タイトル:【難題】巨大スライムマスター:瀬良はひふ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/13 00:11

●オープニング本文


「‥‥なんだアレは」
「スライムかと」
 ラウディ=ジョージ(gz0099)の呆れたような言葉に、淡々とクラウディア=ホーンヘイムが応じる。
 彼らは現在、アメリカの某競合地域にいる。
 いつも通りにキメラ討伐を請け負い、いつも通りにやってきたのだ。
 常と違ったのは、相手のキメラが割りと非常識だったことだろうか。いや、キメラなどは元から非常識であるのだが。
「でかいな。KVを持ち出した方が早そうだ」
「使用許可は出ておりません」
「ふん、お偉方は高価なおもちゃをコレクションするのが趣味だからな」
 悪態をつくラウディの視線の先では、十メートルに迫ろうかという巨大なスライムがうねうねと不気味に蠢いていた。
 その数、三体。
 と、右端にいた一体の表面が弾けた。
 ラウディ率いる能力者部隊が展開を終え、攻撃を開始したのだ。
 いかな巨大スライムとて、手練の能力者八人の波状攻撃を前にしては長くは持たない‥‥はずだった。
「うわっ!?」
 突然一人が悲鳴をあげ、一気に飛び退る。
 何事かと見れば、彼の防具が音を立てて溶け、その下の皮膚が露出していた。
「酸か」
「そのようです」
 おもむろにラウディは歩き出す。
 キメラの吐き出す酸は、こちらの防御を無視して体を蝕んでくる。実に厄介な攻撃だ。
「全員、一匹始末したら間合いを取れ!」
 ラウディの号令に従い、八人はスキルを全開にして巨大スライムに攻撃を加えていく。
 物理、非物理を問わず叩き込まれる数多の攻撃に、キメラは見る間にその身を削られ、破裂するようにその命を終えた。
 その間に、ラウディは残るうちの一体へと無造作に間合いを詰めていた。
「クラウディア」
「はい」
 彼に付き従っていたクラウディアが、エネルギーガンを構える。
 解放された電磁波の奔流が、巨大スライムの身をのた打ち回らせる。
 苦し紛れに、スライムは大量の酸を接近するラウディに吐きかける。
 面倒くさそうな顔で回避すらしない彼の体を、容赦なく酸が焼く。痛々しく焼け爛れた皮膚が露出した。
「ラウディ様!」
 その様子にクラウディアは思わず叫ぶと、再びエネルギーガンを放った。
 びくびくとスライムの巨体が震える。
「余計なことを‥‥」
 呟きながら、ラウディは蛍火を抜き放ち、打ち下ろした。



「残りは一体か」
 刀身にこびりついたスライムの破片を振り払いながら、ラウディは呟いた。
 体の傷は徐々に癒え始めている。活性化だ。だが、負った傷が深すぎるために、全快というわけには行かない。
 着ているスーツもあちこちに穴が空き、ボロボロの状態だ。最早使い物にはならないだろう。
「無茶をなさらないでください」
「あの程度、無茶の範疇になど入らないさ」
 珍しく怒ったように嗜めるクラウディアを軽くあしらい、ラウディは少し考えるような仕草を見せた。
「今日はもう疲れた」
「は?」
 唐突に言い放った台詞に、彼女は思わずはてな顔になる。
「残りは、最後の希望に任せようじゃあないか」
 にっこりと笑ったラウディに、クラウディアは深々とため息をつくしかなかった。

●参加者一覧

花=シルエイト(ga0053
17歳・♀・PN
平坂 桃香(ga1831
20歳・♀・PN
イシイ タケル(ga6037
28歳・♂・EL
ヴァシュカ(ga7064
20歳・♀・EL
レン・ヴィアータ(ga8843
12歳・♀・DF
鴉(gb0616
22歳・♂・PN
城田二三男(gb0620
21歳・♂・DF
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD

●リプレイ本文

●たかがスライム
「すらーっすすらーいーむー」
 調子外れの奇妙な歌が響く。
 声の主はレン・ヴィアータ(ga8843)だ。
 可愛らしい歌声と反比例するかの変拍子ぶりに、なんとも言い難い脱力感が漂う。
 中にはヴァシュカ(ga7064)のように歌に合わせて軽くリズムを取っている者もいる。
 もっとも、平坂 桃香(ga1831)は最初からヘッドホンで別の曲を鑑賞中のようである。
「さ、皆さん。着いたようですよ」
 引率の先生よろしく、イシイ タケル(ga6037)がぽんと手を打った。
 前を見れば、崩れた家屋の間で蠢く黄色い塊。
「‥‥うっわ、おっきなスライムだねぇ‥‥」
 思わず、といった感じでヴァシュカは声を漏らした。
「これで形を保ってるってのが、無駄に凄い技術を感じますよねぇ」
「‥‥大きくすれば良い、というものでも‥‥大きすぎて、正に撃てば当たるって感じです‥‥」
 桃香が呟けば、ヴァシュカも応じる。
 半透明の巨大な塊が有機的に動いている様は、実に非現実的な景色だ。
「あれを無傷でって‥‥。依頼主さんも無茶言ってくれるよ‥‥」
「スライムってこんなに大きかったですかねぇ」
 深々とため息をついたのは月森 花(ga0053)。
 そんな彼女の反応とは逆に、感心したように呟いたのは鴉(gb0616)だ。
 城田二三男(gb0620)もまた、スライムの巨体に少しだけ見とれる。
「‥‥あの手のキメラと戦うのは、そういえば初めてだな‥‥」
 抱えた100tハンマーをさすり、彼はニヤリと笑う。
 思い思いの反応を見せる能力者たちの前に、一人の女性が近付いてきた。
 彼女の名はクラウディア=ホーンヘイム。
 今回の依頼主であるラウディ=ジョージ(gz0099)の付き人である。
「遠路遥々、ご足労をおかけしました」
 八人の前に立った彼女は、真っ先にお辞儀をする。慌てて数人が礼を返した。
 その一人、ヨネモトタケシ(gb0843)はふと、彼女の後ろに人影を見とめた。
 こちらに背を向けて立っているそれは、間違いなくラウディその人だろう。
 姿勢を正すと、タケシはその背をじっと見据える。
「では、こちらへ。ラウディが皆さんを待っています」
 クラウディアの先導で能力者たちは動き始める。
 ふと、レンがタケシが動かないことに気付いた。
「タケシさん、どうしましたー?」
「‥‥あ、いえ、何でもありませんよぉ」
 微笑んで歩き始める彼に、レンは少しだけ不思議な顔をする。
(「あの方は‥‥何がしたいのかわかりませんねぇ」)
 心中で呟くタケシに、レンは首を捻ったままその後を追った。

「お連れしました」
「そうか」
 クラウディアの声で、ラウディが八人に向き直る。
「よく来た。今回の君らの仕事は、アレを無傷で倒すことだ」
 くい、と親指で背後のスライムを示す。
 釣られたように集中した視線に反応したのか、スライムはうねうねとその巨体を蠢かせた。
「でかいが、まぁたかがスライムだ。健闘を祈る」
 それだけ言ってラウディは手近なガレキに向かい、腰を下ろした。
 観戦に徹するつもりらしい。
 ラウディを知るタケル、レン、二三男、タケシの四人は呆れながらも準備を開始する。
 だが、他の四人はその態度が予想外だったのか、やや固まっている。
 その様子に、クラウディアはそっとため息をつく。
「‥‥うん、面白い人みたいですね。そういう人、嫌いじゃないですよ」
 励ますように言う鴉に、彼女は少しだけ微笑んだ。

●されどスライム
「今回は、是非成功させましょう」
 タケルがレン、二三男、タケシの三人に声をかける。
 四人はある依頼でちょっとした苦杯を舐めた故か、多少なりとも思うところがあるようであった。
「むふーん。戦いは美しく、でありますよ」
 レンは早くも覚醒している。
 二三男もまた赤くなった目を閉じて頭を振ると、深呼吸をする。
「‥‥集中だ。無様はさらせん‥‥」
「うふふ。準備は万端であります」
 その間にも、レンはますますヒートアップしている。
 金色に輝く彼女の手には、赤く輝く妖刀が一振り。
 程度の差こそあれそれぞれに意欲を示す中、タケシは何やら一人考え込んでいた。
「‥‥どうかなさいましたか?」
 タケルが気遣わしげに声をかける。
 返事の代わりに笑みを返すと、彼は気を取り直したように抜刀した。
 その頃、花と鴉の二人はスライムの反対側へと回り込んでいた。
「この距離ならまだ、酸は吐かない‥‥よね?」
「多分、としか」
 確証は無いが、距離はある。
 仮に吐いてきたとしても、当たる心配は無さそうだった。
「心配してても始まらないか。‥‥よし!」
 気合を入れると、花は大きく跳んだ。
 彼女の瞳は金色に変わり、両腕が仄かに光り始める。
 その場に留まった鴉も、スライムを見つめる瞳が赤く染まっていた。
「準備できましたー?」
 響いた声は桃香のものだ。
 スライムの巨体ゆえに、目視での互いの状況確認はやや難しい。
 今回、八人は散開しているため、それは尚更だ。
 残りの面々は互いに声を上げ、完了を告げる。
 彼らの布陣は、スライムを中心に大きな正方形を描くような形だ。
 陣形を整えた能力者たちはそれぞれに武器を構えなおす。
 空気の変化を感じ取ったか、スライムの動きもぴたりと止まった。
 そして、静寂。
 それを破ったのは、一条の閃光だ。

 ヴァシュカのセットしたメトロノームが、規則正しい拍子を刻む。
「‥‥ん〜、アンダンテってところでしょうか‥‥?」
 刻まれる拍に合わせて、ヴァシュカはエネルギーガンを発射する。
(「‥‥アダージョかも?」)
 ぼんやりとそんなことを考えている間にも、攻撃の手は休めない。
 レイ・エンチャントが付与された攻撃は、スライムの巨体を震わせこそする。
 だが、手応えというものに乏しく思われた。
「‥‥これって効いてる? ‥‥ととっ、弱気はダメダメ。‥‥あらゆる状況を考えて、動じぬ心の手練れたれ‥‥Sleight of Mind」
 動じかけた心を抑え、深く息を吐く。
 ヴァシュカの放つ閃光は、他のメンバーの指標にもなっているようだった。
 まず、グラップラーの桃香と鴉が、初撃の直後にスライムの懐に潜り込む。
 桃香の月詠、鴉の蛍火がスライムに突き刺さった。
 だが、確かに刺さったはずの刃が押し返されるような感覚に、鴉は顔をしかめる。
「‥‥桃香さん! 鴉さん!」
 唐突にヴァシュカが叫ぶ。
 ハッと上を向いた鴉の目に、今にも降り注がんとする酸の雨が映った。
 鴉は力任せに刀を引き抜き、脚力に任せて強引に射程から離脱する。
 彼とは逆に踊るように酸をすり抜け、桃香は再びスライムへと月詠を閃かせる。
 と、降りしきる酸を割るかのような勢いで、ヴァシュカのものとは別の電磁波がスライムを襲った。
 花の超機械だ。
「ほらほら、こっちだよ!」
 言葉と共に、再び超機械が発動する。
 彼女の攻撃もまた、一定のリズムでスライムを躍らせる。
「痺れてしまえ‥‥!」
 酸を吐かせてなるものかと、花は三度電磁波を解き放った。
 ピッピッピッ。
 呼笛が三回鳴る。同時に、超機械の腕が飛んだ。
 ロケットパンチβにレイ・バックルを上乗せして、タケルはスライムに攻撃を加える。
 やはり、一定のテンポで、だ。
 敵が少なくともこちらに注意を向けさえすれば、前衛への攻撃の手は緩む。
 タケルはそう考えていた。故に、彼は笛も吹く。
 その動きにあわせるように、タケシも蛍火に錬力を込める。
 抜き打ちは音速を超え、その衝撃波はソニックブームとなってスライムを襲った。
 更に、弾丸も飛ぶ。レンのS‐01だ。
「む‥‥銃撃が効かない‥‥?」
 今までの攻撃の中でも、自分の銃撃の効果が群を抜いて薄いように感じられた。
 そんな不安を拭い捨てるかのように、レンは小銃を連射する。
 そして、初撃が入ってから数秒後。桃香が酸をすり抜け、月詠を突き立てた直後。
 二三男がその得物の間合いに踏み込んだ。
「‥‥壊す」
 100tハンマーを振りかざし、赤く輝いたその槌を打ち下ろす。

 二三男の行動に非は無い。
 グラップラーの攻撃にあわせて接近し、攻撃する。前衛として、その動きは実に妥当だ。
 そして、他の仲間にも問題は無い。
 現在の行動に問題が無いとするならば、問題はそれ以前の認識にあったのだろう。
 酸の射程外から接近して攻撃し、再び離脱するという行動。
 それを行うには、彼の力はまだ不足していた。
 故に、攻撃が終わった彼の身は、酸の射程内に残されたままだった。

「城田さん!」
「‥‥ああ、問題無い‥‥」
 降り注いだ酸をまともに浴びた二三男の体は、あちこちから煙を上げている。
 とっさに頭部だけは庇ったものの、これ以上のダメージは望ましく無さそうだ。
 小さく舌打ちして、もう一度だけハンマーを振り下ろす。
 衝撃がスライムの巨体を揺らしたのを確認して、二三男は一気に飛び退いた。
「っこの!」
 仲間の負傷に、花が悔しげに呻く。
 超機械が作動し、電磁波が飛んだ。



 戦いは佳境を迎えた。
 グラップラー二人による一撃離脱戦法。
 加えて遠距離からの波状攻撃。
 いかな巨大スライムといえど、ダメージの蓄積は避けられない。
「‥‥ん」
「動きが‥‥?」
 異変に気付いたのはヴァシュカ、次いで花だ。
 最初に比べて、攻撃されたときの反応が鈍っている。
 間違いなく、終わりが近付いている証拠であった。
「もう一押しのようですね」
 タケルがホッとしたような表情を見せる。
「自分の錬力の方が、先に音を上げそうですねぇ」
 一方で、タケシは苦笑していた。
 ソニックブームの連続使用によって、後一度ほどの錬力しか残されていなかったからだ。
 そんな彼の足元に、からんと小銃が転がる。
 その持ち主、レンに目を向ければ、彼女はにっこりと微笑んでいた。
「使ってください」
 タケシの返事を待つ間もあればこそ、レンは抜刀して一気に駆け出す。
「いけない!」
 その様子を見たタケルは、すかさずロケットパンチを撃ちこむ。
 タケシも銃を拾い上げると、照準もそこそこに連射した。
 ヴァシュカと花の放つ電磁波が唸りを上げ、桃香の月詠が一際深く突き立ち、鴉の蛍火がスライムの一部を抉り取った。
 身を震わせたスライムが、大量の酸を吐き出す。
 その対象は、足元で華麗なステップを踏む桃香。そして接近するレンだ。
 雨の如き酸の合間を駆け抜け、レンは赤い刀身に錬力を込める。
 避けきれなかった酸が見る間に彼女の服を溶かし、皮膚を焼く。
「レンさん、決めちゃってください!」
 桃香が叫び、突き立てたままの月詠を力任せに横薙ぎに振りぬく。
 巨体の深部を抉られたスライムが、びくんと身を固まらせた。
「ここだっ! 削り、穿ち、断ち斬る!」
 赤刃の軌跡が宙に踊る。
 何かが弾けるような音がし、スライムは支えを失ったように地面に潰れた。

●何故、と彼は問う
 戦いが終われば、待っていたのはけが人を待つサイエンティストと、酸によって溶かされた防具と同様の品々。
 そのお陰で二三男とレンの負傷はすぐに手当てされたし、二人の服も新品同様になった。
 準備していたのは、誰あろうラウディその人だ。
 そこに至って、タケシの疑問は頂点に達する。
 頭痛を堪えるように頭を抑えながら、彼は感情を押し殺すように言った。
「ラウディさん、少々お尋ねします‥‥。貴方は、何がしたいのですか?」
「何が、とは?」
 面白そうにラウディは問い返す。
「わざわざこのような手間をかけてまで傭兵を呼ぶ、その理由は何です? ‥‥貴方の我侭は、今この時も苦しんでいる人々を救えるのですか?」
 あるいは、それを聞きたいがためにタケシはここに来たのかもしれなかった。
 それ程に真剣な彼を差し置いて、ラウディは愉快そうに笑う。
「君らを呼ぶ理由は簡単だ。その方が都合が良いから、だ」
「‥‥」
 その返答に、タケシは悲しげに目を伏せた。
「後‥‥俺の我侭で人を救えるなどと、君は本当に思っているのか?」
「貴方はっ!」
 思わず激昂しかけたタケシの肩を、ぽんとタケルが叩く。
 握り締めた拳を解くと、彼は踵を返した。
「君らは優秀だからな。今回は十分及第点だよ」
 その言葉はフォローのつもりなのかどうか。
 ラウディの表情を見る限りは、皮肉と見れないことも無い。
「‥‥ふん、お気に召したなら何よりだが‥‥程々にしないと敵を増やすぞ‥‥?」
 吐き捨てるように二三男が言う。
 肝に銘じておこう、とラウディは涼しげだ。
 やれやれ、とタケルはため息を付いてから口を開く。
「あまり、クラウディアさんを心配させてはいけませんよ?」
「何故その名前が出る?」
 気の無い反応に、やはり、と困ったように笑ってタケルは肩をすくめた。

 そのクラウディアはといえば、倒れたスライムの傍らで花や桃香と話していた。
 どうやら、このスライムが食べられるか否かが話題のようだ。
 何でも、食べられるスライムはゼリーのような味らしい。
「そりゃ酸は吐きますけど‥‥もしかしたら?」
 ワクワクしたような花の言葉に、桃香は笑いながら手を振る。
 ふと、二人はクラウディアが屈みこんで何かをしているのに気付いた。
 何かと覗き込めば、ナイフでスライムを一口サイズに切り取っている。
「え、あの、まさか?」
「触っても大丈夫でしたので‥‥」
 そういう問題かと桃香が止める間も無く、クラウディアは欠片を口に放り込む。
 数秒後、彼女の喉が小さく動いた。
「‥‥レモン味ですね」
「マジですか!?」
「ひ、冷やすと美味しいかも!」
 思わぬ感想に、二人は驚きの表情をスライムに向ける。
「‥‥ますますもって謎の技術ですねー」
「といいますか、アレを食べるクラウディアさんが謎かとー」
 少し離れた場所で、ヴァシュカとレンが笑う。
「‥‥意外と天然なのでしょうかね」
「かもしれませんねぇ」
 呟いたヴァシュカに応じたのは鴉だ。
「天然の美人秘書に、気まぐれな変人実業家‥‥。面白い人たちです」
「同感ですよ」

 依頼主に対する印象、依頼そのものへの印象。
 それらは人それぞれに変わる。
 ただ一つだけ確かなことは、今後も「難題」は続くということだろう。