タイトル:実りと滅びと殲滅作戦マスター:桜月 柚葉

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/03 13:17

●オープニング本文


「いきなりの召集で申し訳ありません、来ていただいてありがとうございます」
 そういって君達を呼び出したオペレーターの少女『アイリス・ウォーロック』は頭を深々と下げた
「今回呼び出したのは、もしかすると想像がついているのかもしれませんがとある依頼の遂行をお願いしたいためなのですが‥‥こういっては問題かもしれませんが他のものと比べると緊急性が低い可能性が高いものです」
 そういいながら端末を操作しモニターにどこかの上空写真を映し出す。その映像は紅く塗りつぶされたエリアがドーナッツ状に円を形作っていた
「ここは日本の山林地帯の一部地域の上空写真なのですが、この紅いエリアのところは既に被害にあった場所です。このエリアに小規模ですがキメラの群れが住み着いているようで収穫前の作物を食い荒らしたり、人を襲ったりなど被害がでています。問題なのが‥‥」
 手元の資料に目を落としながら説明を続けるアイリス
「まず初期の頃の被害から逃れた人の証言と最近の被害から逃れた人の証言の共通事項が犬のような姿をしていた、一匹だけ大きな身体をしたものに付き従うように他のものは行動していたということですが規模の情報が異なっています。初期の頃は数匹、最近のものでは30以上と規模が大きくなっています。また先ほどの上空写真のマーカーを見ればわかったかもしれませんが、被害にあっているのは周りからです。丁度中央にあたる場所は今のところは被害が出ていませんが‥‥近隣のエリアは既に廃村状態で次に狙われるのは中央にある村であると推測されます。この中央の村は廃村となった周囲のものより規模がやや大きく十数の畑や水田があり、民家もそれと同じだけあります。村の中央にある3階建ての役所兼村長宅が一番大きな建物となる都会からみれば本当に小規模な自然溢れる田舎、といえる場所ですが、収穫時期の畑や水田が多いことから狙われる可能性がさらに上がっているのです」
 そこまで言い切った彼女は君達へと視線を向けて
「他の依頼の被害と比べれば小規模ではありますが、今後作物がなくなり襲う人もいなくなれば別の地域で同様の被害が出る可能性が高く早いうちに対処していただくほうがいいと判断されました。依頼内容としては『該当地区の敵生体の完全殲滅』・・・・お手数でしょうがお願いいたします」
 そういって再び深々と頭を下げた

●参加者一覧

ガーネット=クロウ(gb1717
19歳・♀・GP
セレスタ・レネンティア(gb1731
23歳・♀・AA
平野 等(gb4090
20歳・♂・PN
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
ミリハナク(gc4008
24歳・♀・AA
那月 ケイ(gc4469
24歳・♂・GD
柊 美月(gc7930
16歳・♀・FC

●リプレイ本文

 ここは襲撃が予測される村の役所の一室。ここを一時的に借りて作戦会議をしていた
「これは‥‥戦場は、平地だな‥‥」
「そのほうがいいかも〜。できるだけ被害を出したくないしね〜」
 そういって那月 ケイ(gc4469)と柊 美月(gc7930)は村と地図、予測進路を見ながらそう話し合っていた。
「それに群れの規模が大きくなってるっていう話があるけれど、いきなり人を襲うほど大きくはならないと思う、かな?」
「ええ、そうですわね。恐らく付近の野犬や野良キメラを集めて群れを作っているのでしょう」
 その傍で聞いていた敵の規模の情報からそう推察しているシクル・ハーツ(gc1986)とミリハナク(gc4008)。
「え、その場合は半分くらいはキメラじゃなくて普通の野犬とかの可能性ありってことですか? じゃぁこうドカーンと単に倒してしまうだけって訳にもいかないですね」
「しかし、混戦状態になってしまえばキメラであるか、無いかを判断しながら戦うのは危険であると思いますが」
 平野 等(gb4090)とセレスタ・レネンティア(gb1731)がそう不安材料がある状況をどうするかと疑問を投げかける。誰一人として殺す必要が無いものまで殺したいなどとは思いはしない。むしろ保護することが可能ならしたいと思うものすらいるだろう。
「罠を仕掛けるというのはどうかな〜? でも確実に罠にかけるにはちょっと平野が広すぎるかもしれないけれど〜」
「確かに、罠を仕掛けても敵が来なければ結局は同じになります。しかしうまく誘導する方法があれば話しは変わります。使うのであればその方法が問題です」
 美月の言葉にそう無表情にガーネット=クロウ(gb1717)が答える。しかしそう簡単に策など出てくるはずも無く、一様に思考をめぐらす一同‥‥だったが、突然ドカンと大きな音を立てて一人の男が立ち上がった!
「ふは、ふはははははははっ! 俺様にすばらしい、素晴らしい策があるぞ!」
 そういって立ち上がりいすに片足を上げ腕を掲げるジリオン・L・C(gc1321)。椅子が倒れて再び音が出るまで、誰一人硬直が解けることはなかった‥‥。


 ‥‥‥‥‥‥場所は変わって襲撃時敵が通ると予測される平野。
「あっちこっちの罠の設置終わりましたー!」
「ついでに野犬の類を引き寄せるために罠付近にビーフジャーキーを大量に撒いておきましたわ。おそらくキメラと違ってそちらのほうへ行ってくれるでしょう」
「どこであんなに買ってきたのかのほうが気になるのだけれど‥‥」
 そういいながら戻ってきた等、ミリハナク、シクル。
「こちらも終わりました」
「狙撃ポイントも確保しました。これでいつでも対処できます」
「一杯仕掛けておいたから多分大丈夫だと思うよ〜」
 別方向からガーネット、セレスタ、美月が戻ってくる。
「おつかれさん。こっちも設置が終わったところだ。あと美月さんがいってたように村人は全員役所にいてくれるそうだ」
「あ、そうなんだ〜。よかった〜これで一安心、だね〜」
 念のために村の入り口前にも設置に行っていたケイ。そのときに確認してきたことを美月に伝えるとうれしそうに美月は微笑んだ。
「通信機は皆さんもちましたわね?私とシクルさんの二人で望遠で敵の姿進路などを捕捉しましたら連絡いたしますわ。‥‥ところでジリオン君は?」
「彼ならあそこです」
 そう言ったミリハナクに答えてガーネットが指し示したほうを見ると、
「うおおぉぉぉ! 燃え上がれ俺様の料理魂! ファイアー! ふはははははははは!」
「「「「「「‥‥‥」」」」」」
 平野の真ん中、別の言い方をすれば罠の仕掛けられた場所のほぼ中央でジリオンはなにやら中華鍋を振るいワインを投入し炎が立ち上がっている。確かにいい香りはするのだが周りに特に何も無い平野ではそれなりに目立っている。
「‥‥な、なるほど。確かに匂いで釣るのは有効だろう、策を聞いたときにも思ったが、思ったが‥‥あ〜、ともかく各人待機場所に移動。あとは奴等が現れたら臨機応変に対処、だ」
 ケイのその言葉に各々さまざまな表情をしたまま各自の待機場所へ向かっていった。


「!? 来たみたい!」
「そのようですわね‥‥野犬用の罠に既に3割ほどかかってくれています。どうやらキメラ以外は無事に分断できたようですわ。しかしそれでも数は30体ほどはいますわ」
 通信機越しにキメラ群の進行を警戒監視していたシクル、ミリハナクがそう告げた
「こちらでもスコープ越しに確認、情報通り大型のが1体先頭にいるのを確認しました」
「無事に匂いに釣られてこちらに来ているようですが数匹、群れを離れ別ルートを通ろうとしているようです」
 セレスタとガーネットがそれに続いて答える。肉眼ではまだ見づらいがそれでも一匹他のより頭二つ分は大きな体である個体が確認できた。
「そっか〜、キメラじゃわんちゃん達は大丈夫なんだね〜」
「逸れていったほうは私が音で引きつけますね」
 美月は野犬達が戦闘領域に来る前に無力化できたことを喜び、逸れて行った群れに対する対策をシクルが用意する。
「頼む。なら指定位置を敵が通過しシクルが策を実行したら、セレスタの射撃後突撃だ」
「りょーかいです。‥‥ってあれ?ジリオンさんは? 通信機からさーっぱり声とかしないですけれど」
 ケイがそう答えいざ突撃の時を待たんとしたときふと等からそんなことを言われる。
「‥‥予定では敵の姿を発見したと通信機で伝えたらこちらに一時退避、姿を隠す予定だったはずですが」
 セレスタの言葉にふと彼が料理していた場所を見ると、
「ふっ‥‥良き香りだ。‥‥俺様は、俺様はこの才能が、憎い!ふ、ふはははははははは!」
 まだその場所で料理を皿に移し高笑いを上げていた。
「‥‥こ、行動開始位置より彼は後ろだから問題、ない、とは思うが少し予定を早めて突撃するぞ」
「了解です」
「‥‥通信機は渡した、よね? 単に聞いてないだけなのかな?」
「私は当初の予定道理、群れの動向、正確な数や内容を調べてから後方から仕掛けますわ」
「わかったよ〜。みんな頑張ろうね〜」
 敵群は真っ直ぐにジリオンへと向かっていく。途中何体か罠にかかって動きが止まるものもいるがそれでもまだまだ多数の敵が向かっていく。
「‥‥今です!攻撃開始!」
「そちらには、いかさない!」
 銃弾と弾頭矢が放たれ、二人の言葉と行動を合図として一斉に覚醒し群れへと突撃し攻撃を開始した。


「ん? む? おぉぉぉ!? き、来たな! 行くぞ! 勇者パーティーとつげ‥‥な、なにぃ!? 俺様の傍に誰もいないではないか!?」
 弾頭矢の爆音と近くまで来て罠にかかったり、銃で撃たれた敵キメラの鳴き声にようやく状況を悟りそう声を上げるが当然、姿を隠していたみんなとは距離がある。
「こうなれば! お、俺の歌を聞けぇー!」
 突然子守唄を歌いだすジリオン。その結果周囲の敵は突然ふらついたり眠りだしたりする。
「ふは、ふはははははははははっ!愚か者共め!俺sぐふぁー!?」
 ‥‥が、悲しいかな敵全てが眠ったわけではなく平気だった敵の攻撃を喰らい後方へ吹き飛ぶジリオン。体勢を崩した彼に敵の追撃が迫るが、
「やらせはしません」
 瞬時に踏み込んできたガーネットが、遠距離から敵の動きを遮るように飛んでくる。銃弾や矢が彼女に止めきれない敵を妨害し、逆に押し戻す。
「おぉぉ!? 助かったぞ武道家ガーネット! それに皆の衆!」
「‥‥武道家? いえ、ご無事でなによりです」
「無事だったか? なら早速ですまないが各自敵を包囲しつつリーダーと思われる個体を牽制しながら周りから削っていってくれ。リーダーと思わしき個体には既にペイント弾を打ち込んであるからな」
「りょーかいです! がんがん動きまって敵を撹乱してきます!」
「後方より銃撃による支援を行います」
「一匹たりとも‥‥逃がしはしない!」
「さぁ、全て喰いつくしますわよ!」
「了解です、行動開始します」
「ふはははははは!俺様に全て任せておけ!」
「わかりました〜。絶対に通しませんし逃がしませんよ〜」
 こうして戦闘が本格的に開始された。


「シクルのいるほうへ敵がやや集中していっている。悪いがそっち側へ少し誰か回ってやってくれ!」
 銃撃をしながら周囲状況を確認し、それに合わせて指示を出すケイ。
「ん〜! やっ! ココから先へは行かせないですよ〜」
 敵の力を利用し受け流しカウンターを当てる美月。
「さぁさぁ、いらしてくださいな! 全部お相手して差し上げますわ!」
 弓と滅斧を駆使し近寄る敵も距離がある敵も殲滅していくミリハナク。
「そこ! 決して生かしては帰しはしない!」
 的確に弓で敵を射て、不意に突撃して来た敵は武器を持ち替え、切り伏せるシクル。
「俺様の攻撃の前に倒れるがいい! ふははははははは!」
 制圧射撃で多数の敵を負傷、撃墜するジリオン。
「よっと! ぱっぱとさっさと終わらせてしまいますよ!」
 動き回りながらヒット&アウェイによる攻撃を繰り返す等。隙を大きく見せた敵には
【真燕貫突】をも用い致命打を与えていく。
「自由に行動をさせたりはしません!」
 リーダーと思われるペイント弾を受けている敵の攻撃や行動を遠距離射撃で牽制しつつ回りの敵を打ち抜いていくセレスタ。
「弱いものから殲滅していく‥‥リーダーは最後、お約束です。‥‥が引きつけて置かねば危険でもあります」
 リーダーと思われる大型キメラの攻撃を回避、いなしながら周囲の敵から倒し続けるガーネット。確実な連携攻撃、そして時折キメラたちも罠にかかり隙を晒し、そこへ決定打を与えるなどをして確実に敵の数を減らしていく。そんな時突然リーダーと思われる大型個体が一声吠えた。すると今まで村のほうへ進行していたはずの敵が突如反転、大型の個体を守るように囲み駆け出した。
「!? 逃げる気だな! 全員で一気に包囲殲滅するぞ!」
 ケイも剣を抜き追撃、殲滅戦へと戦況は移行する。
「了解です」
「逃がさないよ〜!」
「逃しはしない!」
「俺様の勇者ダッシュから逃げれるとでも思ったのか!?とーぅ!」
「うふふふふ、さぁ楽しい楽しい殲滅戦ですわよ!」
「キメラは一匹たりとも逃がさないよ!」
「貫通弾、いつでもいけます。撃ち抜きます」
「了解、敵性体を殲滅する」
 近接攻撃を行うものたちは多少のダメージを気にせず敵を殲滅していく。遠距離攻撃を行うものたちはその包囲から逃げ出そうとした敵を確実に射抜いていく。そしてついにリーダー格と思われる大型個体のみとなる。巧みな連携で敵の攻撃を潰し、そらし、攻撃を与えていく。
「‥‥とどめです!」
 一発の銃弾が敵の額を貫く。その拍子に生まれた大きすぎる隙に全ての攻撃が突き刺さる。そして‥‥ついにこの地域の人々を苦しめ、殺し、滅ぼしてきた存在が今終焉を迎えた。
「ふぅ、状況終了。しかしまだまだ実力ぶそ‥‥」
「ふははははははは! 俺様の無敵街道はまだまだ続く! 見ていろよ‥‥俺様の雄姿を!ふ、ふはははははははは!」
「‥‥‥アイリスさんからの通信がありました。周辺に他のキメラならびに野犬の群れなどは残っていないようですよ」
 ケイの言葉を遮り勝ち名乗りを上げるジリオン。そんな中クシルが入ってきた通信連絡の内容を周りに伝える。
「つまりは、完全に殲滅が完了したと考えてよさそうですわね」
「任務完了ですね」
「ささーっと撤収作業とかしなくちゃいけないですね。そのままだとこう、迷惑でしょうし」
「そうですね。このままだとココは通れない、使えないままになってしまいますし」
「それに最初に罠にかかったわんちゃんたち、怪我してるかもしれないし治療とかもしないとね〜」
 そういって罠の撤収作業や野犬達の治療などに向かう一同。そんな中ふと通信機を操作し、アイリスに連絡をとるガーネット。
「任務完了しましたので村の方々に脅威はなくなったと、知らせてあげてくださいね」
 それに了承をしたアイリスの声を聞き届けたあと通信を切る。
「もっと早く、来ていれば良かったですね」
 血に濡れ数々の死体や罠の設置で穴だらけになった土地を見つめる。一度目を伏せ空へと視線を移し、元凶たる赤い月を見上げながらため息を零す。
「‥‥バグアがいなくならない限り、何度も、繰り返しでしょうか」
 そう呟いたあと罠の撤収作業をしている彼等の元へと歩みだした。


 この事件はこうして幕を下ろした。しかし、いまだ世界中全ての脅威が、恐怖が取り除かれたわけではない。こんな事件はきっと振り返ってみれば些細なものだろう。戦いの日々はまだ続いていく。だけどそれでも、今は村を救ったという事実と訪れた小さな平穏と休息を‥‥。