に輝くが、今の所それ以外の目立った変化は無い、却ってそれが不吉さを醸し出していた。
 最後になるが、誠は右目が銀色に変わっていく。目には見えないが、体温、脈拍、脳波、呼吸等が、最もリラックスできる状態で一定化するのである。
 一向に功を奏しない乱射からなぞの勢力が切り替えたのは手榴弾を取り出し、爆風で傭兵達を一掃するという事であった。
 爆風があちこちで響き渡った。白兵戦の達者な傭兵が手榴弾を投げる前にもぎ取って遠方に放り投げたり、為す術もなく一方的に爆風に飲まれた音である。
 そして、巨竜───ファフナー───が眼を覚ます。一歩踏み出し、大地を揺らし、あっという間に間合いを蹂躙し、口から炎の剣の如き、息を吐き出す。
「全員逃げろー!」
 UPC側の要員が叫ぶ。
 手榴弾の誘爆や、周囲をなぎ払う炎が山並みを削り取っていく。
 覚醒していなければ、爆炎に巻き込まれて命は無かっただろう。
 空の携帯電話が振動する。
「メルジーネ君?」
(急いで逃げて下さい、アルベリッヒの鉄甲弾がファフナーに狙いをつけました、発射まで後、9分!)
「ありがとうメルジーネ君───みんな10分もしない内に、80センチ弾がここに降ってくる、逃げるんだ!」
 サブマシンガンを打ちはなったなぞの一団はファフナーに一掃され、UPCと自称する面々だけが残っている。
 神音は彼らの所属を信じる事にして、退却の為の血路を切り開いた。
 そして、超音速の死神がファフナー付近に着弾した。ソニックブームで地形が変わっていく。連絡がなければ自分たちも、如何に覚醒したとはいえ、手足の一本も持って行かれたろう‥‥運が良くての話だ‥‥事を確認せざるを得なかった。
 しかし、爆炎の中からファフナーは翼を広げて、傷ひとつ負っていない巨躯を表した。
 眩は呟く。
「通常兵器では傷ひとつつかないって事ね‥‥」
 落ち着いた所でUPCの面々の身元を正式に照会し、こちらにはヘルメットワームの残骸の回収に訪れた事を確認すると、彼らは再び残骸の回収へと山に戻っていく。
 剣一郎は呟く。
「やれやれ、ファフナーがどこにいったか───確認しているヒマがなかったな。あれだけ大きければ、発見は時間の問題だろうがな───」
 かくしてファフナーとの接近遭遇は未発に終わった。
 これが依頼の顛末である。