●リプレイ本文
「手はず通りでいきます。皆さん警戒をお願いしますね」
音影 一葉(
ga9077)の言葉を受けてA班は隠れていた森から一斉の飛び出すと、一番近い位置にいた青ゴーレムがコチラに気づく。
だが敵が動き出すより早く、一葉がCWが埋まっていると思われる地点に煙幕銃を発射。辺り一面が白く煙って視界を覆ってゆく。
続いて地殻変化計測器設置し、すぐに地下の探査を開始する。
「‥‥‥‥あった! かなり微弱だけど反応があります」
「どこです?」
「2時の方向、距離3m」
一葉が地殻情報をアルヴァイム(
ga5051)のディスタンに転送すると、モニター上に標的マーカーが浮かぶ。
アルヴァイムはG−44グレネードランチャーをマーカーの位置に向けて発射。
グレネード弾の爆発で辺りに抉れた土と、何かゲル状の物体が撒き散らされる。
すると頭に感じる不快感が僅かだが緩んだ。
「うまく命中したみたいですね」
少しだけではあるが苦痛が和らいだため夕凪 春花(
ga3152)が嬉しそうに笑う。
「次は4時のCWです」
自機を4時の方向に向かわせた如月・由梨(
ga1805)だったが、眼前からは槍を構えた青ゴーレムが迫ってくる。
由梨は咄嗟に高分子レーザー砲で迎撃したが、青のゴーレムは易々とそれを避けた。
続いて春花がレーザーをアルヴァイムがヘビーガトリング砲を放つが、これも避けられる。
「やはりCWを先に叩かないとダメなようですな」
アルヴァイムは頭痛に顔を歪めながら忌々しげ言った。
A班がゴーレムとの戦闘を開始した頃、B班も動き始めていた。
「今度こそ、お前との最後の仕事だ。いくぞ、相棒‥‥」
鷹代 朋(
ga1602)はそう呟き、愛機のモニターをポンと叩く。
「よーし! A班も突撃ー! 今日のご飯はスッポン鍋じゃー!」
B班はミア・エルミナール(
ga0741)の景気のいい掛け声と共に森から飛び出し、2時方向のCW埋没地点を目指す。
B班の動きに気づいたTWが向きを変え、プロトン砲を向けてくるが、撃たれる前にミアが煙幕銃を発射。
辺りは濃い煙に満たされる。
続いて鷹代が地殻変化計測器を設置し、すぐに計測に入る。
「‥‥いました。正面2メートル」
「よしっ!」
宗太郎=シルエイト(
ga4261)が発射したG−44グレネードランチャーが土とCWの破片を飛び散らせる。
すると皆を苦しめていた頭痛や不快感が再び緩和した。
「2体減るとずいぶん楽になるね」
ずっと不快そうに顔を歪めていたアセット・アナスタシア(
gb0694)が少しだけほっとした表情を見せる。
「でもまだ気持ち悪いよ。さっさと全部倒して気分スッキリさせるぞー!」
B班はそこから10時のCWを倒すために移動を開始した。
しかし煙幕から出た途端、A班の襲撃に気づいて戻ってきた2体のTWから砲撃が始まる。
地面が抉れ、土が舞い上がる中、4機は前進を続けたが、CWの妨害波を受けているためその動きは鈍く、宗太郎のスカイスクレイパーとアセットのディアブロが被弾してしまう。
それでも4機は各個に反撃しながら前進を続けた。
だが不意に拠点の施設から轟音が鳴り、鷹代の阿修羅が横っ腹にレールガンを喰らって吹っ飛んだ。
「ぐぅっ!」
倒れた鷹代の阿修羅は胴体が大きく抉れ、内部機構がむき出しになりスパークを発している。
コクピット内では危険を知らせるレッドランプがアチコチに灯り、幾つかの装置が使用不能だ。
しかし、機動は可能で、火器管制も全て正常。まだ戦闘が行える状態だったのは救いだった。
「いくら装甲の薄い阿修羅だからって、簡単にやられる気は無いさ‥‥。手負いの獣ほど怖いものは無いってこと‥‥教えてやるよっ!」
鷹代はコントロールパネルを操作して機体状態を少しでも回復させながら阿修羅を立たせて走らせる。
だが、施設から今度は幾筋もの光が走り、ミアの阿修羅を貫いた。
「うわっ!」
ミアの阿修羅の胴体には幾つもの穴が穿たれ、小さな爆発が起こる。
「くっそ〜! 後で倍返しにしてやるぅ〜!!」
ミアの阿修羅も酷い状態だったが、無線から聞こえてくるミアの元気一杯の声は皆を安心させた。
そしてCWのいる予想地点に到着した直後に鷹代が煙幕銃を発射。
「早く煙の影へ!」
4機は煙幕に隠れると今度はミアが地殻変化計測器を使い、アセットがグレネードランチャーで攻撃する。
すると今回もうまく命中したらしく、CWは妨害波がまた軽減した。
さすがのCWも1機まで減ると苦痛はかなり減り、もう我慢できない程ではない。
「よ〜し、倍返しタイムだぁー!」
そうして3機目のCWが倒される少し前。
A班では
春花&一葉 対 青ゴーレム&TW
由梨&アルヴァイム 対 赤ゴーレム&黒ゴーレム
という図式が出来上がっていた。
春花と一葉は煙幕でTWの射線に隠れながら青ゴーレムをレーザーと試作型スラスターライフルで迎撃。
だが青ゴーレムは怯む事なく接近し、春花のナイチンゲールを槍の間合いに捕らえると鋭い突きを放ってきた。
春花は真ツインブレイドで辛くも受け止めるが、さらに放たれた2撃目3撃目をそれぞれ肩と腰部に受ける。
「キャ!」
その重い2撃の衝撃はコクピットを揺さぶり、肩の装甲が削られ、腰部装甲には穴を穿たれたが、春花は真ツインブレイドでコクピット部分は守りながらレーザーで反撃する。
一葉もディスタンを膝立ちにさせてライフルで狙撃を行う。
至近からのレーザーとライフル弾を喰らった青ゴーレムは一旦距離をとる。
そうして敵の素早い攻撃に意外な苦戦を強いられていた、その時。
ずっと脳に受けていた苦痛が今までで一番弱まった。
それはB班が2機目のCWを倒したためである。
そして、この時ずっと待っていた2人は一気に勝負に出た。
「これで終わりなさいっ」
春花はツインブレイドを回転させて敵の槍を弾くと、その回転力を保ったまま青ゴーレムに胸部を袈裟斬りにする。
胸部を大きく抉られた青ゴーレムは一旦距離を置いて体勢を整え、再び槍を構えて突進してくるが、そこを狙って一葉はライフルを正射してその勢いを殺す。
そしてグングニルを構えると、一気にディスタンを加速させた。
「怯んではいけません。貴方の装甲も速さも身を守る為の物じゃない‥‥このグングニル、一撃の為にあるんです!」
青ゴーレムもカウンターで槍を繰り出してくるが、一葉はディスタンの装甲を信じ、そのまま敵の攻撃を受けながら、渾身の一撃を青ゴーレムに見舞う。
「防げるものなら防いで下さい‥‥その装甲、全て貫いてあげますっ」
グングニルの柄のブースターが火を噴き、ディスタンの腕を通じて確かな手応えと衝撃が一葉に届く。
グングニルは青ゴーレムの胸部装甲を完全に突き破り、背中まで貫通していた。
そして青ゴーレムはそのまま完全に沈黙したのだった。
もう一方では、由梨が黒ゴーレムの鉄球攻撃を避けつつレーザーで牽制し、アルヴァイムが正面に立ちふさがった赤ゴーレムにガトリング砲を撃ち込んでいた。
だが、黒ゴーレムは己の装甲の厚さを頼りに攻撃を繰り返し、赤ゴーレムは手にした肉厚で幅広い双剣をまるで盾の様に使って自らをガードしながら突っ込んできた。
「あの武器、まるでディフェンダーの様ですね」
「おそらくは類似品でしょうな。地球の兵器のモノマネとは、バグアもずいぶんと落ちたものですね」
剣で身を守りながら踏み込んできた赤ゴーレムの一刀目をアルヴァイムは避け、二刀目は『アクセル・コーティング』で強化した装甲で上手く弾いて、敵の脇を抜ける。
そこからブーストを使って一気CWの元まで駆け抜けて、すぐに煙幕張る。
そして後に続いて来た由梨が地殻変化計測器が使って地中を操作して位置を割り出すと、すかさずグレネードランチャーを発射。
2人は鮮やかな手際でゴーレムが追いすがってくる前にあっさりとCWを片付けた。
「さて、これでようやく嫌な頭痛に悩まされなくて済みますな」
「えぇ、思う存分戦えます」
2人は不敵な笑みを浮かべると改めてゴーレムと向き合った。
対するゴーレムは黒はアルヴァイムに向けて鉄球を頭上で振り回し、赤は剣でガードしながら由梨に向かってくる。
由梨はレーザーを撃ち放って迎撃するが赤ゴーレムは剣で防ぎながら突っ込んでくる。
由梨は冷静に相手を見据えて機盾レグルスを構え、KV刀を鞘から抜く。
そして、頭を狙ってきた赤ゴーレムの横薙ぎの一刀を由梨は盾で受け止め、続いて足下を薙ぎにきた第二刀をKV刀を下げて受け止める。
「ゴーレムにしては良い動きです。やはり無人機ではないのでしょうか?」
赤ゴーレムはそのまま矢継ぎ早に攻撃を仕掛けてくるが、3機の高出力ブースターを搭載している由梨のディアブロは並のKVでは不可能な複雑な機動で敵の攻撃を次々とかわし、その隙をついて刀で敵の膝間接を貫いて動きを止め、肘間接を斬り裂いて武器を封じ、次々と敵の機能を奪ってゆく。
「終わりです!」
最後は首を跳ね、動力源があると思われる胸部に刀を突き立ててトドメをさした。
そして赤ゴーレムから引き抜いたその刀身にはまるで血の様な赤い液体が付着していた。
一方のアルヴァイムは黒ゴーレムの鉄球の間合いを完全に見切り、その外側から延々と銃撃を加え続けていた。
敵の装甲が厚いためなかなか倒れてはくれないが、由梨が赤ゴーレムを倒した今では2対1で戦える。
既に勝敗は決したと言ってよかった。
その頃B班は拠点からの長距離砲を警戒して煙幕に身を潜め、TWが近づいてきた所で近接戦に持ち込み、長距離砲を撃たせない作戦を行おうとしていた。
「敵を目で追いすぎるな‥‥全体を見るんだ。落ちついて自分の役割を果たせ‥‥!」
アセットは仲間の援護射撃を受けながら思い切って煙幕から飛び出すと、突撃仕様ガドリング砲とR−P1マシンガンを掃射した。
TWは銃弾を浴びながらもプロトン砲を撃ってくるが、アセットはディアブロを地面ギリギリまで伏せさせて避けると機剣黄龍を抜く。
そしてTWの懐に入ると首に思いっきり振り下ろした。
「くっ! 硬い‥‥」
だが、首を切断するまでは到らず、TWはアセットに体当たりを仕掛けてくる。
「耐えてディアブロ!」
アセットはディアブロの出力を最大まで上げて足を踏ん張り、体当たりに耐えると、再び黄龍を首に振り下ろす。
その一撃で今度こそTWの首は飛び、その巨体は音をたてて地面に倒れ伏した。
同じ頃に、もう一匹のTWもミアのツインドリルと鷹代のソニックブレードの連携により倒されており、これで残るは長距離砲のみ。
「喰らえっ!」
宗太郎はスカイスクレイパーを車両形態にし、ジクザク走行で拠点の傍まで来ると、人型形態に戻って建物内にグレネードを撃ち込んだ。
爆発の衝撃で壁も吹っ飛び、ぽっかり穴が開いたが、粉塵のせいで中の様子は分からない。
宗太郎が慎重に中を探査していた、その時。
建物内部から轟音が鳴り響き、宗太郎のスカイスクレイパーがレールガンを喰らって後ろに吹っ飛んだ。
さらに追い討ちで放たれたレーザーが倒れたスカイスクレイパーに突き刺さってゆく。
「ぐはっ!」
スカイスクレイパーはダメージは甚大で、被害はコクピットにまで及んでおり、宗太郎の額から血が流れ落ちる。
そして建物の粉塵の中から何かがゆっくりと進み出てきた。
「‥‥阿修羅?」
それはミアや鷹代が乗るKVとまったく同型の、土色をした阿修羅だった。
「FRの時と同じか。バグアって本当に地球の兵器を盗むのが好きなんだね」
「もしや敵に手に落ちた機体があるとは‥‥。その姿、見るに忍びないですね」
「バグアがあたしと同じKVに乗ってるなんて許せない! 速攻で倒す!」
アセット、鷹代、ミアが宗太郎を守るため、一斉に敵阿修羅に向けてガトリング砲を正射した。
だが、敵阿修羅は瞬時に飛び退いて避けると、阿修羅とは思えぬ高速機動で3機の横に回りこむ。
「速い!?」
そして跳躍して3機の頭上に位置取ると、レーザーで鷹代の阿修羅の後ろ足の関節を正確に射抜いて動きを封じ、次いで動力炉を撃ち抜いた。
「馬鹿な!?」
鷹代が呆然と呟いた次の瞬間、彼の阿修羅は爆発し、炎に包まれた。
炎の中から脱出カプセルが排出されてきたが、中の鷹代は気絶していてピクリとも動かない。
「このぉ!!」
激昂したミアがガトリング砲を放つが、敵は空中で真横に移動して避け、そこから高速で地上に降下してミアの阿修羅の間近に着地すると、ほぼ0距離の位置からレールガンを発射。
胴体を撃ち抜かれたミアの阿修羅はそこから真っ二つに引き裂かれて地面に倒れ伏した。
「ミア姉さんっ!!」
ミアの阿修羅の無残な姿にアセットが悲痛な叫びを上げる。
「くそぉ!」
宗太郎は傷ついたスカイスクレイパーを起き上がらせるとロンゴミニアトを構える。
「突っ走るぞ、スクレイパー。リミットドライブ、『シルフィード』!」
宗太郎はブーストと回避オプションを併用し、スカイスクレイパーの機動速度を限界まで引き上げて敵阿修羅に突っ込んで行った。
敵からすぐに反撃のレーザーが飛んできたが、宗太郎はスカイスクレイパーをジクザグに走らせ、ギリギリで避ける。
敵はレールガンもスカイスクレイパーを向けてきたが、敵が撃つよりも宗太郎のロンゴミニアトが敵に突き刺さる方が先だった。
敵の装甲を喰い破って深々と突き刺さるロンゴミニアト。
「やっぱりな。いくらバグアに改造されていてもベースは阿修羅。装甲はそれほど厚くない!」
宗太郎はロンゴミニアトの液体火薬を着火。
敵阿修羅は内部からの爆発の衝撃でよろめき、膝をついた。
「トドメだっ!」
そこに宗太郎が追い討ちをかけるが、今度は敵阿修羅のサンダーホーンが先にスカイスクレイパーに突き立ち、強力な電磁パルスが宗太郎を襲う。
「ぐあぁぁ!!」
その隙に敵阿修羅は体勢を立て直すと、拠点施設に向かって跳躍し、壁を蹴って三角飛びの要領で空に跳び上がると、空中で静止して飛行機形態になる。
敵阿修羅の眼下には四方で残骸となったCW、無残な姿のTW、倒れ伏す赤、青、黒のゴーレムの姿があった。
(「ゴーレムまでもが全滅か‥‥まさか人間かここまでやるとは‥‥」)
敵阿修羅はそこからレーザーで3体のゴーレムの胸部を正確に貫いた後、レールガンを拠点施設に向けて撃ち放つ。
数瞬後、施設は轟音と共に大爆発を起こし、周囲に炎とガレキを撒き散らしてゆく。
そして敵阿修羅はその混乱と爆発に紛れて姿を消した。
こうして傭兵達は敵拠点の殲滅には成功した。
ただし味方にも多大な損害を出し、中には重症を負う者もいたため手放しで喜ぶ者はいなかった。
そして、バグアに組する土色の阿修羅の存在など、幾つかの謎も残したのだった。