●リプレイ本文
●とある湖畔のログハウス
ログハウスに住む旭(
ga6764)はラボから逃げてきたビーストソウル型KV少女『サベージクロー(愛称サビー)』と共にKV少女を使った強盗団等の犯罪者と戦うフリーランスのPMSCsだったが、今はここで隠遁生活をしている身だった。
「マスター。少女連れがくる」
スクール水着の上にセーラー服を着込んだ長い黒髪のKV少女サビーが不審者の来訪を告げる。
「少女? 物騒だね。ラボの関係者かな」
「分からない。でも、こんな所に少女連れ‥‥」
「何かある‥か。サビー、戦闘準備」
「了解。マスター」
「‥‥ねぇ。そのマスターっていうの、やめない?」
「了解。マスター」
「‥‥やっぱり、いいです」
サビーのずれた返答に苦笑いを浮かべ、旭は来訪者を出迎えに向かった。
グリフィス(
gc5609)は元は軍人だったが戦いに明け暮れる生活が嫌で軍を抜け、相棒のシュテルン型KV少女『クリナーレ』と平穏に暮していた。
しかし先日、独立傭兵から半ば強制的な依頼をされ、仕方なくここに住む旭達の始末にやってきていた。
そう、偶然にも2人は共に戦いを忌避する者達だったのだ。
「戦いなんてしたくはないが‥‥だがやる以上は本気で!」
しかし標的がどんな人物か知らされていないグリフィスは問答無用で小銃「ブラッディローズ」を相手のKV少女に放ち、クリナーレがヘビーガトリング砲を旭に叩き込む。
「やっぱり敵か!」
「マスターをやらせはしません!」
旭は聖剣「デュランダル」の幅広い刀身で弾幕を防ぎ、サビーは散弾を受けながらもガウスガンと粒子砲で反撃。
「隊長!」
クリナーレはグリフィスの前に飛び出してガウスガンをシールドガンで受け、粒子砲はその身で受け止めた。
クリナーレは少し無口でクールな印象があるが‘マスターなら命を投げ打ってでも守る’という強い意志も持った子なのである。
「クリナーレ、相手をスイッチ」
「了解」
クリナーレはグリフィスが旭を小銃「FEA−R7」で牽制している間にサビーに肉薄してゼピュロスブレードを一閃。サビーのセーラー服が斬られ、スクール水着が露になる。
一見サビーの体にはダメージがない様だが、この次元に留める為のエネルギーフィールドは大きく減衰している。
「よくも‥‥」
不意にサビーの怒りで小刻みに震える体に赤いラインが徐々に浮かんできた。
「よくもマスターに頂いたセーラー服を台無しにしたなっ!!」
サビーはダメージが蓄積すると全身に赤いラインが浮かび上がり、苛烈な性格に変貌するのだ。
「そんなこけおどしに!」
クリナーレがブレードを振りかぶった瞬間、サビーは剛装アクチュエータ『インベイジョン』Bを発動。
高速機動で懐に潜り込むと腕にインプラントされた高分子レーザークローを起動し、クリナーレの胴を左右から挟み込むように薙ぎ払う。
「ゴホッ!」
クリナーレの体がくの字に曲がり、手からゼピュロスブレードが零れ落ちる。
サビーはそのままタックルし、高速機動で湖まで押し切り、クリナーレと共に湖に沈み込んだ。
(水に入ればこっちのものだっ!)
サビーは『インベイジョン』Aを発動、眩く輝くレーザークローで袈裟切りにし、一文字に引き裂き、光の刃を腹部に突き立てる。
「カハッ!」
(トドメ!)
クリナーレの口から苦鳴と共に空気が零れ、トドメの刃がクリナーレに迫る。
しかし
(クリナーレ!)
刃は2人を追って湖に飛び込んだグリフィスの体を引き裂いた。
(隊長ーー!)
(俺に構うな‥やれ!)
グリフィスが苦痛に顔を歪ませながら目で訴える。
(了解!)
クリナーレはPRMを知覚モードで全力起動。スナイパーレーザーVE−01でサビーの頭を撃ち抜いた。
「キャーー!!」
サビーは頭を抱えて水面に急浮上。
「サビー!」
駆けつけた旭が抱えて岸まで連れ上げた頃には既に透化が始まっていた。
「くっ‥‥君にもっと楽しい世界を見せてあげたかったのに‥‥ごめん」
「‥‥いいえ。マスターはラボしか知らなかった私に色々な世界を見せてくれました。その全てが楽しくて‥‥その全てが宝物です」
サビーは旭に微笑みかけ
「マスターには感謝しています。本当に‥ありが‥」
その言葉を最後にサビーの姿はセーラー服だけを残して完全に掻き消える。
「サビー‥‥」
旭は残されたセーラー服をギュッと抱きしめた。
クリナーレの肩を借りて湖から上がったグリフィスはその様子をじっと見ていた。
「すみません‥‥こちらも負けるわけにはいかないんです」
そして旭から背を向け、クリナーレと共にその場を立ち去った。
こうして戦いを忌避する2人の男の戦いは終わった。
だがもし戦う前に2人が言葉を交わしていたら‥‥互いの境遇を知っていたら‥‥また違った結末があったかもしれない。
●雪降る廃墟
バグア大戦時はロシア軍特殊部隊に配備されたキリル・シューキン(
gb2765)は除隊後、世界各地の独立・革命運動を支援する戦争屋になった。
そして今は欧州某国で内戦があり、その革命軍に参加していた。
(能力者は戦いの運命を背負った存在なのかもしれないな‥‥)
『こちらリーリャ。敵を捕捉しました、中尉』
そんな事を思っていると、パートナーのS−01型KV少女『リーリャ』から無線が届く。
リーリャは古参兵士であったキリルにずっと付き添い、共に死線潜り抜けた間柄だ。
そのため今でも最終階級の『中尉』と呼び、今も共に戦い続けているのだが、本当はキリルと静かに暮らしたい思っていた。
だが、未だにその事は口に出せていない。
(あれか‥‥)
キリルが双眼鏡で確認すると、政府軍の対KV少女用スーツをピチピチに着込んだ黒髪の男と、同じスーツを着た長い黒髪の少女が見えた。
「よし、仕掛けるぞリーリャ」
『了解です。‥‥ですが自分と違って、中尉は替えがないのです。お願いですから無理をしないでください‥‥』
リーリャがこんな気遣いをするのは除隊後のキリルはどこか死に急ぐ癖があるためだ。
「分かっている。だが替えがないのはリーリャも同じだ。無理はするな」
『‥‥はい』
キリルがそう告げると無線機からやや嬉し気な声音が返ってきた。
「マスター、わざわざそんなピチピチな服を着なくても‥‥」
「大丈夫だ、問題ない」
カルマ・シュタット(
ga6302)は自身のシュテルン型KV少女『ウシンディ』の問い掛けに自信満々で答えた。
「でも‥‥」
「大丈夫だ、問題ない」
ウシンディと同じサイズなので確かに窮屈だが、せっかく支給品という名目でペアルックが着れるのである。利用しない手はない。
そう、この2人はパートナー以上、恋人未満という微妙な関係なのである。
「ウシンディはその‥俺とペアルックは、嫌か?」
「え? あの‥嫌じゃないです。その‥嬉しいです」
「そ、そうか‥‥」
「‥はい」
なにやら照れくさい。
そうして2人が少し良い雰囲気で歩いていると
――ドォン!
不意に2人の横手で何かが爆発。
「グハッ!」
吹き飛ばされた2人がが壁に叩きつけられた。
「マスター!」
爆発でフィールドを削られたが体はかすり傷程度のウシンディはカルマを連れてすぐに身を隠す。
「‥なんだ? 何処から攻撃を受けた?」
「分かりません。たぶんトラップか何かだと思いますけど‥‥」
それはキリルがグレネード弾で作った有線IED(即席爆破装置)だったが、2人にはそこまで分からない。
そして今度は放物線を描いてグレネード弾が飛んで来た。
「チィ!」
物陰から飛び出すと再び近くで有線IEDが爆発し、2人とも吹き飛ばされる。
「くそっ!」
「私が突貫します!」
ウシンディはグレネード弾が飛んで来た方向に走りこみ、廃墟越しに巨大剣「シヴァ」を振るった。
廃墟が切断されて吹き飛び、瓦礫と共にグレネードランチャーがバラバラになって飛び散ったが射手の姿はない。
これも時限式に改造したグレネードランチャーによるトラップなのだ。
(これもトラップ? だったら敵の狙いは‥‥私達に隙を作る事!?)
ウシンディがその事に気づいた直後、
――タァン
1発の銃声が廃墟に響き渡った。
「ぐふっ!」
「‥え?」
そして、ウシンディの目に胸を撃ち抜かれてゆっくりと倒れるカルマの姿が映った。
「マ、マスターーー!!」
ウシンディが慌てて駆け寄ってカルマを抱き起こすと、その胸からはだくだくと血が溢れてくる。
「あ‥ああ‥‥」
ウシンディは必死に手で胸を押さえたが血は止まらず、カルマの顔色が徐々に青白くなってゆく。
「死なないでマスター! 死んじゃダメーーー!!」
ウシンディの瞳からボロボロと涙が零れ、カルマの顔を濡らす。
「ウシンディ‥‥そんな悲しそうな顔、するな‥‥」
カルマは震える手を伸ばし、ウシンディの涙を拭うとそっと微笑んだ。
「マスタぁ〜‥‥」
ウシンディがその手をギュッと握る。
しかしカルマにはもう握り返す力が残っていない。
「今まで‥‥楽し、かった‥ま、た‥な‥‥」
それが、カルマの最後の言葉となった。
「マスター! マスター! マスターー!!」
ウシンディはカルマの胸に縋って絶叫し、何度も何度も大粒の涙を零す。
リーリャがカルマを仕留めたスナイパーライフルD−02を構えて用心深くウシンディに近づく。
「‥‥お願いがあります。私のパンツを‥脱がしてください」
「‥‥分かりました」
リーリャが願いを叶えると、ウシンディは再びカルマの側に跪く。
「私のマスターはアナタだけです。だから‥‥」
ウシンディがそっとカルマと唇を合わせる。
やがてウシンディの姿が薄れて消え、残されたカルマの死体には雪が積もり、全てが白く覆いつくされていった。
「任務完了しました」
「すまない‥‥お前には苦労をかけてばかりだな」
全てを終えて戻ってきたリーリャをキリルが労う。
「いえ、中尉のためなら自分はどんな苦労も厭いません」
「‥‥そうか。では行くぞ」
「はい」
そして2人は戦場を巡る。
おそらく死が2人を分かつまで‥‥。
●とある戦場
「あれ、諌山さん? うわぁ〜久しぶりだね、元気にしてた?」
弓亜 石榴(
ga0468)は敵側に諌山美雲(
gb5758)を見つけると軽い調子で声をかけた。
「ざ、石榴さん‥‥」
「誰なの美雲?」
美雲のディアブロ型KV少女『みくもん』が不思議そうに尋ねる。
みくもんは見た目、体型、性格、声、全てが美雲と瓜二つで、髪をポニーテールで纏めていた。
「昔‥色々あった人‥‥ホント‥色々‥‥」
美雲が何かトラウマでも思い出したかのような、とてつもなく嫌そうな表情で答える。
「色々って?」
「(ピー)とか(バキューン)とか(パオーン)だよ」
「うわぁ〜‥‥」
石榴の言葉にみくもんが顔を赤らめる。
「諌山さんが心の奥に秘めていた願望を私が叶えてあげたんだよ」
「違います! アレはぜーーんぶ石榴さんの願望で、私は単なる被害者です!」
美雲が怒鳴ると石榴のシュテルン型KV少女『愛子』も相槌を打つ。
「なんで愛子ちゃんまで頷いてるの?」
「私も被害者の一人だからよ」
「えぇー愛子ちゃんも喜んでたじゃない」
「1mmも喜んでないわよ!!」
「愛子ちゃんって相変わらずツンデレだね」
「誰がツンデレよ。私はホントに‥」
「ともかく!!」
美雲が大声を上げて話を遮る。
「飛んで火に入る夏の虫です。積年の恨みも込めて叩きのめしてあげます!」
「えーー止めようよ。私、両方助かる方法考えちゃったんだ。諌山さんもその子が消えるのを見たくないでしょ?」
「問答無用です! やっちゃえみくもん!」
「うん!」
美雲は石榴の提案を蹴り、みくもんがスナイパーレーザーを放つ。
「仕方ない。愛子ちゃん、あの子を足止めして」
「私もできれば向こうに加勢したいんだけど‥‥」
「ひどっ! そんなこと言わずに協力してよー!」
「こら! 抱きつくんじゃないわよ」
「協力してくんないと脱がしちゃうよー」
「分かったわよ! 足止めすればいいのね」
「うん、兎に角時間稼ぎをお願い」
「はぁ‥‥」
愛子はグレネードランチャーをみくもんの周囲に放って土煙を巻き上げ、更にH−01煙幕銃で煙幕も張る。
「見えなくったて気配を探れば‥‥」
みくもんが周囲に意識を集中する。
「そこだー!」
そして捉えた気配にプラズマリボルバーを連射。
「キャーー!! みくもんストップ! 私よ私!!」
「え、美雲なの? もー危ないじゃない」
「それはこっちセリフよ‥‥」
危うくみくもんの天然ドジっ娘で殺されかける美雲だった。
2人が煙に翻弄されている隙に石榴が美雲に迫る。
だが、煙の中にはみくもんしかいない。
「あれ?」
「覚悟ー!」
煙を逆利用して石榴の後ろに回り込んだ美雲が知覚刀の乙女桜を振りかざして迫る。
しかし煙に紛れていた瓦礫で脛を殴打。
「アウチッー!」
涙が滲む程の痛みで絶叫し、バランスを崩した美雲の体が前方にダイブ。
「わわわっ!」
倒れまいと必死に何かにしがみついたが、その何かは美雲の体重を支えきれずにズルリと下がり、美雲は顔面を地面にぶつけた。
「いたた‥‥」
身を起こすと、その手には何故かホットパンツが‥‥。
「え?」
「諌山さんって大胆だね。ぽっ」
パンツ丸出しにした石榴がわざとらしく頬を染める。
「わーー!! 違うんです! これは単なる事故で! 全ては私のドジっ娘のなせる業というか‥‥」
美雲が顔を真っ赤にして慌てふためく。
「隙ありー!」
その隙に石榴が美雲が襲い掛かった。
「しまった!」
「ククク‥女の子は絶対私の寝技からは逃げられない!」
自信満々にダメダメな事を誇る石榴が押さえ込みに入る。
「ま、負けません!」
だが美雲もくすぐり技で対抗。
「あはははっ! そ、そっちがその気なら」
「え? ぁ‥そこ‥ダメです。そこは敏感で‥‥」
「フフフ‥諌山さんの弱い所は全部知ってるもんねー♪」
弱点(?)を突かれて力の抜けた美雲は石榴に崩れ上四方固めで押さえ込まれた。
「さぁ! 降参して自分からぱんつを脱がないと、ご主人様が素敵な地雷の犠牲者になっちゃうぞ」
「じ、地雷‥‥」
「えぇーー!?」
「最低だわ、この人‥‥」
美雲とみくもんが顔を赤らめ、愛子が思いっきり呆れる。
「じゃあ、美雲も脱ぐなら脱ぐ」
「えぇーー!! なんでっ!?」
「だって私だけ脱ぐのは不公平だもん」
「それじゃ地雷踏むのと変わモガッ」
石榴が自身のバストで美雲の口を押さえ込む。
「OKOK♪ じゃ、脱がせるねー♪」
(イヤーァーーー!!!)
そして美雲のパンツが奪われた。
「スースーする‥‥」
「うぅ‥‥まさかこんな方法でパンツ狙いに来るとは‥‥。相手が石榴さんだって事を忘れてた‥‥」
美雲とみくもんは居心地が悪そうだ。
「じゃ、今から四人でハンバーガー食べに行こう! KV二人はのーぱんでね!」
「なんで私まで脱がなきゃいけないのよ!」
愛子はもちろん突っぱねたが、ハンバーガーは4人で美味しくいただき、ここでの戦闘は平和的(?)に終了した。