タイトル:橋梁上の救出戦マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/30 21:11

●オープニング本文


 何時ものミーティングルームに緊急に傭兵達が集められ、少し焦った様子のオペレーターが入室するなり、すぐに依頼の説明を始めた。
「これは、たった今入った情報ですが、前線へと物資を来る輸送隊がミシシッピー川の橋を渡河中に川から現れたワームの襲撃を受けました。ワームは橋の両端を破壊し、輸送隊は橋の中腹に取り残されてしまっています」
 オペレーターが端末を操作し、背後のモニターに地図を表示する。
「橋の長さはおよそ600m。橋の幅は約30m。橋は今も川に潜むワームからの攻撃を受けて崩壊中です。敵はマンタ・ワームが1体、メガロ・ワームが3体、水中型ゴーレムが2体です」
 モニター上にウィンドウが追加され、ワームの情報が表示されてゆく。
「敵は水中型であるため、本来ならこちらも水中型KVで対応するのが妥当なのですが、今回の依頼は急を要するため、空の飛べない水中型KVでは間に合いません。なので皆さんには飛行できるタイプのKVで現地に向かって戦闘を行ってもらう事になります。幸い河の水深はそれほど深くはないため、水中用武器でなくともワームにダメージを与える事が可能だと思われます。敵のほとんど橋の下に集まっていますので、皆さんには橋梁上よりワームを狙撃して戦っていただく事になります。もちろん、水中用キットを装備して水中戦挑んでいただいても構いません。ともかく、可及的速やかに現地に向かい、輸送隊を救出してください」

●参加者一覧

クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
レディオガール(ga5200
12歳・♀・EL
レヴィア ストレイカー(ga5340
18歳・♀・JG
シーヴ・王(ga5638
19歳・♀・AA
サンディ(gb4343
18歳・♀・AA

●リプレイ本文

 緊急スクランブルで現場に駆けつけた傭兵達の眼下では両端が破壊された橋の中央で川からの攻撃に耐えている輸送車両群が見えた。
「進路も退路も絶った上で輸送隊を攻撃するなんて‥‥。橋の上という限られた戦場ですけど、1台だって落とさせたりしません!」
  リゼット・ランドルフ(ga5171)が憤りながら操縦桿を倒し、機体を橋の後方へ向ける。
「両端破壊されて取り残されてやがるですか。敵も上手いトコついて来やがるです。けど、思惑通りにゃ行かねぇトコ、きっちり教えてやるです」
 岩龍の特殊電子波長装置を発動させたシーヴ・フェルセン(ga5638)もその後に続く。

「抗う事も出来ない者をなぶり者にするような腐った行為を許してはおけませんもの。速やかに対処しなくてはなりませんわね」
「輸送隊の皆の命が懸かっているんだ。しっかりしろ、私! 主よ、どうか皆を守りたまえ」
「橋がたいぶ脆くなってる。早くしないと救出しないと危険かも」
 そして橋の前方にはクラリッサ・メディスン(ga0853)を先頭に、初のKV戦での緊張を祈る事で治めるサンディ(gb4343)と、目視で橋の状態を見てとるレディオガール(ga5200)が続く。

 一方、上空から直接敵を狙うのは
「死地に立たされてる仲間の為にも早く救出向かわないと‥‥」
 初のKV戦での緊張をほぐす意味も込めて、機体の最終チャックを行うレヴィア ストレイカー(ga5340)と、新鋭機である『シュテルン』での戦闘は初めてとなるベル(ga0924)。
『究極のピンチはヒロインの出番。定石通りに只今参上!』
 そして外部スピーカーを使って意気揚々と名乗りを上げる三島玲奈(ga3848)だ。
「‥‥まず、敵の足を止めます‥‥」
 少し離れた位置にいるメガロ・ワームと水中型ゴーレムに狙いを定めたベルはG放電装置にエネルギーを充填し、一気に解き放つ。
 1発目はメガロに、2発目はゴーレム、3発目はわざと川面に撃って敵全体の感電を狙った。
 川面が放電して眩しく輝き、直撃を受けたメガロとゴーレムは完全に感電し、他の5体も僅かに動きが鈍る。
「いただきっ!」
 その隙に上空から玲奈の雷電が急降下をかけながら感電中のメガロとゴーレムに照準をセット。
 左右のスナイパーライフルが火を噴き、メガロとゴーレムを貫く。
「私の獲物は万死に値する物だぁ♪」
 そして川面の手前で急制動をかけつつ操縦桿を引き、機体を180度転換させる。
「これはオマケや!」
 スロットルを全開にまで叩き込んで川面をジェット噴射で蒸発させつつ、爆雷を投下し、一気に離脱。
 数瞬後に川底で爆発した爆雷が大きな水柱となって玲奈の後ろにそそり立つ。
「もう一発いきます」
 そこからさらにレヴィアが同じ場所に爆雷を投下。再び水柱が上がり、川面に大波が立って激しく荒れ狂った。
 その間に垂直離着陸のできるシュテルンに乗ったクラリッサが輸送隊の最後部付近に着陸して変形。手早く地殻変化計測器を設置すると、荒れる川に翻弄されているメガロに向かってR−P1マシンガンを乱射した。
「橋の上からでも姿が丸見えですわよ」
 同じくシュテルンで輸送隊の最前部付近に着陸したリゼットも地殻変化計測器を設置し、射撃位置を確保すると膝立ちになってスナイパーライフルを構えた。 
「これ以上輸送隊を危険な目にあわせません!」 

 一方、橋を滑走路代わりにして着陸したレディオガールとサンディは川へ降りる準備をしていた。
「皆、上は任せた。レディオガール、準備は良いか?」
「いいよ。煙幕発射する」 
 イビルアイズの試作型対バグアロックオンキャンセラーを発動し終えたレディオガールは敵との射線上に煙幕を張って自分達の姿を覆い隠すとサンディのR−01改と共に川にダイブした。

「待たせたでありやがるです。これから敵の排除に当たりやがるですが、車も即反応出来る態勢で頼みやがるです」
 輸送隊の中央あたりに着陸したシーヴは輸送隊に通信を送ると、ヘビーガトリング砲を構え、ドラムの回転する重低音を響かせながらほぼ真下にいる敵群に向かって弾丸をばら撒いてゆく。
「まずは‥‥サメから潰していくです。素早い動きは厄介でありやがるですからね」
 対する敵もようやく体勢を整え、メガロ1機とゴーレム2機が水中のレディオガールとサンディに目をつけ、残りはシーヴに反撃してくる。
 シーヴはメガロとマンタ・ワームから発射されてくるミサイルをガトリング砲で撃ち落していったが、何発かが弾幕を抜けて橋に着弾し、壊れた橋の破片が川に落下してゆく。
 そしてクラリッサとリゼットのコクピットに地殻レーダーが危険を知らせてくる。
「シーヴさん! 足元が崩れますわ!」
 警告を受けたシーヴが素早く機体を移動させた直後、さっきまでいた場所が陥没して川面に落ちていった。
「攻撃を避けると橋が壊れやがるです‥‥」
 シーヴは橋を守るため、強化された愛機の装甲を信じて自らの姿を敵に晒して盾となり、敵からミサイルに耐えながらもガトリングで反撃し、メガロ1体を穴だらけにする。
 その間にベルのシュテルンが垂直離着陸が側に降りてきて戦列に加わり、スナイパーライフルRでメガロを狙撃。
 身体を貫かれたメガロは一旦水中に沈み、死骸となって浮かび上がると下流へ流れていった。
「‥‥残りは、5体だね‥‥」
 ベルはスナイパーライフルRをリロードして排莢すると、次の標的に狙いを定めた。

「待たせてごめんなさい‥‥貴方達への攻撃の『対価』をバグアに払わせてあげる!」
  続いてレヴィアのバイパーも舞い降りてきて変形すると、左右の手に持った突撃仕様ガドリング砲を掃射し、弾幕を形成する。 
 こうしてシーヴとレヴィアのガトリングでミサイルを無効化し、ベルとリゼットで狙撃する体制ができあがった。

 一方、水中ではレディオガールとサンディがメガロからの魚雷攻撃を受けていた。
 レディオガールはガウスガンで、サンディはバルカンで迎撃を試みるも全ての魚雷を潰す事はできず、数発が着弾。機体が爆発に包まれる。
「くぅ!」
「うわぁ!」
 機体が水中できりもみして、一瞬上下感覚が分からなくなる。
 直撃を受けた装甲が破損し、そこから機体内部への浸水も起こっているが、まだ機動に支障がある程ではない。
 サンディは機体を立て直すとメガロに向かって水中用ガトリングを正射。メガロの皮膚に無数の穴を穿つ。
「PRMシステム発動。回路を武器と連結。練力供給20」
 橋の上ではクラリッサのシュテルンが特殊能力の『PRMシステム』を発動。
 十二枚の翼と四つの推力可変ノズルが機体の上を滑るように動き、最適な場所で固定される。
「いきますわよ、アズラエル。アナタの本当の力をお見せなさい!」
 強化型ホールディングミサイル2発がメガロに捕らえ、爆炎で包み込む。
 そこからさらにスナイパーライフルD−02にも練力を流し込んで狙撃。
 強化されたライフル弾は易々とFFと装甲を突き破って頭を撃ち抜き、メガロにトドメをさした。

 だが、その間にもゴーレムがガトリングを正射しながら水中を突き進み、腕の先からレーザークローを伸ばす。
「こっち来ないで」
 レディオガールが接近を阻止しようとガウスガンで迎撃すると同時に、ホーミングミサイルを発射。水を切って突き進むミサイルがゴーレムを直撃 。
 爆発で水中に幾つもの気泡が産まれ、川面で水が弾け飛ぶ。
 しかし、その気泡の中からガトリングが掃射され、傷ついたゴーレムがさらに接近してくる。
「私も接近戦の方が得意だ。近づいてきたことを後悔させてやる!」
 サンディはガトリングをメトロニウムシールドで受け止めながら、『アグレッシヴ・ファング』を発動させ、エネルギーを付与させたトライデントを構える。
「はぁ!!」
 そしてトライデントのリーチを活かし、カウンターで一気に突いた。
 トライデントはゴーレムの腹部を貫通。確かな手ごたえがR−01改の手を通じてコクピットにまで届く。
 しかし、ゴーレムはそのまま至近距離からガトリングを発射。サンディのR−01改の頭部が吹っ飛ぶ。
「まだだ。この程度で私は堕ちないぞ!」
 メインモニターはブラックアウトしたが、サンディは構わずトライデントを斬り上げ、ゴーレムの腹部から胸部までを斬り裂く。
 それでもゴーレムはクローを振りかぶって攻撃しようとしてきたが、
「いい加減に死んで」
 その前にレディオガールにガウスガンを腹部の傷穴に撃ち込まれる。
 この一撃で完全に力尽きたゴーレムはそのまま川底に沈んでいった。
 だが、もう一機のゴーレムも猛スピードで迫ってくる。
 橋の上からのシーヴとリゼットがスナイパーライフルと高分子レーザーでの射撃を受けてもスピードはまったく衰えない。
「まだ来るの? しつこい」
 レディオガールとサンディもすぐに迎撃を始めたが、ゴーレムがガッチリとガードを固めてつっこんでくるため、あまりダメージを与えられず、スピードも衰えない。
「くっ! 今の私では接近されると成す術がない‥‥」
 頭部をやられて視界の半減している今のサンディでは満足な接近戦をする自信がなかった。
「いい、そのまま接近させて」
 だが、不意に無線機から玲奈の指示が飛んできた。
「え?」
 サンディは一瞬悩んだが迷っている暇はない。
 サンディはその場に止まり、バルカンを正射しつつ、トライデントを構えた。
 そして、ゴーレムが眼前まで迫った時、 直上から飛来したライフル弾がゴーレムの左右の肩のジョイント部を貫いて破壊した。
「よっしゃぁ! ビンゴぉ!」
 それは、真上の橋で身を潜ませていた玲奈からのスナイパーライフルによる狙撃だった。
 肩をやられたゴーレムの腕がだらりと垂れ下がり、胸部が晒される。
「1時の方向。突いて」  
 サンディはレディオガールの指示通りにトライデントを1時の方向に突き出すと、確かな手ごたえを感じた。
「ふふっ、お前の命日が今、始まる」
 玲奈はトライデントに串刺しにされて完全に動きの止まったゴーレムに狙いを定めると不敵な微笑を浮かべ、トリガーを引いた。
 コクピットまで響く重い振動と共にリニア砲から発射された高速の弾丸はゴーレムの頭部を潰して貫き、体内を喰い破り、絶大な破壊をゴーレムに与えた。
 ゴーレムは完全に活動を止め、そのまま川底に沈んだ。

 その頃、橋の中央での戦闘も決着がつきそうだった。
 残りはマンタとメグロが一機ずつ。
 しかも敵のミサイルはシーヴとレヴィアの弾幕を抜く事がほとんどできず、逆にこちらからの狙撃でどんどん消耗している状態だ。
 しかし、シーヴとリゼットが水中の味方への援護射撃を行ったため、一瞬ではあるが隙が生まれた。
 その隙をついてマンタが体表に備え付けられた小型ミサイルの発射管を全て解放させる。
 その数およそ200。
 マンタの体表のほぼ全面が小型ミサイル発射管で覆われていた。
 そして、その全てが一斉に火を噴いた。
「っ!?」
 各機の戦術レーダーが無数の小型ミサイルで埋まる。
「させません!」
 リゼットは咄嗟にガトリングを掃射して撃ち落そうとした。
 しかし、
「ダメですわ! 数が多すぎます!」
 同じくマシンガンを掃射していたクラリッサが絶望的な声音で叫ぶ。
「逃げろ!」
「逃げやがれです!」
「退避を!」
 橋の中央にいたベル、シーヴ、レヴィアが異口同音で叫ぶ。
 その直後に小型ミサイル群が橋を直撃。
 次々と炸裂音が木霊し、猛烈な振動が橋全体を襲う。
 クラリッサとリゼットに地殻変化計測器からの情報が次々と舞い込んでくるが、その数が多すぎて個々の把握が不可能なぐらいだ。
 分かるのは橋の中央部が大きく崩壊するだろうという事だけである。
「橋の中央が崩れますわ!!」
「全速で離脱してください!!」
 輸送隊はタイヤを軋ませながら全速で左右に離脱を開始。
 ベル、シーヴ、レヴィアも手近な輸送車を引っつかむと全速で離脱を始めた。
 しかし橋の崩落は既に始まっており、行く手の道がどんどん崩れ落ちてゆく。
 2歩前の足場が既になく、1歩先の足場すら危うい。
 後ろを見る余裕すらなく、背後から響く崩落の音から逃げるように全速力で機体を前へ進める。
 そして初動が早かったのが幸いし、橋の中央部が完全に崩落する前に安全な場所まで退避する事ができた。
 崩落に巻き込まれたかけた車両5台の内2台は自力で離脱し、残り3台はKVの手で助けられた。
 橋が中央部を失った事により、ベルとリゼットとレヴィアが橋の前部に、残りが後部に分断される事になった。
 マンタは再び小型ミサイルを装填し、今度は前部の3機と車両群に狙いを定め始める。
「これ以上させませんわよ!」
 クラリッサは橋の後部から『PRMシステム』で威力を上げたスナイパーライフルD−02でマンタのミサイル発射管を狙い撃つ。
「そんな物騒なもの、二度も撃たせません!」
 同じく、橋の前部からもリゼットがスナイパーライフルでミサイル発射管を狙撃。
 それぞれのライフル弾は小型ミサイルの一つを貫通し、爆発。
 他のミサイルも誘爆を起こし、マンタは無数の爆発に包まれながら完全に四散した。
 残るはメガロ1体。

 マンタの爆発から逃れたメガロは前部に向かってミサイルを発射してきた。
「‥‥危ない!」
 背後の車両群を守るため、ベルはミサイルをシールドスピアで受け止めた。
「車両隊へは手出しさせない!」
 負けじとレヴィアもロケットランチャーを撃ち返し、6発のロケットミサイルの爆発がメガロを包み込む。
「これで、最後でありやがるです」
 その爆炎に向かってシーヴがガトリング砲を叩き込む。
 そして爆発がおさまった後の川面には、ズタズタになったメガロが浮かんでいた。

「はぁ〜‥‥守りきれて良かった」
 レヴィアは初のKV戦での緊張で強張った指を操縦桿から放し、深々と安堵の吐息をつく。
「なんとか守りきまれましたわね」
「みんなお疲れ様です」
 他のみんなも同じなのか明るいながらも、どこか疲れた声音が無線機から響いてくる。
「まだ終わりじゃない。輸送隊を岸まで運ぶ仕事が残ってる」
 だが、レディオガールの一言が皆を現実に引き戻す。
「あ、そうだった。忘れてたわ〜」
 8人はそれぞれ一台ずつ車両を掴み、ホバーでゆっくり対空しながら岸まで運んだ。
 垂直離着陸のできるシュテルンに乗っている3人には何度か往復をしてもらい。どうにか全車両を岸まで運び終える。
「今度こそ終わりよね。ふぅ〜‥‥アイスコーヒーを飲みながら、ケーキでも食べてゆっくりしたいわね」
「同感です。基地に戻ったらお付き合いしますよ」
 疲れた様に言うレヴィアの言葉にリゼットが同意してくれた。
 どうやら他にも付き合ってくれる人はいそうだ。
 8機のKVは輸送車両隊の兵員達に見送られながら飛び立ち、おいしいお茶とケーキの待つ基地へと戻っていったのだった。