タイトル:【和の誘い】香マスター:音無奏

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/07 01:15

●オープニング本文


 クリーム色のカーテンが、そよぐ風に靡き、ふわりと浮き上がる。
 部屋の中は静かだ。部屋を埋め尽くす壁紙は、クリームに僅かなパステルピンクがストライプで混ざり、家具は深い木目調で統一されている。
 静かなのはこの部屋のせいでもあるのだろうか、本棚には隙間なく詰められた本、そう大きくないこの部屋の中、風に髪を揺らす人影があった。

 ノブを回す音が響き、ドアが開く。
 軍靴の硬い音を廊下に響かせ、部屋に入ってくるのは鶯色の軍服姿、薄い金色の髪を後頭部で纏めた彼女は部屋の人影を見つけ、一瞬怪訝そうな表情を漏らした。

「‥‥クレハか」
「御機嫌よう、クラウディア・オロール少尉」

 来客だった、少尉にとっての。勝手に部屋に入った事を咎める様子もなく、少尉は荷物を机上に下ろし、その“来客”へと向き直る。
 東洋人の小柄な少女だ、漆黒の髪は顎元で切り揃えられたおかっぱで、すっとした眉毛が芯の強さを窺わせる。
 纏う着物は紅色、きっちり着付けられたそれは非常に似合っているのだが、外を歩くのに適しているとは到底いえそうにない。
 相変わらずだな、そんな言葉を思考に浮かべ、用件を、そう少尉が促す。

「お仕事ですの、話を聞いてくださいます?」

 嫌だと言っても聞かないんだろうな――そんな事をぼんやり思いながら、少尉は頷いた。


 かくして、傭兵達が召集される事になる。少尉曰く『これは傭兵向けの仕事だ』だそうだが。
 依頼内容は護衛、護衛対象は依頼主であるクレハ嬢で、本人とその目的達成に対する物理的脅威を排除しろ、という内容。

 何をしにいくのか、と問えば、
「御香って存じております? それに使う香料の原料が材料切れを起こしてしまって、工場まで取りにいきますのよ」
 そう答えが返ってきた。どうやら材料を取りに工場を回るので、その最中護衛として同行してくれる人を探しているらしい。
 急な件につき人手が足りないので、手伝ってくれると尚嬉しい、というのがクレハ談。
 余分に取りにいく分、倉庫から原材料をを運ぶなどの手伝いも必要になるだろうと。

 尚、材料の輸送手段については車を回してくれるらしい。

「そうですわね、今回の報酬は正規料金しか出せませんが‥‥お土産として香をお一ついかが? 回ってる最中に言って下されれば、余分にとっておきますわ」

●参加者一覧

藤森 ミナ(ga0193
14歳・♂・ST
アイロン・ブラッドリィ(ga1067
30歳・♀・ER
門鞍将司(ga4266
29歳・♂・ER
レーゲン・シュナイダー(ga4458
25歳・♀・ST
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
神森 静(ga5165
25歳・♀・EL
鷺宮・涼香(ga8192
20歳・♀・DF
秘色(ga8202
28歳・♀・AA
蓮沼朱莉(ga8328
23歳・♀・DF
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
来栖 祐輝(ga8839
23歳・♂・GD
ねいと(ga9396
27歳・♂・DF

●リプレイ本文

 6月のある日、上午。そろそろ初夏といえるほどに天気は温まってきたが、控える梅雨のせいか、吹く風はひんやりと涼しい。
 土壌は潤い、瑞々しい緑を咲かせ、春の名残である花を色付かせている。
 晴れやかな空の下には三台の車。その車へと、雑談に花を咲かせながら向かっていく14人の男女がいた。

 車の傍にたどり着くと、一際小柄な和服の少女、クレハ・サザナミ(gz0077)が一同へと向き直り、和服の裾を揺らして一礼をする。
「改めて――皆様。本日は宜しくお願いします」
 日差しの眩しさに少し目を細め、幼さの残る顔がふんわりと笑んだ。この一行のうち、彼女だけは力持つ能力者ではない。今回の依頼はつまり――クレハの護衛。
 明確な敵がいる訳ではないものの、競合地帯付近で行動するのに護衛をつけない訳にもいかず――こうして能力者達が呼ばれている。
 話では道中の危険は心配しなくていいとの事。しかし赴く工場付近だけはその保障に当てはまらず、相談の結果、事前に脅威を排除するため、今回は先行警戒班が設置される事になった。
 故に用意される車両は二台。先行面子は三つの工場別に応じたローテーション、順番の指定はなかったため、最初は『果香』原料の工場へと赴き、最後に『薬香』を回る事がクレハの口によって伝えられる。
 クレハの礼に応じ、様々な挨拶を返してくる能力者達。

「ごきげんよう。私はアイロン・ブラッドリィと申します。よろしくお願いしますね」
 銀色の髪を細やかに揺らし、まずはアイロン・ブラッドリィ(ga1067)が礼を告げた。
 護衛任務とは言うが、一行に堅苦しい雰囲気は漂っていない。無論それは気を抜いている訳ではなく、和やかと称した方が相応しいだろう。
 原因は諸々ある、例えばクレハが依頼前に告げた『お土産』とか――。危険性は高くなく、人によっては社会見学という楽しみもついているとなると、気分が浮き上がるのも無理はなさそうだ。
 こういうギスギスしたご時世だからこそ、心を癒す香の効能は有り難いと、アイロンは淡く口元を綻ばせる。
 それに続くように、次はレーゲン・シュナイダー(ga4458)が声を上げた。
「サイエンティストのレーゲンです。お香選びは初めてなので、色々お勉強させて下さいです♪」
 よろしくお願いしますとはにかむ。『お土産』は今回の護衛中、工場での作業中に選ばれる事になっている、護衛任務ではあるのだが、襲撃は来るかどうかも判らないのだ。そちらが気になるのも無理はないだろう。
 興味深い仕事を貰い、逆に礼を申したいくらいだと秘色(ga8202)は語る。平素香原料工場など目にする事はないからと、よしなに願うのぞえと微笑んだ。
 藤森 ミナ(ga0193)が続けてクレハと一礼を交わし、ねいと(ga9396)、神森 静(ga5165)もまた周囲と礼を交わす。
 門鞍将司(ga4266)がゆったりと微笑みながら名乗りを上げ、傭兵であり、呉服屋の店主でもある自らの事を自己紹介した。
 蓮沼朱莉(ga8328)の握り締めた両手からは決意が溢れ出て、精一杯頑張るというその心意気が見て取れる。
 全員の挨拶が終わった頃、沈黙していた13人目――UPC軍の正式軍服を纏う女性が口を開いた。
「‥‥挨拶は終わったな? 運転手は用意したから先行する薬香組は先に出ろ、ねいとは自力で運転できるようだが‥‥」
 他の連中が出来ないからまぁ乗ってくれ、そう彼女から苦笑が漏れる。
「一応名乗っておく、クラウディア・オロール少尉だ、本隊の運転を担当する。先行組の30分後に私達が出よう、立ち話もなんだから、全員車に乗ってくれ」
 薬香組、アヤカ(ga4624)、秘色、将司、それと来栖 祐輝(ga8839)は先行用の通常車両に乗り込み、残る10人は本隊のマイクロバスへと乗車していく。
 先行組、UPC軍服を着用した運転手から全員乗車完了のサインが入り、それに応答する少尉のサインが返されたのち、先行組は一足先に工場へと出発していった。

 後部座席を振り向けば、能力者達は既に雑談を再開している。
 百合を飾った一輪挿しを手に、運転席の近くに座った鷺宮・涼香(ga8192)が少尉へと声をかけた。
「コップ立て‥‥少々拝借しても宜しいかしら?」
 やや怪訝そうな表情、視線が手にするものへと向けられ、それを花瓶だと認識した少尉が頷きを返す。
 ほのかに漂う生花の香り、淡くも瑞々しい香りが嗅覚をくすぐる。飾る百合は涼香が自家から選んで摘み取ってきたもの、気に入って貰えるかどうかとクレハの方を振り向けば、口元で指先を合わせたクレハの笑顔が目に入った。
 とても素敵と、彼女は嬉しさに溢れた言葉を零す。花が気に入ったのか、それとも香りが気に入ったのかは判らないが、喜んで貰えたのは確かのようだ。
 少尉に気づいたレグが、改めて声をかけてきた。
「少尉さん、先日はお世話になりました」
 ぺこり、と一礼。少尉さんもお香、お好きですか? そんな問いかけが投げられる。
「‥‥そうだな、クレハが持ってくる香はいい」
 やや思案後の返答。たなびく香りは古風な執務室に良く合うと、安らぎを好む少尉は答えた。
 交わす雑談でいつの間にか時間は過ぎ、出発するぞと合図する少尉への返答もそこそこに、会話を紡ぎ続ける。
「クレハさん、もしよければ私に合いそうなものを選んでくださいませんか? 直感で構いませんので」
 興味はあるが、使用した経験がないために選んで欲しいと頼む朱莉に、クレハは頷いて楽しそうに笑う。
「では次の工場で、‥‥ふふ、蓮沼様の分は一瞬で決めましたのよ」
 何を選んだのかと問うても答えは返らない、まだ秘密、香を前にしてから教えるとクレハの笑みは絶えない。
「私には、どんなお香が合うと思う?」
 自分もお願いしたいと頼む涼香に、クレハはまた頷き、記憶を手繰り寄せるように暫し沈黙にふける。
「イメージは出来ているのですが‥‥はい、工場でお話しますね、『花香』で選ぼうと思います」
 やはり道中で話してくれるつもりはないらしい。言葉だけを先に聞くよりは、香りとセットで喜ばせたいと言う事だろうか。
「次に向う工場で一番お勧めのお香ってどんなものでしょう?」
 続けて問うレグの言葉には興味が溢れ出ている、日本の文化に興味があるらしい。
「そうですね、私はレモンのお香が好きなのですが‥‥レグ様に勧めるならパイナップルとピーチのミックスでしょうか」
 イメージするのは桃色を混ぜたオレンジ、甘いのにしつこくなく、元気の出る爽やかな甘さが似合うとクレハは語る。
「御香ですか? また雅な趣味ですねえ‥‥最近は、癒し系で流行ってますけど‥‥」
 盛り上がりを微笑みながら見つつ、静はそう呟く。
 停車するぞ、そう声が運転席から飛ぶ。いつの間にか、一つ目の工場が目の前に近づいていた。

 到着した一行を、先行していた薬香班の面子が出迎える。
 武器に手こそ添えているものの、周辺にざわめく気配もなく、見える範囲での危険はない模様。
 先に車を降りたミナがクレハの足元、裾さばきを気をかけつつ、大丈夫ですよ、と声をかけた。
 探査の眼を持つ祐輝が一帯の安全を保障する元、工場へと移動。歩きながらクレハが施設の配置を説明していく。
「今向かうのが工場、隣は接客室とか‥‥裏手は倉庫ですのよ」
 製造所などそんなものだが、工場内部は無骨だ。衛生と秩序は厳格に維持されているらしく、粛々と進む作業の様子が見て取れた。
 事前に手回しを行っていたのか、クレハがさくっと工場長と話をつけ、行動許可を取得する。
 機械が動作しているエリアには入らず、調達分を先に済ませてしまおうと――比較的整理された一区から荷物を運び出していく。
 壁際に展示されているのは完成品の香だろうか、様々な店舗のものが並んでいるが、お土産は好きに選んでいいという。
 果香班の面子は暫しそれに見入っていたが、指示を伝え終わった頃を見計らい、ミナがクレハに声をかけた。
「あの、俺にあいそうな香‥‥選んでもらえますか?」
 お香の香りを嗅ぐと落ち着くけど、切なくなるんだとミナは語る。
「魂の記憶とか‥‥ね」
 そう呟き、なんとなくそう思ったのだと恥ずかしげに笑う。自分はどういう香りに見えるのかと彼が尋ねると、クレハは穏やかに言葉を紡いだ。
「ミナ様は‥‥水の香り、ですわね。切なく心を揺らす波紋‥‥混ざってくすぐる薄紅色の花香、ここにはありませんが、ミナ様には『花香』がお似合いだと思いますわ」
 後でお渡ししますわね、そうクレハは淡く微笑む。
 自分はどうだろうかと、はやる心を抑え、朱莉が声をかけた。そんな彼女にクレハはまた笑い、
「甘酸っぱく、少し大人びたラズベリー‥‥」
 深すぎる事なく、少し背伸びしながらも瑞々しい果実。桃色を少し混ぜた真紅、ささやかなワインレッドが似合うと彼女は言う。
 香を選んで欲しいとねいとが少尉に声をかければ、少しの沈黙を挟み、頷いて見せ、
「‥‥『薬香』で選ぼう、その時まで待て」
 と短く告げる。
 香りが気に入ったのか、アヤカは土産を果香にすると声をあげ、アイロンがある一角で足を止め、これがクレハの好きなレモンかと声をかけた。
「ええ、緑がとても似合うお香です、緑が綺麗な夏に焚くと素敵ですよ」
 少しばかり香りに感覚を向け、私のサロンでも薫いておきたいものですね。そう微笑んで相槌を返すアイロンに、クレハは「これをお土産にします?」と問いかける。
「‥‥おや、戴けるなら是非に」
 そう言うアイロンにクレハは頷き、お茶にもきっと合いますよと締めくくった。
 時間が経ち、次の工場へと花香班は先行し、お土産を選び終わった果香班も加わり、荷物は次々と運ばれていく。
 男手として頑張らなくては、そうねいとは張り切るも‥‥母は体力勝負だと語る秘色、幼い外見のアヤカは割と力持ち。
 アイロンの髪が、覚醒状態によりゆったりと揺れ、その傍でミナが細かい作業を行っていく。
「‥‥これで全部ですね。お疲れ様です、皆様。車に移動しましょう」
 輸送車に積む分、倉庫から運び出す分全て搬送完了。状況の確認を行っていたクレハが声を上げた。

 そして再び車内。香の話題で盛り上がるのは、面子が変わっても相変わらず。
「いわゆる、アロマテラピーというやつでしょうか? 日本の文化というのは興味深いですね」
 そう問いかけるアイロンに、クレハが香道は日本の芸道の一つだと語る。
「アロマテラピーに比べて、香道は“遊び”というのが強いんですのよ。‥‥結構好きなんです」
 ミナがさり気なく差し出したミネラルウォーターのコップを受け取りながら、そういって笑い、深くは語るまいと唇に人差し指を当てた。
「クレハは如何様な香が好きかえ?」
 そう問う秘色に、クレハは少し考え込み。
「普段は少し古い荘厳的な香りが好きなんですけど、偶には甘めのお香も炊きたくなりますの。‥‥フルーツとか」
 そういって恥ずかしげにまた笑う、お嬢様らしくはないでしょうか、と。
 秘色は自分が香を焚くと、防虫剤だの抹香だのと、息子によく言われたのだと漏らす。幼子には甘い香が良かったのだろうかと問えば、どうなのでしょうか、とクレハが首をかしげ。
「‥‥も、物によっては慣れないときついですよね」
 心当たりがあるのか、少し後ろめたそうに取り繕う笑みを漏らした。
 語り合い、並んで座るクレハと秘色を目に、涼香が目を細める。
 幼さを残しながらも気品を纏うクレハと、妙齢女性の色香を醸す秘色。優雅に着物を着こなす二人に、つい羨望と憧れの眼差しを向けてしまう。

 二回目以降の作業は慣れたもので、作業は淀みなく進んでいく。
 違うというならやはりお土産選びの面子だけで、その辺も次々と決まっていった。

 まずは花香組。
「いろいろ種類があるわね? これは、迷いそうだわ」
 呟く静は桜の香を前に思案にふける、どうやら桜で決定のようだが‥‥人気のある種類だけに、割と種類は多い。
 涼香の香を選ぼうと、クレハは並ぶ色とりどりの花を目にする、どれが似合うかと迷って‥‥『マーガレット』を手にした。
 野に咲く白花、明るい色彩にすっきりとした爽やかな香り、奔放で飾らない姿が美しく、涼香に似合うとクレハは語る。
「御香についてはよく分かりませんから、クレハさん、アドバイス下さいね」
 そう伺う乾 幸香(ga8460)に、選ばれた香りは『スイートピー』。
「とても素敵な‥‥優しい香りがするんですよ」
 ほのかに漂う甘い香りは人を和やかな気分で包む、その雰囲気、可憐に咲く小花が幸香と結びついたとの事。『門出』『思い出』の花言葉も素敵ではありませんか? と。
「クレハさんから見て、私に合いそうなお香ってどんなものでしょうか?」
 男女問わず楽しめる花香を選んで欲しいというレグに、クレハが選んだ花は『ガーベラ』。
 少女の甘さを髣髴とさせる、夢を見るようなフルーティな香り、清らかに漂う花香はレグの要望に応えられるのではないのかと、彼女ははにかみながら言う。

 次は薬香組。秘色と将司は事前に希望を決めていたのか、土産の選択が早い。
「心が安らぐような‥‥そんな香りがいい‥‥」
 そういう祐輝には『時雨』と名づけられた香が渡された。名前持つ香りではなく、雨に塗れる秋をイメージした香らしい。
 雨の音って安らぎませんか? とクレハは言う。少し寂しげだが、優しく包むような雨音、雨上がりの清らかな空気が好きなのだと。
 少尉がねいとに選んだのは典雅な『茶の香』、
 花とはまた違う、深みのある落ち着いた独特な芳香、精神を安らがせる古風な香を言葉少なに差し出した。

 ―――そして、最後の工場での作業が終了し、またラストホープへと帰ってくる。
 一行の間に漂うのは無事終了した安堵か、或いは名残惜しさだろうか?
「良い香りがいっぱいでした」
 晴れやかに笑むミナは最後もクレハが疲れてないかどうか気遣い、素敵な時間をありがとうございますと礼を述べる。
 涼香もまた同行者に一礼をし、レグが「お香、大事に使わせて頂きますね」と述べればクレハは柔らかに微笑んだ。
「また何かあったら、気軽に声を掛けて下さいね。きっとお手伝いに来ますから」
 幸香の再会を約束する言葉には「ぜひ」という力強い言葉で答え、
「クレハさん、とても良い経験ができました。ぜひ、またお会いしたいです」
 という朱莉の言葉には「喜んで」と頷く。
 そんな一同を見ながら、静が優しげに笑んだ。依頼がなくとも、ラスト・ホープにいるもの同士なのだ、また顔を合わせる機会もあるだろう、そう言いたさげに。
(「ふふ、みんなより、仲良くなったみたいね? また、こういう事あると良いわね?」)
 考える言葉は口に出ない。だが、あるだろう、きっと―――。