タイトル:南部森林地帯最終要塞戦マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/19 18:47

●オープニング本文


「現在、北アメリカ南部森林地帯方面軍は敵の本拠地と思われる要塞の包囲戦を行っています。ですが、その戦況は芳しくありません」
 オペレーターが端末を操作し、スクリーンに戦術マップを映し出す。
「敵は巨木を利用した天然要塞に立てこもり籠城戦を続けています。敵要塞のある場所は木々が深く密集していて戦車やKVでの進攻は不可能なため、現時点での攻撃手段は歩兵で搬入可能な程度の携帯火器に限定されています。対するバグア軍の戦力は、敵要塞の3方にある出入り口から排出される小型キメラが多数と中型キメラが少数、出入り口の上部に設置された見張り台のような所にズラリと配備された小型プロトン砲を装備した中型キメラがそれぞれ3体ずつの計9体。そして出入り口の前で、まるで門番の様に佇む大型キメラが一体ずつの計3体が確認されています」
 そこでスクリーンはある人物の姿に切り替わった。
「そして敵はキメラだけではなく、バグアの強化人間と思われる者も混じっています。この人物の名はワニキア・ワナギー。数ヶ月前にある依頼に参加した折り、彼の乗る阿修羅と共に行方不明になっていた能力者です。先日、ある拠点でレールガンを装備した土色の阿修羅が敵として現れたという報告もあり、この阿修羅のパイロットも彼であったと思われます。ワニキアは傭兵だった頃は弓の名手で、敵となった今も弓による長距離射撃を行ってきます。おそらくこの攻撃は一番厄介なものとなるでしょう」
 モニターの映像が切り替わり、一体のキメラの画像を映し出される。
「外見がタートルワームと酷似している事からタートルキメラと名付けられたこの中型キメラですが、その武装もタートルワームと同様で小型のプロトン砲を装備しています。軍はこのタートルキメラの砲撃のため、要塞に近づく事すらできていません。なので軍はタートルキメラの射程外で陣をしき、そこで小型キメラの進攻を防ぎながら睨み合い続けている状況です」
 再びモニターの映像が切り替わり、今度は3体のキメラが映し出される。
「3体の大型キメラはそれぞれ個別の特徴を有しています。一つは首が3つある獣型で炎を吐く事から、すぐに『ケルベロス』である事が分かりました。もう一体は体毛が白く細くてしなやか身体つきをした狼型で、これは『フェンリル』ではないかと考えられています。そして一番大きくて体毛が黒い狼型、これはおそら『ガルム』ではないかと推測されました」
 オペレーターはモニターの映像を再び戦術マップに戻した。
「今回皆さんにしていただきたいのは、9体のタートルキメラ、及びワニキアを排除し、門番の大型キメラを食い止め、軍の歩兵部隊が敵要塞に進入するための橋頭堡を確保する事です。そして何人かは歩兵部隊と共に要塞への攻撃にも参加していただきます。その際には歩兵部隊の陣頭に立っていただきたいとの軍の申し出です。これは先の拠点防衛戦の折りに判明した事ですが、能力者が陣頭に立った場合、歩兵部隊の安心感とそれに伴う志気が向上するからだそうなのです。歩兵に随伴する方は主に大型と中型キメラを相手にして下さい。歩兵は小型キメラならばなんとか対等に戦えますが、中型になると歩兵の携帯火器程度では倒すのが困難な強敵ですので。敵要塞の地下にはおそらく動力炉の様なものがあると思われますので、歩兵部隊が爆薬をしかけて破壊するまでの間、彼らを守りきってください」
 オペレーターはそこで一旦言葉を区切り、戦術マップに幾つかの光点を灯す。
「タートルキメラとワニキアへの攻撃方法は2種類あります。一つは要塞の周囲に幾つかある狙撃ポイントから狙い撃つ方法。もう一つは要塞近くの木に登り、その木から張り出した枝からロープを使って見張り台に直接跳び移る方法です。後者は跳び移る際に敵に察知された場合、空中で迎撃されて撃ち落とされる可能性があります。前者も各狙撃ポイントの位置は敵も把握している可能性があるため、敵側からも狙撃される可能性があります。そのため、どちらも危険である事には代わりありません」
 オペレーターは説明を終えると、少し暗い表情で傭兵達を見つめた。
「今回はかなり無茶で危険な任務です。それにバグアの強化人間となったワニキアの力も未知数です。ですが、このままでは軍は攻め手を欠いたまま疲弊し、その内に逆進攻を受けて壊滅してしまうでしょう。そうなれば兵士に多数の犠牲者が出てしまいます。皆さん、どうか力を貸してください」

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
ミア・エルミナール(ga0741
20歳・♀・FT
聖・真琴(ga1622
19歳・♀・GP
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
神無 戒路(ga6003
21歳・♂・SN
九条院つばめ(ga6530
16歳・♀・AA
八神零(ga7992
22歳・♂・FT
神無月 るな(ga9580
16歳・♀・SN
月影・白夜(gb1971
13歳・♂・HD
文月(gb2039
16歳・♀・DG

●リプレイ本文

 聖・真琴(ga1622)は新居・やすかず(ga1891)、九条院つばめ(ga6530)を伴って2時方面の小隊陣地を尋ねた。
「隊長さん、みんな♪ また来たよ。今度も宜しくネ☆」
「ルイス少佐もお久しぶりです」
「とうとう正念場ですね」
「おや? あなた達は防衛戦で一緒に戦ってくれた‥‥」
「おぉ! 兄ちゃんと嬢ちゃん達。今回も来てくれたのか。いや〜、こりゃ頼もしいぜ、今回もよろしくな」
 するとこの部隊の指揮官であるルイスや以前一緒に戦った事のある兵士達が明るい顔で歓迎してくれた。
「はい、よろしくお願いします。それで皆さん、お元気でしたか?」
 つばめは小隊の面々の中に曹長の姿がない事に気づいた。
「あの、曹長さんはどうされたんですか?」
「‥‥アイツは戦死したよ」
 隊長が不意に表情を暗くして呟く。
「えっ?」
「少し前の戦闘の時に‥‥な」
「‥‥そんな」
「仕方ねぇよ。俺達は嬢ちゃん達みたいに頑丈じゃねぇからな。キメラに撫でられただけでもヘタすりゃ死んじまう。常にそんな死線を潜ってるんだ。それでも俺達はバグアの野郎どもをここまで追い詰めた。人間は決してバグアに劣っちゃいねぇんだ!」
「隊長さん、軍曹さん、伍長さん、ルイス少佐――そして、曹長さんと私が亡骸を運んだ兵隊さん。この地で出会った人たちの『思い』を守るため。私にできることを、精一杯やります‥‥!」
「行きましょう、彼らから受け継いだ僕たちの戦場へ」
「一緒に‥‥勝って帰ろ? ね♪」
「おぅ! もちろんだぜ! なぁ、みんなっ!!」
『オォーーーー!!』
 隊長の檄に合わせて兵士達が鬨の声を上げ、木々の間に木霊した。
 いよいよ決戦である。



「こちらシロウ、前方では小型キメラがうじゃうじゃしてるねぃ。こちらの高台にワニキアの姿は見当たりませんけど他はどうですか?」
 4時方向から攻める班の鈴葉・シロウ(ga4772)が双眼鏡を覗きながら無線機に問いかける。
「ワニキアは予定通り6時方向の高台にいるのを確認した」
 その問いに6時方向の担当班の神無 戒路(ga6003)が応える。
「了解しました。それでは皆さん、予定通りにお願いします」
 12時方面担当班の篠崎 公司(ga2413)が目標の高台から目を反らさず静かに無線機に告げる。
 そして静かに時は過ぎ、時計の秒針が作戦決行の時刻を指し示す。
「いっくぞ〜!」
 まずは6時方向のB班がミア・エルミナール(ga0741)の号令で森から飛び出し、一気に狙撃ポイントの木に向かって走り出した。
「来たか‥‥」
 当然その動きを察知したワニキアは弓を引き絞り、5人全員に狙いを定め『即射』で5本の矢をまるで同時に射たかの様に撃ち出す。
 空気を裂いて飛来した5本の矢は5人それぞれに命中。
 少し遅れてタートルキメラからもプロトン砲の砲撃が始まり、5人の周りに次々の光の矢が注がれる。
 数発はミアと神無月 るな(ga9580)に命中するが、5人は痛みや砲撃は無視して足を止める事なく走り続けた。
 そしてB班少し遅れてA班とC班も行動を開始。
 こちらにもタートルキメラによるプロトン砲の砲撃が始まり、石動 小夜子(ga0121)、真琴、文月(gb2039)が被弾したものの、文月は『竜の鱗』でダメージを緩和し、他の2人も幸い傷は浅い。
「みんな構えてっ」
 3班全てが予定ポイントの到着すると同時に真琴が無線機に叫び、真琴、るな、文月の3人がタイミングを合わせて予めピンを抜いておいた閃光手榴弾を構える。
 その間に公司とやすかずが狙撃ポイントのある木に取り付き、シロウ、つばめ、小夜子、ミアも高台に飛び移るための木に駆け寄る。
「3、2、1。今だっ!」
 そして3人は同時にそれぞれの高台に向かって投げた。
「ん?」
 何かが高台に投擲された事に気づいたワニキアはすぐさま弓を引き絞り、矢で射る。
 閃光手榴弾は空中で矢に貫かれたが、そのまま辺りの強烈な閃光と轟音を吐き散らし、本来の役割は見事に果たした。
「くっ! しまった」
 その閃光を直視してしまったワニキアは自分の迂闊さを呪ったがもう遅い。
 他の2つの高台でも同様に閃光と轟音が起こり、タートルキメラの目と耳を潰していた。


 閃光弾を投げ終えたるなは背中からロングボウと3本の弾頭矢を引き抜いて構えた。
「中型の対処は私に任せてね♪」
 そしてニッコリと魅惑的な笑みを浮かべると、まず一番手近にいた蟷螂型に向けて『強弾撃』の弾頭矢を放つ。
 矢は腹に突き刺さり、仕込まれた爆薬が腹を吹き飛ばして体液を飛び散らせる。
 続く第2矢は頭部を直撃、頭を爆裂させてトドメを刺す。
「フフフ‥‥中距離戦は得意なの♪ 私のお相手務まるかしら?」
 るなは楽しげに笑うとさらに矢をつがえ、今度は熊型に狙いを定めた。


「さ〜て、一番槍として恥じぬ戦いっぷり見ますぜ」
 シロウは枝に結んだロープをしっかり掴むと振り子の要領で敵要塞の高台目指して一気に跳ぶ。
 閃光弾の光でタートルキメラの眼はうまく眩んでいるらしく、反撃もなく無事高台に降り立ったシロウは『急所突き』を発動してケイブルクを一閃。
 タートルキメラの首を切り裂き、パックリ開いた傷口に更に槍先を突き入れる。
「いきます!」
 シロウに次いで跳んだつばめは着地と同時に『流し斬り』を発動、シロウが相手をしているタートルキメラのプロトン砲の射線の前から素早く横に回りこむと『急所突き』でプロトン砲と身体の繋ぎ目にルピネススピアを突き刺す。
 2人はさらに急所を突いてゆき、タートルキメラは穴だらけにし、大量を体液を噴き出させて息の根を止めた。
「やった! 一体撃破」
「よし! いい連携だったよつばめさん、この調子で一気に3体倒しやしょう」
「はい!」
 2人は他のキメラの目が眩んでいる間に次を倒しにかかった。


「参ります!」
 10時方向では『瞬天速』で一足先に木の上に駆け上がっていた小夜子が気合をいれて勢いよく跳ぶ。
 タートルキメラは高台に降り立った小夜子に砲身を向けようと動き出すが、その動作はノタノタと遅く、小夜子はあっさりと射線を外して懐に飛び込み、蝉時雨を抜く。
「ハッ!」
 そしてタートルキメラの甲羅から伸びている頭や足などを狙って連撃を繰り出し、次々と切断して甲羅と大砲だけの無残な姿と化して倒した。
 その隣ではAL−011「ミカエル」を纏った文月が小夜子に少し遅れて『竜の翼』の連続使用で高台にやって来る。
 そして右手に月詠、左手に試作型機械刀を携えると、まず試作型機械刀の超濃縮レーザーブレードで甲羅を易々と切り裂き、そこに月詠を突き立て
、グリグリと抉って内臓を潰し、息の根を止める。
「さすがは最新型のミカエル。パワーが違いますね」
 残った1体には狙撃ポイントを確保した公司がスナイパーライフルで遠距離射撃を行っていた。
 まずは『貫通弾』を使用して大きく傷つけ、後はその傷を狙って精密射撃を行ってゆく。
 タートルキメラからもプロトン砲の反撃がきたが、眼眩な砲撃は完全にあさっての方角に着弾する。
「此処までは想定範囲内。其方は任せましたよ、二人とも‥‥」
 そのキメラも駆けつけた小夜子と文月に倒され、10時方向のタートルキメラはどこよりも早く駆逐された。


「援護する先に行け!」
 そして6時方向では戒路がワニキアに牽制射撃を行っている間にミアが跳んだ。
「よーし、いっくぞ〜〜!!」
 ミアは落下スピードを上乗せしたタバールの重い一撃をそのままタートルキメラに打ち込んだ。
 ガツンと重い手応えが伝わり、タートルキメラの甲羅がひび割れる。
 ミアは着地と同時にもう一度タバールを振りかぶると、同じ所に打ち下ろして叩き潰しタートルキメラの息の根を完全に止めた。
「よし! まず1匹」
 続いて戒路も跳び、空中にいる間にライフルで『強弾撃』をタートルキメラに放つが甲羅に阻まれ、あまりダメージを与えていない様だった。
(「やはり物理兵器が効きづらいのか」)
 戒路は着地と同時にホルスターからエナジーガンを抜いて連射。
 放出されたエネルギー波はタートルキメラの甲羅を易々と貫き、その傷跡からどくどくと体液を噴き出す。
「やるなっ!」
 瞬時に2体のタートルキメラを倒されたワニキアは苦々しい表情を浮かべたが、すぐに冷静になり、無礼な侵入者の一人、ミアに向けて『即射』で5本の矢を一気に放った。
「くうっ!」
 ミアは咄嗟に腕で顔と身体の中心を庇う。
 矢は庇った腕に2本、足に1本、肩に1本、脇腹に1本突き刺さったが、どうにか致命傷だけは避けた。
「この程度でやられる程あたしは柔じゃない! この前の借りを返しちゃるけんねー!」
 矢傷がズキズキと痛むがミアは構わずワニキアの弓の間合いの内に飛び込もうと、そのまま突っ込んだ。
 ワニキアは冷静にミアの動きを追いながら次の矢を放とうとした瞬間、背後から戒路が『影撃ち』で放った弾丸が飛来する。
「なに?」
 ワニキアは身を捻って避けようとしたが『影撃ち』の弾丸は肩に喰い込んだ。
 その攻撃と身を捻ったために生じた隙にミアはワニキアの懐に入り込み、下段に構えたタバールを一気に斬り上げる。
「喰らえっ!!」
 タバールはワニキアの腰から胸にかけて一直線に切り裂いたが、寸での所でワニキアが身を引いたため致命傷には至らなかった。
「くそっ! 浅いか」
 ミアはそのまま上段から2撃目を振り下ろそうとしたが、それより先にワニキアは弓から手を離し、腰の後ろに装着していた爪を両手に嵌めて切りかかってくる。
 右手の一撃目はなんとかタバールで受けたものの続く左手の攻撃までは防げず、ミアは腹を横に切り裂かれた。
 灼熱の激痛が走り、咽の奥から血が逆流してくる。
「ぐふっ!」
 血を吐き、腹と口を押さえ、どうにか足を踏ん張ろうとするが、身体も景色もグラグラしていて意識を保っている事すら難しい。
 そんなミアをワニキアは蹴飛ばし、高台の上から突き落とした。
「ち‥‥くしょ‥‥」
 ミアは薄れる意識の中で悔しげに呟き、地上に落下していった。
「貴様っ!」
 戒路はワニキアの背にライフルを乱射したが、ワニキアは身を翻して避けると一気に戒路の懐に入ってきた。
 戒路はバックステップしながら銃口をワニキアに向けたが、撃つ前に銃身を手で除けられる。
 咄嗟にライフルを捨て、ホルスターからエナジーガンを抜こうとしたが、それよりも先にワニキアの爪が戒路の身体を切り裂いていた。
「ぐぅっ!」
 裂けたジャケットの奥から大量の血が溢れ出し、床に流れ落ちてゆく。
 足に力が入らなくなり膝から地面に崩れ落ちたが、それでもエナジーガンはワニキアに向け、引き金を引く。
 それをワニキアは易々と避けると爪を戒路に胸に突き立て、引く抜く。
 その一撃で戒路の胸からは新たな鮮血が噴き出し、戒路の意識は完全に絶たれ、自ら作った血溜まりの上に倒れ伏したのだった。



「地獄の門を守る門番が相手か‥‥おあつらえ向きじゃないか」
 八神零(ga7992)は双剣を抜き放つと、小型キメラの群の中へと飛び込み、雑魚には一切構わず疾風のごとき速さですり抜けると、一気にケルベロスを目指す。
 対するケルベロスは3つのアギトを大きく開くと口腔の奥に赤い光を灯し、巨大な火球を撃ち出してくる。
 八神はまったくスピードを落とさず2つの火球をサイドステップを踏んで避け、最後の一球は交差させた月詠で受け止めて弾いた。
 そして、そのままケルベロスに肉薄すると『二段撃』『紅蓮衝撃』『急所突き』を同時に発動。
 覚醒の影響で現れていた腕の黒炎の上にさらに赤い炎のオーラが纏われる。
 八神はまず右の月詠でケルベロスの右足の間接を切り払って体勢を崩し、下がった頭の一つの首を左の月詠で斬りつける。
 首筋から血を吹き出したケルベロスは雄叫びを上げ、前足を振るって攻撃してくるが、八神はバックステップで軽く避けた。
 ケルベロスはさらに首を伸ばして噛みついてくるが八神は半身を反らして避け、その伸びた首を2本の月詠で上下から挟む様に振るって斬り落とし、一旦距離をとった。
 首を一つ失ったケルベロスは絶叫を上げ、闇雲に火球を撃ち放ってくるが、八神は巧みに避けながらケルベロスの頭の下に入りこみ、月詠を顎の下に突き入れると、そのまま喉元まで一気に斬り裂く。
 ケルベロスは首や喉から大量の血を吹き出し、しばらく悶え苦しんでいたが、やがて血溜まりの中でグッタリと動かなくなった。



 真琴は小型キメラの群に向かって一直線に駆けてゆくと敵群の手前で跳躍。小型を一気に飛び越えて蟷螂型に襲いかかった。
 そしてキアルクローで蟷螂型を斬り裂きながら着地すると、そこから後ろ回し蹴りを放って蟷螂型の頭を砂錐の爪で斬り飛ばす。
「おら退けよ、この雑魚どもぉぉっ!」
 真琴はそのまま手近にいた熊型に狙いを定めたが、不意に頭上に影が差す。
 真琴がとっさにバックステップした直後、その場に飛び掛ってきたフェンリルに口がガチリと閉じられた。
「あっぶねぇ〜‥‥」
「グルルル‥‥」
 フェンリルは牙をむき出しにし、低い唸り声を上げながら真琴を睨みつけてくる。
「なに? アンタが先に遊んで欲しいの? いいよ、相手してやるから掛かってきな」
 真琴は口の端を歪ませて不敵に笑うと軽くフットワークした後、一気にフェンリル目掛けて突っ込んでゆく。
「でやぁ!」
 真琴はフェンリルの頭を狙ってキアルクローを振り上げたが、フェンリルは巨体に似合わぬ素早い動きで避けると真琴の横に廻って前足の爪を振るってくる。
「ぐっ!」
 真琴はキアルクローでどうにか防いだが、その衝撃で腕がジンジンと痺れた。
「コイツ、でかいくせに素早いじゃない。こりゃあコッチもギア上げていかないとついてけないかな?」
 真琴は腕を振って痺れをとりながら嬉しそうに言うと『疾風脚』を発動し、再びフェンリルに突っ込んでゆく。
 対するフェンリルは真琴の動きに合わせて前足を振りおろしてきたが、真琴はそれをギリギリで避けると、その前足を足場にして空高く跳躍。
「でぇぇぇいっ!」
 空中でクルリと前転しながらフェンリルの眉間にかかと落としを決めた。
「まだまだぁ!」
 そのままフェンリルの首の後ろに周り込むと足でその首をガッチリと締めあげる。
 そしてフェンリルの後頭部めがけてキアルクローを打ちおろした。
「グオォォ!」
 フェンリルは苦しげな悲鳴をあげ、真琴を振り落とそうと必死に暴れ回るが、フェンリルの首には砂錐の爪も食い込んでおり、簡単には外れない。
 その間も真琴は何度もキアルクローを振るい、吹き出た鮮血が真琴の身体を赤く染める。
 しかし、フェンリルは突如全力で駆け出すと手近にあった木に自分の身体ごと真琴をぶつけた。
「かはっ!」
 木とフェンリルとの間でサンドイッチになった真琴は衝撃で目の前がクラクラしてふらついたが、足は決して外さず、腕にありったけの力を込めてキアルクローをフェンリルに叩きつける。
「いい加減にっ! おっちにやがれぇぇーー!!」
 すると、グシャリと頭蓋骨が砕ける感触が手に伝わり、大量の鮮血と脳漿が吹き出していた。
 そしてフェンリルはフラフラと数歩歩いた後、ズシリと倒れ伏したのだった。



 タートルキメラを倒し終えた小夜子と文月はちょうど真下にいた中型に向かって高台から飛び降りた。
 小夜子は熊型の身体をクッション代わりにして飛び乗ると、蝉時雨で首を薙ぎ、そのまま身体も袈裟斬りにしながら地面に降り立つ。
 文月は落下の最中から真デヴァステイターで蟷螂型に銃弾を叩き込み、着地と同時にミカエルの脚部動輪を始動させて一気接近すると月詠で胴を薙ぎ払って切断する。
「私はガルムの相手をいたします。文月さんは歩兵の随伴を」
「了解です」
 2人はそこで背を向けるとそれぞれの方向へ駆け出した。

 そして小型キメラの隙間をぬってガルムの前までやって来た小夜子は、その大きさに少し圧倒されながらも蝉時雨を正眼に構えた。
「オォーーーーン!」
 対するガルムは大きく雄たけびを上げると小夜子目掛けて前足を振り下ろしてくる。
 小夜子は後ろに退がってかわしながら前足を蝉時雨で切り裂く。
 だが、ガルムの皮膚は思っていたよりも硬く、浅く切り裂いたのみだった。
 ガルムは後ろ足で地面を蹴り、首を伸ばして噛み付いてきたが、小夜子はサイドステップで避ける。
 だが、がルムはそこから身体を180度回転させ、尻尾で小夜子を打ち払ってきた。
「っ!」
 小夜子は咄嗟に蝉時雨で受け止めたが、重く痺れるような衝撃が全身にかかる。
 ガルムはさらに後ろ足を振り上げ小夜子の蹴り上げようとする。
 小夜子は後ろに退がって避けようとしたが一瞬間に合わず、後ろ足の爪が身体をかすめ巫女装束を切り裂いてゆく。
 そのままさらに距離をとった小夜子の巫女装束にジワリと血が滲む。
「かすっただけなのにこの威力‥‥。これは絶対に歩兵の人達の所へは行かせられませんね」
 小夜子は改めて蝉時雨を構えると、ガルムを見据えて正対した。



 ケルベロスを倒した八神と共に中型キメラと戦っていた月影・白夜(gb1971)は目の端で偶然、高台の上から落下してくるミアの姿を目に留めた。
「えっ! ミアさん?」
 白夜はミカエルのパワーを上げて跳躍し、ミアの落下地点の下に行くと彼女を受け止めた。
 息はある。だが一見しただけでも重傷だ。
「白夜はミアを連れて一旦後方に退がってくれ、俺はあいつの注意を引き付ける」
「はい!」
 高台を向かった八神に背を向け、白夜はミアを抱きかかえると『竜の翼』を発動させて一気に味方の陣地を目指した。
 しかし、その背中をタートルキメラに砲撃される。
「うわっ!」
 背中に熱と衝撃を受けた白夜だが、ミアはしっかりと抱え、決してスピードは落とさない。
「させませんわ‥‥時間を十分に稼がせて頂きますから♪」
 狙撃ポイントまで登ったるなが『狙撃眼』を使いタートルキメラに矢を射掛けて白夜を援護する。
 だが、代わりに砲撃はるなの方に集中する事となった。
 灼熱の光線がるなに向けて照射され、木々を焼き、地面や木を炸裂させる。
 焼けた枝葉が舞い、熱風が吹き荒ぶ中、弓を射るるなだが、遂にプロトン砲が1発直撃した。
「くっ! よくもやってくれましたわね!」
 身を焼かれる痛みに耐えつつ、るなは木から木へと跳び移りながら『狙撃眼』でタートルワームを狙い撃ち続けた。

「メディック! 早くこの人に治療を!」
 そしてるなの援護を受けて無事帰還した白夜はすぐに救護兵を呼んでミアを預けた。

 一方、八神は高台に上がるため木の上にいた。
 そして眼前では今まさに戒路がワニキアに倒され、伏したところだった。
「くっ!」
 仲間が2人も倒された事を激しい憤りを感じながら八神はロープで高台に向けて跳躍。
「ハッ!」
 そして着地と同時に居合いでワニキアに斬りかかった。



「さぁ走れ走れ兵士諸君。Ahead Ahead Go Aheadだ! 私達が開け胡麻と唱えた道だ。全力で駆け抜けろ!」
 最後のタートルキメラをつばめと共に倒し終えたシロウが無線機に叫ぶ。
「よし! 全軍前進。敵要塞に突入を開始する!」
 そしてルイス少佐に率いられた2時方面の部隊がいよいよ進軍を開始した。
『うおぉぉーーー!!』
 5人で1小隊を組み、それぞれに重火器を抱えた総勢70名の兵士達が鬨の声をあげながら森の中を駆ける。
 その先頭を走るのは武器を真デヴァステイターとエンジェルシールドに持ち替えたやすかずだ。
 兵達は彼の背中を追いかけるように進む。
 だが、前方で今まで動かなかった敵のキメラ群もこちらに向かって進撃を開始し始めた。
「迎撃準備」
 ルイスの号令で兵達は足を止め、膝立ちになってガチャガチャと重火器を構えた。
 前方からは地響きを立ててキメラの群れが迫ってくる。
 一般兵にとっては1匹でも脅威のキメラが群れとなって襲ってくる光景は恐怖以外の何物でもない。
 だが、今ここに集った兵の中に逃げ出す者はいなかった。
 恐怖は腹の底に押し殺し、目の前の敵を駆逐し、自分達の大切なものを守る。
 それだけを支えに踏みとどまっていた。
「撃てぇー!」
 ルイスの合図で一斉にグレネードが発射され、前方で幾つもの爆発が起こる。 
 そしてその爆炎に向かって重火器の一斉射が始まった。
 絶え間ない発砲音が森に響き渡り、無数の薬莢が地面に散乱し、数十もの火線がキメラに向かって吸い込まれてゆく。
 だが、フォースフィールドに守られたキメラ達はそんな火線を浴びながらズンズンと進攻してくる。
 やすかずは突出してきたキメラを優先的に狙い撃っていったが、敵の数が過ぎて全てをカバーする事など到底無理だった。
「くそっ! 敵の数が多すぎる」
 それでもやすかずは1匹でも多く敵を倒そうと手早くリロードし、撃ち続けた。
 歩兵の重火器も比較的動きの単調なアリ型は容易く倒していたが、すばしっこいネズミ型や、機敏な狼型には手を焼いていた。
 そして弾幕の抜けきったキメラが遂に味方の最前部に襲い掛かる。
「うわぁ!!」
「ちっくしょう!」
「腕がぁ!」
「くそ! 死ね! 死ねよこのぉ!」
 襲われた小隊はタチマチ恐慌状態に陥り、何人もの負傷者を出した。
 それでも周りの小隊から援護射撃を受け、どうにかキメラを駆逐してゆく。
 だが、その間にもキメラはどんどん迫ってくる。
「弾幕を絶やすな! 負傷兵は後ろに運べ!」
 ルイスは自身も重火器を掃射しながら兵に次々と指示を出し、どうにか陣形を立て直して反撃していった。



 その頃、10時と6時方面の部隊も前進を開始していたが、10時方面部隊の前方では小夜子とガルムが未だに戦闘を繰り広げていた。
 それは自分一人ではガルムを倒しきるのは難しいと判断した小夜子が攻撃よりも回避に重点をおき、ガルムを自分に惹き付ける事に専念していためである。
 文月はそんな小夜子の援護に向かいたかったが、文月も部隊の先陣を斬って小型キメラ群と戦闘中であり、後ろにいる歩兵部隊を守らなければならないため助けに向かう事ができないでいた。
 公司も狙撃ポイントから中型キメラを撃ち倒して数を減らす事に手一杯で、時節小夜子が危険になった時に援護射撃を行う事ぐらいしかできなかった。

 一方、6時方面はケルベロスは倒され、最後のタートルワームもるなが倒しものの、ワニキアがまだおり、中型キメラも残っていたため迂闊には進軍できない状況にあった。
 るなは歩兵部隊の陣頭に立ち、主に中型キメラを狙い撃ち、小型は歩兵に任せていた。
 だが、だんだんと歩兵が小型キメラに押され始め、遂に戦線の一画が崩れキメラが襲いかかられる。
 るなは崩れた戦線に向かい、S−01でキメラを駆逐していったが、その間に一人の兵が狼型キメラに咽を食い破られた。
「!」
 るなはその狼の頭を撃ち抜き、すぐに兵に駆け寄った。
「‥‥っ‥‥ぁ‥‥」
 兵は咽を押さえ何か言おうとしているが、その度に咽がヒューヒューと鳴り、血が噴き出す。
「黙って! 大丈夫、傷は浅いですわよ。メディック! 早く来なさい!」
 一見して致命傷と分かる傷だったが、るなは兵の微笑みかけ気休めでも優しく言葉をかけて救護兵を呼ぶ。
 だが、その間にも兵の顔はどんどん青白くなり、呼吸が早く細くなってゆく。
 兵は焦点の合わない目をるなに向け手を伸ばす。
 るながその手を握ると、兵は必死に唇を動かして何かを伝えようとしてきた。
「なに?」
 るなは耳を兵の口に寄せ、その言葉を拾おうとしたが結局は聞き取れなかった。
「‥‥分かったわ。ちゃんと伝えましてよ」
 るなは迷った末、そう兵告げると、兵は安心した顔をして、そして永遠の眠りについた。
「‥‥くっ!」
 るなは悔しげに唇を噛んで立ち上がり、キメラに向かってS−01の引き金を引いた。

 そんな状況の6時方面部隊の内で、ある小隊が活動を始めようとしていた。
 それは、白夜が隊内に予め作っておいた火力よりも機動力を優先した機動遊撃部隊である。
 フェンリル撃破の一報を聞いた白夜はより確実と思われる2時に向かう決断をした。
「遊撃隊‥‥2時方向に向います‥‥ついて来て下さい」
「了解。いくぜ野郎ども! 敵のドテッパラに突入だ!」
『オォー!』
 白夜は呼びかけに応じて移動を開始する遊撃部隊。
 だが、遊撃隊が2時方向に動くの合わせて敵のキメラの一部もこちらに向かって動き始めた。
「ここは僕が抑えます。皆さんはそのまま進んでください」
「おぅ! 頼んだぜ」
 歳も若く、女顔で狼耳や尻尾のある白夜だが、彼の纏う鋼鉄のナイトの様なAL−011「ミカエル」がとても頼もしく見え、兵達の信頼を得られていた。
「僕は鐘(学園)を護るべく組織された鐘狼に属する者‥‥。僕の背中に護るモノが有る限り‥‥決して負けられません!」
 白夜はミカエルの脚部の動輪で地を走り、キメラの一群に突っ込んでいった。

 その遊撃部隊が2時方面に到着する頃、小型キメラ群は後背を突く真琴、シロウ、つばめと前方から撃ち崩すやすかずと歩兵部隊との挟撃により、その数を大幅に減らしていた。
 そして遂に正面の敵の一画に穴が開く。
「正面の一画が開いたぞ! 全軍、そこに向かって全速前進!!」
 歩兵部隊はルイスの指示の元、開いた一画の周辺に弾幕を形成しつつ殺到した。
 その際、最右翼及び左翼の小隊が残ったキメラ群の攻撃を受けて多数の被害を出したが、部隊は足を止める事なく要塞を目指す。
 その動きに合わせて遊撃部隊も突入を開始。
 遂に10を超える小隊が要塞に取り付く事に成功したのだった。
 


 その頃、高台の上では金属同士がぶつかり合う甲高い音が何度となく響いていた。
 八神とワニキアの戦いが一進一退の千日手の様相を呈して、今なお行われていたのだ。
 2人は数十回目になる剣戟の後、一旦互いに少し距離をとった。
 そして八神を見つめるワニキアの顔に笑みが浮かぶ。
「お前は‥‥強いな」
 ワニキアは構えをとくと八神に向かって片手を差し出した。
「強い者には生き残る資格がある。どうだ、お前もこちら側に来て共に人間の数を減らす手伝いをしてくれないか?」
「‥‥」
 ワニキアの言葉に八神は何も返事を返さなかったが、その表情にはわずかに不快感が浮かぶ。
「人間はいずれ自らのエゴによってこの星の全てを食いつくし、破滅させるだろう。そうなる前にバグアの手で人間の数を減らす。人間はバグアに管理されるべき愚かな種なのだ。そうは思わないか?」
 八神はワニキアがそう言い終わるのと同時に一気の距離を詰め、抜き打ちの斬撃を振るってきた。
 それをワニキアは爪で受け止めると、2人の視線が至近距離で交差する。
「それが、お前の答えか?」
 八神は答える代わりに斬撃を見舞う。
「‥‥そうか、残念だ」
 ワニキアは本当に残念そうに言うと爪で月詠を弾き、八神から距離をとって爪を構える。
 そして再び対峙した、その時。
『要塞中枢に爆薬の設置を完了しました。1分後に爆発します。全軍退避。全軍退避!』
 八神と側で倒れている戒路の無線機から声が響く。
「ここまでか‥‥。仕方がない、この大地はおまえ達に返してやる。だが、手塩にかけて育てたケルベロスとフェンリルを殺した償いはいずれさせる、必ずだ! ガルムっ!」
 ワニキアの呼び声に応えて小夜子との戦闘を振り切ってきたガルムが高台の上に這い上がってくる。
「待て! 逃げるのか?」
「このままやり合っていてもお互い益はないぞ。お前もその男を助けたいのではないのか?」
「くっ‥‥」
 八神はガルムに跨り去ってゆくワニキアを油断なく構えたまま見送ると、戒路の身体を抱えて自分もその場から離脱した。
 そして1分後。
 バグアに要塞化されていた巨木は炎に包まれ、一昼夜かけて崩れ落ちていった。

 そしてこの戦闘での歩兵の被害は
 死者:2名
 重傷:22名
 軽傷:25名
 であった。



 燃え盛る巨木の周りでは残敵の掃討、及び負傷兵の救護が行われていた。
 そこには自分も傷を負っているにも拘らず救護を手伝う小夜子やつばめやるなの姿もあり、残敵の掃討にも能力者は積極的に手を貸した。
 やがてヘリでサイエンティストを含めた医療班も到着し、次々と負傷者がヘリに運び込まれてゆく。
 その中にはミアと戒路の姿もあった。

「お疲れさま☆」
 戦後処理が一段落したところで真琴はつばめとやすかずを伴いココアを持って隊長の元にやって来た。
「おぅ! お疲れさん」
 隊長は作業の手を休めると真琴からココアを受け取った。
「くそったれな要塞もぶっ壊したし、キメラもほとんど全滅させた。大勝利だな」
 隊長は嬉しそうに笑ってココアに口をつけたが、3人の表情はどこか暗い。
「でも、ミアちゃんと戒路さんが大怪我して、兵隊さんにも大勢重傷者を出しちゃったし‥‥」
「それに亡くなった方もいると聞きました」
「すみません、僕たちの力が及ばないばっかりに‥‥」
「そんな事ねぇよ。お前さん達がいなかったら被害はもっと大きかったさ。全滅してたっておかしくなかった。お前さんたちは十分な事をしてくれたよ」
「あの‥‥隊長さん達はこれからどうするんですか?」
「俺達か? さぁな。ちょっとばかし休暇貰って、その後また何処かの戦場でドンパチしてるんじゃねぇかな」
「そんな‥‥こんなに頑張ったのにまだ戦わなくちゃいけないなんて‥‥」
「それはお前さん達だって同じだろ。バグアの野郎を地球から追い出すまで俺達の戦いは終わらない。だろ?」
「‥‥そぅだね」
「死ぬなよ。お前らはまだ若いんだ。こんな戦争死ぬなんて馬鹿らしいぜ」
「隊長さんも死ンじゃダメだよ。約束だからネ!」
「あぁ、約束だ」
 隊長は口の端を歪めて笑うと親指を突き立てた。

 END