タイトル:KillingDoll マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/13 15:34

●オープニング本文


 開店を間近に控えた大型デパート。
 この日、このデパートの前では開店前にも関わらず多くのお客さんがズラリと並んでいた。
 お正月行事にも飽きた人達が新春の大売り出しセールを目当てに訪れているのである。
 そして開店と同時に店内は人で溢れ、倉庫から何度も商品を運び出す程の盛況ぶりとなった。
 こうしてデパートは年初めとしては上々のスタートを切れていた。

「キャーーーーーー!!」

 しかし、そんな平穏な新年は突如として響いた絹を裂く様な悲鳴と共に終わりを告げた。
「なんだ?」
 周りの客が一斉に悲鳴が起きた方向を見る。
「マ、マネキンが動いている‥‥」
 見ると、婦人モノの洋服を着た一体のマネキンが、まるで生きているかの様に動き出していた。
「な、なんだぁ!?」
「あ、新手のショーか? 今年の催し物は気合いはいってるなぁ〜」
「馬鹿! そんなわけあるか! こんな事をするのはバグアに決まってる。早く逃げろ!」

 バグア

 人類の恐怖の象徴たるその名を誰かが口にした途端、客は我先にと店外に逃げ出し始める。
 だが、逃げる先々でもマネキンが動き始めていた。
「ダ、ダメだ。こっちにもいる!」
 通路を塞ぐように立ちふさがったマネキンはその腕から刃を伸ばし、客に切りかかっていった。
 そして後方のマネキンは口を開き、何かの液体を客に向かって散布していった。
「うわぁ〜!!」 
 それを浴びた客は酸か何かだと思って恐怖したが、服や髪についても何の変化もない。
「あれ?」
 だが、その液体は強い刺激臭を放っていた。
 それも大抵の人が身近で嗅いだ事のある『ガソリン』に近い臭いを。
 そして、マネキンがその口から炎を吐き出すと、たちまちのその液体に引火し、急激な爆発力でもって更なる炎をあげ、人々を焼いていった。

 そんな狂刃や炎を潜り抜けて運良く店の入り口まで逃げ延びた者もいた。
「やった! 助かった!」
 しかし、安堵したのも束の間。
 店の入り口にも2体のマネキンが、まるでガードマンの様に立って待ち構えていた。
「どうして入り口にもマネキンが‥‥? ここにマネキンなどいるはずが‥‥」
「あっ!」
 客の一人が入り口横のオープン型ショーウィンドウに目を向け、そこに立っていたはずのマネキンがいなくなっているのに気づいた。
「うわぁぁーー!!」
 一番先頭にいた客達は急いで店内に戻ろうとしたが、後ろにはこちらに向かって逃げてくる他の客達が迫っていた。
「こっちはダメだ! こっちにもマネキンが‥‥」
 そう叫んでも後からどんどんと逃げてくる客の全てに伝わる訳もなく、入り口は中のキメラから逃げる人と外のキメラから逃げる人とでもみ合いになり、大混乱を引き起こした。
 マネキン達はゆっくりと歩みを進めると、そんな混乱の最中に狂刃を振り下ろしたのだった。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
ヴァイオン(ga4174
13歳・♂・PN
アレックス(gb3735
20歳・♂・HD
ファーリア・黒金(gb4059
16歳・♀・DG
水無月 蒼依(gb4278
13歳・♀・PN
サンディ(gb4343
18歳・♀・AA
トリシア・トールズソン(gb4346
14歳・♀・PN

●リプレイ本文

 デパートの裏口に廻ったB班のケイ・リヒャルト(ga0598)、アレックス(gb3735)、トリシア・トールズソン(gb4346)はそこで混乱し、我先にと逃げ出してくる人波を見た。
「こちらはLH・カンパネラ学園所属のアレックス。生存者の救助、及びキメラ殲滅に来た!」
 アレックスが大声で叫ぶと人々はまず驚き、次に安堵の表情を浮かべ助けを求めてくる。
 3人は人々に声をかけて安心させながら外へ導き、全員脱出させたところで中に突入した。
「時間がモノを言いそうね‥‥行く、わ!」
 そしてケイは『隠密潜行』で影に潜みながら店内に消えた。

 一方、一人で正面に廻ったB班のサンディ(gb4343)は混乱し恐慌を起こしている人垣を見た。
「傭兵だ、通してくれ!」
 そう言ってもほとんどの者は自分が逃げる事が最優先で聞いてくれず、サンディは人の波に逆らいながら店内に踏み込んだ。
 店内では床に何人もの人が倒れ、血の海が広がり、アチコチからうめき声が聞こえる。
 その光景を見た瞬間、サンディの頭にカッと血が登った。
「酷い‥‥。おのれバグアめ! 断じて許さないぞ!」
 視線を動かすと、エスカレーターの横で血まみれの婦人服を着たマネキンが女性に襲い掛かろうとしていた。
「やめろーー!!」
 サンディは駆け出しながらレイピアを引き抜くと、『スマッシュ』を発動させ、キメラの胴体に突き入れる。
 確かな手応えを感じたが、キメラは平然とサンディに刃で斬りかかってきた。
 咄嗟に右の刃はバックラーで受け止めたが、左の刃が腿を斬り裂く。
「ぐっ!」
 痛みで体勢が崩れたところにキメラが刃を振りおろしてくるが、次の瞬間、キメラの側頭部で銃弾が弾けた。
 裏口から『隠密潜行』で入りこみ、キメラの死角に回り込んだケイの『影撃ち』だ。
「ふふ‥‥鬼さん此方、よ」
 ケイはさらに銃弾を、頭、首、胸、腹に叩き込む。
 その隙にサンディは再び『スマッシュ』を発動、先程と同じ所にレイピアを突き立てた。
 レイピアはキメラの腹を貫通し、そこから真っ二つ折れて床に転がり、動かなくなる。
「ありがとう、ケイ。助かったよ」
「ふふっ、どういたしまして」


 同じ頃、もう一体のキメラはアレックスとトリシアが相手をしていた。
「‥‥切り裂く。止められると思うな‥‥!!」
 まずは手数の多いトリシアがスピードを活かしてキメラの正面から仕掛けると見せて、キメラが振り下ろしてきた刃をサイドに廻り込んで避けると同時に『円閃』を発動させ、右手の蛇剋でキメラの手首をごと武器を斬り落とす。
 そして左のゲイルナイフで膝関節を斬り裂いて体勢を崩させた。
「アレックス!! 今だッ!!」
「おう!」
 そこからさらにアレックスがエクスプロードをキメラの腹に突き立て、抉り、切り裂き、
「インテーク開放、ランス「エクスプロード」、イグニッション!」
 最後はエクスプロードに内蔵された炎の爆発に『竜の咆哮』を上乗せして吹っ飛ばし、完全に息の根を止めた。
「やったね、アレックス」
「あぁ、いいコンビネーションだったな」
 アレックスは嬉しそうに笑うトリシアの頭をガシガシと撫でてやった。

 そうして1階のキメラを駆逐した4人は1階にいた救助者を全員外に逃がすと2階と地下の二手に分かれた。
「アレックス、トリシア、気をつけてね。ケイ、急ごう!」
 

 エスカレーターで2階に向かったケイとサンディだったが、中腹まで登ったあたりで、いきなり上から刃を構えたキメラが駆け降りてきた。
「なにっ!?」
 ここでは左右に避ける事はできない。
 サンディは咄嗟の判断でバックラーに構え、こちらからもキメラに向かって突っ込んだ。
 突き出されてきた刃が腕や足をかすめたが、気にせずバックラーごと体当たりして階段に押し倒す。
 そして『スマッシュ』を発動させ、首にレイピアを突き立て、階段に結い止めた。
「今だケイ!」
「任せて」
 ケイはサンディの肩越しにS−01とフリージアを突き出すと『二連射』を発動させて次々と弾丸を撃ち込んだ。
 火薬が弾け、マズルフラッシュが瞬き、硝煙が立ち昇る。
 そしてフリージアの弾倉が空になるまで撃ち放つとキメラは動かなくなっていた。
「お人形はお人形らしくしてなさい」
 ケイは動かなくなったキメラを見て笑うと、空の弾倉を捨てて新しい弾倉を装填した。



 一方、アレックスとトリシアが降りた地下は食料品売場で、見たところ人が残っている様子はない。
 2人は周囲を警戒しながら奥の倉庫を目指すと、
「助けてくれぇーー!」
 倉庫の扉の向こうから悲鳴が聞こえてきた。
「アレックス!」
「あぁ! 行くぞ!」
 二人はすぐに駆け出し、倉庫の扉を体当たりする様に開ける。
 扉の向こうでは2人の店員がおり、内一人がマネキンに斬りかかられていた。
 アレックスはすぐさま『竜の翼』を発動させ、店員とキメラとの間に割り込み、自分の纏うミカエルを盾にして刃を受け止めて弾く。
「能力者はヒーローじゃねぇし、俺は騎士ってガラでもねぇが‥‥、こういう時の為の鎧であり、ドラグーンだ!」
 だがキメラは足の爪先からも刃を伸ばし、それで蹴りつけてきた。
 刃はミカエルの装甲の隙間を貫き、アレックスの脇腹に突き刺さる。
「ぐぅ!」
 傷口から血が吹き出し、ミカエルを濡らす。
「アレックスっ!?」
 アレックスが傷ついた。大切な家族が。大好きな人が‥‥。
 その光景を見たトリシアはギッとキメラを睨みつけ、飛び掛った。
 左手のゲイルナイフをアレックスとキメラの間を断つように振るい、キメラがアレックスから離れた所で『円閃』を発動、右手の蛇剋を横薙ぎに振るって首を斬る。
 首を絶つ事はできなかったが、さらに左のゲイルナイフで脇を斬り裂く。
 だがトリシアの猛攻もそこで止まり、キメラの振るった反撃の刃がトリシアの腕を裂き、力が抜けて蛇剋が零れた隙に胸を切り裂かれ、最後はアレックスと同じように脇腹に刃を突き立てられた。
「あ‥‥」
 トリシアの服が自らの血で染まってゆく。
「トリシアーーー!!」
 アレックスは絶叫を上げながらエクスプロードでキメラを上段から袈裟斬りにし、さらに下段から斬り上げる。
「灰燼と化せ! 極炎の一撃(フレイム・ストライク)ッ!!」
 最後は胸に深々と突き入れ、エクスプロードの爆発と『竜の咆哮』の複合技で後ろに吹っ飛ばした。
 そして倉庫の荷物につっこんだキメラはそこでバラバラになって果てた。
「トリシア! 傷は? 見せてみろ」
 アレックスはすぐにトリシアを支え、傷の具合を見る。
「急所は外れてるから平気だよ」
 確かに急所は外れているが傷は決して浅くない。
「私より、アレックスは平気?」
「俺のはかすり傷だ」
「そっか、よかった」
 それを聞いたトリシアの顔に安堵の笑みが浮かぶ。
「待ってろ、今治療する」 
 アレックスの応急処置は痛かったけれど、アレックスが自分のために必死になってくれる姿が嬉しくて、トリシアはずっと笑顔を浮かべていた。



 時間は少し逆戻り、高速移動艇で屋上に向かったA班の白鐘剣一郎(ga0184)、ヴァイオン(ga4174)、ファーリア・黒金(gb4059)、水無月 蒼依(gb4278)はそこで10人足らずの人影を見つけた。
 彼らはこちらに向かって必死に手を振って助けを求めている。
「彼らだけでも先に救助しよう」
「そうですね」
 4人は屋上に降り立つとそこにいた人達に手を貸しながら高速移動艇に乗り移らせた。

 そして改めて4階に降りると、まず目に付いたのはエスカレーターの前で燃え盛る炎と、炎の中で倒れている2つの人影だった。
「ひどい‥‥」
 蒼依が痛ましげに目を伏せる。
「誰かいますかー? いたら返事を下さいー!」
「だ、誰だ?」
 ファーリアが呼びかけると炎の向こうから男性の声が返ってきた。
「傭兵です。救助にきました。今からそっちに行きます」
「待て。いくらAUKVを着てても炎の中を行くのは危険だ。まずは火を消そう」
 ヴァイオンは炎の中に踏み出そうとしたファーリアを止めると、階段脇に設置してあった消火器で消火を始める。
 完全には鎮火できなかったが炎の勢いは弱まった。
「ありがとうございます、ヴァイオンさん」
 改めて救助に向かったファーリアは3人のお客を連れて戻ってきた。
 そして他の場所も捜索すると、トイレに隠れていた女性客を2人発見する。
「皆さんは屋上への階段前で待っていて下さい」
「‥‥はい」
 救助者達は不安そうにしながらもファーリアの言う事に従ってくれた。

 そして3階に向かったA班は、階段を下りきった所でバッタリとキメラと鉢合わせた。
「あっ!」
 突然の事に驚いた蒼依だったが、すぐに腰溜め構えて居合いを放とうとした。
 しかし、蒼依の手が柄に触れる前に隣で『チン』と鍔の鳴る音がする。
「‥‥天都神影流・鍔鳴閃」
 そして剣一郎がそう呟くと同時にキメラの首が落ち、腰が真っ二つになり、胸が縦に裂けた。
「‥‥すごい」
 蒼依は目を見張って驚いた。
 蒼依も居合いを得意技とするので分かる。
 剣一郎は今の刹那で3回も居合いを放ってみせたのだ。
 まさに神速の抜刀術。
 蒼依は素直に見惚れ、憧れた。
(「何時か私もこれほど使い手になりたい。いえ、なってみせます!」)
 そして密かに心の中で誓うのだった。

 それから4人は二手に分かれて捜索を始めた。
(「気分はお化け屋敷‥‥みたいな感じでいいのかしら」)
 囮役の蒼依は体を縮こませ、おどおどとした様子で歩き出す。
「お父様〜! お母様〜!」
 そして怯えた声を上げると、洋服店の影で何かが動くのを目の端で捉えた。
「キャーー!!」
 蒼依が悲鳴を上げると、店の影からは思ったとおり、スーツを着たキメラが現れた。
 蒼依は内心でほくそ笑みながらも怯えた表情を続け、キメラが近寄ってくるのを待つ。
 だがその時、別の物陰からも人影が飛び出し、キメラの腰に取り付いた。
「逃げろ、お嬢ちゃん!」
「えっ?」
 それは蒼依を普通の子供だと思って助けに飛び出してきた店員だった。
「しまった!」
 予想外の展開に少し離れた物陰で隙を窺がっていた剣一郎が急いで飛び出したが、キメラは店員の頭を鷲掴みにして剣一郎の方に向けてくる。
「くっ‥‥」
 剣一郎は仕方なく足を止めた。
「まさかこんな事になるなんて‥‥」
 蒼依も背中に隠していた刀を構えるが、手が出せない。
「‥‥」
 剣一郎は月詠の刃を引いて構えると、キメラを刺激しない様にジリジリと間合いを詰めてゆく。
 そして間合いが詰まり、キメラが刃を繰り出してきた瞬間、その刃をギリギリで避けながら一気に零距離まで接近し、連続して突きを放った。
 そして店員を救出して一旦距離を取る。
 正確に、首、胸、腹、を貫かれたキメラはそのまま後ろに仰向けに転がって動かなくなった。
「勘違いさせて申し訳ありません。私達は救助に来た傭兵なんです。でも、アナタの勇気ある行動には感動しました」
「え?」
 蒼依から謝罪と説明を受けた店員だが、それでも状況がまだよく理解できていない様だった。


 もう一方のヴァイオンとファーリアもキメラと戦闘中だった。
 ヴァイオンは『瞬天速』を発動させて壁に向かって跳躍、そこから壁を蹴り三角跳びで天井付近まで舞い上がると、『急所突き』を発動。天井を蹴ってキメラに上空から襲い掛かった。
「喰らえっ!」
 ヴァイオンは右のゲイルナイフと左の嵐真をキメラの首を挟む様に叩き込み、頭を斬り飛ばして着地する。
 頭を無くしたキメラは首から液体を吹き上げたが、倒れずにそのまま襲い掛かってきた。
「嘘っ!?」
 虚を突かれたファーリアだが咄嗟にドライグを振り下ろす。
 しかし、キメラはスルリと避けると逆にファーリアにリンドヴルムに刃を突き立てていった。
「くっ! 速い」
 ファーリアは傷を負いながらも横薙ぎにドライグを振るったが、キメラは後ろに退がって避ける。
 だが、退がった所でヴァイオンが滑り込むように接近し、近距離から斬りかかっていった。
 対するキメラは刃で受け、斬り返す。
 受け、弾き、斬り、捌く。
 両者の間で何度も刃が交差し、剣戟の音が鳴り響いた。
 ヴァイオンのナイフはキメラの身体に何度となく傷を負わせたが、いずれも浅い。
 ヴァイオン自身も致命傷は避けているもののキメラの刃で幾つもの裂傷を負う。
「えぇーい!」 
 そんな均衡をファーリアはキメラに体当たりする事で破った。
 キメラから刃を突き立てられたが『竜の鱗』で強化したリンドブルムの装甲を信じて無視する。
「これ以上! 無用な犠牲者を出させません!」
 ファーリアはそのままキメラを引き倒すと、力一杯ドライグを振り下ろした。
 胸にドライグを喰い込ませたキメラは尚も暴れようとしたが、ヴァイオンが両手を斬り飛ばす。
 そしてファーリアがもう一撃加えると、ようやくキメラは動きを止めた。



 その頃、2階のケイとサンディはさらに1体のキメラを倒し、残りの2体を探していたが、何処を探しても見つけられずにいた。
 その内にA班とアレックスとトリシアも2階に到着し合流を果たす。
「おそらくキメラはマネキンに偽装しているのだろう。マネキンを重点的に調べてくれ」
 そして8人は改めて捜索を開始した。
「後ろから切りつけられるのはさすがに嫌ですからね」
 蒼依は端から順にマネキンの足を刀で切りつけながら進んでいった。
 すると、4体目のマネキンを切ったところで、そのマネキンの腕から刃が生え、蒼依に斬りかかってきた。
「破っ!」 
 蒼依は屈んで刃を避けると『スマッシュ』を発動し、もう一本の足を居合いで斬り落とす。
「逃がすわけにはいきませんからね。足を封じさせてもらいましたわ」
 両足を失ったキメラは四つん這いになると口を大きく開けて液体を噴射しようとした。
「させるかっ!」
 しかし、その口の中にヴァイオンの投げたアーミーナイフが突き刺さり、液体はドロリと零れるに留まった。
「破っ!」 
 その隙に蒼依が再び『スマッシュ』での居合いを放って首を跳ね飛ばす。
「トドメです!」
 そして最後はファーリアがドライグで胴体を叩き潰して息の根を止めた。
「まったく、マネキンに化けるなんて‥‥」
 ヴァイオンがキメラの死骸を見て呟く。
「これで残りは1体だな」
 サンディは改めて捜索を始めようとした時、
「いや、それも今終わったよ」
 剣一郎がそう言って月詠をチンと鞘に収めると、彼の後ろのマネキンがバラバラと崩れ落ち、ドロリとした液体を床に広げた。



 その後、8人は半数を負傷者の手当て宛て、残りの半数でもう一度キメラと救助者の探索、及び遺体の回収を行った。
 サンディは運ばれてくる負傷者の手当てを全て済ませると、遺体が安置された部屋に向かった。
「主よ。死者に等しき安らぎを与え給え」
 そして布をかけて並べられた遺体の前で十字を切り、死者の冥福を祈るのだった。