タイトル:伸ばされた手マスター:仁科 あずみ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/06 22:12

●オープニング本文


 連れてって! お願い連れてって!!

 その女性が必死に泣き叫びながらこちらに手を伸ばす。
「‥‥‥‥‥」
 それを身体を血に濡らした能力者が目を見開き見ている。
 解っている、今ここで自分がこの女性に手を伸ばさなければ、この人は、

 死‥‥‥‥‥

「!」
 気が付いたら叫んでいた。泣きながら叫びその場を駈け出していた。頬が涙を伝いそれをぬぐう事もしないで、彼はひたすら走った。
 恐ろしくなったのだ。
 止まらない出血、冷えていく自分の身体、倒す事の出来ない敵、そして、そして、
 そして、物凄く冷静な頭で、女性を見捨てた自分自身。叫び、脅え、走りながらも彼はごく自然とこう考えている。

 自分に埋められたエミタ、それは希少金属であり、
 自分こと能力者は、そのエミタに適合した数少ない人間である。
 作戦は失敗した。このまま無理に人質を救出しようとすればまず自分は死んでしまう。それは大きな損失以外の何物でもなく、またここで撤退しても状況から見てただの「依頼失敗」で済まされるだろう。
 そうだ、失敗したのだ。そうしたことは依頼を受けていればいつか誰しも経験する。だから自分はこれを乗り越えて当たり前で、これは‥‥

 置いていかないで!

 その言葉を最後に、女性は甲高い悲鳴をあげ、それきり自分の背中に人の声は追いすがってこなくなった。
 彼は絶叫した。

 ―――人を助けたいんだ
 ―――戦争よりもなによりも、俺は人を助けられる力が欲しいんだ

 そう思い、能力者になったのに―――
「俺は‥‥」
「どうしたソハイル」
「いや、なにも」
 名前を呼ばれ彼は顔をあげた。いけない、任務中にぼんやりするなどあってはならない事である。
「何だ、疲労でもぶり返したきたか?」
「大丈夫だよ」
 武器を構えキメラ出没地を相棒のタゴールと身を低くしながら偵察する。茂みに身を隠し、野良のキメラの姿を探す。ここら一帯のキメラを駆逐しなければ、今後物資運搬に支障をきたすのだ。
 ―――いた
 それは程無く見つかった。だが、それと同時にタゴールが小声で驚く。
「‥‥何故ここに一般人が居るんだ!?」
 茂みの中に我が物顔で鎮座するキメラの奥に、逃げ場をなくし震えて身を固まらせる一般人がいた。キメラはまだそちらの気配には気付いてないらしいが、その一般人の女性はこちらに気づいたらしく、視線をこちらに投げてくる。タゴールは舌打ちすると、ソハイルに視線をやった。
「まあいい、仲間と連絡を取る。一旦引き揚げるぞ」
「‥‥‥‥」
「おい、どうしたソハイル」
 ソハイルは呆然とした眼で女性を見詰めている。そして、その女性の唇が声を出さずに小さく動くのを確認した。それは確かにこう言っていた。

 ―――おいていかないで

「ソハイル!?」
 ソハイルが、何の用心もなく立ち上がった。すると虫型のキメラも此方に気づき、威嚇の声を上げている。
「ソハイル!?」
「俺は‥‥」
 それと同時に、何処からともなく仲間のキメラも姿を現した。キメラは全部で五体、予想よりも数が多い。
「くそったれ!」
 タゴールが毒づく。
「俺は‥‥」
 自分へと伸ばされる震える手が、点滅するように目の前を掠めていく。ソハイルが、ひどく悲しそうな顔をしながら武器を構えた。

●参加者一覧

ベル(ga0924
18歳・♂・JG
レールズ(ga5293
22歳・♂・AA
霽月(ga6395
22歳・♀・GP
虎牙 こうき(ga8763
20歳・♂・HA
まひる(ga9244
24歳・♀・GP
しのぶ(gb1907
16歳・♀・HD
高橋 優(gb2216
13歳・♂・DG
七海真(gb2668
15歳・♂・DG

●リプレイ本文

●出発前の一コマ
 高橋 優(gb2216)、しのぶ(gb1907)、虎牙 こうき(ga8763)の三人が何やら立ち話している。
「‥‥虎牙さんとははじめて一緒になりましたね。期待にそえるよう頑張るし」
 何故か優が意地を張る様にこうきに対して話しかける。そしてくるりとしのぶに矛先を向けると、
「しのぶ、居たの? 足引っ張らないでよね?」
「居たの? って!? ‥‥どうせ分かってて付いてきたくせに。素直じゃないよねー?」
 怪訝な目で言われ一瞬憤慨するが、しのぶはすぐに胸を張ると自信満々にそう切り返す。優が小さく「うるさいし‥‥」と漏らすが、こうきが「まあまあ」と宥める。だがしのぶはそんな優の反応は予測していたようで、
「まひるさんに虎牙さん! 足手まといにならないよう頑張ります!!」
 名前を呼ばれたまひる(ga9244)はこちらに振り向き軽い笑顔で応えた。こうきも可愛い後輩に囲まれて軽く微笑む。
「うん一緒の依頼は初めてだったかな、こっちこそ宜しく」
 こうきがそう言うと、しのぶは元気に、優は照れ臭そうに眼を逸らし「はい」と返事をする。
 そして、やがて出発の時間を迎える。


●討伐
 能力者二人の息が上がっている。この戦力で敵に囲まれ一般人に気を配りながらの戦闘はやはり厳しかったようだ。
「くそっ! 帰ったら憶えてろよソハイル!」
「‥‥‥‥」
 二人が背中合わせにキメラと対峙する。鋭い眼光を向けるタゴールとは対照的にソハイルはの目は何も移さず視線はただ茫洋とさ迷っていた。
 五体いるうちのキメラの一体がギチギチと不気味な声を上げてソハイルに襲いかかる。
「ソハイル!?」
 それをぼんやり見つめるだけのソハイルに、タゴールが悲鳴じみた声を上げた。

「はいはーい、お邪魔しますっと!」

 そこに場違いな程抜けた声が響く。
 それと共にソハイルの目の前に一瞬にして人影が現れた。
「!?」
 影は黒刀「炎舞」を素早く構えると迫ってくるキメラに勢いよく叩きつける。グラップラーの瞬天速に素早い攻撃。現れた能力者まひるは突然現れた彼女をぼんやりと見詰めるソハイルに振り向いた。
 そして、声を張り上げる。
「何呆けてるの! 今は戦いなさい!」
「!」
 頬を叩かれたかの様な顔をするソハイルの耳に、更に今度はざっくばらんな声が響いた。
「うぃ〜っす! 援護と救助しに来たよ〜って‥‥あれ? なんか空気が寒いような‥‥?」
 ハルバードを構えラフな態度で登場したのは霽月(ga6395)だ。
「ま、状況が状況だからな」
 それに七海真(gb2668)がぼやきしのぶと共にアーマー形体で現れ、震え固まる女性を真が担ぎ上げる。女性はおろおろと身じろぎするが、
「あんたを助ける、じっとしてろ」
「え?‥‥あの」
「あ! こんな格好してますが、学生ですから! ご心配なく?」
 狼狽する女性にしのぶが笑顔でフォローを入れた。ああ、アーマー武装時のドラグーンの悲しよ。そして一気に集中を高めると同時に声を上げる。
「七海さん! いくよっ!!」
言うや否や、AU−KVの脚部にスパークが生じる。竜の翼で戦線を離脱、その間しのぶが周囲を警戒。こうきに受け渡すとすぐに戦線へと出た。
「大丈夫ですか? 痛いところはありますか?」
 女性を受け渡されたこうきがすぐに女性の怪我の有無を確認する。女性は身体を縮こまらせ震えるばかりで返事はないが、見た所どうやら外傷はないらしい。問題なく動いている当たり、骨折等の心配も無さそうだ。それを確認するとすぐに伏兵を警戒する。
「遅くなりましたね‥‥援軍です!」
 そこにソニックブームで確実に狙いパイルスピアで鮮やかに敵を薙ぎ倒しながらレールズ(ga5293)が現れる。その後方から隙なくリンドヴルムを身につけた優がスコーピオンで虫型キメラの脚部を狙って追い打ちを掛けた。命中、五匹のうち一匹の機動性を奪う。そしてそのまま前線へ、後にはベル(ga0924)がその役を引き継ぎ、レールズと共に援護に回った。
「‥‥‥‥」
 敵を威圧しながらベルが無言でフォルトゥナ・マヨールーを構える。
「助かった、援軍か!」
 タゴールが喜びの声を上げる。対して、ソハイルは無表情のまま敵と向かい合っていた。
 敵のうち一体が不気味な咆哮を上げこうきの方へと突進していく。だが真っ先に前線へと駆けた霽月が未覚醒のまま女性保護班へと行かないようにまわり込みハルバードを構え、拳と蹴りで牽制しつつ防御。
「ふむ‥‥これが敵さんだね? んじゃ、さっさと終わらせて安全地へ行こう!」
 だが未覚醒のせいかパワー負けし、鋭いフックがみぞおちに入る。攻撃を受け軽く後退。だが倒れる事なく踏ん張り顔を上げる。
「何をしたのかな?今、かなり腹立つ物を見たような‥‥?」
 そっと打撲部を触れダメージを測ろうするが測るまでもないと直ぐに判断した霽月が怒りと共に覚醒し武器を握りなおす。
「―――っ!」
 そして一気に呼吸を吐くと相手との距離を縮め攻撃、瞬即撃で一気に攻め相手の防御を許さない一撃を撃つ。
 攻撃を受けたキメラが悲鳴の様な奇妙な音を立てながら後退する。そこにつめていたまひるが炎舞で撃破。更にその横手では優が又別のキメラに攻撃を繰り出し、足を潰す。
「やーるじゃん、優!」
「ちょろちょろ動き回って‥‥飛び火させるわけにはいかないし」
 まひるが茶々を入れ、それに優が答える。
「響け!そして皆に勇気を、進撃マーチ!」
「!」
 そこに女性の護衛にあたっていたこうきが見方全員に練成強化を掛ける。手元の武器が強化され、力が増すのを感じ取る。
「うぁっ! でっかい虫!! 気持ちワルぅっ!」
 キメラがしのぶに攻撃を繰り出すが、彼女は軽くかわし、そこにタゴールの援護射撃が入る。
「全力! 全壊っっ!!」
 その間で体制を整えしのぶが武器を蛍火に持ち替えキメラへと打ち込む。だが、ソハイルは敵の攻撃を武器で受けながらも今一歩踏み出せずにいた。それに直観的に違和感を感じたのは真だ。同時に一喝する。
「死にたいか!? 中途半端な野郎はすっこんでろ!!」
「!?」
 ソハイル自身、今の自分の感情の揺れに気付いていなかったのだろう。それを自分より年下の真に先に気付かれ迷いなく指摘され、明らかに動揺した。
 だが構わずに真は続ける。
「あんたがしてぇのはなんだ? 迷ってる内にも時は進んでくんだよ! 倒せるもんも守れるもんもなんもかんも失うんだ! そんな暇あんなら、初心に帰れ! 何を思って傭兵になったかだけ考えろ!」
 言うなり、「後は勝手にしろ」とばかりに目の前のキメラに竜の爪を発動させスパークマシンを掛ける。発生された電圧にキメラがびくりと引きつった。
「俺は‥‥」
 ソハイルの両手から力が抜け、その手から武器が滑り落ちた。


 こうきが異変に気付いたのはそんな時である。
「め‥‥なさ」
「?」
「ごめん‥‥なさ‥‥」
 先程まで黙り込んでいた女性が、しきりに何かを言っている。
「いい‥‥から‥‥私は‥いいから」
「何を?‥‥」
「ヨリシロ‥‥人質の振り‥‥能力者引き留めて、弱らせて捕まえて、サンプル回収、ヨリシロヨリシロ‥‥差し出せ。でも援軍が来た、失敗?‥‥」
 ぶつぶつと無表情で言ったかと思えば、何かに抗うかの様に頭を振ると顔を上げる。
「違う、違う‥‥ごめんなさい‥‥ごめんなさい!」
 そこでこうきがすぐに直感する。
 この女性は、何かの洗脳が掛けられている。だが偶然かはたまた不測の事態でもあったのか、それには綻びが出ているのだ。
 ―――この女性も今戦っている。
「やはりただの女性じゃなかったようですね」
 こうきの所まで下がり、フォルトゥナ・マヨールで狙撃眼。暗に女性を警戒していたベルがそう呟いた。呟きながらキメラの一匹に止めを刺す。
「洗脳、でしょうか。何か切っ掛けでもあったのか、少し綻びが出てますね」
「‥‥ああ」
「‥‥でも問題ありません」
 そういい、再度ベルが前線へと上がっていく。その途中キメラが此方に向かってきたが、
「おっと? あなたの相手は俺です」
立ち塞がったのはレールズだ。ベルはそれを確認すると抜け他のキメラへと注意を向ける。 レールズは流し切りを放ち、キメラを地へと沈めた。
 残りは二匹、手負いの一匹に、足を撃ち抜かれ機動性を失った一匹。
 だがその時である。
 女性が悲鳴を上げたかと思うと、一心不乱に能力者に向って走っていく。腕を掴もうとこうきが手を伸ばすが、なまじ手加減しようとしたせいか女性はその手を逃れ走り出す。
 だが、ベルが鮮やかに女性の背後にまわり、冷静に動きをけん制。
「こっちは大丈夫です。キメラをお願いします」
 それだけ言うと、能力者達は皆迷いなくキメラに向き直る。
 一匹の止めをが刺し、まひるがもう一匹のキメラの止めを刺し、戦闘は終了した。


●それでも戦う理由
「ふ〜、怖かった〜! みんな、無事?」
 霽月が声を掛ける。皆派手な外傷はなく、自身の軽傷はこうきに練成治療を掛けて貰う。
「治れ! 彼の者を蝕む痛み、癒しのプレデュート!」
だが、優と真は未だ警戒を解かない。
「勝利を確信した時こそ一番油断するんだし」
 これは優の談である。
 霽月がダメージを回復して貰い、一息ついた所で一同、顔を合わせ女性を見る。
 女性の前には生気でも抜けたようなソハイルが座っていた。
「俺は‥‥」
 軽く俯きながら女性に呟く。
「俺は‥‥死ぬのが怖かったんじゃ、ないんだ」
 そのソハイルの手をまひるがそっと取る。そしてそれを胸へと当てた。ソハイルが軽く驚き赤面する。だがそれに構わずまひるは真剣に、静かに告げる。
「誰でもない、あんたが自身に誓った信念‥‥それを裏切った。だから辛いんだね。それを許せるのは自分だけ、あんたは今迄十分苦しんだ‥‥そろそろ自分を許してあげてもいいじゃない‥‥」

 許す? 自分を―――?

 考えてもみなかった言葉にソハイルの両目が見開かれる。そこにレールズがため息をつき、口を開いた。
「そんなんじゃ救える者も救えませんよ。俺達がもう少し遅かったら彼女どころかあなたも彼もやられてます」
 やれやれ、といった様子で言葉を続ける。
「俺は一応ある女性を救った事で差し伸べる者なんて称号をもらってますが‥‥彼女を守りきれませんでした‥この手に掴んでいながら‥‥」
「それは‥‥?」
 懐疑的な表情を浮かべるソハイルに、レールズは自分の耳を指差しにっこり笑ってこう言った。

「‥‥耳をやられましてね、音を奪ってしまいました」

 至極和やかにレールズが告げる。ソハイルが傷口に素手で触れられた様なような顔をした。
「重要なのはその時に取れる最善の手段を取る事です。あなたが救えなかった人の分も生きてより多くの人を救うのが最善の手段ではないでしょうか?」
 そう言ってその体制のままもう一度レールズが微笑む。更にこうきが迷いつつも言葉を紡ぐ。
「ソハイル、だっけ? 俺はさ、貴方が何を引きずってるのか知らないよ‥‥でもさ、過去に縛られる事に意味は無い。反省はいくらしたっていいよ? でもさ、後悔はあまりしないほうが良いよ? 後悔はしてては前には進めないんだから」
 「心優しき虎」の、優しい言葉。だがその言葉は、優しさのみから出た言葉ではない。
 つまり、要はきっとそういう事なのだ。
 それを受け、霽月が思いきり伸びるとカラッと言ってのける。
「まっ、人を助ける事は良いけど自分の命も大事にね!」
 もっと簡略化して言ってしまえば、そういう事なのだ。
 その光景を眺めながらしのぶがポツリと漏らす。
「私達みたいな仕事をしてると、きっとそんな場面あるんだろうなぁ。私は‥‥選べるのかな? その時‥‥」
 すると優がチラリとしのぶに視線を向けると、飄々と言い放った。
「しのぶは別に平気だと思うけど? 図太いから‥‥」
 言葉をうけ、「ユウちゃん‥‥?」としのぶが優をジロリと見る。優はそれをどこ吹く風で受け流す。
 そしてそれらを真が遠巻きに、ひどく面倒臭そうに、それでいてのんびりと眺めている。

 そして、更にその能力者達の姿をソハイルが少し離れた場所を見るように眺めていた。

 彼等を見るその眼にはもう先程の様な影はなく、
 かわりにあるのは淀みのない光の刺した真っ直ぐな目だった。
 信念を曲げても、自分自身が許せなくなるような事をしても、取り返しのつかないことがあっても、それでも戦う理由。
 それを見る目からかげりは一切消えていた。


●その後の一コマ
「それじゃあ、仕事も終わったところでおねーさんとコーヒーでも一緒に飲もうじゃないか」
 現場から引き揚げラストホープに戻った所でまひるがコーヒーを取り出すが、タゴールが礼がわりだと自分のコーヒーを差し出す。
「せっかくですので頂きましょう。ありがとうございます」
 レールズが素直にそれを受け取り口をつける。コーヒーが全員に行きわたった所で霽月がその後の経過を淡々と告げた。
「ちなみにあの女性、人質の振りして少人数の能力者をおびき出して、キメラに攻撃させた後サンプルとしてバグアのとこ持ってくように洗脳掛けられてたみたいだね。今はULTに保護されてる。でも洗脳も解けかけてたし様子見は必要だけど、まあ大丈夫だろうってさ」
 能力者全員から安堵のため息が漏れる。
「ならそれで全部仕事は終わりだな。ごくろーさん」
 壁に背を預けカップから湯気を燻らせながら真が呟く。
「あ、あの」
 そしてカップを見詰めながら照れ臭そうにソハイルがまひるに声を掛ける。それにまひるが「ん?」と注意を向けた。
「えと‥‥」
 言葉に詰まりつつも苦し紛れにぎくしゃく笑って見せるソハイル。それにいたずらでも思いつたかの様にまひるがにやーっと笑った。
「ん? 何々? 勢いづいちゃったのなら、一夜を過ごすのもやぶさかではないよ」
 からかわれているのは解っているがソハイルの顔がみるみる赤面する。だがそこにベルの冷静な突っ込みが入る。
「まひるさん、恋人いるって言ってませんでしたっけ?」
 その言葉にまひるがその場で硬直する。それにレールズと真が吹き出した。
「くっ、うぬぬ」
 そして手元のコーヒーを勢い良く流し込むと、
「にがっ!」

 ラストホープ、とある一角での一コマ。