タイトル:ガンマンズ・ライフマスター:沼波 連

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/26 14:37

●オープニング本文


「最近学園の一部で流行っている遊びといえば‥‥‥‥」
 生徒会執行部委員は召集した学生と能力者に向かって説明を始めた。

 ちょうどそのころ、学園の施設が密集したエリアに1人の学生が警戒心をむき出しにしていた。尾行を警戒して何度も後ろを振り返り、角を曲がるときはそっとを行き先の安全を確認している。
 しかし周囲を警戒し過ぎて地形把握を怠ったらしく、学生は行き止まりに突き当たってしまい、来た道を戻ろうと振り返ると、そこには3人の学生が立ちふさがっていた。
 3人の学生はブレザーの前を一斉に開けると、腰のガンベルトが露わになる。3人は拳銃を抜くと、行き止まりの学生に狙いをつけた。
 行き止まりの学生は両手を挙げた。
「やれやれ。ここで終わりか。ここに連れ込んで各個撃破しようとおもったんだがな。もう一度最初からやり直さないか。1人を3人で襲うなんて格好悪いだろう?」
 3人組の1人がこたえる。
「静かにしろ。おまえもガンマン、命乞いはなしだ」
「まったくだな」と行き止まりの学生は天を仰ぎ、苦笑した。
 3人もつられて上に視線を向けると、施設の2階、空調設備の上に学生が1人うずくまっている。その両手には2丁拳銃。
 行き止まりの学生はいった。
「静かにしろ。おまえたちもガンマン、命乞いはなしだ」
 2階からの銃撃の雨が降り注ぎ、3人組の制服に赤い花を咲かせた。
 さて一方そのころ、学生食堂のテラスでは1人の女子学生が遅めの昼食をとるところだったが、自分に向けられる視線に気がついて顔をあげると、離れた席に男子学生がいた。
 男子学生は席を立ち、ブレザーをめくってガンベルトを見せると、「ついてこい」とでもいうかのようにその場を去った。
 女子学生は小さくうなずくと男子学生についていく。そこは人気のない校舎裏だった。
 2人は対峙する。
「勝負を請け合ってもらえて嬉しいよ」と男子生徒。
「どんな勝負でも受けるのが私のルールでね」と女子生徒。
「いい心がけだ。さあ銃を抜け。先に抜いた奴を倒すのが俺のルールだ」
 不利な状況で勝たなくては意味がないと男子学生は笑い、女子学生はこいつ調子こいてやがるという表情になっていった。
「勘違いで後悔したことないかな?」
「Go ahead, make my day」
 男子の挑発に女子学生が銃を抜き、2つの銃声が重なり合い、交錯して、男子学生が倒れた。
 女子学生の放ったペイント弾は男子学生の胸元で弾けて制服を赤く染め上げた。
 男子学生は倒れたまま、女子学生を見上げた。自分に狙いをつけてくる銃口と目があった。
「俺の完敗だ。キメ台詞でもいったらどうだ」
「そんな趣味はない。でも馬鹿を死体撃ちするのは好きよ?」
 容赦のない銃声が響き、複数回の至近射撃によるうめき声があった。

「以上のような遊びが一部で流行っているんだ」と生徒会執行部委員はいった。「学校内のあちらこちらでペイント弾を放つモデルガンを用いた銃撃戦が行われている。銃撃戦といっても無関係の者を襲っているのではなく、参加者が他の参加者を見つけ出して襲撃するという形をとっている」
「この遊びの企画者に尋ねたところ、市街地や室内での銃撃戦、それに突発的な攻撃への対応するための訓練だそうだが、生徒会執行部としては困っている」
「というのは流れ弾が無関係の者に被害を与えたり、施設を汚したり、警備システムのセンサーをダメにしたりしているからだ」
「訓練は良いがこのような状況を看過できず、中止を企画者に要請したところ、参加者はすでに暴走しおり、制御が効かないそうだ」
「ならここはキツめに対応すべきだろう。敵が戦闘を望むなら、こちらも打ってでよう。君たちの実戦で鍛え上げた力によるこのゲームの参加者の排除を依頼する。君たちに倒されたら敵もまたゲームにうつつを抜かすよりも実戦で戦うことに意味を見いだすだろう」
 そういって委員はゲームに用いるモデルガンと顔写真と所属の付記された参加者リストを突き出した。

●参加者一覧

美空(gb1906
13歳・♀・HD
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
姫咲 翼(gb2014
19歳・♂・DG
風雪 時雨(gb3678
20歳・♂・HD
真上銀斗(gb8516
21歳・♂・JG
夜刀(gb9204
17歳・♂・AA
ブロンズ(gb9972
21歳・♂・EL
風間 千草(gc0114
19歳・♀・JG

●リプレイ本文

●01
 今日も今日とてカンパネラ学園ではガンマンを名乗る学生が暴れ回っていた。
 昼休みの最中、とある校舎の廊下ではペイント弾が飛び交い、机やロッカーでバリケードが築かれて、それ越しの撃ち合いがはた迷惑にも繰り広げられていた。
 ロッカーや机や椅子などの山の脇からガンマンの学生が銃口だけだして射撃すると、向かい側のガンマンの学生の腕をかすめ、撃たれた学生は応射しながら、射戦の外に逃れ、撃ったほうの学生は「一旦逃げるか、それとも味方を呼んで奇襲させるか」と思案する。
 そのときぴんぽーんぱーんという気の抜ける音ともに校舎に放送が流れる。
 生徒会執行部からのガンマンたちへの放送だったので、その場のガンマンたちは敵の射撃を警戒しつつ、耳を澄ませたのだが、その内容が自分たちを排除するという宣告だったので、目を剥いた。
「やってみるがいい!」
「おもしろい! その勝負乗ったぜ!」
 などという叫びとともにスピーカーへ連射。あっという間にスピーカーがペイント弾の塗料でべたべたになり、内部に入って機械を痛めたのか、放送の途中で音が流れなくなってしまう。
 やったぜとガンマンの1人が、むなしい勝利の声を上げた。
 そのとき「チャララー、チャチャチャチャララー♪」といった感じのメロディが流れてくる。
 どこか哀愁を感じさせるメロディは、ヒーローが悪党を暗殺するといった趣旨のドラマで使われたものだ。
 さきの放送もあり、ガンマンたちは警戒する。そしてバリケードのガンマンが背後に気配を感じて振り返った。
 そこには大口径ガトリング砲を携行した小柄な少女、美空(gb1906)が戦意に目を輝かせている。
「一つ、人の生き血をすすり。二つ不埒なガンスリンガーごっこ。三つ、みんなの迷惑顧みず。わが道を言くは‥‥‥‥」
 ガトリングガンが構えられ、ガンマンは銃口ににらみ付けられた形になる。
「のわっ」とガンマンの腕が跳ね上がるその直前、大口径ガトリング砲の引き金は引かれ、束ねられた銃身が回転、弾丸がばらまける。
「今川焼きの仇め!」と美空の叫びが発射音にかき消される。
 ガンマンはペイント弾の雨を受け、真っ赤になりながら後退するが、バリケードが背後にあるのでできず、しかし弾丸の衝撃で背中からバリケードに突っ込んで転倒する。真っ赤に染め上げられたガンマンは崩れたバリケードに飲み込まれてきえた。
 この騒ぎにバリケードの片側で戦っていたガンマンが一旦離脱を図る。
 だが、その前に影がひらりと現れる!
「マスクド・ヨグ、参上」
 ナイトゴールドマスクとスター・カプロイアという格好のヨグ=ニグラス(gb1949)がガンマンの前に立ちふさがる。
 ガンマンはにらみ付ける。
「奇矯な奴、押し通る!」
 マスクド・ヨグとガンマンの腕が同時に跳ね上がり、発砲音と同時にガンマンだけが倒れた。
 マスクド・ヨグはガンマンに銃を向けていった。
「プリンシェイクの仇、とらせてもらいましたよ」
 といった感じで生徒会執行部から依頼を受けた能力者はガンマンたちへの排除に動き出していた。
 学園の別の場所、校舎隅の倉庫では姫咲 翼(gb2014)がこのゲームの企画者の胸ぐらをつかんでいた。
 ゲームの企画者から情報を訊きだしたのだが、いささか翼はエキサイトし過ぎてしまsった。
「もうその当たりでよしてやりましょう、いまは」といって真上銀斗(gb8516)は首を振った。
「こんなゲームで人を守れるんなら、俺は此処にはいねぇよ」
 翼はそう吐き捨てて企画者を離した。
 風雪 時雨(gb3678)がいった。
「自分たちもそろそろ攻勢に移りましょう。執行部から宣戦布告の放送も流れたことですし」
 そういわれて夜刀(gb9204)が歯を剥いた。
「宣戦布告? あれは講義の時間を知らせるチャイムみたいなものさ。連中が殺し合いをなめているってことを骨身にわからせてやる」
 風間 千草(gc0114)もまたうなずいた。
「宣戦布告でもチャイムでもどっちでもいいけど、あのどうしょうもないガキどもにはキッツイお仕置きをしてあげなくちゃ」
 そんな会話を聞きながらブロンズ(gb9972)は苦笑する。
(「俺もガキの頃はこんなことして遊んで、罰を食ったのかな。思い出せないや」)
 美空の大口径ガトリング砲の連射音がどこからか響き、マスクド・ヨグから敵発見の連絡が入る。能力者は悪さするガキどもに鉄槌を喰らわすためその場をあとにした。

●02
 執行部委員会による能力者の投入という事態に対して争い合っていたガンマンたちは一旦停戦して執行部委員会からの刺客を共同で撃破することにしたが‥‥‥‥。
「ガトリング砲にどうやって拳銃で対抗しろってんだ!」
 校舎のガンマンたちは美空の圧倒的な弾幕に対して逃亡を図る。もっともすでに他の仲間と連絡をとっており、自分を追ってくる美空の背後を仲間が襲撃を仕掛ける手はずになっていた。
 大口径ガトリング砲を抱えて突っ走る美空が空き教室の前を通ると、空き教室に潜伏していたガンマンが飛び出して、美空の背中に銃を向けるが、別の方向から銃声が上がった。
「手下一匹〜」とマスクド・ヨグがいましがた敵を屠った拳銃にキスした。
 そのとき廊下の角を曲がって現れた真上がマスクド・ヨグに向けて発砲し、ペイント弾がマスクド・ヨグの顔の側面を通過した。ほぼ同時にマスクド・ヨグは腕を真上に跳ね上げてその場で半回転、後方を撃った。
 いままさにマスクド・ヨグの背中に弾丸を叩き込もうとしていたガンマンは、マスクド・ヨグと真上からの弾丸を受けて倒れ込んだ。
 ヨグは真上にいった。
「これ、どうしましょうか。ボクはプリンが無事ならいいんですが‥‥‥‥」
 周囲には赤い塗料が飛散している。戦闘が始まって以来、校舎は猟奇殺人現場のような有様になっている。掃除の人が泣いて辞表を出しそうな有様だ。
 そうですねと真上はめがねを押し上げた。
「ガンマンたちにきっちり掃除させましょう。いやさせますよ。罰も与えねばなりませんから」

 一方そのころ校舎の別の場所ではペイント弾でなく銃弾が一方的に発射されていた。
「あんた達、銃撃戦を舐めんじゃないよ」
 ヘヴィガンナーの千草はSMG「スコール」によるスキル<制圧射撃>を実行し、標的にされたガンマンたちが飛んでくる銃弾の雨に悲鳴をあげていた。
「これ以上させるかよ」と迂回して側面に回り込んだガンマンが千草に躍りかかる。
 その瞬間、千草は銃を捨ててイリアスを抜くと、振りかぶった。
 千草のイリアスの柄がガンマンの額を強打する。
 地面に叩きつけられた粘土玉のようにガンマンが崩れ落ちると、千草は射撃を再開する。
 ガンマンたちは再び悲鳴をあげるが、何人かはさっきの合間にこの場を離脱することに成功した。
 仲間の悲鳴を聞きながら逃げるガンマンは散開する。
 このうち2人のガンマンが校舎の中庭に飛び込んだ。物陰に隠れて周囲を探ると、2人に怪訝な視線が向けられる。
 2人のガンマンが視線を上げると、芝生でランチタイムを楽しんでいる数人の女子がおそるおそるといった様子でのぞき込んでいた。
 ガンマンたちと女の子たちがお互いに硬直していると、校舎3階からガラスの割れる音がして窓から塗料まみれのガンマンが降ってきた。
 肉が地面にぶつかる腹にこたえる音。
 そして昇降口から千草が現れる。
「逃げ足が遅い。それで訓練していたつもりとしたら、訓練効率が悪すぎる。あんたたち絶望的よ」
「う、うるさい!」
 ガンマンの1人が立ち上がり、女子の間に割って入り、1人を羽交い締めにすると、もう1人が右の銃でこの女子の目を狙い、左の銃で千草を狙った。
「そこの赤い女、銃を捨てろ。ペイント弾でもこの距離で眼球に当たったらどうなるか――――」
 その台詞は最後まで言い切れない。
 拘束されていた女子がガンマンに肘を打ち込んで離脱、そのまま投げ飛ばす。投げ飛ばされた先にいたのは千草に銃を向けたほうのガンマンがいて、ガンマン2人はもみ合って倒れた。
 ガンマン2人を投げ飛ばした女子は、いや、覚醒すると女性的な容姿になることを利用して罠を張っていた時雨は拳銃を抜くと発砲した。
 千草はガンマン2人に軽蔑の視線を向けたあと、時雨をまじまじと見た。
「怒らせるつもりはないのだけど、ほんとに女の子みたい。あとでちょっと触らせてくれない?」
 かわいいもの好きの千草に対して時雨はわずかに後ずさりをした。
「いやそれはもっと親しくなってからでないと。まあとにかくこの容姿を有効活用できてよかったです」

●03
 中庭での戦いに決着がついたころ、ガンマンは犠牲を出しながら戦場を校舎内部からその外へ移していた。
 校舎3階の夜刀は、落としたガンマンを一瞬だけ気にとめてから、屋上への階段を駆け上がる。
「上に逃げるってのはいささか戦略が甘いんじゃないか。上にいくほど逃げ場は減るぞ」
 夜刀は屋上への扉の脇に立つと、壁に身を隠したまま、扉を蹴った。
 扉が開かれた瞬間、無数のペイント弾が飛び出してくる。
「嘘、誰もいない!」というガンマンの声。
 ガンマンの攻撃が通り過ぎた瞬間、夜刀は入り口から銃だけ出して発砲する。
 ぐぐもったガンマンの声があがると、夜刀は屋上へ突入した。
 屋上には2人のガンマン、1人は腕を押さえて床に崩れ、残りは慌てた様子で銃を夜刀に銃を向けてくる。
「実力は口より腕で語るもんだろ? さっさと始めようぜ」
 夜刀から発せられる威圧感にやられたのかガンマンの1人が逃げる。どこへ? 別の施設の屋上に飛び移るつもりのようだ。
 夜刀は倒したガンマンとすれ違いざまに銃を奪って追跡する。2丁拳銃になる。
 校舎と校舎のあいだの空間は広くて、身体能力に優れた能力者でもためらう程度の距離があったが、ガンマンは飛び越えてみせた。
 そして夜刀も加速して飛び越えようとしたが、先行しているガンマンが不意に反転した。
 ガンマンは、跳躍の動きに入った夜刀へ銃を向けて引き金を引いた。
 発砲音。
 ほぼ同時にガンマンの手から拳銃がはね飛ばされる。
「そうだよな。撃つならあのタイミングしかない。跳躍する直前とそれをしている最中は無防備だからな。おまえの意図はわかっていたさ」 
 屋上のへりに立つ夜刀は右手の拳銃でガンマンの手をとっさに撃ったのだった。そしてガンマンに向かっていう。
「これでも銃は専門外なんだがね‥‥ん? 悔しいか?」
 夜刀は左の拳銃でガンマンの心臓の部位を照準する。さっきの右の失敗を考慮に入れての照準だ。
 発砲音。
 ガンマンが倒れ伏した。
 一方そのころ、ガンマンたちは校舎から追い出され、各種施設の密集した地域に誘導されていた。そこは端的にいってコンクリートとパイプと機器のジャングルともいうべき戦闘には困難な環境だった。
 仲間とはぐれてしまったガンマンの1人が心細そうな様子で走っているのだが、横から飛び出してきた影にからみつかれ、地面にねじ伏せられた。
 影ことブロンズは相手の銃を奪うと、発砲して、敗北の証を刻みつけてやった。
「武器がなければ何もできないよな?」
 ブロンズはそう独白すると、失神したガンマンを拘束するのだが、そこに銃声。頭のわきでペイント弾が弾けた。
「ここにいたか!」
「仲間の仇、始末してやる!」
 ガンマンたちの剣幕にやれやれとブロンズは苦笑すると、倒した相手を盾にして施設の奥のほうへ逃げる。
 ガンマンたちは追い詰められ、冷静さを失っているらしく、ブロンズの抱えたガンマンに赤い点がどんどん刻まれる。
 ガンマンは発砲しながら追いかけるが、ブロンズは反転しつつ倒した相手を投げつけると、ガンマンは動揺した。この隙を利用してブロンズは距離を詰めると、超接近戦を挑み、蹴りで相手の拳銃を破壊してみせた。
「ガンマンごっこが通用しないのは理解できたかな?」
 拳銃を破壊され、蹴り倒されたガンマンは唸った。完膚無きまでにやられて恥を感じているようだった。
 だが、そこに声が響いた。
 ブロンズが見回すと、左右からガンマンに挟まれていた。
「手を挙げろとはいわないのか?」
「ここまで仲間をやられてそんなことをいえるか」とガンマン。
 銃口がブロンズをにらみ付けるが、そのとき上から声が響いた。
「仲間をやられて怒るならもっと腕を上げるべきだな」
 翼の声。ほぼ同時にペイント弾が降ってきてガンマンは倒れた。
「大丈夫か」と翼の気遣う声。ブロンズは見上げるが、逆光で相手の顔は見えない。しかし翼は撃破数を数えていたらしく、敵総数を倒したといった。
 ここにガンマンのゲームは終わりを迎えた。

●04
 ガンマンたちは全員捕らえられ、罰として校舎の掃除など様々な活動に使役されることになった。
 そのひとつとしてヨグの提案によるプリン作りがあり、この依頼に参加した能力者はガンマンの奉仕活動を鑑賞しつつ、プリンを賞味することになった。
 ブロンズは窓を拭いているガンマンを見ながら、 
「いいねえ、今のうちだけだよこんなこと出来るのさ」
「あたしにもあんな時期があった‥‥‥‥かな」と千草が相づちを打つ。
 甘いもの好きな翼は会話に頓着せずにプリンの空容器の塔を作っている。
 ところで、と時雨が真上に訊く。
「ガンマンの人数が足りないようですが」
「ああ。夜刀さんが芸者のバイトにしたとかで。きっと今頃上手く行かなくて『「色気が足りない!笑顔が暗い!しでかした分はキッチリ弁償してもらうから覚悟しなっ!! 』みたいな感じで厳しく指導していることでしょう」
 真上のまねがそれらしくて皆が笑う。笑い声が空に吸い込まれて消えた。