タイトル:【1S】天使の新兵器・上マスター:無名新人

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/18 12:23

●オープニング本文


――【生身用新兵装開発シミュレーション依頼】――

◆依頼概要
完成間近の新兵装の調整に、傭兵の方の案を参考にさせてください。
また、同時に当該案武装でのシミュレーションテストもお願いします。
◇開発中兵装
:大型レーザーブレード(大剣、巨槍、戦斧)
:知覚弓矢
:エネルギーガン(拳銃、ライフル)
※詳細は別途現地にて。


◆依頼手順と詳細
?武装案提出
新兵装の基幹部分を使用した形状(装飾や外観、レーザーの色も含め)と名称の案を出してください。
なお、形状によりある程度性能も変化します。

?性能テスト
案通りの武装(通常強化Lv5での推定性能値のもの。以下『案武装』)がシミュレータのテスト用マップ内に生成されます。
2人1組で、1組ずつテストを行ってください。
◇テストマップ
中央から東西南北に幅の広い道路がある500m四方の廃墟の街。
交差点には高架があり、路上には崩れたビルなどの障害物がランダム配置されます。
開始位置:中央の十字交差点
キメラ配置:マップ端の道路上にランダム
◇キメラの種類
以下より任意種を任意数、選択してください。
:トンボ型キメラ
:オーク型キメラ(弓or斧を携行)
:他、後述のシミュレーションで使用するキメラ


?シミュレーション
シミュレータのミッションに、案武装も携えて挑戦してください。
◇ミッション目的
護衛対象2名を連れて砦まで到達
◇ミッションマップ
1km四方の森林地帯で、鬱蒼と樹木が頭上を覆う薄暗い森。
倒木がいたるところにあり、行く手を阻みます。
開始地点:南東の端
目標地点:北西の端にある砦
中央部:東西を横切る川幅200m水深1m程の泥川
◇キメラの種類
:サラマンダー
:シャドウクロコダイル
:ソドムVer2.15
:ティンダロス・ツヴァイ
:クロムビースト
:ドラゴンヘッド

#参考依頼
『オリジナルシミュレータ』
『フォレストシミュレータ』
『ファイナルシミュレータ』



☆お手伝いさん募集☆
まったく手が足りていないため、
シミュレーションの進行補助要員も同時募集しています。

◇依頼主
パルマ・ハイランド
ドローム社第1シミュレータ実験開発室///
――――――――――――――――――――――――





●お手伝いさん入ります
 ――UPC本部。
「この補助員は楽そうですね」
 モニタを眺めていたターニャ・クロイツェン(gz0404)は隣に話しかけた。
「えー‥‥っと? 依頼手順と詳細‥‥きかんぶぶんが、すいていせー‥‥のー‥‥‥‥」
 何かの解説書のような依頼内容に後ろ髪をかき上げたミリア・ハイロゥ(gz0365)。
 目を細めて読み進める。
「1km、倒木、開、目中◇キサソテクド#『『『☆まシ◇パド―。‥‥うん、なんか、メンドウな依頼じゃない?」
「‥‥ちょっともう一度言ってもらえますか、最後あたり特に」
 縦読み、メンドウと言うミリアにターニャは「それはともかく」続け、
「私が内容をすべて把握する。ミリアは私の指示通りに動く。ただそれだけですよ」
 役割分担すればいいんですとターニャ。
「あー。それならダイジョブソウ、かな?」
 難しいことはターニャがやってくれるんだ、とミリアは納得する。
「そうでしょうそうでしょう、簡単なお仕事ですよ」
 微笑むターニャ。
 ただ座ってミリアに何かさせるだけの簡単なお仕事ですよ――と。
「ふ〜ん‥‥じゃーこれにしますか」
「そうしましょうそうしましょう」
 こうしてお手伝いさんが約2名入りましたとさ。

●参加者一覧

RENN(gb1931
17歳・♂・HD
石田 陽兵(gb5628
20歳・♂・PN
相澤 真夜(gb8203
24歳・♀・JG
美紅・ラング(gb9880
13歳・♀・JG
和泉譜琶(gc1967
14歳・♀・JG
春夏秋冬 立花(gc3009
16歳・♀・ER
レヴィ・ネコノミロクン(gc3182
22歳・♀・GD
鳳 勇(gc4096
24歳・♂・GD

●リプレイ本文


 真っ白な空間に人影が浮き上がる。
「一番乗りー!」
 和泉譜琶(gc1967)が形を成した。
 続けてレヴィ・ネコノミロクン(gc3182)が現れる。
「まずは武装を確認してください」
 パルマの通信。レヴィは槍を手に取る。
「おも!」
 柄の端が極端に太く、重い。
「長さがやや短くなりましたが、案通り再現できていますよ」
「へ〜‥‥」
 柄を握り締めると幾つものレーザーが射出して収束、先から淡い緑色のレーザーブレードが現れた。
 しばし刃に目を奪われる。
「譜琶さんの機械拳銃は少々推測で補っています」
 拳銃を眺める譜琶。
 銃口に小さな発射口が3つ。ここから極細のレーザーが射出され、対象に向けて収束するよう修正。
 さらにメトロニウム合金で厚みを持たせて受防性能を高めてある。
 と、辺りにぽつぽつと崩れたビルが出現していく。
「ではテストを始めてください」




「最初はトンボみたいね」
 南方から向かってくるトンボが2体。
「では早速」
 譜琶はトンボの頭に狙いを絞り、引き金に指をかける。
 短く、犬の遠吠えのような独特の発射音。
 銃口から深紫の光が一瞬でトンボの複眼に収束、通過していく。
「おぉー?」
 次々と発射。遠吠えが幾重にも反響して2体のトンボが瞬く間に墜落した。
「譜琶ちゃん、左にわんこ!」
 交戦が始まった直後、ティンダロスが瓦礫を跳び進む。
「あ、後ろからも来てますっ!」
 同時に現れた2体の紅蓮の猟犬。
「まずは片方を速攻で。こっちから片付けましょ」
 一方のティンダロスへ突き進むレヴィ。
 譜琶が援護。レヴィの背後から紫の光線がティンダロスの行く先々を焦がした。
 レヴィが槍を突き出す。
「く〜っ! やっぱ当たんない!」
 槍先が空を切った。器用に身を伏せ、かわしたティンダロス。
 が、譜琶の拳銃が紫光を放つ。
 ティンダロスは装甲の上から左肩を貫かれた。
 姿勢を低く、唸る紅蓮の猟犬。
「――!」
 間一髪、しゃがんだ譜琶の頭の上を鋭い爪が跳び越えていく。
 背後から、別のティンダロスが跳びかかっていた。
「ぁ、ぶない!」
 飛び退いた譜琶。さらに前からティンダロスの爪が伸びた。
 続けて後ろから振り下ろされる爪。
「うぅ‥‥!」
 拳銃を後方へ掲げる。銃身で受けるが、軽々と路上まで弾き飛ばされた。
 ティンダロスが2体とも譜琶を追い詰めていく。
「蜘蛛も来てる」
 駆けつけるレヴィ。その視界に高架の上のソドムが見え始めた。
「早く片付けないと」
 前方、爪の横薙ぎを膝立ちの譜琶は辛くも仰け反って避ける。
 仰け反った譜琶へティンダロスが跳びかかった。
 ――瞬間、背から突き出る緑の槍先。
「よし」
 巨体が軌道をずれ、譜琶の隣へ着地する。
 動きが止まった猟犬を、譜琶の拳銃が貫く。
 ティンダロスは完全に沈黙。
「へ? ちょっ!?」
 突然くるくると宙を回転するレヴィの体。
「またこの展開‥‥」
 ソドムの糸が高架の上まで引っ張り上げた。
 槍のような足がレヴィに打ち下ろされる。
「えーと‥‥」
 譜琶の目の前にはいまだ無傷のティンダロスが1体。
 身を低く、唸り声を上げる。


「あー、あぶなかった」
 ターニャ・クロイツェン(gz0404)が機器を外し、テストを終えたレヴィ。勝ちはしたものの、二人ともずたぼろだった。
「うーん、やっぱり重い!」
 行動値も制限される機槍。命中時には確かな手ごたえはあった。
「これ、完成したらどうなるんでしょうね」
 譜琶が眺めるのは性能テストのリプレイ。
「ふふ〜。楽しみです」
 モニタから遠吠えのような銃撃音が鳴る。
「さてと、次は川で身動きできるか心配だけど‥‥がんばらなきゃ☆」
 レヴィは対策を考えながら開発室を後にした。




「そちらは斧に槍先を追加したため、かなりの重さとなっています」
 解説を聞き、柿原 錬(gb1931)は斧槍を手に取る。
 とにかく重い。これで攻撃を当てるのは難しいかもしれない。
「次に双剣。こちらは機関部分を小さくして2つ取り付けました」
 こちらも斧槍ほどではないが、非常に重い。
「ただテストでは本来の性能は出せないでしょう」
 引き続き説明を静かに聞く錬。
「立花、そっちの仕上がりはどう」
 春夏秋冬 立花(gc3009)へと目を移す。と、甲高い音を立てて駆動し始めた。
「概ね私好みの感じかな?」
 回転する光の刃を見つめる立花。柄の中央部に取っ手のついた、特徴的なレーザーチェーンソーだった。
「そちらは大剣の基幹部分にかなり手を加えて‥‥と、そろそろ始まります」
 仮想の廃墟が構築されていく。


「オークが3、か」
 隠密潜行で偵察してきた立花が戻る。
「行こう」
 錬は双剣を手に接近する。
「そうしますか」
 立花の姿が消える。
 次の瞬間、いきなりオークたちの眼前に現れた。
 激烈なモーター音。
 スッと刃が抵抗を感じることなくオークの体へ入っていく。
 続けて取っ手部分へ手を添え、チェーンソーを刺したまま捻り上げる。
「確かに、とんでもない威力みたい」
 一瞬でオークが崩れ落ちた。
 両脇のオークたちが立花へ斧を振り上げる。
 刹那、オークが横合いから吹き飛ばされた。
 アスタロトに走る電流。錬の双剣による竜の咆哮がオークを薙ぎ払った。
 続けざまに錬が回転、黒紫色の刃がもう1体のオークの背から突き出る。
 ぐらつくオーク。が、踏み止まって錬の頭上に斧を打ち下ろした。
 錬は双剣を掲げて受ける。
 さらに斧を振りかぶるオーク。だが、体を上下に分たれて転がった。
 立花のチェーンソーの回転が止む。
 前方、残りのオークを錬が双剣で斬り伏せる。


 いったん中央へ戻る2人。錬はハルバードに持ち替えた。
「それにしても相手の生死を気にしなくていいって、凄く楽ですね」
 ぽつりと立花はつぶやく。
「ただまぁ‥‥ちょっと数が多いかな?」
 空にトンボ、前進するオーク、瓦礫を移動するソドム、叫ぶ竜人‥‥大量のキメラが近付きつつあった。
「ともかくやりますか」
 トンボとオークの群れに狙いをつける。
「そうだね」
 斧槍を前に、錬が突き進む。
 一斉に錬に向かって急降下する4体のトンボ。うち、1体が四散する。
「まずは1体」
 瞬天速で駆けつけ、立花が横に薙いだ。
「ん‥‥」
 同時に放たれたオークの矢。1本が立花の足に刺さる。
 錬は次々とトンボの体当たりを受けていく。しかし、斧槍がすべて受け流した。
 と、掲げたハルバードを大きく後方へ引く錬。
 赤色の長大な槍先を突き出した。
「これはすごい」
 一撃でトンボが弾け跳び、跡形も無く葬られた。
「上からティンダロス」
 立花がトンボに切りつけながら錬へ注意を促す。
 猟犬が廃屋を駆け下りてくる。
「わかった」
 迫り来るティンダロス。
 アスタロトにスパークが生じる。錬は突き上げるように斧槍を繰り出した。
 が、あっさりとかわす紅蓮の猟犬。
「うぐ‥‥」
 瞬く間に3度、強靭な爪が錬を切り裂く。
 倒れ伏す錬。
 さらに駆け寄るティンダロス。
 しかし、急停止。後から地面にチェーンソーが刺さる。
「‥‥」
 立花は構わず、前へ跳んだ。
 着地。前転の反動をつけ、遠心力でチェーンソーが高速で打ち下ろされる。
「これも、かわされますか」
 続くティンダロスの反撃を柄で受ける立花。
「錬さん、一旦離脱を」
 立花は膝立ちの錬を抱え、瞬天速で、
「はっ?」
 離れようとした途端、不自然に体を引っ張られた。宙を舞い落下する。
 錬を抱えたまま、全身に絡みついた蜘蛛の糸。
 見回す立花。
 周囲をサラマンダーやドラゴンヘッドが取り囲む。
 そのすべてに、炎が収束していく――。


「やっぱり多すぎたかな」
 錬がテストを終える。
「思ったよりピーキーなものになりましたね」
 思案する立花。
 2人はそれぞれにテストを振り返り、欠点を洗い出していく。




「今、真に必要なのはヘビーガンナー推奨の生身大型武装なのである」
 美紅・ラング(gb9880)は高らかに宣言する。
「美紅の考えた武装は世界一なのである」
 KV用レーザーガトリングをスケールダウンした案だった。
「とりあえず基幹部を組み合わせて生成しましたが‥‥性能は予測値というより想像ですね」
 苦笑するパルマ。
「これさえあればキメラなんかギッタンギッタンなのである」
 美紅は固定砲台のような超大型のガトリング砲を持ち上げた。
 大剣のほうですが、とパルマは次の解説へ。
「剣型であまり長すぎると扱いがさらに困難となる上、威力も著しく減退してしまいましたが‥‥」
 少々残念そうに説明が続けられる。
「ふむ」
 深紅の機械大剣を手にする鳳 勇(gc4096)。
「ともかく開始しましょう」
 周囲に廃墟が出来上がっていく。


 ガトリングで瓦礫を粉砕しながら進む美紅。
「鳳殿、敵が見えてきたである」
 轟音に呼び寄せられ、キメラたちが2人の前後に現れた。
「美紅氏、援護の方頼んだ。こちらは斬り込む!」
 勇が前方のキメラ群に駆け寄っていく。
「了解である」
 勇の後方から、緑の光条が激烈な回転音と共に吐き出される。
 弓を構えていたオークの半身が削れた。
 前方から吐き出される糸。ソドムが勇を路上に縛り付ける。
「くっ」
 宙に浮かぶ小さなサラマンダーから次々と火炎が放たれた。
 ――が、蜘蛛糸の捕縛が解ける。
「テストとは言えキメラに手を抜く道理は無い!」
 一閃。空中のサラマンダーが翼を裂かれて落ちていく。
 続くガトリングが地に落ちる前にサラマンダーを討ち滅ぼした。
「っ‥‥!」
 刹那、大顎が太腿を抉る。瓦礫から静かに忍び寄ったシャドウクロコダイル。大剣では受けられず、勇は自身障壁と渾身防御でなんとか致命傷は避ける。
 続く鰐の噛みつきを、勇は転がって逃れる。
 さらにソドムが糸を吐き出し、地面に縛り付けた。
「鳳殿!」
 美紅が叫び、ソドムにガトリングを放つ。ソドムの足が数本、削り飛ぶ。
「?!」
 突然、前のめりに吹き飛んだ美紅。
 振り向くと、サラマンダーとオークを従え、ドラゴンヘッドが唸りながら接近していた。その口に炎が集まる。
「これは仕方ないのである」
 大型ガトリングでは回避や受防はほとんど期待できない。美紅はガトリングで迎撃する。
 だが、多勢に無勢。
 撃ち合いはすぐに止んだ。
「くらえ」
 張り付けにされたまま、勇は巨大な剣で這い寄るシャドウクロコダイルを薙ぎ払った。
 鰐は身をそらすが、その尾が焦げ切れた。
 しかし、大口を開け、構うことなく鰐が突き進む。
「ここまでか」
 ソドムの槍のような足が振りあがった――。


「良い武器ができればいいが‥‥」
 テストを終えた勇。行動値の減少は思いの他、厳しいものがある。
 そういえば、と機器を外すターニャへ話しかける。
「今回の機関部分の回収依頼、報告書を読んだが黒髪の男が気になるな‥‥どんなやつだったんだ?」
「さあ、どうでしたか」
 微笑を浮かべるターニャ。
「‥‥そうか」
 図りかね、勇はそこで止めた。




「けっこー待ったな」
「待ちましたね!」
 ようやく、石田 陽兵(gb5628)と相澤 真夜(gb8203)の順番が回ってきた。
「お二人で最後ですね」
 パルマの通信。ふうっと吐き出す息の音が漏れ聞こえる。
「しかしまたチェーンソーですか」
 心なしか、お疲れ気味のようにも思える。
「いや、かなりマニアックではありますがね。それを超えるロマンが――」
 とつとつと語り始める陽兵。
「で、戦斧より小さいため大剣ほどの性能になりました」
 パルマは構わず説明を続ける。やはり疲れているようだ。
「しかしこれが、あの時のか‥‥随分と立派なものだったんだなー」
 しげしげと感慨深げに見つめる陽兵。
 回収時には試作型の短剣だった。
「あとは譜琶さんの拳銃ですが、少々重いのでご注意を」
「仕方ないか」
 陽兵は機械拳銃を1つだけ拾い上げる。
 ふと、バラバラの部品が目についた。
「それって、相澤さんの?」
 同様に見つめる真夜に声をかける。
「こっそり持ち込める弓って便利だと思うんですよねー」
「ここではなんとか案通りに。あとは静音にしたため、威力がわずかに落ちています」
 ところで、と真夜は解説するパルマに尋ねる。
「すみません、組み立ててくださいっ!」
 組み立てられず、じっと見つめていたのだった。



「お? あんなところに」
 ビルの屋上に巨大な蜘蛛がじっと潜んでいた。
「あれはソドムですね!」
 早速狙いをつけ、真夜は矢を番える。
 しゃん、とわずかな音。
 白銀の弓から静かに輝く矢が放たれた。
「あんまり効いてない‥‥?」
 矢は胴に刺さった。しかし、すっと下へ降りていった蜘蛛。
「相澤さん、ティンダロスが来てる」
 遠く、ティンダロスがゆっくりと近付く。
 矢を放つ真夜。
 ティンダロスの装甲の上から矢が突き立った。
「うわ、硬いな‥‥」
 が、物陰に姿を消すティンダロス。
「こっちも隠れよう」
 隠密潜行を開始する。

「蜘蛛がいましたですよ!」
 隠密潜行の真夜が戻る。
 瓦礫から蜘蛛がはみ出ていた。
「こっそり近付いてやっちゃいましょう!」
 障害物に移動して接近する2人。
「そろそろ射程内だな」
 拳銃を構える陽兵。
 だが突然、真横の屋内からガラスを突き破ってティンダロスが現れた。
「待ち伏せか!」
 のしかかり、喉を狙う猟犬の噛みつき。
「ぐっ!」
 かわせず、とっさにかばった手に牙が食い込む。
「はなれろーっ! 」
 真夜が至近距離から矢を放った。が、物ともしない。
 続けてソドムから吐き出された糸が陽兵を縛り付ける。
「‥‥これならどうかな?」
 狙いを定め、矢を撃ち出した。
 ティンダロスが唸りを上げ、一瞬ひるむ。装甲の合間、輝く矢が眼に突き立っていた。
 血の色をしたチェーンソーの刃が回る。
「やってくれたな」
 ティンダロスを下からチェーンソーが突き抜けた。
 陽兵は抉るように回転を加える。
 それでもなお距離を取り、体勢を立て直すティンダロス。
「?」
 糸がしゅるりと真夜に巻きつく。後方へ強い力で引っ張られた。
「痛っ!」
 槍のような足が肩を貫き、地に縫い付けられる。
 真夜はソドムに矢を放つ。
「うぅ‥‥!」
 それほど効いていない。
 突如、犬の遠吠えのような射撃音が鳴り響いた。陽兵の拳銃が蜘蛛の足を砕く。
「くそ!」
 陽兵を手負いのティンダロスが引き裂き、首にティンダロスが噛みつく。
「大人しく寝てろ、っての‥‥」
 ティンダロスの腹を貫く、回転する刃。陽兵に噛みついたまま、ティンダロスが倒れる。
 死点射で矢を幾重にもソドムに浴びせた真夜が駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
 2人とも残り生命値わずかの辛勝となった。


「むぅ‥‥やっぱり対人だとまだまだ修行が必要かな」
 テスト後に対戦した2人。
 陽兵は距離を詰めたものの、チェーンソーが当たらず反撃で膝を撃たれる。
 後はじりじりと生命を削られ、最後には死点射のでこぴんが命中、降参となった。
「いい勝負でしたね!」
 チェーンソーが当たっていれば結果は違っていただろうか。


 ――後編へ続く。