タイトル:第一艦橋大破っ!! マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/02/18 01:40

●オープニング本文


 極寒の海の上を空母を中心とした5隻の船団がゆっくりと南下してゆく。
 空母の甲板上にはバグアに対抗するための切り札ともいうべきKVが搭載されていた。
 しかし、そのKVの中でまともに稼働するものは、ほんの一握りである。
 なぜならこの船団は今から戦場に行くのではなく、戦場で壊れたKVを回収して基地へと運ぶ途上にあるからだ。
 1機でも一般市民なら一生遊んで暮らせるほど高価な戦闘機械であるKVを、撃墜されたからといって戦場に打ち捨てておくほどUPCは資金にあぶれた組織ではない。
 回収し、修理できるなら修理し、修理不可能でも生きているパーツを再利用する。
 使えるものなら何でも使うぐらいの気概でないと、バグアとの戦いに勝てるものではない。
 この船団はそんな役割を担っていた。

 航海は順調。海面はほぼ凪の状態。
 このまま何事もなくアメリカの基地に到着できるかと思われた、その時。
『11時の方向から敵機接近! 総員、第一種戦闘配備!』
 レーダーが接近するヘルメットワームとキューブワームの編隊を補足。
 船団に緊張が走り、あっと言う間に平穏な時は終わりを告げた。

 各艦の備え付けられた砲塔が旋回し、敵編隊に向かって火を噴く。
 対空機銃が炸裂音を響かせながら弾幕を形成。
 護衛艦からはKVが飛び立ってゆく。
 しかし敵の数は多く、護衛のKVは獅子奮迅の働きをしたものの敵編隊を全滅させる事は叶わず、被弾し、火を噴き、海へと落下して沈んだ。
 敵の残りはヘルメットワームが3機。
 決して多い数ではないが、護衛艦の大砲や空母の対空砲だけで倒せる相手ではない。
 まず、護衛艦が沈み。次いで狙われたのは空母。
「弾幕を絶やすなっ!! 撃て撃て撃てぇ!!」
 空母の艦長が死に物狂いで命令を発したが、ヘルメットワームは慣性を無視した軌道で弾幕の網を抜けると、空母の第一艦橋の前に躍り出た。
「あぁ‥‥」
 間近に迫るヘルメットワームの姿に艦橋にいる誰もが息を飲み、立ち竦んだ。
 そして、ヘルメットワームのプロトン砲に光が灯り、第一艦橋を貫く。
 一瞬の出来事だった。
 一瞬で第一艦橋は吹っ飛び、炎に包まれた。
 第一艦橋は大破。
 艦橋にいた者は全員が即死だ。

 第一艦橋を失った空母は迷走を始め、ヘルメットワームは次の得物へと向かった。
 船団の全滅は時間の問題かと思われた、その時。
 起死回生の策を持ち、立ち上がる者達がいた。
 それは空母に同乗していた傭兵達だ。
 彼らは空母内でまだ稼動可能な第二艦橋に向かい、操舵を回復。
 同時に対空砲にも取り付き迎撃準備を整える。
 そして、甲板に積んである壊れたKVの元へと駆け寄り、各部のチェックを始めた。
 
 そう、彼らの起死回生の策とは、第二艦橋で空母を操艦しつつ、壊れたKVを修理して迎撃に出る事であった。

●参加者一覧

里見・さやか(ga0153
19歳・♀・ST
白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
地堂球基(ga1094
25歳・♂・ER
サーシャ・ヴァレンシア(ga6139
20歳・♀・ST
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
紫藤 文(ga9763
30歳・♂・JG
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
萩野  樹(gb4907
20歳・♂・DG

●リプレイ本文

 第一艦橋が絶望的な事を知り、第二艦橋に来た傭兵達はそこから反撃を開始しようとしていた。
「生涯を通じて初の艦船乗組員としての戦闘が、まさかこのような形になるとは‥‥」
 里見・さやか(ga0153)は帽子のあご紐を着用し、自身の戦闘態勢を整える。
「This is MidFort。現在敵襲を受け、第一艦橋大破。応急操舵及び反撃を実施中。来援を乞う。Over」
 そして通信端末からSOSを発信した。
「艦内に残る士官は至急第二艦橋に集合! 繰り返す‥‥」
 次いで紫藤 文(ga9763)が館内放送を行った。
 そしてサイエンティスト達はKVの修理に向かい、残りの者は対空砲で迎撃に向かおうとしたが、
「萩野。君はここで艦の操舵をしてくれ」
 萩野  樹(gb4907)だけは白鐘剣一郎(ga0184)に操舵を頼まれた。
「え? 俺が、ですか?」
 だが樹にはうまく操舵できる自信などまったくない。
「指揮系統は士官が来たら引き継いで貰えば良い。頼んだぞ」
 しかし剣一郎は樹の返事を聞く前に艦橋を出て行ってしまう。
「呉に向かう、空母を見て、乗ってみたいとおもってた、けど。こんな形で、乗るなんて‥‥」
 一人残された樹が呆然と呟いていたら、直撃を受けた艦が大きく揺れた。
 樹は揺れに翻弄されながらも慌てて舵輪を掴む。
「沈めたくない‥‥がんばろう」
 そして表情を引き締めると自分自身に向かって頷いた。


「状況は厳しいが、このまま座してやられる訳にはいかないな」
 右舷の対空砲の銃座に取り付いた剣一郎は照準器をHWに向け、トリガーを引いた。
 曳光弾を伴った無数の弾丸が光の筋を引いてHWに吸い込まれてゆく。
 HWは慣性制御で避けようとするが剣一郎は避ける先を読み、射線から決して逃さず弾丸を叩き込み続けた。
「如何に慣性制御とて、攻撃コースに入れば動きは読める。喰らえ!」


「そこの整備員! ディアブロの火器管制と対空砲を繋いでおいて」
 鹿島 綾(gb4549)は対空砲へ取り付く前に捕まえた整備員にそう指示した。
「え? どうしてそんな事を」
「やれる事は何でもやっとくんだよ。アンタだってまだ死にたくないだろ。頼んだよ」
 そして不思議そうな顔をしている整備員の背中をバシッと叩き、銃座に座る。
「さぁ! いっそ、ブチ落とすつもりでぶっ放すよ‥‥!」
 そうして綾も弾幕の形成を行ったが、2門の対空砲では3機全てのHWを抑える事はできず、反撃のプロトン砲が船体に突き刺さり、爆発が起こって煙が立ち昇る。



 健一郎と綾がHWを抑えている間にさやか、地堂球基(ga1094)、サーシャ・ヴァレンシア(ga6139)はSー01改の修理を行っていた。
「‥‥ほらそこの人! ボサっとしてないでそこの配線をつなげて! 終わったらこっち来て手伝いなさい! ‥‥ボクがタバコ咥えてるんだから火ぐらいつけなさいよ! 気が利かないわね‥‥! とりあえずこれでよし‥‥」
 そして艦の整備員までも扱き使い、かなりの短時間で修理を完了させた。
「よーし、動けぇぇーー!!」
 球基が気合いこめてSー01改を起動させると、エンジンが唸りを上げて回りだし、ジェットが勢いよく噴き出し始めた。
「やった!!」
 修理に携わった整備員が歓声を上げる。
「白鐘さん。Sー01改、修理完了しました」
『了解した』
 さやかが無線で健一郎を呼び出すと、すぐに返事がきた。
「整備員! これで終わりじゃないわよ! 燃料入れて、武器も持ってくる。ほら、ぐずぐずしない!! カタパルト準備っ!!」
 サーシャは周りで喜んでいる整備員を一喝して、手早く指示を出してゆく。
 整備員達は慌ててSー01改に取り付き、燃料を入れると同時に給弾やミサイルの搭載を行ってゆく。
 その間に剣一郎が到着してコクピットに乗り込み、発進準備を始めた。
「良い仕事をしてくれた。今度は俺が応えなければな」
 各部が全てオールグリーンな事に剣一郎が満足する。
「こちらペガサス、Sー01改、発進する!」
『了解、グッドラック!』
 管制官の言葉と共にカタパルトに乗せられたSー01改が射出され、剣一郎は戦場の空に飛び立った。
「さぁ修理を急ぎましょう! 白鐘さんが落とされる前に、次の機体を上げなければ!」
 続いて3人は岩龍の修理に取り掛かった。

 空に上がった剣一郎はすぐさま高度を上げ、高空で宙返りをすると下方のHWに照準をセットしホーミングミサイルを発射。
 その着弾も見届けずに操縦桿を倒して次のHWに照準を合わせるとバルカンを叩き込んで、すれ違う。
「余所見をするな。お前たちの相手はこちらだ」
 攻撃を受けた2機のHWは標的を空母からSー01改に変えて追ってきた。
 ここまでは剣一郎の予定通りだ。
 しかしHWから放たれたフェザー砲がSー01改に命中し、機体に幾つもの穴を穿たれる。
「くっ、やはり勝手が違う」
 普段なら易々と避けられる攻撃だが、愛機よりも遥かに反応の鈍いSー01改では完全に攻撃を避ける事は難しい。
「この状況下での1対3‥‥正に腕を試される場面という訳か。望む所だ!」
 それでも剣一郎は口元に笑みを浮かべ、敵に挑みかかった。



 その頃、樹は士官が来た後も舵輪を握って操舵を続けていた。
 なぜなら集まった士官達は皆、自分が操舵するよりも能力者である樹の方が適任だと判断し、任せてしまったのである。
 しかし本当は理由は、皆不安で、少しでも力のある樹に縋りたかったのだ。
 第二艦橋は攻撃が着弾する度に激しく揺さぶられ、その度に艦の被害報告がされる。
 現在の艦の被害は対空砲が1門損壊、甲板に1発着弾、右舷船体に3発着弾していた。
 そこに攻撃の振動が艦を襲う。
「甲板に命中! 第2滑走路中破」
「甲板上の瓦礫を、どけて下さい。発艦、できません」
 樹は本番に強いタイプなのか、被害報告がされる度にその対応を指示していた。
「はい! 艦長代理」 
 普段なら、のほほんと聞こえる声や顔も、今はまったく動じていない頼りがいのある声や表情に見えたらしく、クルー達から『艦長代理』と呼ばれる様になっていた。
 そして更なる振動が艦を揺さぶった。
「艦尾に被弾! 隔壁を貫通! 艦内部に浸水発生!」
「全力で、排水を、して下さい」
「了解!」
 水兵達が艦底部で排水ポンプを全力稼働させたが、艦はだんだん右に傾いてきた。
「ダメです! 排水が間に合いません」
「諦めては、ダメです。きっと、みんなが撃退して、くれます。それまで、頑張って」
「はい! 艦長代理」



「あ〜。エンジンに弾が食い込んだままになってるな。出力が不安定な原因はコレか。コイツを抜いて回路を繋ぎ直せば‥‥」
 大学院でロケット工学専攻していた球基が岩龍のエンジンルームに潜りこんで手と顔を油まみれにしていた、その時。
「危ない! 伏せろー!」
 上空にHWが飛来し、甲板にいる者達が一斉に伏せる。
 HWはフェザー砲を乱射しながら飛び、甲板を貫き、その先にあったハヤブサまでも撃ち抜いて通過していった。
「ハヤブサが‥‥」
 人的被害はなかったが、さやかは悲しそうに顔で新たな穴が開いたハヤブサを見る。
「余計な仕事増やすなーーっ!」
 サーシャは怒りを露わにしながらレンチを投げた。

 

 その通過したHWを左舷の龍深城・我斬(ga8283)と紫藤が対空砲で迎撃を始める。
「おいでなすった!」
「まったく好き勝手暴れてくれたな、煙草吸う暇もねぇ」
 そうぼやきながら紫藤は『影撃ち』で命中率を上げた弾幕を形成し、龍深城は紫藤のリロードに合わせて弾幕を張り、HWを完全に抑えていた。
『紫藤さん。岩龍、修理完了しました』
「分かった、すぐ行く」
 だが、紫藤が岩龍の元に向かった事で対空砲が1門だけになり、弾幕が薄くなる。
 そして龍深城がリロードする隙をついてHWがフォトン砲を発射。
「やばいっ!」
 危険を察知した龍深城は咄嗟に砲座から飛び出したが、爆発に煽られて吹っ飛び、甲板を転がった。
「ぐっ‥‥」
 龍深城は痛む身体を起こし『活性化』で特に傷が酷い箇所を治して立ち上がった。
「見てろよ、舐めてかかって来た事を後悔させてやるからな!」
 そしてすぐに別の対空砲に座り、HWに銃弾を浴びせかけた。


 
「特殊電子波長装置は通常の半分ほどの出力を回復させるのが精一杯でした。エンジンも切断された回路を無理矢理繋いでいますので、あまり回転数は上げず優しく乗ってあげてください」
 紫藤は発進準備を整えつつ、さやかから岩龍の状態のレクチャーを受けていた。
「了解。出力が半分でも無いよりマシだ。修復感謝」
「はい。お気をつけて」
 紫藤はさやかが機体から離れたのを見計らって岩龍をカタパルトに乗せた。
「紫藤 文、岩龍出ます。頼むぞポンコツ」
『了解、グッドラック!』



 その頃、2機のHWを相手に時間を稼ぐ事を重視した戦いをしていた剣一郎だが、既に被弾率が60%を超えており、危険な状態になっていた。
 しかもミサイルは全て撃ちつくしているため、ドッグファイトしかできず、2機相手ではそれも難しい。
 そんな時、後方から迫っていたHWに何処からともな飛来したミサイルが着弾し、爆発に包まれる。
 剣一郎はその間に機体を宙返りさせてHWを正面に捉え、ガトリング砲を叩き込んでトドメをさす。
『またせたな。一機は任せろ』
 無線機から紫藤の声が響き、左下方に岩龍の姿が見えた。
 こうして1対1の図式が出来上がったのだが、岩龍ではHWとの性能差があり過ぎるため、すぐに被弾率が50%を超え、危険な状態になる。



「くそっ! 対空砲じゃラチがあかない!」
 HWに後ろを取られている岩龍を救おうと援護射撃を行っていた綾が焦れて叫んだ。
「整備員! ディアブロの準備はできてる?」
「繋いで動く様にはしましたが‥‥」
「上等だ」
 綾は銃座を飛び出すと、代わりにディアブロのコクピットに乗り込み、機体を立ち上げた。
「よし、思った通り火器管制は生きてる。ここらで一つ、バグアの連中に『窮鼠、猫を噛む』って言葉の意味を教えてやる!」
 綾はディアブロの『アグレッシブ・フォース』を発動させ、威力を倍増させた対空砲を撃とうとトリガーを引いた。
「喰らえー!」

 ボォン!

 しかし対空砲の方が『アグレッシブ・フォース』の高出力の耐えきれず、爆発して吹っ飛んだ。
「あれ?」
 対空砲の残骸があたりに飛び散ってゆく。
『な、なんだ? どこから攻撃された?』
 事態を把握できてない兵達が狼狽し始める。
「‥‥ま、まぁ、こういうのは挑戦する事に意味があるんだ」
 綾は苦しい言い訳で誤魔化した。
「整備員。ハヤブサ直ったらコイツの武装系を最優先で直す様に言っといて。こうなったらバルカンで迎撃する」



『岩龍がやばそうだ。ハヤブサはまだか?』
 無線機から龍深城の切迫した声が響いてきた。
「こちら里見です。今、エンジンの応急処置は終わって一応動くようにはなりました。でもまだ出力が」
『飛べる様になったならそれでいい! 出撃する』
「え? 龍深城さん!」
 さやかは無線に呼びかけたが返事はこなかった。
「この状態のまま飛ばそうってのか? 確かに今のままでも飛べるけれどねぇ〜‥‥」
 球基が渋い顔をする
「本人が飛ぶって言ってるんだから仕方ないわ。整備員! 燃料入れて弾積んで!」
 サーシャも渋い顔のまま指示を出していると龍深城が走ってきた。
「動作の確実性を優先してくれれば良い、機体はブーストに耐えられるか? 他注意点があれば言っといてくれ」
「我斬。コイツのエンジンはまだ不安定で長時間飛んで熱が貯まってくるとどうなるか分からない。『翼面超伝導流体摩擦装置』も通常よりさらに不安定。ブーストも同じ。どちらも1、2回なら保つだろうけどそれ以上は保証できないわ」
 サーシャがコクピットのタラップに掴まって発進準備をしている龍深城に説明する。
「了解。短期決戦でケリを付けるよ」
「‥‥ボクの修理した機体で負けたら承知しないよ? 必ず勝ってきなさい? これは命令よ! ‥‥幸運を祈るわ」
「分かった」
 サーシャが僅かに微笑み、龍深城も親指を立てながら笑みを返した。
 龍深城はハッチを閉じると、甲板上の比較的荒れてない進路に機体を向ける。
 甲板は損傷が激しく、既にカタパルトは使えないため、自力推進で飛び立つしかないのだ。
「龍深城・我斬、ハヤブサ。出る!」
 龍深城はスロットルを全開まであけ、甲板上のガレキで激しく振動する機体を制御しながら大空に飛び立っていった。

 一旦空母から距離を取った龍深城はブーストを使って旋回後、まず狙ったのは岩龍の尻を追っているHW。
「貰った!」
 ロックオンすると同時にホーミングミサイルを発射。
 HWが爆炎に包まれたところで『翼面超伝導流体摩擦装置』を発動。
「くっ」
 龍深城の身体にグンとGがかかる。
 そうして一気に間合いをつめ、ガトリング砲で蜂の巣にして撃墜する。
「なるほど、軽い機体だな。同じ銀河重工製でも雷電とは大違いだ」
 ハヤブサの加速性能に愛機の雷電との設計思想の違いを実感する龍深城だった。



 残る1機はS−01改と戦闘中だが、そのHWは常に距離を置いて攻撃してくるため、ドッグファイトしかできない剣一郎は攻め手を欠いていた。 
 だが、HWが空母の甲板上を通過しようとした、その時。
 甲板上からバルカン砲が正射され、HWを撃ち抜いた。
「当たり〜! やっぱり俺には対空砲よりディアブロの方があってるな」
 それは強引に機首を空に向けたディアブロで綾が放った攻撃だった。
 しかも『アグレッシブ・フォース』のオマケ付きである。
「目標捕捉‥‥逃さん!」
 剣一郎はその隙を逃さず『ブレス・ノウ』を発動させて一気に距離を詰め、バルカンを正射。
 数十発もの弾丸がHWを貫通した。
 無数の穴を穿たれたHWはしばらく滞空していたが、やがて火を噴き、四散しながら海に落ちていった。
「HW全機の撃墜を確認‥‥各機、状況を。それと空母は無事か?」
 剣一郎が眼下の空母に目を向けると、
「やったぁ〜!!」
「ざまぁみろ〜!」
 甲板上で歓声を上げて喜ぶ仲間達や艦のクルー達の姿が見えた。



 そして第二艦橋でも同じ様に歓声が響いていた。
「やりましたね、艦長代理!」
「ま、守れたぁ〜‥‥」
 樹は緊張の糸が切れたのか、その場にへたり込んだ。
「お疲れ様です、艦長代理。見事は指揮でした」
 すると、艦橋のクルーが駆け寄って支えてくれた。
「ありがとう、ございます。でも、艦長代理は、やめて」
 樹はようやくずっと言いたかった事が言えた。



 その後、空母の修理と同時に海上で燃えている護衛艦や他の空母の救助が行われ、怪我人や遺体の収容が行われた。
 さやかは傷を癒せるサイエンティストとして医務室を手伝い、他の者もそれぞれ手を貸し、いよいよ出航となる。
「任務を遂行したんだ、ゆっくり休んでな」
 紫藤は遠ざかってゆく海域を眺め、散っていった者達に黙祷を捧げた。
 海はただ、静かに波立っていた。