タイトル:【北伐】敵増援、撃破マスター:沼波 連

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/18 22:29

●オープニング本文


 UPCは遼東半島を勢力下に収め、瀋陽のバグア拠点そして雷公石の発射施設へ王手をかけたが、グレプカからの超遠距離攻撃によって部隊を散開させなくてはならず、攻略の手を出しあぐねている。
 瀋陽からみて東北の方角に位置するハルビンのバグア拠点から、この隙をつくかのように、瀋陽へワーム、キメラその他の部隊が増援として送られつつあった。
 UPCとて茫然としているわけではない。ハルビンからの敵増援は予測済みであり、一部の部隊は散開していることを利用して敵増援の索敵を行っていた。
 さて吉林市(瀋陽からみて東北にある)周辺の山林の広がる地帯でUPCの歩兵部隊が息を殺していた。
 カモフラージュで周辺の地形に紛れながら見上げる空では、ヘルメットワームが低空飛行している。ヘルメットワームの腹に木の上のほうにある枝がこすれそうだ。
 さらに複数のゴーレムが木々を押し倒しながら進んでいる。
 ヘルメットワームもゴーレムも進む方向は瀋陽だ。吉林市のバグア拠点からの増援がUPCへの露見を恐れて山林部を進んでいるのだった。
 UPCの歩兵部隊は敵増援がやり過ごすと、この地域へのKVの派遣を上層部へ要請した。

●参加者一覧

熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
九条・運(ga4694
18歳・♂・BM
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
エルファブラ・A・A(gb3451
17歳・♀・ER
五十嵐 八九十(gb7911
26歳・♂・PN

●リプレイ本文

●01
 UPCの監視の目をすり抜けるべくバグア部隊が山間部を進む。
 ゴーレムの先導をしていたヘルメットワームは突然、降下すると、僚機に動きを止めるように指示を飛ばした。
 重なり合う樹木のなかに隠れたバグア部隊。そこに甲高い音が降ってくる。2機のKVのエンジン音だ。
 それは乾 幸香(ga8460)のイビルアイズとエルファブラ・A・A(gb3451)の骸龍。
「敵はあの辺りか」とエルファブラはコクピットの中でつぶやいた。
 機上からは一見したところ敵影は見えない。だが、移動した痕跡はあきらかだ。バグア部隊とて慎重に移動したのだろうが、やはり図体が大きすぎて無理がある。
「帰投しましょう」と幸香がイビルアイズの翼を振るようにしてエルファブラに合図を送った。「こちらも待ち伏せのポイントを発見できました。敵の予想進路の先によい場所があります」
 2機は僚機と合流すべく、いったん、帰投する。

●02
「配置完了さてと、上手く行けばいいんだけど」
 柿原ミズキ(ga9347)はフェニックスを周囲のもので隠しながらいった。
 6機のKVはバグア部隊を待ち伏せする。辺りには大小の岩が転がっており、樹木が生い茂っている。KVの西側には壁のように垂直な崖があるのだが、その表面は植生の上からみても歪だ。
 九条・運(ga4694)がいった。
「ついてんな。たぶんこの辺り山崩れかなんかでできた地形だぜ。それで岩とかころがってる」
 九条機はワイバーンで、身を伏せて岩や樹木で身を隠しているのだが、その姿は獲物を待ち伏せするオオカミのようだ。
「なるほど。バグアの連中がここを進路に選んだわけがわかったよ」とミズキ。「KVが隠れられる地形ならゴーレムが通ってもまあ、わからないだろうね」
「都合良く通ろうとするから待ち伏せされるのです」と熊谷真帆(ga3826)が口を開く。「こそこそ隠れる悪い子は摘発するです!」
「いったいなにを摘発するのだろうか、汝はどうおもう?」とエルファブラは幸香に尋ねた。
「さあ、わかりません」と幸香の返事。負傷を押しての出撃だからか、声にいささか元気がない。「私が知っているのは、先導役のヘルメットワームを火力で圧倒したあと、連携しつつ、残ったゴーレムを撃破することです」
「それだけわかっていれば十分であろうな」とエルファブラはうなずいた。「‥‥汝、あまり無理はするなよ」
「‥‥負担をかけることになってすいません。あたしも自分のできる範囲でがんばりますから」
「戦いは一人で戦するものじゃない。誰かに頼ってもいいんだ。気にするな」と五十嵐 八九十(gb7911)が気遣った。
 待ち伏せするKVを知っているのか、知らないのか、バグア部隊が近づいてくる。

●03
 ヘルメットワームは5機のゴーレムを先導しながら低空飛行する。パイロットがマップを参照しながら僚機にいっった。
「この辺りは岩が多いらしい。身を隠すには好都合だが、いささか移動がしづらい。‥‥転ぶなよ?」
「転んでたまるか。あんたこそ、木のさきっちょに引っかかるなよ?」
「ヘルメットワームは風船か!? 腹に枝葉をこすらせても、んなことあってたまるか」
 いままで敵と遭遇しなかったせいか、バグア部隊は互いに軽口を叩き合っている。
「行軍中、ずっとぷかぷか浮いているからな、ヘルメットワームが風船に見えてくるんだよ」
 そういってゴーレムのパイロットは、コクピットの中で、手を銃の形にすると、ばんっと撃ってみせた。
 その瞬間、火線が噴火するように出現して、低空飛行していたヘルメットワームを飲み込んだ。
 銃弾が、レーザーが地上から降る雨のようにヘルメットワームに降り注ぎ、フォースフィールドを貫き、装甲を削り、機体を粉々にしていく。
 ヘルメットワームは爆発、そのパイロットは断末魔を上げる余地すらなかった。
「奇襲!? こんなところでか!?」とゴーレムパイロットの悲鳴。
 ゴーレム各機は応戦すべく兵装を展開するが‥‥‥‥。
 タイミングを合わせて幸香がイビルアイズの機体特殊能力を使用する。
「‥‥対バグアロックオンキャンセラー、起動。そちらの攻撃はこちらの打って出るチャンスです」
 ゴーレムはパニックに陥った様子で火砲を放つが、イビルアイズから放たれるジャミングのせいで、照準に支障をきたしたらしく、砲弾は明後日の方向に飛んでいく。
 真帆の雷電は岩のように身を潜めていたが、火砲を準備しながら、機体を起こした。
「二挺ガンギャル真帆ちゃん撃つです!」
 雷電はヘビーガトリング砲と3.2cm高分子レーザー砲を交互に連射する。
「隠れたってあたしには見えますよ。あ、そこの林が動いた!」
 真帆は怪しげな動きをした林にレーザーを撃ち込んだ。
 レーザーは林の間を縫うように飛び、木々とすれ違った瞬間にそれらを炎上させつつ、ゴーレムに命中した。ゴーレムから応射が来る。
 真帆機はゴーレムの攻撃を受け止める。
「そんなものは効きませんよ!」と真帆はさらに正確な一撃を繰り出してゴーレムを黙らせた。どうやら敵の射撃から位置を推測させたらしい。
 真帆機の展開する弾幕が周囲の木々をなぎ払う。
 そんな中を五十嵐とミズキが接近戦を挑むべく、バグア部隊に近接する。
「犠牲を払ってグレプカを落とし、瀋陽の城門を開いた! ここで横槍は入れさせない! 確実にここで倒す! お前らの行き先は瀋陽ではなく地獄の果てだッ!!」
 五十嵐のアヌビスが双機刀「臥竜鳳雛」を逆手に構えながら疾駆する。
 ミズキ機もまたG−M1マシンガン による牽制射撃を行いながらゴーレムとの距離を詰めていく。
 ミズキの展開する弾幕が攻撃に転じようとするゴーレムの動きを巧みに押さえ込む。
「戦いはまだ続いているんだ。ここで誰一人欠けるわけにはいかない。死んでいった人たちのためにも!」
 ミズキ機のレッグドリルが回転を始める。たまたまふれた木々が粉みじんに吹き飛んだ。
「てめえ」と九条、近接戦闘を挑む僚機に火砲を向けるゴーレムを見据える。「仲間に汚ねえ銃、向けてんじゃねえよ」
 九条はワイバーンのスナイパーライフルの照準を定めるとトリガーを引いたが、そのときには照準に納めたゴーレムは移動してしまっている。どうやら先を読まれたようだ。
 しかし九条はにやりと笑う。
「俺のほうが上手だ。本命はおまえじゃない」
 九条の放った砲弾は、狙われたかと思われたゴーレムの後方にいた別のゴーレムに命中した。撃たれたゴーレムは準備していた火砲を取り落としている。
「一撃で敵の連携を崩したの!? やるね!」とミズキは九条への賞賛をもらしながらフェニックスを小さく跳躍させる。
 跳んだ先にはさきほど九条の照準から逃げたほうのゴーレムがいた。
 その鼻先にミズキ機のレッグドリルが命中、火花を散らしながらドリルの先端部が敵機の内部に沈み込んでいく。
 忍者じみた低姿勢で疾駆する五十嵐機に対してゴーレムは火砲を向ける。だが、アヌビスのSESエンジンが唸りをあげた。
「俺からの奢りだ、たらふく飲んで酔い潰れろ!!」
 アヌビスからラージフレア・鬼火が投射される。
 照準装置を乱されたらしくゴーレムは火砲を捨てると、手斧の形状をした近接兵器を構えた。
「遅い!」
 五十嵐機の両腕が跳ね上がったと同時に、ゴーレムの両腕が地面に落ちる。手斧を握った腕が茂みを押しつぶす。
「これで終わりだ!」
 アヌビスが両腕を交差させる。すると、ゴーレムは首から内部機構に関する何らかの液体を噴出しながら卒倒した。
 だが、このゴーレムの背後から火砲を構え、すでに照準を終えたらしい、ゴーレムが現れた。砲口周辺に粒子が集まる。
 そのとき、
「伏せるがいい」とエルファブラの声。
 五十嵐は機体を伏せた。その上を骸龍から放たれた47mm対空機関砲「ツングースカ」の火線が通り過ぎていく。
 火線はゴーレムの火砲をへし折り、胸部の装甲に連続命中した。金属の雨のような着弾音が止むと、胸の肉だけえぐりとられた死体のようになったゴーレムがゆっくりと倒れ、地響きが鳴った
「電子戦機と侮るでない。火力もそれなりにあるのでな」
「それなり、か。十分じゃないか」
 戦闘音が響く中、幸香が皆にいう。
「皆さん、敵はもはや少数です。撃破まであと少しです!」
 ほどなくして戦闘は終了した。

●04
 戦闘は終了して6機のKVは帰還するのだが、着陸する場所がなかったように離陸する場所もなく、6機は陸戦形態で山間部を移動する。
 やはり空を行くのとは違って時間がかかってしまい、夕日は山の端を赤く焼きながら落ち、空は濃い菫色に染まった。海のように深い夜空で、その一面に星が散っていて、能力者は一時のあいだ圧倒されたようだった。
 空に一筋の流星が走り、真帆がいった。
「あ、願い事をしなくてはいけませんね。‥‥ええとすてきなホームベーカリーが手に入りますように」
「そういうお願いなんだ、ほほえましいな」とミズキが目尻を下げた。
 九条が口を挟んだ。
「なんだか複雑な気分だぜ。どっかの国だか地方では、流星って死者の魂なんだろう?」
 そんな会話がされるなか、また流星が空にラインを引いた。と、地上から打ち上げられたような流星が現れて、ほかの流星を追い始めた。
「あれはヘルメットワームの類とKVらしいな」とエルファブラがいった。
 幾多の命が失われても、いまだ戦いは終わらない。