タイトル:ファイナルシミュレータマスター:無名新人

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/30 17:56

●オープニング本文


 ――ドローム社第1シミュレータ実験開発室。

 眠らない研究室に、今夜もカタカタと音がする。
「ぬぅぅ‥‥」
 深夜でも明々とした室内に響き渡る声。
「ぬ、ぬぬぬ‥‥」
 彼女はパルマ・ハイランド(29歳女・独身)。
「ぬぬぬぬぬぬぬ‥‥」
 決して、キメラの呻き声ではない。
 やがて最後の入力が終わり、手の動きを止めた。
「ふぅ‥‥」
 背もたれに身を任せ、モニターをぼんやりと眺める。
 現在時刻は午前2時。クリスマスも近いこの時期に、ひとりで仕事に没頭していた。
 ふと、デスクの上にあるカレンダーへと目を移す。
(「‥‥年末までになんとかしないと」)
 そう、彼女は今、山場を迎えている。
 ついに、パルマは新兵装のシミュレーション実験の開始を告げられた。
 スケジュールは年明け早々。細部までは決まっていないそうだが、生身用レーザー兵器で、遠距離、近距離ともに複数種あるという。
 この研究室では、巨額の資金を投じられた新兵器開発工程のうち、最終調整を行うことになる。
「う〜ん」
 だが、新兵装用シミュレータはいまだ修正が完了していない。
 この状態では不完全なまま、実験を施行することとなる。
「これでいけそう、かな‥‥」
 一通りモニターでの確認を終えたパルマ。
「明日、仕上げの依頼を‥‥――」
 そのまま目を閉じ、束の間の休息を取る。

 パルマが年を越せるか否か――傭兵たちにゆだねられた。

●参加者一覧

ベーオウルフ(ga3640
25歳・♂・PN
旭(ga6764
26歳・♂・AA
絶斗(ga9337
25歳・♂・GP
相澤 真夜(gb8203
24歳・♀・JG
黒瀬 レオ(gb9668
20歳・♂・AA
ジャック・ジェリア(gc0672
25歳・♂・GD
守剣 京助(gc0920
22歳・♂・AA
レヴィ・ネコノミロクン(gc3182
22歳・♀・GD
エメルト・ヴェンツェル(gc4185
25歳・♂・DF
春夏秋冬 ユニ(gc4765
17歳・♀・DF

●リプレイ本文

●暗闇の仮想空間
 真っ白な空間に、すっと浮かび上がる人影。
「パルマさん、久しぶりー♪」
 頭上へ向けレヴィ・ネコノミロクン(gc3182)がにこやかに手を振る。
 続けてベーオウルフ(ga3640)が現れた。
 特に言葉を発することなく、淡々と感触を確かめるように体を馴らし始める。
「大剣使いなキメラは‥‥ねえよな‥‥」
 大剣を携えた守剣 京助(gc0920)があたりを見回す。
 直後、レヴィの傍に2人、姿を現した。
「シミュレータなんて久々、だな」
 黒瀬 レオ(gb9668)と、
「かわいいキメラだといいなー」
 相澤 真夜(gb8203)だ。
 和気藹々とした雰囲気の中、最後にジャック・ジェリア(gc0672)がゆったりと現れた。
『それでは』
 6人の傭兵が揃ったのを確認し、パルマがアナウンスを始める。
『今回は明かりのない要塞。6人の一般人を連れて、南東と南西のいずれかから脱出します』
 辺りが暗く、闇に包まれていく。周囲に6人の男性が現れた。
『なお、強力なキメラがあちこちに潜んでいます。ご注意を』
「‥‥はてさて、どんなキメラが出てくるのやら」
 京助は懐中電灯を取り出し、周囲を照らす。
「あのね、つけてると、いい的だとおもうんですー」
 と、真夜がそれを遮った。
「それもそうだな」
 一旦明かりを消す京助。
「あ、パルマさーん。一般人さん、美形にしてね♪」
『美形、ですか?』
 レヴィのリクエストに、唸り始めるパルマ。
「そーそー、美形美形‥‥お?」
 男の顔が変わっていく。
「‥‥び、けい?」
 角刈りで眉の太い、キリッとした顔立ちの日本人。
「えーと、じゃあ‥‥サブちゃん、で‥‥」
 渋い、の間違いだろうか。パルマの好みらしい美形男性に、名前を付けるレヴィ。
 壁がせり上がりはじめ、通路が形成される。
 半数ずつ傭兵たちが分たれた。
「ちょっと厄介なニオイ‥‥さて、がんばりますか!」
「おー!!」
 引き続き、レオと真夜は朗らかに。
「今までの努力が実を結ぶんだもの。今回も頑張っちゃうわ」
 少し表情を引き締め、レヴィは真夜たちと準備を始める。
「それじゃ行くとしますか」
 余裕の笑みを浮かべ、ジャック達も初期位置へと進む。



●キメラ準備
 大型キメラがスクリーンに映し出される。
「このようになりました」
 突然、口から何かを吐き出すキメラ。
「下位の存在を生むキメラの報告は稀少ですが‥‥よしとしましょう」
 説明を続けるパルマに絶斗(ga9337)が頷きながらスクリーンを眺める。
 少し離れた位置に腰掛けるエメルト・ヴェンツェル(gc4185)。
(自分にも使えるのでしょうか‥)
 じっと手元を見つめていた。
「それをこう、順番に巻いていくみたいだね」
 エメルトの脇に屈み、旭(ga6764)は微笑交じりに手本を見せる。
「どうにも精密機器というものは、緊張しますね‥‥」
 ぎこちなく巻きつけていくエメルト。
 一方、春夏秋冬 ユニ(gc4765)は慣れた手つきで準備を進めていく。
「甘く見たら痛い思いをするので、気をつけて下さいね」
 ミッション参加の傭兵たちへと目を向ける。
 やがてユニはモニターのキメラを一目見、
「今回もよろしくね、蜘蛛さん」
 そっとつぶやいた。ユニは瞳を閉じ、集中し始める。
 無言のまま、機器を取り付け終えた絶斗。
「傭兵昇天☆トカゲMIX盛り――出撃するぜえええええ!!」
 カッとその目が見開かれる。



●ミッション開始
 ――ゲロオオオオオオオォォォ
「‥‥なんだ?」
 開始直後の東からの妙な音に、思わず漏らすジャック。
「先へ進もう」
 特に気にした様子もなく、ベーオウルフは角を曲がった。


 矢が闇を切り裂き、飛んでいく。暫く耳を傾ける。
「いない、かな?」
 索敵に、矢を放った真夜。特に反応は見られない。
「レヴィさん、なにかキメラについてわかります?」
 小声で尋ねるレオ。
「今のところは何も。まぁ知ってるのが出たら教えるね」
 と、無線機を取り出すレヴィ。
「そっちも東へ進んで、北へ行く通路があれば合流しましょ」
『わかった』
 京助と連絡を取り合う。北西出発の3人は、まずは別班との合流を目指して通路を東へと進む。2班の距離は、そう離れてはいない。
「はい、ストップ!」
 突然、真夜が立ち止まった。前方に向け照明弾を撃ち出す。
 通路を照らしながらゆっくりと突き進み、やがて角で衝突。
「あれは‥‥ソドムね」
 2つ先の曲り角、レヴィは見覚えのある大蜘蛛を視認する。以前より少し大きいような気がした。
「とりあえず、あの蜘蛛は糸を――って!?」
「レオ! とばすよーっ!」
 いきなりレオを抱え上げた真夜。
「ごめん、真夜。重いけどがんばって!」
 瞬間、2人の姿が消えた。


 ほんの一瞬、点灯する光。
「よし、何もいないな」
 通路の確認を終え、京助は懐中電灯の明かりを即座に消す。この先は北と南のT字路になっており、南側は瓦礫で道が塞がれていた。
 京助、ベーオウルフ、ジャックの3人は護衛対象に進行速度をあわせ、やや前に立って進む。
「待った。何か聞こえる」
 瓦礫の方を注視していたジャック。
「おいでなすった、かな?」
 ジャックが言い終わる前に粉砕音がした。
 T字路を照らす京助。
 塞がれていた道が開いている。

 ――グボオオオォォォ

 北東からまた、声が聞こえた。


「お‥俺はねー、やることやるためには手段選ばないんだ!」
 誰に向けてか、真夜の腕の中、抱っこされたレオが弁解する。
 瞬天速で現れた2人の前には、口を開けた大蜘蛛。
 レオは手にした大太刀を構え、
「いけー! レオー! ‥‥れ?」
 られず、ごろごろと密着したまま転がる2人。全身に蜘蛛の糸が絡み付いていた。
(甘いですわよ)
 ユニの操作するソドムからなおも捕縛糸が吐き出される。
「‥‥真夜、後ろにもいる」
 ユニの背後、黄の両眼が闇に輝く。

 暗闇に飛び込んでいったレオと真夜。
「捕縛糸を吐く蜘蛛が出たわ」
 別班へ連絡する。
(どうする‥?)
 背には護衛対象が3人。レヴィは身動きが取れないでいた。



●対決
 三角跳びでユニのソドムを飛び越え、巨大な影が降り立つ。
「ダメだ、取れない‥‥!」
 レオと真夜の目前には、黒色の装甲を施された紅蓮の猟犬――ティンダロス。唸り、獰猛な牙を覗かせた。
「きゃーっ! きゃーっ!!」
 真夜は転がって回避。ティンダロスの牙が空を切る。
「っと!」
 続く爪を器用にも太刀で受けたレオ。
(あらあらまぁまぁ、頑張りますわね)
 ユニは近寄らずに糸を吐き続け、2人を固定する。
 と、そのとき――甲高い音。
 続けざまに横から猟犬の頭に銃弾が命中、装甲に傷をつけていく。
 覚醒でレオの手から立ち昇る光が、ティンダロスの顔を仄かに浮かび上がらせていた。
「紅いわんこは三角跳びに注意してね」
 連絡を済ませ、レヴィは拳銃の引き金を引く。


 音速のカノン砲。前に立ちはだかり、ジャックが砲撃を弾く。
 懐中電灯に照らされるのは、機械化された深緑色の大山猫の姿――クロムビーストが背にしたカノン砲を一般人に向け、連射する。
 輝く盾の紋章。別の非能力者へと目標を変えたカノン砲から、ジャックは庇い続ける。
 ――ふっと、大山猫の目前に人影。
 クロムビーストは即座に頭を砲撃、が掲げられた屠竜刀が弾道を逸らし、弾は肩を掠める。
 瞬天速で距離を詰めたベーオウルフ、その屠竜刀が振り下ろされた。
 俊敏な大山猫の肩を抉る。続けざまに刀の横薙ぎ。
 がきりと音が響く。クロムビーストの牙が受け止めた。
「はっはー!」
 隙をつき、接近していた京助。大剣を振り上げる。
「を?」
 そのまま固まった。瞬間、京助の体が勢い良く宙を舞い、北の通路へ落下する。
 見上げた京助の前には、糸を手繰り寄せたソドムの巨体があった。
 さらにベーオウルフの頭上、続き背後の地を蹴る足音。
「――三角跳び、ティンダロスだ」
 山猫の前足を受けながら、ベーオウルフは警告を発する。
「ぐお‥‥!」
 京助を切り裂くティンダロスの両爪。
 エメルトの操縦する紅蓮の猟犬が牙を剥く。
「1対3かよ‥‥」
 なおも、天井から蜥蜴が着地。京助を見下ろし、キメラが襲い掛かる。
 が、蜥蜴は壁に激突。無数の弾丸に撃ち抜かれて沈黙する。
「2対2だね」
 続けて、ジャックのSMGがエメルトとソドムに向けられた。
「さて、戦場をコントロールしてみようか」
 制圧射撃。弾丸がばら撒かれる。


 闇に放たれた銃撃がティンダロスとソドムを牽制。
「飛び道具は‥‥あんまり好みじゃないんだけどね」
 レヴィの拳銃から硝煙が立ち昇る。
「よし」
「やっとだー!」
 捕縛糸から抜け出した真夜とレオ。
「――いくよ」
 立ち上がり、前に構えた大太刀。レオの全身から炎のオーラが立ち昇る。
(これはちょっと危険かしら?)
 後退、ユニのソドムが闇に溶け込んでいく。
「いけー!」
 即射。レオの背後から放たれた矢が、ティンダロスの顔を掠めた。
「ほらほらっこっちもそっちもだよっ!」
 瞬く間に真夜から放たれる矢。猟犬は避けきれず、うち2本が前足を貫く。
 ティンダロスのかわした先、真上に紅の刀身が浮かび上がった。
 陽炎のように軌跡がゆらめく。黒色の装甲がごとりと落ちる。
「おやすみ」
 レオに貫かれたティンダロスは横たわり、その眼光が消えた。
「きゃっ!」
 刹那、糸がしゅるりと足首に巻きつき、真夜の体が暗闇に消える。
「うっ‥‥!」
 槍のような蜘蛛の足が真夜の肩に食い込む。

 ――レオたちの後方。
「なんなのよこれは‥‥」
 見上げるレヴィ。明らかに、これまでのキメラとは異なる巨大な影がそびえ立っていた。
「グァッゲォッ」
 声を発した、直後――
「ぐっ!」
 薙ぎ払うような超重量の一撃が襲った。
 盾で受けたレヴィが後方へ弾け飛ぶ。
 赤黒い光。浮かび上がるのは竜の頭。その口に炎がゆらめき、収束していた。
「グボアアアアアアアアアア!!」
 絶斗の操るドラゴンヘッドが火炎弾を吐き出す。


 ジャックの貫通弾で沈黙するソドム。
 エメルトのティンダロスが後転、大剣が空を切った。
「痛ってー‥‥」
 京助についた数々の爪跡。エメルトがじわじわと京助の命を削っていた。

 屠竜刀の一閃。機械の体が火花を散らす。
 爪の反撃が頬を掠め、ぱらりと髪の束が落ちる。
 切り傷を負ったベーオウルフ。そして、満身創痍のクロムビースト。
 ふいに、カノン砲が後方の一般人へ向けられ――速射。
 苦し紛れの砲撃が撃ち抜く。
 刀では受けきれず、ベーオウルフの右腕がだらりと垂れ下がった。
 ベーオウルフは左手で刀を返す。
 振り下ろされた刀。屠竜刀がクロムビーストにトドメを刺した。

 遅れて弾丸が壁に穴を空ける。ジャックのSMGをかわすエメルトのティンダロス。
 壁を蹴り、紅蓮の猟犬が京助に跳びかかった。
 突進、すれ違う京助。
 ティンダロスが着地する。その胴を京助の大剣が流し斬りで傷つけていた。
 ジャックの弾丸を装甲で受けながら、なおも襲い来る猟犬。
 ――三角跳び。エメルトのティンダロスが天井から京助の首を狙う。
 しかし、ティンダロスが跳ね飛び、地面にもんどり打つ。瞬天速で駆けつけ、装甲の隙間を屠竜刀が強打していた。
 ベーオウルフはティンダロスを見下ろす。
「ふぅ‥‥」
 傷口を押さえ、京助は立ち上がった。
「面倒なキメラが並んだもんだ」
 やれやれ、とジャックは肩を竦める。


「真夜!」
 駆けつけたレオの太刀が蜘蛛の足を切り裂く。
「うぐぐっ!」
 ソドムの真下、真夜がぎりぎりと矢を引き絞る。
「いっけー!!」
 至近距離から放たれる矢。大蜘蛛の中心を突き抜けていく。
(ここまで、ですわね)
 ひっくり返ったユニのソドムが、その動きを止めた。

 消し飛んだ盾。燃え上がる周囲。
「くっ‥‥」
 起き上がったレヴィの前に、さらなる炎が竜人の口に収束していく。
「グェッ?」
 ドラゴンヘッドは、背に何か刺さった気がした。
「レヴィさーん!」
 竜人の後方から真夜の叫び声。
 刹那、左からジャックの貫通弾が突き抜ける。
「グガッ!」
 バランスを崩すドラゴンヘッド。いち早く駆けつけたベーオウルフが屠竜刀で足を切りつけていた。
 ――剣の紋章が煌く。
「ブボルゲッ!」
 レオが両断剣・絶で尾を両断。
「卵も潰しといたぜ!」
 さらに京助の大剣で流し斬り。勢いのまま大きく振りかぶり、
「ガッハ!」
 側面から思い切り大剣が振り下ろされた。ついにはベーオウルフに足を落とされ、転がる竜人。
「やってくれたわね‥‥」
 ふらふらとレヴィが近寄る。手にした剣がぎらりと鈍い光りを放つ。
「これで――おしまい!」
 ドラゴンヘッドの絶叫が止んだ。
「‥‥ま、簡単に負けてやるわけにもいかないよね」
 ジャックは苦笑を浮かべる。
「傷の手当てをしよう」
 半数以上が傷だらけ。ベーオウルフは休憩を促した。



●出口
 瓦礫の上に弾頭矢を放つ真夜。爆発で周囲が照らされる。
「なにもいませんですー」
 合図を聞き、レオと京助が瓦礫を除ける。
 障害物の向こうを警戒し続けるジャック。
 何事もなく瓦礫が取り除かれた。
「あぶないから、隠れていてくださいね!」
 と、真夜。護衛対象を両班で挟み、左手を壁に付けながら進行。
 やがて広い空間に出る。外の明かりが見えていた。
「何も‥‥いないわね」
 動くものはいないが慎重に歩を進めた。
 一般人が1人、外へ出る。また1人と外へ。
「終わりかな」
 と、そのとき――音速の連射。
「え〜っ!」
「最後の最後に‥‥!」
 真夜と、咄嗟に一般人をかばったレヴィが消える。
「あそこか‥‥!」
 西の隅、瓦礫に紛れた機械の体。
(ちょっと意地悪だったかな?)
 さらに旭の操作するクロムビーストが護衛対象を狙う。
 が、すべてジャックが弾いた。
 迫り来るベーオウルフと京助、そして鬼の形相のレオ。
(うわっ、なんかすごい威圧感)
 瞬く間に、旭のクロムビーストは瓦礫ごと粉砕された。



●協力者
 シミュレーションを終えた傭兵たちを尻目に、報告をまとめ上げるパルマ。
(これなら大丈夫、かな)
 特に問題はみられない。これでスケジュール通り進むだろう。
 はっと、パルマは顔を上げる。
「めりめりくりすます☆」
 いつの間にか横に立っていたレヴィ。 
「ちょっと早いけど、プレゼント」
 と、パルマに包みを手渡す。
「あぁ、そういえば‥‥ありがとうございます」
 クリスマスなどすっかり忘れていたパルマ。
「まあこの香水でー、角刈りの彼氏でもゲットしたりとか?」
 思いもよらない出来事に、パルマはお返しを思いつくはずもなく。
「また助けが必要になったら、いつでも手伝いにくるから」
 手を振り、レヴィは開発室を後にした。
 後ろ姿を見送るパルマ。
(落ち着いたら、何かお礼をしようかな‥‥?)
 脳裏には、世話になった傭兵たちが思い浮かぶ。
(そのうち、たぶん、きっと、いつか‥‥)
 とはいえ、パルマの仕事はまだまだこれから。
 来る新兵装実験まで、あとわずかだ。