タイトル:【JTFM】奇襲部隊、襲来マスター:沼波 連

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/28 00:26

●オープニング本文


●ジャングル・ザ・フロントミッション
 2009年10月
 膠着した南米戦線に一つの変化が訪れた。
 独立戦争時に南米で身柄を拘束したルイス・モントーヤが自白をしバグアの基地や戦力の情報が明らかになったのである。
 UPC南中央軍のジャンゴ・コルテス大佐はこれを元にコロンビアへの先手を撃つことで流れを変えようと動き出した。
 作戦コードは【JTFM=ジャングル・ザ・フロントミッション】。
 泥臭いジャングルに傭兵達が集う‥‥。

●新しい状況を求めて
 南米での人類とバグアの戦いは激化を辿っている。
 ボゴタ基地を陥落させたUPCはカリ基地に対して戦力を集中させる。
 これに対して南米バグアはカリ基地防衛のため、カリ基地より北上したところに位置するメデシン基地から増援を派遣したが、これこそがUPCの策略だった。
 メデシン基地は山間部にあるため攻めにくい。地形の利はバグアの側にある。ために何らかの方法でメデシン基地の戦力を減らす必要があった。
 この方法としてUPCはカリ基地への攻撃を行い、メデシン基地からの増援を発生させ、攻めやすいところに出てきたメデシン基地の戦力を撃破することにした。
 もっともメデシン基地のバグアとてUPCのこの策略には気がついている。
 バグア兵の指揮官はブリーフィングルームでパイロットたちにいった。
「現在、カリ基地はUPCから攻勢を受けている。このためメデシン基地から増援を派遣するが、これが罠の可能性が大きい。UPCの狙いは増援を撃破することでこの基地の戦力を削るつもりなのだ」
 パイロットの一人が手をあげた。
「でしたら、なぜ増援を派遣するのですか。それも、貴重な航空戦力を」
「今回動員されたUPCの戦力は巨大だ。放置すれば、カリ基地は陥落する。無視はできない」
「打って出るわけにも退くわけにもいかないということですね。では、我々が派遣される意図はいったいなんですか」
「奇襲だ。奇襲により敵を混乱させ、新しい状況が現れるためのきっかけをつくる」
 指揮官の意図を理解したパイロットは敬礼をする。ほかの部下もそれにならった。

 一方その頃、南米のUPC基地では能力者がブリーフィングルームに集められていた。
 UPCの指揮官はみなにいった。
「バグアが奇襲を仕掛けてくるおそれがある。いまやっているカリ基地への攻勢の意味をバグアはほぼ間違いなく勘づいているだろう。としたらこの状況を変えるため、少数の戦力で大きな戦果を上げる戦い、奇襲を仕掛けてくるに違いない」
 そのとき、内線電話が鳴った。指揮官はそれを受けると、能力者へウインクした。
「さっそく敵のおでましだ。奇襲は予測済みだから、偵察部隊を出しておいたのだが、引っかかってくれたよ。さあ次は君たちの出番だ。奇襲を仕掛けてきた連中の不意を打ってやろう」

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
セレスタ・レネンティア(gb1731
23歳・♀・AA
翡焔・東雲(gb2615
19歳・♀・AA
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
天城・アリス(gb6830
10歳・♀・DF
ユウ・ナイトレイン(gb8963
19歳・♂・FC
ハシェル・セラフィス(gb9486
13歳・♀・SF

●リプレイ本文

●01
 6機のヘルメットワームが南米の空を飛翔する。攻撃と移動の性能を高めた中型機だ。その機首の遙か先にはUPCの戦線がバグア基地へ攻撃を仕掛けている。ヘルメットワームがこのまま進行すると、UPC戦線は背後から攻撃を受ける羽目になる。
 電子戦闘KV、イビルアイズに搭乗するアンジェラ・ディック(gb3967)はレーダーに映った敵影を見据えながらいう。
「コールサイン『Dame Angel』、誘い出された増援部隊を直ちに撃沈、カリ基地攻略に貢献すると同時にメデシン基地戦力を減退させるわよ」
 了解、と藤田あやこ(ga0204)がうなずく。
「中型6機とは豪勢な陣容ね。戦力を束ねて突破する積りね? 散らしてやるわ」
 天城・アリス(gb6830)が鈴の音を思わせる可愛らしい声でいった。
「敵機は攻撃や移動に特化した機種と予測されます。もしここを突破されたら戦線が蹂躙されてしまうでしょう。1機たりとも逃すわけにはいきません」
 作戦を確認しておこう、とユウ・ナイトレイン(gb8963)が口を挟んだ。
「把握してるぜ」と翡焔・東雲(gb2615)がこたえる。「出来るだけ足止めすれば良いんだよな。もちろん、足止めどころか帰す気もないんだけどな」
 ナイトレインは東雲のおおざっぱな表現にうなずいた。
「戦端が開いたら、バグア機をミサイルで圧倒する。そのあと各ロッテで敵機の機動を押さえ込みつつ、数を減らす」
 榊兵衛(ga0388)が言葉を継ぐ。
「数が減ったら形勢逆転だ。同数か数が勝っていれば押し切れるだろう」
 セレスタ・レネンティア(gb1731)が補足する。
「敵の戦力を削ぎつつ、時間を稼ぐ作戦です。いくら奇襲があっても間に合わなかった意味がありませんから」
 そのときアンジェラのイビルアイズとロッテを組んでいる、ハシェル・セラフィス(gb9486)が仲間の注意を喚起した。
「――――敵機の加速を確認、そろそろ戦闘開始だよ」
 ハシェルは搭乗機に小声で呼びかける、大規模作戦以外はKVで出撃するのは初めてだね‥‥‥‥今回は存分に動かしてあげるよ、ジーニアス。

●02
 バグア機のリーダーは前方に8機のKVを発見した。
「各機に告ぐ。前方の敵機は相手にするな、我々の目標はUPC戦線への奇襲だ。敵KVをすり抜ける」
 了解とそれぞれのパイロットが返事を返すと、6機の中型ヘルメットワームは加速する。戦闘機が増加燃料槽を頼りに思うさまアフターバーナーを噴かすときのように6機は大気の壁にごりごり穴を開けるような加速を実行する。
 だが、
「ナンバリング、開始。各機、標的を把握して」とアンジェラ。
 イビルアイズは6機のヘルメットワームをその邪眼に捕らえていた。
 いいながらアンジェラの手はコンソールを叩いている。バグアロックオンキャンセラーがスタンバイ状態になる。
 朱漆色の雷電に搭乗する榊が「アンジェラ、タイミングを任せたぞ」とK−02ミサイルを操作しながらいう。
 コクピットでアンジェラは自分のほうに迫ってくるヘルメットワーム6機を見据える。彼女の指がバグアロックオンキャンセラーにかかる。
「‥‥‥‥攻撃開始!」
 アンジェラ機からヘルメットワームの火器管制装置を惑わす重力波が放たれる。
「味方に奇襲を掛けさせる訳にはいかぬのでな。ここで貴様らには墜ちて貰う事としようか」
 イビルアイズが敵の反撃を削いだ瞬間、榊は自機のK−02小型ホーミングミサイルを発射した。これとほぼ同時にアンジェラ機もまたK−02小型ホーミングミサイルを発射する。
 雲霞のごときミサイルが噴射煙を空に描きながら6機のヘルメットワームに飛翔する。
 バグア機のパイロットは自分たちに飲み込もうとするミサイル群に息を呑んだり、目を剥いたり、歯を食い縛ったりしながら、ミサイル回避行動を開始する。
「俺らだってここで落とされるわけにはいかないんだよ!」とバグアの誰かの叫び。
 ヘルメットワームはダミーバルーンを狂ったように連射して無数のダミーを周囲にばらまく。あるヘルメットワームはレーザーを乱射してとりついてくるミサイルを切り払い、またあるヘルメットワームはプロトン砲をミサイル群に撃ち込んでミサイルの減った空域を火の輪をくぐりの動物のように通ろうとする。

●03
 ミサイル群にヘルメットワームは損傷を負わされつつも突破してみせた。コクピットでパイロットの誰かが快哉を叫んだ。
 ヘルメットワームがUPC戦線のある方向へ加速しようとする。しかしその前に2機のKVが上空から急降下してくる。
 セレスタがアリスに呼びかける。
「敵を目視で確認、攻撃に移りましょう。援護します」
「戦いは先読みが肝要、ミサイルだけで決着がつかないのは予測済みです」
 アリスのバイパーがロケット弾を連射する。
 ヘルメットワームの1体が慣性制御特有の奇妙な機動でアリスの攻撃を回避する。
 だが、セレスタの双眸はヘルメットワームの動きを確実に追っている。彼女の紫の瞳に照準機の光が映っている。UK−10AAMがロックオンを完了、と同時にその搭乗機シュテルンはPRMシステムで機体を最適化する。その様はまるで光の翼を生やした猛禽が獲物を定めたかのようだった。
 この場から逃れようとするヘルメットワームにロジーナとナイチンゲールが行く手をふさいだ。
「こっからさきはいかせねえよ」と東雲。
「‥‥というわけなんで、な」とナイトレイン。
 ナイトレインはトリガーを引いた。ナイチンゲールからガトリング砲弾やKVボウガンの矢がヘルメットワームに飛んだ。射程外から牽制攻撃だったが、ヘルメットワームは回避運動をとる。そこに東雲が警告を発する。
「ユウ、罠だ! 敵が位置取った! 回避運動!」
 東雲は敵機のプロトン砲口をみていたからか、攻撃の気配を察知できたらしい。
 ヘルメットワームの動きは回避と攻撃を兼ねたものだったらしく、ユウに向けてプロトン砲を撃ち下ろす。
 ナイトレインが残像を残して回避運動をとった瞬間、さっきまでいた空間がプロトン砲の閃光に焼かれた。
 警告音と損害警報の鳴り響くコクピットの中でナイトレインはつぶやく。
「お互い楽に勝たせてもらえないようだな。‥‥そして次は俺の番だ」
 ナイトレイン機はミサイルで応酬する。
 ヘルメットワームの侵攻を食い止める僚機にナイチンゲールは呼びかける。
「みんな、凌いでくれ。いま、数を減らしている!」

●04
「こちらジーニアス、攻撃を開始するよ!」
 ハシェルのヘルへブン250がヘルメットワームに飛びかかった。それは距離を詰める動きでなくて、すれ違いざまに射撃をする動きに近く、それよりも空中衝突を意図的にする動きに近いといえばさらに的確だった。
 まさか体当たりのような動きを行ってくるとはおもわなかったのか、ハシェル機に狙われたヘルメットワームは戦慄したかのように後退する。そこにハシェル機から追撃のレーザーが撃ち込まれて、ヘルメットワームは明らかに焦った動きをみせる。
「あははっ、せっかく来たんだから遊んで行ってよ! ‥‥‥‥ま、あの人たちをあんな目に会わせたバグアなんかに拒否させないけどね」
 ハシェルの声色はどこか笑っている。アドレナリンの臭いのする攻撃的な笑いだった。彼女は家族をバグアによって病院送りにされている。
 追撃のレーザーを被弾したヘルメットワームがプロトン砲を発射した。
 これを紙一重でハシェル機は回避した。
「あははははっ、遅い遅い! そんなんじゃ欠伸が出るね♪」
「あまり無理をしないで、ハシェル!」とアンジェラが警告を発する。
 その瞬間、ハシェル機は装甲の一部が赤熱、はじけ飛んだ。他のヘルメットワームがレーザーが攻撃を行ったのだ。
「きゃあっ! ‥‥‥‥やったなー!」
 ハシェルの戦意は被弾にもかかわらず高いが、機体は動きが鈍っている。
 アンジェラがハシェル機のフォローに入るが、そのまえにヘルメットワームがプロトン砲を発射した。
 プロトン砲の光の奔流がハシェル機を呑み込まない。代わりに榊機がプロトン砲の射線に機体をねじ入れている。
 ハシェルは見開いた目でコクピットから、攻撃を受け止めている榊の赤色の雷電を目撃する。プロトン砲は榊機の装甲を削り取り、灼熱の水滴や火花を周囲に散らす。
 雑音まじりの榊の無線。
「‥‥無‥‥事‥‥?‥‥‥‥藤田、隙ありだ!」
 藤田のアンジェリカが上空から剣のように急降下、SESハイエンサーが作動しているせいか、機体は光り輝く粒子に包まれている。
「いくわよ! 3.2cm高分子レーザー砲。スキル強化の成果を御見せ」
 藤田機とヘルメットワームがすれ違った瞬間、ヘルメットワームは真っ二つに断ち割れる。
「ハシェル、きみって人は元気良過ぎだわ」といいながら藤田は榊機と連携して他のヘルメットワームに攻撃をさらに命中させる。

●05
 数が減ると、敵全体の動きが鈍る。ヘルメットワームはKVの包囲網から逃れられない。そしてその網は徐々に縮まるのだった。
 セレスタはUK−10AAMを発射させると、ミサイルの後をおうように自機をヘルメットワームに向けて加速、そうしながらバルカンを連射する。
 逃れようとするヘルメットワーム、これをみてセレスタはつぶやいた。
「こちらはおとりですよ」
 ヘルメットワームは回避運動をしながらプロトン砲を放とうとしていたが、アリス機の行った狙撃でプロトン砲発振部をもぎおとされた。
 コクピットでアリスがつぶやく。
「‥‥逃がしませんよ」
 形勢不利をようやく理解したのか、ヘルメットワームは黒煙を上げながら離脱を図るが、その後尾にさきほどセレスタの放ったミサイルが命中した。
 だが、ヘルメットワームはミサイルの爆発から逃れるように加速。
「往生際が悪いですよ。ここで墜ちなさい」
 アリスがトリガーを引くと、ヘルメットワームの機体に大穴が生じた。
「まずい!」と榊が僚機に警告を発する。「敵機が撤退を始めたようだ」
 いいながら榊は雷電のブーストを使用としている。
 猛烈な加速をする榊機に追従するようにハシェル機がブーストの炎をなびかせて飛翔する。
「これはさっきの被弾のお返しだよ」
 ハシェルは逃げるヘルメットワームを照準に収め、トリガーを引いた。ショルダーキャノンの攻撃がヘルメットワームを撃ち落とす。
 それが最後の敵機だった。 
「戦域クリア、各機損傷はありませんか?」
 セレスタがいう。声にどことなく安堵の色があった。

●06
 目標を撃破したKVは基地に帰投する。
 KVの機上からは広大な土地を見下ろすことができるが、その一部が燃え立っている。UPCとバグアによる戦火だ。
 あの戦火の消えた先にも敵がまだ控えている。そしてこの南米からバグアを駆逐しても世界にはまだバグアがいて、それを駆逐しても宇宙にいて、戦いは続いていくのだった。