タイトル:【難題】蛇マスター:瀬良はひふ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/24 17:51

●オープニング本文


 ラウディ=ジョージ(gz0099)は不機嫌を隠そうともしない表情で、ディスプレイを見つめていた。
 ここは彼の経営する会社の社長室だ。
 それなりに広く、趣味の良いアンティークが嫌味でない程度に飾られている以外は、思いのほか簡素な部屋である。
「‥‥あの、ラウディ様?」
 先ほどから傍らで控えていたクラウディア=ホーンヘイムが、重苦しい雰囲気に耐え切れず口を開いた。
「UPCにしろULTにしろ、非正規の傭兵をただの便利屋と思っているようだな?」
 ラウディが吐き捨てるように言った。
 何事かと首を傾げるクラウディアに、彼はプリントアウトした紙を手渡す。
 受け取り、内容を確認すると、彼女もまた怪訝な顔をした。
「これは」
「依頼だとさ。まったく、ふざけている」

 競合地域に近い小さな町のそばに、キメラが出現した。
 大蛇の形を模した数体のそのキメラは、夜になると町に出没しているとのことだ。
 出現が夜間ということもあり、人的被害は今のところ報告されていないが、住民は恐怖に怯え、すでに何組かの世帯は逃げるように町を去ったらしい。
 UPCでは何度か討伐隊を編成したのだが、キメラはやけに臆病で、隊の気配を確認すると雲隠れしたかのように姿を消してしまうという。
 要するに、お手上げだということだ。
 このままでは、町はゴーストタウンと化し、その一帯まで競合地域が広がりかねない。
 そこでラウディ率いる能力者部隊にお鉢が回ってきた‥‥ということだ。

「つまり‥‥キメラに気付かれずに接近し、逃げられる前に倒せ、と?」
「そうだ」
 厄介な。
 クラウディアは嘆息した。
(「これでは、ラウディ様が憤るのも無理はありませんね。言ってしまえば、貧乏くじです」)
 そう思いながらも、任務遂行のための作戦を頭の中で組み立て始める。
 ラウディが思いもかけぬことを言ったのは、そのときだ。
「俺たちに寄越すならば、もっと派手な依頼であるべきだ」
「‥‥は?」
「こんな地味な依頼は、性に合わん。そう言ったんだ」
「‥‥」
 クラウディアは嘆息した。
 この先の展開が、もう予測できたからだ。
「これは、最後の希望に回してやることにしよう」
(「やっぱり‥‥」)
 何が楽しいのか、にっこりと笑うラウディとは対照的に、クラウディアは酷く疲れたような表情でULTとの回線を開いた。

●参加者一覧

南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
レン・ヴィアータ(ga8843
12歳・♀・DF
サルファ(ga9419
22歳・♂・DF
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
クリス・フレイシア(gb2547
22歳・♀・JG
レヴァン・ギア(gb2553
26歳・♂・DF

●リプレイ本文

●寂れた町
 その町は、実に閑散として見えた。
「これでも、以前はそれなりに人は多かったそうですよぉ」
 ヨネモトタケシ(gb0843)が言った。
 今回の依頼に向けて、能力者たちは町の住民からまずは情報を聞き出すことにしたのだ。
 そういった話の間に、往時の賑わいを語る人もいたのだろう。
「キメラは迷惑だよ‥‥」
 集めた情報を整理しながら、イスル・イェーガー(gb0925)も呟く。
 住民への被害を出さないためにも、今回の目標、蛇型のキメラは何としても排除しなければならない。
「町の地理が、果たして俺たちに味方するか、それとも‥‥」
 南雲 莞爾(ga4272)は、そう言って地図に記されたキメラの行動ルートを確認する。
 三体の蛇型キメラ。
 軍も能力者も、すぐに逃げ去ってしまうそのキメラの詳細は掴めなかった。
 では何故、「三体」という数が分かったのだろう。
「‥‥民間人には、しっかりとその姿を見せているということか」
「やっぱり、何かで違いを把握しているのでしょーか?」
 呟いた莞爾に応じたのはレン・ヴィアータ(ga8843)。
「蛇は‥‥匂いや音、振動等に敏感‥‥」
 イスルの情報に、レンはおお、と感嘆する。
 ただし、それはあくまでも「蛇」のものである。
 蛇型キメラも果たしてそうであるかは確証は無いのだが、成功を目指すとすれば有意義な情報だろう。
「‥‥ん。そのための。ゴム底の靴」
 最上 憐(gb0002)が自らの靴をぺしぺしと叩く。
 能力者たちは、数名を除いて長靴の様な靴を履いていた。
 足音を消すのに役立つ、という見地からのチョイスであるらしい。
「まぁ‥‥蛇に見つからない様に‥‥というのが一番の難題だからな」
 レヴァン・ギア(gb2553)もまた、ゴム底の靴を履いている一人だ。
「オマケに異常に素早いとは‥‥」
 やれやれ、と眉間に皺を寄せる彼の肩をクリス・フレイシア(gb2547)がぽんと叩く。
「愚痴を言ったって始まらないよ。‥‥何、あなたならやれるさ」
「そういう台詞は目を逸らさずに言ってくれ」
 漫才の様なやり取りに、サルファ(ga9419)は思わず笑いを零す。
 自身の身の丈ほどの大剣を携えた銀髪の青年は、先ほどから煙草を水に漬けて何かを作っていた。
「よし、できた」
「何が出来たのかね?」
「これは蛇避けの‥‥っ!?」
 唐突に背後から掛けられた声に、サルファは慌てて振り向く。
 そこには、ラウディ=ジョージ(gz0099)とクラウディア=ホーンヘイムの二人が立っていた。
「蛇避け?」
「‥‥蛇は煙草の臭いを嫌う‥‥から‥‥」
 イスルの説明に、ラウディは少しだけ感心した様な表情を見せた。
「素敵な小細工じゃないか。それが功を奏することを祈っているよ」
 大仰に能力者たちを見回し、少しだけ何かを見つめた後、ラウディはそのまま踵を返す。
 クラウディアは頭痛を抑える様な仕草を見せ、小さくため息をついた。
 そして姿勢を正すと、八人に向かって礼をする。
「厄介な依頼ではありますが、ご成功をお祈りしております‥‥」
 そう言って、ラウディの後を追う。
「相変わらずだな、ラウディさんも‥‥」
 ラウディが何故か自分の剣を見ていた様な気がして、サルファは少しだけ居心地が悪そうに笑う。
 相変わらず。その表現がぴったりの依頼主に、タケシは多少の不信感を露にしながら応じた。
「我々だからこそ来る厄介な依頼‥‥これ程に傭兵として真っ当な依頼は無いですねぇ」
「蛇相手の、名実共にスニーキングミッションということか」
 莞爾は傾きつつある太陽をちらりと見やり、日没と共に姿を現すであろう蛇型キメラに静かな闘志を燃やしていた。
「そろそろ、夜だな‥‥」
 赤みを増した光景に、サルファが十字架を模した剣に手を掛ける。
 間も無く、夜が来る。
 それと共に、招かれざる客も来るだろう。 

●這い寄る蛇
 既に日が没してから数刻が経っている。
 天で穏やかに輝く月に照らされた、夜の町。
 微かに衣擦れの様な音を立てて、一体の蛇型キメラがゆるゆるとその往来を進んでいる。
 時折鎌首をもたげ、辺りを窺うそぶりを見せる。
 闇にまぎれる様に悠然と進むその姿は、未だ脅威を認識していないことを示していた。
 その姿を捉えたのは、クリス。
 静かに深く息を吐き、その怜悧な瞳を細める。美しい金髪は、いつの間にか腰まで伸びていた。
 クリスとペアを組むサルファもまた、キメラの姿を捉えている。
 両者は、通りを挟んでそれぞれに無人の家屋の屋根の上に潜んでいる。
 この選択は、至極優れた判断だ。
 キメラが射程内に入ったことを確認すると、クリスは音も無く弓を構える。
 二メートルほどもある弓だが、その造りは決して待ち伏せに適していないわけではない。
 クリスが構えたのを見て、サルファもまた剣を抜こうとする。
 射撃で仕留め切れなかった場合に、すぐさまトドメを刺すためだ。
 慎重に弓を引き絞り、クリスは蛇の急所を見定める。
「!?」
 そのとき、何かと金属がぶつかる音が響いた。
 サルファの持つ大剣が、その大きさゆえに屋根と擦れてしまったのだ。
 途端に向きを変えようとするキメラ。
「させないよ‥‥っ!」
 風を切って、クリスの矢がキメラを射抜いた。
 掠れた声を上げて、キメラが悶える。矢が貫通し、地面にまで達していたのだ。
 その隙を見逃すサルファではなかった。
 飛び降りざま、巨大な剣を振るう。
 水平に振りぬかれた刃は、空気と共にキメラの頭を切り飛ばした。
「‥‥はっ‥‥ふぅ‥‥」
 危うく、逃げられてしまうところであった。
 キメラの絶命を確認した彼は、思わず安堵の吐息をつく。
 いくら大きな剣であっても、あの場面で何かにぶつけるヘマをする程サルファは未熟ではない。
 それは不運としか言い様の無い事故だったのだが‥‥隠密を第一とする任務で、果たして彼の装備選択は妥当であったのか。
 もしも、これが「見つかれば命に関わる」状況であったなら?
 きり、とサルファは奥歯に力を込めた。

「Wレンチーム、ここに結成でありますよー」
「‥‥ん」
 少女二人が、小さく気炎を上げている。
 レンと憐のペアは、遊撃隊として待ち伏せをする仲間をカバーする様に動く。
「‥‥ん。今度は。失敗。しないように。頑張る」
 以前、ラウディの出した依頼で苦い経験をした憐は、静かにリベンジを誓っている。
 いそいそと足元に撒いたのは、先ほど作られていた煙草水だ。
 どうやら、適当な場所に撒いてキメラの移動経路を狭めよう、という算段であるらしい。
 そんな彼女らの様子を遠目に見ながら、タケシとイスルは民家の屋根の上でじっと息を殺している。 
 住民からの情報によれば、蛇型キメラの一体はこの近くを通る公算が高いのだ。
 探すよりは、待ち伏せの方が効率が良い、と彼らは踏んだ。
 そんな四人に、キメラが近付いていく。
 時折、何かを嫌がる様なそぶりは見せるものの、特に進路を変えることは無い。
 いつもの道を、つまりは住民の情報通りの道をキメラは進む。
「‥‥いた‥‥」
 最初に気付いたのは、やはり屋根の上にいたイスルであった。
 やや遅れて、タケシも気付く。
 しかし地を行くWレンチームは、まだ気付いていない。
 タケシは、少しだけ心配げな視線を地上へと送るが、声を出すわけにいかない。
 少女二人は、キメラとは二区画ほど離れた場所にいた。
 幸いなことに、蛇型キメラもまだレンと憐には気付いていない様である。
(「んー、見つかりませんねぇ‥‥」)
 レンは慎重に歩を進めながら辺りを窺うが、変わったことは無い。
 ちらりと憐を見やれば、やはり同じ様だ。
 しばし互いの顔を見つめ、ふるふると首を振る。そして、同じタイミングで落胆した様に項垂れた。
 そんな彼女らとキメラの距離は、次第に近付いている。
 知らぬが仏とはよく言ったもので、屋根の上にいる二人は実にハラハラとしている様子だった。
 と、少女たちは交差点に差し掛かる。
 塀の陰からそっと覗いたレンの瞳に、丁度一区画向こうの交差点に差し掛かったキメラの姿が映った。
 距離にして、約三十メートル。
 手で憐に合図し、レンは鬼蛍を抜刀した。憐もまた、タバールを構える。
 屋上でそれに気付いたイスルとタケシも、それぞれに戦闘態勢を整える。
 イスルの引き絞った弓が、キメラを捉えた。
「父さんが言ってた‥‥。狙撃は呼吸を読む‥‥獲物と呼吸を合わせ‥‥息を止めて‥‥」
 小さく口の中で呟きながら、イスルは暗くなるほどに集中した視界の中で、キメラを射抜く。
 たん、と矢がキメラに突き立ち、その不意打ちにキメラは動転した様に身を捩じらせた。
「‥‥ん。逃げる。逃がさない。足止めする」
 慌てて方向転換をしたキメラに、そうはさせじと憐が瞬天速で駆け込む。
 側面から叩き付けられた斧は、小柄な少女のそれとは思えぬ威力を見せてキメラを弾き飛ばす。
「捉えたっ! 紅刃一閃!」
 続いて一足飛びに間合いを詰めてきたレンが、小さく気合を発して鬼蛍を振りぬく。
 赤く煌めく妖刀が、蛇型キメラの鱗を大きく斬り飛ばした。
「刈り取らせて頂く‥‥!」
 タケシはその身に蒸気を纏いながら屋根から降り立ち、そのまま屈んで柄に手を掛けると一気に蛍火を抜刀する。
 赤い光を纏った蛍火が、音速を超えて斬撃を飛ばした。ソニックブーム。
 それは確かにキメラへの駄目押しの一撃とはなったが、予想だにしない副次効果ももたらした。
 普段の戦場では意識もしないそれは、あるいは気付けという方が酷なのだろう。
 衝撃波、その名前の示すとおりに‥‥夜の町に爆音が鳴り響いたのだ。

 その少し前。
 莞爾とレヴァンは、Wレンチームの様な遊撃班として、他の者たちとは別の範囲を探索していた。
 月明かりに加え、莞爾の持ち込んだ暗視スコープという武器もあり、探索は至極順調に進んだ。
 三体目の蛇型キメラの予想ルートに先回りし、念のため周囲の地形も確認した上で待ち伏せの体勢を整えることが出来ていたのである。
 そして、キメラは来た。
 身振りで合図をしあい、彼らは音も無く布陣する。
 進行方向に莞爾、退路を塞ぐ形でレヴァン。
 その形が出来上がり掛けたその時、ソニックブームの甲高い轟音が響いた。
「!?」
 予想していない事態に、二人は一瞬硬直する。
 その一瞬で、キメラは一気にその身を翻して逃走に移っていた。
「っ! 逃がさんっ!」
 期せずして自分の方へ向かってくるキメラに、レヴァンはパイルスピアを構えて一気に塀から飛び出した。
「側面からの攻撃には鈍い筈‥‥!」
 強かに繰り出された一瞬の一撃は、過たずキメラの右側面の鱗をそぎ落とし、その足を止めた。
「悪いが時間を掛けたくなくてな‥‥手早く狩らせて貰うぞ」
 その一瞬で間合いを詰めた莞爾が、月詠と蛍火という二刀を閃かせる。
「後の先をも等しく断つ‥‥これが、天剱――絶刀」
 言葉の終わりと刀を納めたのと、どちらが早かったのだろう。
 涼やかな音を立てて刃がその身を鞘に隠したときには、既にキメラの命は刈り取られた後であった。

●「評価」とは
「結果だけ見れば、成功と言えるな」
「危うい場面はありましたが‥‥」
 苦笑するクラウディアにラウディは、ふん、と鼻を鳴らす。
「今のままでは、奴らは本当にただの便利屋で終わりかねん」
「と、申しますと?」
「時代が最後の希望に求めているのは、どの様な状況下でも最上の結果を出すことだ、ということだ」
 はてな顔になるクラウディア。
 だが、ラウディは話し過ぎたと言わんばかりに、その話題をそこで打ち切ってしまった。



「何はともあれ、キメラは無事撃破ですよー」
 無線で連絡を取り合い、三体の撃破を確認した能力者たちが集合していた。
 足元には、キメラだったもの。
「そのままにしとくのも良くないかと思って、な」
 レヴァンの言葉に、サルファとタケシも頷いた。
 この三人が運んできたようだ。
 と、イスルがその元キメラをつんつんと突付きながら、ぽつりと漏らした言葉が波乱を呼ぶ。
「‥‥これ、食べられるかな‥‥?」
「蛇、ねぇ‥‥蛇酒に出来ないかな?」
 サルファが料理人の表情になって、真剣に考え始める。
「‥‥ん。焼いたら。食べられるかな」
 豪快なことを言ってのけるのは、まだあどけなさの残る少女。
 育ち盛り、ということなのだろうか。
 サルファはサルファで、焼くならカレー粉かな、などと言っている。
「うーん、蛇にはやっぱり‥‥」
 そういって、レンがごそごそと鞄をまさぐり始める。
 何かと思えば、その手には紛うことなきフルーツ牛乳が。
「フルーツで牛乳! これは美味しいですよ!」
 その言葉に、憐の目が怪しく輝いた。
「‥‥ん。その提案は。とても。素晴らしい」
 言葉と共に伸びる腕。その先にはフルーツ牛乳。
「な、何を!?」
「飲む。飲みたい。蛇と」
 どうやらレンの思いつきは、憐の興味を引いてしまったらしい。
 体格の差で押し負けそうになるレン。
 そんな少女たちの地味に熾烈な争いを、タケシは困った様に笑いながら見つめる。
「しかし、蛇ですかぁ。食べられると聞いたことはありますが、どうなんでしょうねぇ」
「牙の形状を見る限り、毒は無さそうだ。美味い不味いは別として、食べられないことは無いだろう」
 タケシの疑問に応えたのは莞爾。
 理知的に見えるが、案外とがさつと言うか適当な面も持っているらしい。
「‥‥やっぱり、焼いてみる‥‥?」
 イスルの目は、既におもちゃを前にした少年のそれである。
 この中で、唯一の良心(?)はレヴァンであろう。
 彼は、先ほどから苦笑して様子を見守っていたが、イスルが本気と見るや慌てて止めに入った。
「だ、駄目だぞイスル。食べたら‥‥多分腹壊すから、な?」
 嗜めるレヴァンに、抗議の視線を送るイスル。
「‥‥蛇は、嫌い‥‥?」
「いや、嫌いとかでは無いんだが、昔から良い思い出が無いんでな‥‥」
「今こそ克服するべきですよっ!」
 涙目で牛乳を防衛しながらも、レンが叫ぶ。
 その隙が命取りだったことには、もう少し後で気付くだろう。
「‥‥クリス? そういやあいつ、どこ行った‥‥?」
 少女たちの様子に笑いながら、レヴァンがふと知人の不在に気付いた。
 そのクリスはといえば、ラウディとクラウディアの近くの塀の陰で、深呼吸をして息を整えていた。
 二度三度と呼吸を繰り返し、意を決した様子でラウディへと近付いていく。
「何か用かな」
 気付いたラウディへと、にっこりと輝く様な笑顔を見せる。
「これからまた、縁がありそうな気がするの。その時は宜しくね? お・じ・様」
「おじ‥‥」
 猫なで声、というのがぴったりの声であった。
 呆れた様にため息をつきながらも、まぁ頑張れ、とラウディは挨拶を返す。
 これで良いコネが出来たとクリスが思ったかはともかく、そんな彼女にクラウディアは何故かほの暗い視線を送っていたのだった。