●リプレイ本文
●進入
隠された入り口を爆破した傭兵部隊は内部に侵入し、周囲を警戒しながらゆっくり進み始めた。
内部は綺麗に区画整備されており、確実に何者かによって作られた空間だ。
「人様の山ン中にこんな穴倉作ってくれちゃって。厚かましいにも程があるね! 宇宙人なら宇宙人らしく空の向こうに帰れってーの!」
新条 拓那(
ga1294)が面白くなさそうに周囲を観察する。
「以前の件といい‥‥。もしやキメラを沢山作る実験でもしているのでしょうか? 狙いを調べられれば良いのですが‥‥」
石動 小夜子(
ga0121)が先日起こった大量のキメラが町を襲撃した事件を思い出しながら呟く。
そしてほぼ直線だった通路の先は3つに分かれていた。
「ここから3班に分かれましょう。どうしても勝てない相手に出会った場合は無理せず撤退をお願いします」
月神陽子(
ga5549)の提案に従って、傭兵達はそれぞれの通路に分かれた。
●キメラ培養室
水平な通路の先には大きな扉があった。
「鬼が出るか蛇が出るか‥‥とにかく進むのみ、ですね」
九条院つばめ(
ga6530)はディスタンでその扉を押し開けると、中は光が満ち、無数のシリンダーが並んでいた。
大小のシリンダーには不気味な色の液体が満ちており、中にはキメラが浮かんでいる。
「これはバグアの技術を手に入れる貴重なチャンスです」
三田 好子(
ga4192)が興奮した様子で瞳を輝かせる。
だが不意に室内が明かりが明滅し、シリンダーが開いて中のキメラが動き出す。
「どうやらゆっくり調査している暇はないみたいだな」
月影・透夜(
ga1806)はディアブロに試作型機槍『アテナ』を構えさせ、キメラと共に現れた青いゴーレムに機体を向ける。
「ゴーレムは俺が抑える。2人はキメラを頼む」
「はい!」
「任せてください」
つばめは小型は好子に任せ、大型の2体と向き合う。
「あれはケルベロスとフェンリル」
その2体はかつて自分達が戦った大型キメラと同種に見えた。
「あの時は強敵でしたが、KVに乗っていれば話は別です!」
つばめは愛機のディスタン『swallw』にハンマーボールを構えさせ、レーザーガトリング砲を掃射した。
「貴重なサンプルですから余り暴れたくないですが‥‥」
好子はキメラに向かってガトリング砲を掃射する度に壊れてゆく機械類を残念そうに見つめながらグレネード弾を発射。
爆発と共に何体もの小型キメラが吹き飛び、機器も同じく吹っ飛んだ。
「同じ槍使いとはいえ無人機など!」
透夜はブーストを発動し、バルカンを掃射して足元の小型キメラを蹴散らしながら一気にゴーレムに肉薄するとアテナの柄のブースターも点火させて高速の突きを放つ。
ゴーレムは槍で受け流すつもりの様だったが、アテナの威力を殺しきれずに胸に突き入れられ、胸部装甲を撒き散らしながら後ろに吹っ飛ぶ。
「トドメだ!」
透夜はさらに突きを放ったが、ゴーレムは跳ねる様に起きて切っ先をかわし、カウンターで槍をディアブロに突き立てる。
「くっ! なんだ? 急に動きが早くなったぞ」
一旦距離を取った透夜が油断なくゴーレムと相対する。
明らかに動きが変わった。敵は何らかの特殊装置を起動させた可能性が高い。
今度はゴーレムの方から攻撃を仕掛けてくる。
「速いっ!?」
咄嗟に受け流そうとしたが間に合わず、肩部装甲が吹っ飛ぶ。
だが続く攻撃を透夜は槍の切っ先を見切ってアテナで跳ね上げ、そのまま一歩踏み込み袈裟切りに振り下ろす。
しかしゴーレムは慣性制御装置を発動させ、滑るように後ろに下がって避けた。
「くっ! 速いな。なら肉を斬らせて‥‥だ!」
透夜はディアブロをゴーレムに突っ込ませる。
それに合わせてゴーレムは突きを放ってくるが、透夜はわざと装甲の厚い部分で受け、槍を掴んで動きを封じた。
「吹き飛べ!」
『アグレッシブフォース』を起動させ、ほぼ0距離からヘビーガトリング砲を撃ち放つ。
しかしゴーレムは槍を放し、横に回りこんで避け、手からレーザーブレードを伸ばしてディアブロの腰部を切り裂く。
「なにっ?」
今の一撃まで避けられるとは思っていなかった透夜は驚愕した。
裂かれた腰部がスパークを放つ。
「月影さん!」
そこにキメラを倒し終えたつばめと好子が援護射撃をしながら駆けつけてくる。
ゴーレムはそれらを易々と避けたが、透夜からは離れて距離を置く。
そして不意にゴーレムのブレードが消えた。
「誘いでしょうか?」
「分からんが仕掛けてみる。援護してくれ」
「はい」
ゴーレムはつばめの放つガトリングは避けたが、その動きがあきらかに鈍く、続く好子の照準装置でのスナイパーライフルの一撃は避けれず、頭部に損傷を受けた。
「どうやら練力が切れたらしいな」
透夜はこの好機を見逃さず『アグレッシブフォース』を発動。
ガトリング砲で脚部を撃ち抜いて足を止め、アテナで腕を斬り飛ばし、機体を捻ってソードウィングで胴体を真っ二つに切り裂いた。
上下に分かれたゴーレムはそのまま爆散して果てる。
「このゴーレム、今まで物とは明らかに性能が違ったな。バグアの技術力も上がってきてるって事か‥‥」
●動力炉
「下ってやがるっつーコトは、施設の基幹部分に繋がる可能性があるかも、ですね」
シーヴ・フェルセン(
ga5638)の予想通り、下に向かう通路の先には動力炉があり、黒いゴーレムとタートルワーム2体が防衛についていた。
「よし、いくよ」
3機は拓那が煙幕弾が放つのを合図に突入した。
すぐにTWがプロトン砲を放ってきたが、煙に紛れた3機には当たらない。
小夜子はアンジェリカのSESエンハンサーを起動させ、威力の増したレーザー砲を発射。TWを硬い甲殻を易々と貫くてゆく。
続いて拓那もレーザーを発射。胴体の無数の穴を穿たれたTWはそのまま倒れ伏した。
だがその間にゴーレムが接近し、ハンマーを投げつけてくる。
「PRMシステム起動!」
拓那はPRMを回避モードで発動させてシュテルンをしゃがませると、轟音を伴いながらハンマーが頭上を通過した。
「当たると痛そ〜」
シーヴはレーザーガトリング砲を撃ち込みながら高分子レーザーも発射してTWを牽制し、ゴーレムに接近する。
ゴーレムはハンマーで迎撃してきたが、ヒートディフェンダーで受け止めた。
コクピットに重い衝撃が走り、岩龍の膝が鈍い軋みを上げたが受け切った。
「岩龍だからって簡単に墜とせると思いやがったら、間違いでありやがるです」
シーヴをゴーレムがハンマーを手元に戻す前に懐に飛び込み、ヒートディフェンダーで叩っ斬る。
しかし厚い装甲に阻まれ、刃は半ばまで喰い込んだだけで止まった。
「くっ、硬ぇです」
ゴーレムは強引でヒートディフェンダーを弾き、一旦距離を取ってハンマーを構えた。
だがTWを倒し終えた小夜子と拓那がゴーレムの左右に回り込み、レーザーを放って装甲に幾つもの穴を穿ってゆく。
「フェルセンさん、狙ってください」
小夜子の意図を汲み取ったシーヴがゴーレムにつっこみ、放たれたハンマーを再度受けて止めて衝撃に耐え、今度はレーザーで融解した装甲を狙って斬った。
刃はなんとか装甲を断ち、内部機構も斬り裂きながら外に抜ける。
「いけるです!」
シーヴはゴーレムに間合いを取られない様にしながらヒートディフェンダーを振るい続けた。
だが不意にゴーレムの胸部装甲が開き、プロトン砲が発射された。
「っ!?」
直撃を受けたシーヴの岩龍は装甲を融解させながら後ろに吹っ飛び、倒れた所にハンマーが叩き落とされてくる。
「くぅっ!」
かろうじてヒートディフェンダーで受け止めたものの、加重で岩龍の背面機構は大きくひしゃげ、肘にも多大な負荷がかかる。
「破っ!」
けれど、その隙に接近した小夜子がハンマーの鎖を断ち切り、近距離からレーザーを発射してプロトン砲を潰す。
プロトン砲の誘爆でゴーレムが後ろに仰け反る。
「今です、拓那さん!」
「よしっ!」
続いて拓那がプロトン砲の跡にヒートディフェンダーを深々と刺し貫く。
「これで、どうだ!」
ゴーレムはそのまま仰向けに倒れ、爆散した。
「はは、やっぱり小夜ちゃんは最高の相方だ。頼りになるよ♪」
「私も、拓那さんと一緒で心強かったです」
拓那の陽気な声を聞いて、小夜子は頬を赤らめた。
「意外と強敵だったでありやがるです。他は大丈夫でありやがるでしょうか?」
シーヴを傷ついた愛機を立ち上がらせ、無線機のチャンネルを開いた。
●格納庫
上に向かう通路の先には大きなシャッターがあった。
そしてシャッターを開いた直後、先頭にいた陽子のバイパー【夜叉姫】にレールガンが撃ち込まれた。
「ぐっ!」
咄嗟にフットペダルを操って転倒は防ぐが、バイバーの胸部装甲は抉れ、内部機構にまでダメージが及んでいる。
「土色の阿修羅。やはり君か、ワニキア」
格納庫の奥にいる阿修羅を見てリヴァル・クロウ(
gb2337)が核心を持つ。
3機は突入すると、新居・やすかず(
ga1891)はS−01Hを作業台の影に潜ませ、スナイパーライフルを構えた。
だが天井から赤いゴーレムがS−01Hの背後に降り立ち、双剣で斬りつけてきた。
剣はS−01Hの背面装甲を切り裂き内部機構にも多大なダメージを受ける。
「くっ!」
新居はS−01Hを前に飛び出す様に操り、そのまま機体を振り向かせながらリニア砲を撃つ。
ゴーレムはリニア砲を受けながらも前に出て、更にS−01Hを斬りつけた。
その剣撃はコクピットまで及び、新居の体まで傷つける。
「新居氏!」
「しまった」
先行していた2人が新居を救いに引き返す。
その隙を狙って阿修羅が陽子のバイパーにレーザーの束を撃ち、S−01Hにトドメを刺そうとレールガンを向けた。
「間に合えっ!」
リヴァルは新居の盾になるためシュテルンを2機の射線上に突入させる。
レールガンはシュテルンの装甲を易々と貫き、多大なダメージを受けたがS−01Hは守れた。
その間に陽子はゴーレムに向かってロンゴミニアトを振りかぶる。
「はぁっ!」
ゴーレムを剣で防ごうとしたが、ロンゴミニアトは剣ごと斬り裂き、手元に引き戻して胸部を貫き、液体火薬で内部から爆発させてトドメを刺す。
「これで心置きなくあの阿修羅と戦えますね」
陽子は再びバイパーを阿修羅に向け、突撃させる。
阿修羅からレールガンとレーザーの雨で迎撃され、バイパーがダメージを受けるのも構わず間合いを詰めてロンゴミニアトで突きを放つ。
だが阿修羅は慣性装置を作動させ、不規則な機動で全て避けた。
新居がスナイパーライフルで援護の狙撃をするが易々と避けられ、
リヴァルのブーストとシュテルンのPRMの命中モード全開で放ったスラスターライフルですら避けられた。
「貴方達は何故、それほどまでに‥‥」
陽子はロンゴミニアトを振るいながら阿修羅に向かって無線のチャンネルを開く。
「人類にはたしかに、愚かな処も、醜い処もあるのでしょう。ですが、それだけでは無い事も‥‥わたくしは知っております」
「だが大半の人類は愚かさだけが際立っている。それら全て不要だ。自分達が処理してやろう」
「そんな!」
陽子が返事を返す前に阿修羅がロンゴミニアトの間合いの外まで逃れ、レールガンとレーザーをバイパーに撃ち放ってくる。
「くっ‥‥」
今の攻撃で機体ダメージは7割を越えた。
並みのKVならとっくに大破している。
しかし阿修羅が動いた事で後ろにあったシリンダーの中が衆目に晒された。
ゲル状の液体に満たされたシリンダー内では様々な機械に繋がれた岩龍があった。
「あれは、リサの岩龍」
「たぶんバグア用に改造されています。動き出される前に破壊しましょう」
新居はS−01Hにグレネードランチャーを構えさせた。
「‥‥人?」
しかし、シリンダーの近くに少女がいる事に気づき、トリガーを引くのを躊躇った。
だが、こんな所で一般人がいる訳がなく、バグアの技術者か何かだと判断してグレネードを発射。
爆発が岩龍の入ったシリンダーを吹き飛ばし、爆風が少女を覆い隠す。
「すまん、リサ」
続けてリヴァルもレーザーを撃ちこんで岩龍を破壊してゆく。
「やめろーー!」
ワニキアは慣性機動でバイパーをかわすと、リヴァルのシュテルンにレールガンとレーザーの束を発射。
脇腹にレールガンを受けたシュテルンは機体が半回転し、さらにレーザーが頭部、左肩、右腕部、胴体を貫き、コクピットに紫電が走ってリヴァルに傷を負わせる。
「ぐぅっ!」
しかしまだ機体は動く。
リヴァルはスラスターライフルで岩龍のコクピットを完全に潰した。
「大事な実験機が‥‥」
ワニキアが悔しそうに歯を喰いしばる。
「戦闘中に敵に背を向けるとは迂闊ですよ」
陽子のバイパーが阿修羅の背後からロンゴミニアトを振り下ろしてくる。
「くっ!」
ワニキアは咄嗟に機体を捻って避けようとしたが、先にロンゴミニアトが阿修羅の後ろ足を斬り飛ばす。
「しまった!」
機動性が落ちた阿修羅に勝ち目はなく、2撃目でレールガンを破壊され、3撃目で頭部が破損、4撃目が胴体を切り裂かれ、5撃目で胴体を貫かれ、最後は注入された液体火薬を爆裂されられた。
「くそっ!」
ワニキアは阿修羅が爆発する前に脱出ポッドで離脱する。
「逃がさない」
だが、脱出ポッドを新居がスナイパーライフルで狙撃して撃ち落す。
「よし」
そしてワニキアの身柄を拘束しようと手を伸ばした。
しかし
「ワニも世話が焼ける‥‥」
そんな声と共にS−01Hのモニターに一人の少女の姿がアップで映った。
「この子はさっきの」
少女が手にする身の丈ほどもある大剣を振り下ろした直後にモニターがブラックアウト。
サブカメラの映像に切り替わった時には少女の姿は消えていた。
「いったい何処に?」
そう思った直後、コクピットに鈍い衝撃が走る。
慌ててカメラを切り替えると、コクピットの真上で少女が剣を振り下ろしていた。
「さすがに硬い‥‥」
そう言いつつも、コクピットの上部の装甲にはひびが入っている。
「くっ!」
新居は慌ててS−01Hを動かして少女を振り落とす。
そして地面に落下した少女を手で叩き潰した。
しかし潰したと思った瞬間、S−01Hの指が飛び。その隙間から少女が出てきた。
「すまん愛子。退くぞ」
「‥‥命令しないで」
少女は不機嫌そうに言いながらもワニキアと共に格納庫の横にあるドアに消えた。
そして隣の格納庫が爆発すると同時に1機のHWとS−01改が外に飛び立っていった。
●作戦完了
こうしてワニキアと謎の少女は取り逃がしたものの、傭兵達はワニキアの阿修羅と鹵獲された岩龍の破壊、及びロッキー山脈の敵秘密基地の占拠に成功した。
そして好子は嬉々として基地の調査を始めたのだった。
「とりあえずアレとコレは持って帰りましょう。も〜、リッジウェイの両手とキャリアだけではとても足りませんね♪」