タイトル:【JTFM】天を突く門番マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/01 00:24

●オープニング本文


 カリでの包囲戦に勝利した事によりコロンビアの地からバグアの拠点を一掃してから、およそ1ヶ月。
 その間、コロンビア国内ではバグアの残存戦力の掃討と戦力の回復が行われた。
 バグア側もキメラ四天王のケットシーを暗躍させて兵糧攻めを行い、バグア四天王のティルダナがUPC南中央軍を退けるなど一部では奮戦したものの、人類側に大きく傾いていた大勢の流れを変えられる程ではなかった。
 そしてこの1ヶ月の間にUPC南中央軍はコロンビア各地の戦力を集結、どうにかエクアドルへ進攻する体勢を整えたのだった。

 事前に行っていた先行偵察により、エクアドルの首都であるキトに到るまでの間に3つの拠点がある事が判明している。
 セオリーに従えば各拠点を各個に潰してゆくのがベストであるが、この3つの拠点は相互距離が近く、1つの拠点を攻めている間に他の拠点から増援が送られて挟撃される危険性があった。
 そのため、UPC南中央軍の総司令であるジャンゴ・コルテス大佐は戦力不足は傭兵部隊で補い、3つの拠点を同時攻撃を敢行する事を決意する。

 こうして、エクアドルをバグアから解放する最初の侵攻作戦が開始されたのだった。



●拠点A

 UPC南中央軍のKVを中心とした部隊が三連拠点の一つに迫る。
 そして拠点が視認できる距離まで近づいた時、彼らは異様な物を目にした。
「なんだあれは‥‥」
 それは周囲の建造物よりも遥かに高く、天を突く様にそびえ立っていた。
「‥‥巨人?」
 そう、それは人型をしていた。
 だが人ではない。
 それは人類の手で作り出された鋼鉄の巨人。
 奉天北方工業公司が開発した補給機型KV『西王母』
 直立時の全高は32.6m。
 並みのKVの5倍程。
 現存するKVの中で最も飛びぬけた巨体が敵拠点の前に立ち塞がっていたのである。
「なぜ敵の拠点に西王母が‥‥?」
 その疑問は敵拠点に立ち塞がる西王母の姿を仔細に観察する事で判明した。
 その西王母の装甲は生体ワームのパーツに換装されており、まるで黒い悪魔を思わせるフォルムになっていたからだ。
「‥‥ヴィエントだ」
 そう、その姿はバグアに鹵獲改造されたイビルアイズに名づけらていた敵の機動兵器を彷彿とさせた。
「しかし、ヴィエントは既に破壊されたはず‥‥」
「いや、破壊された後すぐに今度はディアブロの姿で現れたって話だ」
「でも今目の前にいるのは西王母だぜ!」
「ヴィエントは何機もいるって事なのか?」
 兵士達の間に動揺が走る。
『‥我ガ名ハ‥‥ヴィエント‥‥』
 不意にヴィエントから声が響く。
 それは元F1レーサーで傭兵でもあった『シルフィード』という名の男の声だった。
『‥敵ハ‥‥殲滅スル‥‥』
 そして拠点から敵がぞろぞろと姿を現す。
「ともかく攻撃開始だ! だがあの西王母は特に注意しろ! 元が補給機とはいえバグアに改造されている。あの巨体から繰り出される攻撃に当たったらタダでは済まんぞ!!」
 UPC南中央軍は部隊長の号令で敵拠点に攻撃を開始。
 同行している傭兵部隊もそれに続いた。

●参加者一覧

セージ(ga3997
25歳・♂・AA
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
紫藤 文(ga9763
30歳・♂・JG
如月・菫(gb1886
18歳・♀・HD
D・D(gc0959
24歳・♀・JG
アルテミス(gc6467
17歳・♂・JG
美空・火馬莉(gc6653
13歳・♀・ER

●リプレイ本文

「バグアって、どすげーバカなのがわかったでありますぅ」
 雲を突くような巨体の西王母型ヴィエントを見た美空・火馬莉(gc6653)は素体を作ったのは人類側だと言う突込みはこの際無視してそう思った。
「うぼぼ、何か来る場所間違えた感‥‥! ていうか、巨大剣持ってるじゃないですかヤダー! もう帰りゅ!」
 姉との訓練で巨大剣がトラウマになっている如月・菫(gb1886)はヴィエントの威容と、手にしている巨大剣「シヴァ」を目の当りにした途端弱腰になって逃げ出そうとしたが、もちろん他の者達に止められた。
「流石にデカイな。コレが元とは言えKVってんだから驚きだ」
「確かに‥敵に回るとさすがに圧迫感が凄いな‥‥。けど、ここで退く訳にもいかないな」
 セージ(ga3997)とカルマ・シュタット(ga6302)もヴィエントの威容に圧倒されるが、それで戦意が萎える事はない。
「確か西王母って戦闘仕様案が没になった事あったよな‥。ま、アホな事考えてないで、自分とダリアさんは周囲の邪魔な敵を潰して行きます」
 紫藤 文(ga9763)は『シエロリベルタ』の小隊員であるD・D(gc0959)と共にヴィエントの後方にいるヒュドラを狙うつもりだ。
「一番戦闘力が低く、かつ厄介な能力を持つ敵から減らすのは常道でしょうな」
 飯島 修司(ga7951)もヒュドラ狙いだが、まずはタロスを倒して射線を確保するつもりでいた。
「さーて、お仕事お仕事♪ みんな無事に帰還出来るよーにがんばろー」
 そして傭兵達はアルテミス(gc6467)の軽い合図で突撃開始。

 宗太郎=シルエイト(ga4261)と紫藤とD・Dは左へ迂回。
 カルマと飯島は積極的に前に出てタロスに迫り、菫が後に続く。
 アルテミスは距離24でマリアンデールのDR−M高出力荷電粒子砲にエネルギーを漲らせて『ファルコン・スナイプ改』を起動。
「開戦のベルを派手に鳴らすよ〜♪」
 タロス、ヴィエント、ヒュドラを射線上に捉えると『掃射モード』で発射。1条の光が戦場を切り裂き、進路上のキメラを蒸発させ、HWを貫いて走る。
 だが、肝心の目標3機は距離が遠すぎたため、陣形が崩しただけで避けられてしまった。
 しかしその隙を突き、飯島がブーストでタロスに迫る。
 ヒュドラがSES出力低下弾をタロスの周囲に放ったためディアブロの武装の出力が低下したが飯島は構わず突貫し、タロスの斧を避けるとカウンターでロンゴミニアトを胸部に突き入れ、液体爆薬を爆発させる。
 出力低下のため一撃では倒せなかったが、連続で突きを放って再生する隙も与えずタロスを破壊した。

 同じくタロス対応のカルマもSESの出力が急速に低下。
「これでどうだ!」
 シヴァを大きく振って風を起こしたが出力は戻らない。
 そのためカルマは出力が低下した武器で2機のタロスを相手取る事になった。
 菫がスラスターライフルで牽制してくれるため挟み撃ちにはならないものの、意外と苦戦を強いられる。
 だが、カルマ達がタロスを抑えてくれているお陰で後衛組の3機は安全圏から通常出力でヒュドラを狙い撃つ事ができていた。
「‥息を整えろ‥外す距離では、無い」
 D・DはスナイパーライフルD−02を構え、『スナイピングシュート』で慎重に狙いを定めてトリガーを引くと、超音速で放たれたライフル弾が狙い違わずヒュドラを撃ち抜いた。
「その調子です、ダリアさん」
 ヒュドラの出力低下弾を警戒してD・Dと距離を置いている紫藤も『スナイピングシュート』でPCB−01ガトリング砲を掃射。同じヒュドラに弾丸を浴びせる。
「後衛シューターはちくちくと嫌がらせのように攻撃するのさ」
 アルテミスも『ファルコン・スナイプ改』を継続使用しながらレーザーガン「フィロソフィー」でヒュドラを撃ち抜く。
 ヒュドラもSES低下弾を放ってくるが、3機はその度に位置を変え、確実にヒュドラにダメージを与え続けた。

 一方、ヴィエント対応のセージと宗太郎はSESの機能低下やキャタピラを警戒して距離を取り、火馬莉も距離を取りながら側面に回り込もうとする。
「どうしたシルフィード、随分男っぷりが下がったな? お前はそんなモノは好かなかったろう。ただ愚直に、純粋な速さを追求してきたはずだ。そんなウスノロに乗らされて、てめぇは満足か! てめぇの信念を思い出せシルフィード!」
 宗太郎はヴィエントに乗るシルフィードに呼びかけるとプラズマライフルを連射。
「この距離でも迎撃できるっなら、やってみやがれ!」
 セージもヴィエントの注意を引こうとプラズマライフルとスラスターライフルでキャタピラを狙う。
 しかしヴィエントは急加速し、左右のキャタピラの前後転を駆使した複雑な機動で全て避けきった。
「なっ!?」
 しかもそのスピードは巨体では決して出しえない超速で、宗太郎は目を見張った。
 バグアにとっては巨体の西王母でも機動性を向上させる事など超科学と慣性制御を使えば造作もないのだ。

 ヴィエントはヒュドラを引き連れて移動すると、アクセルターンで飯島の背後に回りこんで巨剣を振り下ろす。
 飯島は身を捻って辛くも避け、代わりにまだ槍に刺さっていたタロスが粉々に粉砕された。
「やはり慣性制御でぬるぬる動きますか。見た目で判断できない、と言うのは厄介ですな」
 飯島は巨剣とは逆の側面へ回り込むが大量のグレネードが放たれ、フェザー砲も照射されてくる。
 どちらも機体に浅く傷を作る程度だが、グレネードの爆発で視界が悪くなった途端、不意に機体に衝撃が走った。
「なに!?」
 それは圧力砲による見えざる攻撃だ。
 飯島は体勢を立て直そうとするが、巨剣が機体を捉えて吹っ飛ばす。
 そして地面に倒れたディアブロをキャタピラで引き潰した。
「まだです!」
 しかし一度踏まれた程度では潰されない飯島は身を起こしてロンゴをヴィエントの足に突き立てる。
 だが威力の低下したロンゴでは足の破壊に至らず、ヴィエントはターンして再び引き潰し、その場でスピン。猛スピードで何度も何度も引き潰し、バキバキという破砕音が断続的に響く。
 そして死の回転が収まった後には完全破壊された飯島のディアブロが横たわっていた。
「ウイング展開、走れストライダー!!」
 しかし飯島機の破壊後に動きが止まった隙を突き、宗太郎のスカイスクレイパーが『回避オプション』とブーストによる高速機動で接近。
「回避オプション‥てめぇの得意技だったろ?」
 ルーネ・グングニルをキャタピラの車輪に突き立て、すぐに離脱した。
「セージさん!」
「任せろ! そのキャタピラ、潰させてもらうぜ!」
 セージはPRMを命中モードでフル起動してキャタピラに刺さったグングニルに照準を合わせ、プラズマライフルを発射。
 狙い違わず撃ち抜くとグングニルが爆発を起こす。
「よし! これで元レーサだろうと、もう非常識な動きは出来まい」
 しかしヴィエントはしっかりと両足のキャタピラを駆動させながら猛スピードでセージに迫り、巨剣を振りかぶった。
「なにっ!?」
 虚を突かれたセージは咄嗟に機盾「ウル」で受け流そうとするが、巨剣の重い一撃は受け流せる様なものではなく、盾ごと左腕を切断して胴まで喰い込み、そのまま機体を吹っ飛ばす。
 そして倒れたセージのシュテルンをキャタピラで踏み潰してトドメを刺した。
「なぜキャタピラが無事なんだ‥‥」
 思わず漏らした宗太郎の視界に、刺さったグングニルの残骸が見える。外からの射撃で爆破できたのは柄に仕込まれたブースター部までで、先端に仕込まれた液体炸薬までは至らなかったようだ。

 しかしヴィエントが派手に動いたため孤立したヒュドラに後衛3機が集中砲火を浴びせて破壊していた。

 だがヴィエントは構わず次の目標を菫に定めて向きを変える。
「ギャー! こっち来るなぁーー!!」
「シュバルツ・ヘクサ。聖なる光で邪悪なる巨神像を討ち払えですぅ」
 半狂乱になった菫を助けるべく、側面に回りこんでいた火馬莉が『ラインの黄金』を撃って気を引く。
 するとヴィエントは圧力砲で反撃し、直撃したヨロウェルの胸部装甲が大きくへこんだ上、機体が後ろに吹っ飛ぶ。
「邪悪なる兄弟機の末裔なら堪えるでありますぅ」
 火馬莉はなんとか着地して踏ん張ると、わざともたもた動いて隙を見せた。
 するとヴィエントは目標を火馬莉に変えて迫ってきた。
「かかったであります」
 火馬莉は一転『ホバー機構「スィール」』で速度を上げて逃走する。
 しかしスィールを使っても尚ヴィエントの方が速い。
「なんてスピードでありますか?」
 火馬莉は『ラインの黄金』を放つがヴィエントは易々と避け、遂に追いつかれた。
「せめてその足をいただくでありますぅ」
 しかし踏みつけられる直前、キャタピラを『ラインの黄金』で撃ち抜く。
 火馬莉はそのまま踏み潰されたが、キャタピラを損壊したヴィエントの機動力がやや衰えた。
「粒子砲でも食らってろ、コナクソー!」
 その隙を逃さず菫は『スナイピングシュート』を起動し、M−12帯電粒子加速砲で損壊したキャタピラを狙い撃つ。
 融解したキャタピラは結合部から千切れて機能を果たさなくなった。
「これで怖いのはもうシヴァだけ‥‥。シ、シヴァなら、攻撃が単調なのです‥‥ってことで、後は任せたぁ!」
 菫はそう言い残して距離を取る。
 だがヴィエントは慣性制御でバランスをとり、片足でも猛スピードで菫を追いてくる。
「嘘ぉ!?」
 そして

 グシャ

 と引き潰し、菫のガンスリンガーは大破した
 ‥‥かの様に思えたが、実はまだかろうじて動ける状態だった。
 ヴィエントはその事に気づかぬまま進路を紫藤とD・Dに向ける。
「前衛組、誰か注意を引いてください!」
「任せろ!」
 紫藤の要請を受けた宗太郎が後を追いながらプラズマライフルを放つが、ヴィエントは上体の重心移動で巧みに避ける。
「くそっ! 片足でもシルフィードならテクで補えるか」
 宗太郎が悔しげに呻く。
「ダリアさんはそのままヒュドラに攻撃を続行して下さい」
「了解です。紫藤はどうするのですか?」
「奴は自分が食い止めます」
「そんな‥無茶です」
 確かに無茶だが、近接戦が苦手なダリア機に相手をさせる訳にはいかないのだ。
「ははっ、無茶だと思うなら速攻でヒュドラを片付けて加勢して下さい」
 紫藤は少しでもヴィエントの足を緩めて時間を稼ぐため、M −SG10とPCB −01ガトリング砲で弾幕を張った。
 しかしヴィエントは簡易イージスシステム「神盾」で身を防ぎながら巧み回避して迫ってくる。
「くっ!」
 紫藤は轢かれる直前に『バレットファスト』とブーストを起動して側面に回りこもうとしたが、完全には避け切れず半身をキャタピラで砕かれた。
「まだいける!」
 だが真デアボリングコレダーを宗太郎がグングニルを刺した傷跡に叩き込み、車軸の一つを破壊する。
 そのためヴィエント動きが更に鈍った。
 そしてD・Dもリニア砲がヒュドラを撃ち抜き、爆散させた。
「よし!」
 D・Dはすぐに紫藤を加勢しようとしたが、ヴィエントはグレネードを周囲に撒きつつフェザー砲も乱射。紫藤のガンスリンガーはグレネードの爆発に巻き込まれて大破した。
「紫藤ーっ!!」
 D・DはR−P1マシンガンを正射しながら距離を取るが、ヴィエントは易々と避けながら間合いを詰める。
 そしてD・Dを間合いに捉えると大きく巨剣を振りかぶった。
「やらせない!」
 ヒュドラが全滅したためタロスを倒し終える事のできたカルマがブーストで駆けつけ、2機の間に割って入ってシヴァを振り上げる。
 すると

 ――ガァン

 巨大な鋼と鋼がぶつかり合って火花を散らし、衝撃で互いの剣が弾かれた。
 巨剣であるシヴァは超重量ゆえ軌道が読み易いと睨んでいたカルマは突きと袈裟を警戒してシヴァを構え直す。
 しかしヴィエントは弾かれた勢いをいなして軌道を変え、巨剣を下から掬い上げる様に振ってきた。
「なに!?」
 西王母のサイズで慣性制御を使えばシヴァだろうと普通の剣と同じ様に扱えるのである。
 カルマは咄嗟にPRMを回避モードでフル稼働させブーストも起動、緊急回避を行ったが完全には避けきれず、左腕を斬り飛ばされた。
「くぅ!」
 ヴィエントは掬い上げた巨剣を上段から振り下ろす。
「どかーんといくよー」
「にゅふふ、貴様の敗因は私にトドメを刺さなかった事だー!」
 しかしアルテミスが荷電粒子砲を『掃射モード』で発射。菫も粒子加速砲を発射。共にヴィエントを撃ち貫いた。
 ヴィエントはバランスを崩しながらも巨剣を振り下ろしたがカルマは身を翻して避け、シヴァを上から叩きつけてヴィエントの巨剣を地面に深くめり込ませる。
「今です宗太郎さん!」
「よし!」
 宗太郎はヴィエントのシヴァに跳び乗るとブーストで刃の上を疾走。胸部付近まで駆け上がって更に跳ぶ。
「シルフィード! 降りられねぇなら‥俺が、破壊してやる!!」
 そして練機刀「月光」を胸部の目の様な機関に突き立て、引き裂いた。
「さぁ、出て来いシルフィ−ド!」
 しかしヴィエントは宗太郎のスカイスクレイパーを殴りつけて叩き落す。
「ぐはっ!」
 叩かれた衝撃と地面に叩きつけられた衝撃で血を吐く宗太郎。
 ヴィエントは横たわるスカイスクレイパーを踏みつけると、キャタピラを猛回転させて磨り潰し、トドメを刺す。
「おぉぉぉーー!!」
 だがその隙にカルマがブーストの勢いを上乗せして剣速を上げた一撃を横凪に振う。
 シヴァはヴィエントの足に喰い込み、へし曲げ、へし折り、遂に両断した。
『ク‥‥マダダ‥‥』
 ヴィエントはその場に膝をついたが、巨剣を杖にして立ち上がろうとする。
「させない!」
 D・Dは巨剣を握る手を狙ってリニア砲を連射。指を破壊されたヴィエントは体を支えられなくなり、うつ伏せに倒れる。
『マダ‥ハシレル‥‥』
 それでもヴィエントはまだ前に進もうとした。
「いや、ここまでだ」
 しかし背に登ったカルマがシヴァを体に突き刺す。
 体を貫通した刃は地面に突き立ち、その場にヴィエントを縫い止める。
「今だ!」
「よっしゃー!」
「やっつけるよー」
 そしてD・D、菫、アルテミスが集中砲火を浴びせかけた。
『モット‥ハヤク‥‥モット‥マエヘ‥‥モット‥』
 ヴィエントはボロボロになりながらも足を擦り、地面を掻き、前へ進もうとする。
『モ‥』
 しかしヴィエントはその場で爆散し、シルフィードの声も聞こえなくなった。



 その後、UPC南中央軍も敵の殲滅を終え、この拠点の制圧は完了した。

 D・DはUPCが事後処理をする光景を目にしながら落ち着き払う為に煙草に火を灯す。
(私が無事なのは紫藤のお陰だ‥‥。私は、弱い‥‥。彼等を見ていると自分の弱さが良く判る )
 D・Dは生き残れた事には安堵していたが、その事を思うと素直に喜べず、深く吸い込んだ紫煙と共に溜め息を吐き出した。


 そして戦闘終了後、ヴィエントの調査が行われた。
 するとコクピットは完全に破壊されていたが、そこにシルフィードの姿はない事が判明したのだった。