タイトル:美しき連携を!マスター:瀬良はひふ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/26 03:01

●オープニング本文


「‥‥やけに堅いキメラだ」
「そのようですね」
 目の前で繰り広げられる戦闘を見つめながら、ある青年が言った。
 付き人がそれに追従する。
 この青年の名は、ラウディ=ジョージ。
 アメリカで財を成した富豪一族の出で、ドロームの株主の一人であるとする噂もある人物だ。
 噂の真偽は定かではないが、事実辣腕の実業家であり、更には折り紙付きの実力を持つ能力者でもあった。
 独自の能力者部隊を持ち、キメラ討伐に功績を上げている。
「ラウディ様ならば、あのキメラの装甲も効果は薄いと思いますが」
 付き人――クラウディア=ホーンヘイムという女性で、彼女もまた能力者である――の言葉に、ラウディは馬鹿馬鹿しいと言う様に頭を振った。
「ただ堅いだけのキメラに、わざわざ俺が出張る必要も無いだろう。現に、もう残りは一体じゃないか」
 実戦経験の豊富な能力者集団にとって、ただ堅いだけのキメラなど恐れるに足りない。
 ラウディの示したとおり、はじめは五体存在したそのキメラも、既に最後の一体となっていた。
「このまま終わるのも、つまらないな」
「と、言いますと?」
「全員、戦闘止め!」
 クラウディアの言葉を遮るように、ラウディの号令が飛ぶ。
 突然の指示にも一糸乱れぬ動きを見せて、戦闘していた能力者たちは一旦距離を置いた。
 彼らの表情には、またか、とでも言いたげな色が浮かんでいる。
「ラウディ様」
「折角だから、高名なラストホープの能力者たちのお手並み拝見、と行こうじゃないか」
 咎めるようなクラウディアに、ラウディは爽やかな笑顔を向けた。



「というわけで、ラウディ=ジョージ氏からの依頼だ」
「何だそりゃ」
 オペレーターの説明に、一人の能力者が怪訝な顔をする。
 他の能力者も、大なり小なり腑に落ちないといった感じのようだ。
 その様子に、オペレーターはため息をつく。
「まぁ、気持ちは分からないでもない。ジョージ氏は優秀な能力者で実業家なのだが‥‥その分というか、性格に難があってな。気まぐれで色々と思い付きを実行するらしい」
 迷惑な、と誰かが呟く。
 その言葉に頷きながら、オペレーターは続ける。
「今回は、このやけに堅いキメラを美しい連携攻撃でもって殲滅して欲しい、ということだそうだ」
「美しい」
「連携攻撃ぃ?」
 二人の能力者が呆れたように声を上げる。
「ただ倒すだけでは、つまらないそうだ。‥‥ま、愚痴っても始まらん。頑張ってくれ」
 珍しく同情的なオペレーターの言葉に、集まった能力者たちは顔を見合わせた。

●参加者一覧

イシイ タケル(ga6037
28歳・♂・EL
名塚 朱乃(ga6571
19歳・♀・GP
レン・ヴィアータ(ga8843
12歳・♀・DF
サルファ(ga9419
22歳・♂・DF
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
中岑 天下(gb0369
19歳・♀・GP
城田二三男(gb0620
21歳・♂・DF
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD

●リプレイ本文

●役者は揃った
 舞台となる競合地域近辺の平原へと向かう八人の能力者たち。
 風変わりなこの依頼に参加するその心中は、まさに十人、いや八人八色か。
 経験を己の糧としたい者、純粋に好奇心の者、依頼主への不満を隠さぬ者‥‥。
 そんな皆の思惑を乗せたまま、高速移動艇は粛々と進む。
 ふと、ぼんやりと窓から外を眺めていたヨネモトタケシ(gb0843)がぐっと伸びをする。
「むぁぁぁ‥‥。む、有益であってしかも、面白そぉですねぇ」
 くるりと首を回しながら、ポツリとそんな言葉を漏らした。
「まあ、連携の練習程度にはなるだろう‥‥」
 心中で今回の依頼に不満を抱いているサルファ(ga9419)が応えれば、城田二三男(gb0620)も口を開く。
「見世物扱いなのは気に食わないが、な」
 やれやれと言った様子でため息をつき、続ける。
「まぁ、精々実験台にさせてもらうさ」
「うふふ。戦いは楽しく美しく、でありますよ」
 二三男の言葉に、やけに楽しげに追従したのはレン・ヴィアータ(ga8843)だ。
 うっとりとその手の鬼蛍を見つめながら呟く銀髪の少女。中々に怖い構図である。
「‥‥美しい連携、ねえ」
 皆の会話を聞きながら、中岑 天下(gb0369)はふと呟く。
「優秀な人は、変なことを考えるのね」
「迷惑な話ですね」
 イシイ タケル(ga6037)がやれやれと苦笑しながら応じた。
「でも、連携は戦闘における重要な要素だと思います」
 伊達眼鏡をジャージで拭いながら、名塚 朱乃(ga6571)が言う。
「‥‥今回のような連携を、今後行える機会があるかどうかは別として」
 自信無さげに付け加えたその言葉は、参加者全員がどこかで思っていることでもあった。
「‥‥ん。もんじゃ焼き食べたい」
 ――若干一名、最上 憐(gb0002)を除いて、であるが。

 それからしばらく後、八人は舞台へと到着した。
 出迎えたのは依頼主であるラウディ=ジョージ、及び彼の付き人のクラウディア=ホーンヘイムだ。
「遠路遥々、ようこそお出でくださいました」
 クラウディアが深々とお辞儀をする。慌てて数人の能力者がお辞儀をし返した。
「ラストホープの傭兵諸君、君らの噂はかねがね聞いている。今日は存分に暴れてくれ給え」
 ラウディはにっこりと笑いながら言うと、それで興味は失せたと言わんばかりにさっさとその場を離れだす。
 クラウディアは申し訳なさそうに再度お辞儀をすると、その後を追った。
「苦労してそうですねぇ」
 タケシが同情したように言う。
「ま、私たちもその苦労は味わっているわけですが‥‥。と、例のキメラはアレですね」
 周りを見渡しながらタケルが一点を指し示す。
 つられて他のメンバーがそちらを見やれば、一体の甲冑がゆらゆらと立っていた。
 その周囲五十メートルほどには、点々と同じような甲冑が転がっている。
 情報通り、ただ堅いだけのキメラなのだろう。
 特に激しい戦闘が行われた様子は見当たらず、一方的な戦闘と言って差し支えないもののようだった。
 時折、甲冑キメラが無造作に腕を振るっているのは、もしかして攻撃のつもりなのかもしれない。
「‥‥要するに、頑丈なサンドバッグというわけか‥‥」
 二三男が顔を押さえながら呟く。その眼球が真っ赤に染まった。
「さ、行きましょうか」
 タケルがぽんと手を叩いて促す。
 能力者たちは一つ頷くと、各々の得物を握り締めてキメラへと近付いていった。

●戦士たちは平原で踊る
 キメラへと接近する能力者たちの様子を、離れた場所からラウディが観察していた。
「ラウディ様」
 と、傍らのクラウディアが口を開く。
「あの様な態度はいらぬ反感を買います。慎んでくださいませ」
 先ほどの能力者への対応を批判する彼女に、ラウディは肩をすくめる。
 ため息をついて、クラウディアはそれ以上何も言わなかった。
 タケルの声が二人の耳に届いたのは、丁度そのときだった。

 それよりも少し前。
「物は試し。ちょっと撃ってみますべきですかね」
 やおらにS‐01を取り出してレンが言う。
 キメラは既に射程内だ。
「‥‥ん。必要ないと思う」
 憐が言えば、そうですか、とレンは素直に銃を収めた。
 不思議なペアである。
 そうこうしている間に、朱乃、サルファ、天下が騎馬戦の騎馬のような形を組んでいた。
 騎馬は朱乃、天下のグラップラー二人組。
 それに乗るのがサルファだ。
「落ちないように気をつけなさいよ?」
「任せろ」
 天下が上のサルファに笑って言えば、コンユンクシオを構えてサルファも答える。
 準備完了と見て取ってか、タケルが皆よりやや後ろに下がって号令をかけた。
「これより、『ソルディー・ドッグス』による、『カクテルアサルト』を開始します。『ラスト・サムライ』!」
 ソルディー・ドッグズが今回の能力者たちのチーム名。
 カクテルアサルトが全体の連携を纏めた名前。
 ラスト・サムライはその最初に始める小連携の名前、であるらしい。
 言い放ったタケルは、ちらりとラウディの方を見やる。笑っている、ように見えた。

 ラスト・サムライ。
「仕掛けて仕損じ無し。一撃必中。推して参ります!」
 朱乃の声と共に、騎馬の二人が同時に瞬天速を発動させ、キメラへと駆ける。
「くっ!?」
 サルファは危うく体勢を崩しそうになるが、こらえた。
 バランスが悪い。攻撃できるのか?
 いや、しなくてはならない。
 大剣を構えなおす。全身を包む黒いオーラがゆらりと揺らめいた。
(「思った以上に‥‥きついっ」)
 髪を深紅に染めた天下が思わず呻いた。
 二人で一人を乗せた体勢での瞬天速は、やはり無理がある。常の速度が出ない。
「気合ですっ! 駆け抜けますっ!」
 朱乃が叫ぶ。
 ぐっと歯を食いしばった。
 キメラは目前だ。
「断ち切る!」
 サルファがコンユンクシオを振りかざす。
 流し斬りを発動させ、すれ違いざまにキメラの甲冑へと強かに叩き付けた。
 甲高い金属音が鳴り響き、盛大な火花が舞い散った。
「‥‥少しは効いたかしら?」
 駆け抜けた後、息を乱しながら天下が振り返る。
 残念ながら、キメラは健在だった。だが、その甲冑は凹み、少し抉れたようになっている。
 それを見て、サルファは自らの迂闊さに舌打ちしていた。
 両断剣を使うつもりであったのに、エミタにセットするのを忘れていたのだ。
「続いて、『アーティスツ・スペシャル』!」
 攻撃が終わったことを見届けて、タケルが次の小連携の名を叫んだ。

 アーティスツ・スペシャル。
 タケルの号令に従い、二三男とタケシが駆け出す。
 それぞれに両手に二本の得物を携えて、キメラへと一気に肉薄した。
「‥‥ヒビが入ればいいくらいなどと考えるな。やるからには、叩き壊す‥‥っ!」
 呟くと同時に、二三男の刀とヴィアが赤い輝きに包まれる。
 そして、赤い刀閃がキメラの体に刻まれる。
「終わらん!」
 二段撃を発動させていた二三男は、素早くヴィアも翻す。
 Xを描くようにキメラへとその双剣を叩き込む。
 耳障りな金属音が鳴り、火花が飛んで二三男の肌を少し焼いた。
 構わず離脱する。
 代わって飛び込んできたのはタケシだ。
「高まれ‥‥」
 言葉と共に彼の二刀が赤い光を纏う。
「穿てっ‥‥!」
 吐き出した言葉と共に二刀がキメラの上に舞う。
 赤い軌跡が十字に描き出され、散った火花が彩りを添えた。
 息つく間も無く、タケシも離脱する。
「『ブラッディ・メアリー』!」
 タケルの掛け声と共に、朱乃、憐、天下の三人が迫っていた。

 ブラッディ・メアリー。
 途中まで三人纏まって突っ込んできていた彼女たちは、キメラの少し手前で二人が進路を変えて跳んだ。
 キメラを中心に三角形を描くような位置に布陣すると、そのまま中心へと跳ぶ。
「撲殺のお時間です。どうかお覚悟を」
 走りながらロエティシアを構え、朱乃が呟く。 
「‥‥ん。乾坤一擲。起死回生」
 ファングを揺らめかせて憐も駆ける。
「‥‥どんなに堅くても、弱点はあるものよ」
 天下は言いながらキメラの一点を睨みつけるように注視する。
 三人のグラップラーは同時に急所突きを発動させた。
 走り込む勢いのままに、キメラの体へとその鋭爪を突きたてる。
 硬質な金属同士がぶつかる鈍い音が響いた。
 血飛沫の如く火花が散る。
 確かな手応えをその手に感じつつ、三人は飛び退く。
 次なる連携の担い手はすぐそこまで接近していた。

 シルバー・バレット。
 サルファが大剣を構えてキメラへと迫る。
「閃火!」
 気合と共に一閃。
 何かが砕けるような音と共にキメラが弾かれ、体勢を崩した。
 そこに駆け寄る小さな影。レンだ。
「はっ!」
 実に楽しげな笑みを浮かべ、黄金に輝いた彼女がその両手で鬼蛍を下段から斬り上げる。
 耳障りな音を立ててキメラの甲冑に傷が入った。
 そこへ音速の衝撃波が飛ぶ。サルファのソニックブームだ。
 不可視の斬撃を受けてキメラが揺らめく。
 鬼蛍が下方から跳ね上がり、レンが小さな体をひねって刃を再び上方へと閃かせた。
「ぬんっ!」
 畳み込むようにサルファが跳躍し、上空から巨大な剣を叩きつける。
「合わせます!」
 レンが手首を返して、元来た軌跡をなぞる様に鬼蛍を振り下ろす。
 二人の白銀の髪が踊る様は、正に銀の弾丸である。
 流石のキメラも悶え、苦し紛れにその腕を振るう。
「当たるものですか」
 悠々とかわして、二人は一旦間合いを空けると、即座に突進する。
「剛」
「烈」
 呼吸を合わせるかのように呟くと、お互いに武器を居合いのように腰だめに構えた。
「「斬!」」
 すれ違い様キメラへと刃を突きたて、振りぬく。
 鬼蛍の軌跡が赤い残像として残った。

 モスコー・ミュール。
 再び三人のグラップラーが駆ける。
 飛び込んできた勢いそのままに、息も付かせぬ連撃が始まった。
「‥‥ん。全力前回。一気に行く」
 憐の両手が舞うように交差される。
 ファングがキメラの甲冑に牙を立て、幾許かの装甲を抉り取った。
 踊るようなステップで横へと移動した憐の脇をすり抜けるように、天下のファングがキメラを捉える。
 右の爪が抉られた甲冑を穿ち、左の爪がその傷を更に深く刻み込む。
 すぐさま天下は、憐とは逆に跳ぶ。
「天国旅行へご案内です」
 疾風のように駆け込んできた朱乃のロエティシアがキメラを裂く。
「片道切符の押し売りですが」
 言いながら朱乃がキメラを蹴り上げる。僅かに浮き上がった。
「そろそろ仕上げよ?」
 続けて天下が足を跳ね上げる。更に浮かぶ。
「‥‥ん。トドメのお時間」
 跳び上がった憐が、下から駄目押しとばかりに蹴りを見舞う。
 疾風脚で強化された三人の脚力が、鋼鉄の塊のようなキメラを上空へと浮かび上がらせた。

 アラウンド・ザ・ワールド。
 浮き上がったといえど、その滞空時間はたかが知れている。
 しかし、その隙を逃す能力者では無かった。
 キメラを追う様に、レン、サルファ、二三男、タケシの四人が四方から跳躍する。
「‥‥断つ!」
 レンが鬼蛍を構える。
「終わりだ!」
 サルファがコンユンクシオを持つ手に力を込めた。
「シメは華麗に‥‥」
 二三男が刀に手を添える。
「緩やかに‥‥しかし力強く!」
 タケシが居合いの体勢を取った。
 四者四様の得物が光に煌めく。
 跳んだ勢いと、体をひねる勢いを合わせて、キメラに向けて刃が舞う。
 赤い輝きが複数の小さな螺旋と、それによって作られる一つの大きな螺旋とを描いた。
 同時に激突した金属が甲冑の各所で激しく瞬き、爆発するかのように火花が飛び散る。

 四人が着地してからやや遅れて、キメラが地響きを立てて落ちる。
 最早動く気配は無い。
 むしろ、良くぞここまでもったと言うべきだろう。
 それほどまでに七人の連携攻撃は凄まじかった。
 能力者たちはキメラを中心に円を描くような陣形を取り、敬礼をする。
 任務完了だ。  

●ラウディの評価
「お疲れ様でした」
 ラウディの前に集合した能力者たちをクラウディアが労う。
「ラウディさん、あんな感じでいかがでした?」
 レンが達成感に満ちた表情で問う。
 他の面々も、自らが為した連携技にかなり満足しているようだ。
「ふむ、確かにそれなりに楽しませてもらった」
 ラウディが無表情に頷く。
「それはよかった」
 タケルが笑顔で応じ、続ける。
「では、次からは美しい動きが見たければサーカスにでも行くことです」
 そんな痛烈な嫌味にも、ぴくりとも反応せず、ラウディはクラウディアへと視線を移す。
「依頼の成功条件について、きちんと伝えたのか?」
「‥‥はい」
「そうか」
 言って、ラウディは盛大にため息をついた。
 数人の能力者が、その反応に顔を見合わせる。
 しばらくの重い沈黙の後、ラウディは面倒くさそうに口を開いた。
「全員で攻撃する、という条件は見えなかったのかね?」
 あ、とタケルは思わず声を漏らした。
 そう。
 能力者たちは八人。
 だが、実際の連携に加わったのは、タケルを除いた七人でしかなかった。
「サーカスとはよく言えたものだ」
 心底呆れたようにラウディが言う。
「――貴様、ふざけているのか? ‥‥戦いは、遊びではないのだぞ‥‥!」
 激昂したようにサルファが叫んだ。
 不思議そうな顔で、ラウディは彼の顔を見つめる。
「君は、あの騎馬戦もどきが遊びじゃないと言うのか?」
「そ、それは‥‥」
 言葉に詰まる。
 今回は辛くも成功したものの、あの戦法は危うい。
 バランスを崩して転倒してしまえば、体のいい的に成り下がってしまうのだから。
 逆に言えば、今回のようなキメラ相手だからこそ使えた戦法、とも言える。
 実行した三人は、身をもってそのことを実感していた。
「‥‥ま、いいさ。キメラは倒せたのだし、そこそこには楽しめたのも事実だ」
 そう言って、ラウディは身を翻す。
「次からは、もう少し慎重に成功条件を確かめ給え。最後の希望の諸君」
 背中越しに言い放ち、ラウディは歩き出す。
 フォローしているのか馬鹿にしているのか、酷く分かりづらい言い方だ。
 残ったクラウディアが、困ったような顔で何かを言おうとして、口をつぐむ。
 そのまま深々とお辞儀をすると、彼女もラウディを追って歩き出した。

 終了後、能力者たち数名でもって、サルファが兵舎で営むバーにてささやかな慰労会が営まれた。
 いつもより辛く感じる酒を嗜みながら、能力者たちは明日への英気を養う。
 失敗といっても、致命的なものでは決して無いのだ。
 挽回のチャンスはいつでもある。
 苦い思い出を噛み締めながら、それでも能力者たちは前へと進むことを決意したのだった。
「‥‥ん。パパのもんじゃ焼き、すごく美味しい」
 ――サルファのことをパパと呼ぶ、若干一名の少女を除いて。