タイトル:Silent Cityマスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/14 01:20

●オープニング本文


 先の傭兵部隊との共闘により、軍の戦車隊と歩兵部隊によってキメラの掃討されたコンローの町では急ピッチで仮設前線基地が構築されていた。
 敵陸戦部隊のための防壁を築き、塹壕を掘り、対空砲台を設置し、後方の司令本部までのインフラを整備する。
 現在のところは敵の攻撃もなく、300人の工兵の手により仮設前線基地は間もなく構築されようとしていた。

 そのトラックが後方からやってきたのはそんな時だった。
「止まれ!」
 門番の兵士は小銃を向けながらトラックの前に出て、止まる様に合図を送る。
 トラックは北アメリカでは広く使われている輸送トラックであるが、今の時間に補給が来るような予定はないし、連絡も受けてはいない。
 トラックは兵士の指示に従って素直に止まったので、兵士は油断なく小銃を構えたまま運転席に近づいた。
 窓から中を覗くと運転席には帽子を目深にかぶった女が乗っていた。
 帽子のせいで顔はよく見えないが、まだ若い女に見える。
「この時間にトラックが来るとは聞いていないぞ。何の目的でここに来た? 身分証と命令書を提示しろ」
 兵士が声高に命令すると窓が下にスライドして開き、女が一言
「うざい」
 と言った直後、その兵士の首が飛んだ。
 首を失った兵士の身体は盛大に血を噴き出しながら後ろに倒れる。
「敵か!?」
 他の門番の兵達がすぐに小銃をトラックに向けて発砲したが、女の姿は既に運転台にはなく、彼らの傍らに立っていた。
「何時の間に?」
 兵士がセリフが言い終わる前に、今度は3つの首が空を飛び、盛大な血しぶきが舞う。
 女が帽子を取ると、ふわりと黒髪が広がり、その下にはまだ少女と呼べる程の幼い顔があった。
 少女の名は小野塚 愛子(gz0218)。
 北米バグア軍総司令官親衛隊『トリプル・イーグル』の一人でリリア・ベルナール(gz0203)の忠実な僕。
 そして、リリアがこの街を侵そうと企む人類を戦滅させるために遣わしたヒューストン防衛司令でもあった。
 仮設前線基地の方からサイレンの音が響いてきた。
 どうやら物見の偵察兵がここの異常に気づいたらしい。
 愛子はトラックまで戻ると荷台を開けた。
 そして一言
「行って」
 それだけ命令して荷台に積んでいた20体のマネキン型キメラを解き放ち、自身も身の丈ほどもある大剣を担ぎながら町へ足を踏み入れた。

 そして、コンローの町からの軍の音信が途絶えるのに1時間とかからなかった。

●参加者一覧

弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
九条院つばめ(ga6530
16歳・♀・AA
聖・綾乃(ga7770
16歳・♀・EL
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD
祠堂 晃弥(gb3631
19歳・♂・DG
アレックス(gb3735
20歳・♂・HD
柊 沙雪(gb4452
18歳・♀・PN

●リプレイ本文

 コンローの町の北側入り口に到着した傭兵達は、そこで首のない4人の兵士の死体を発見した。
「なんて事を‥許せないですっ!」
 聖・綾乃(ga7770)が悼みと怒りを瞳に宿す。
「襲撃を受けているはずの町が‥随分と静かだ」
 祠堂 晃弥(gb3631)が耳をすましても銃撃一つ聞えない。
「‥‥何だか、嫌な予感がします。急ぎましょう」
 九条院つばめ(ga6530)の逸る気持ち抑えるように硬い表情で告げた。

 傭兵達は2班に別れ、まずは兵士達が宿泊に使用しているホテルと町の南の防衛施設の調査に向かった。



●ホテル

 A班がやってきたホテルの周囲には何人もの兵士達が無残な屍を晒していた。
「ここもか‥‥」
 リヴァル・クロウ(gb2337)がざっと見渡して遺体の状況を観察する。 
「ここも静かだね。生き残ってる人がいるといいけど‥‥」
 弓亜 石榴(ga0468)も表情を暗くして周囲の遺体とホテルを見る。
「生存者は居る‥そぉ信じる事が大事ですねぇ」
 ヨネモトタケシ(gb0843)は慎重にホテルのドアに近づいた。
「開けますよぉ。準備はよろしいですかな?」
「‥‥はい。どうぞ」
 柊 沙雪(gb4452)は小さく息を吐き、感情を心の奥に沈み込ませ、思考をクリヤーにして完全に戦闘モードに切り替えてから頷き返した。
「では」
 しかしヨネモトがドアノブに手をかける前にドアは開いた。
「!?」
 ドアの向こうには肩に兵士を背負ったマネキン型キメラがおり、4人に気づいたキメラは背負っていた兵士を投げつけてきた。
「うわぁ!」
 石榴は慌てて投げつけられた兵士を抱きとめる。
 その隙にキメラは両腕から刃を伸ばして切りかかってきたが、
「おっと!」
 ヨネモトが石榴の前に出て左右の蛍火でキメラの刃を受け止めた。
 その間に沙雪が音もなくキメラの背後に回り込み、左右の手に握った二刀小太刀の『疾風迅雷』を振るって膝関節と肩関節を切り裂く。
「ハァッ!」
 キメラが膝から崩れ落ち、肩がダラリと下がったところでヨネモトが蛍火で左右から袈裟切りにしてトドメを刺した。
「みんな! この人まだ生きてるよ」
 さっき投げつけられた兵士を診ていた石榴が皆に呼びかける。
「なにっ?」
 確認すると、身体に刃による傷を受けていて重症だが確かに息はある。
 すぐにでも治療をしたかったが救急セットを持つ者がおらず、簡単な応急処置しかできなかった。
「この人どうする?」
「そうですなぁ‥。ホテルの捜索が終わるまでは何処か安全そうな所に隠しておきますか」
 兵士を駐車場に停めてあった車の後部座席に寝かせると改めてホテルの捜索に取り掛かった。

 1階は荒れてはいるが死体もキメラも見当たらない。
「誰かいませんか〜〜」
 声を上げながら部屋を見て回ったが返事はなく、何も見つからなかった。
 2階へ向かう途上にはバリケードが築かれていたが壊されており、3体の死体があった。
「必死の抵抗を試みたようですね」
「狭い階段でバリケードを築いての迎撃は戦術的にも有効なはずだが‥易々と突破されているように見えるな」
「見たところ小銃程度の武器しか持っていなかった様ですから、キメラの進攻を抑えられる程の火力がなかったのでしょうなぁ。一般兵がキメラに対抗するには大口径の重火器が必要ですからねぇ」
「宿泊用のホテルにそんな重火器は用意してなかったって事かぁ‥‥」
 2階でも何も発見はできず3階へ向かう途上のバリケードを越えたところで不意に階段の上から何かの液体が流れてきた。
「これは‥‥みんな退けっ!」
 独特の揮発性の刺激臭を嗅いだリヴァルが叫んだ直後に液体は燃え上がった。
 間一髪、全員炎は避けたが、燃え上がる炎を突き抜けてマネキン型キメアが飛び掛ってくる。
「くっ!」
 リヴァルは咄嗟にプロテクトシールドで身を防いだが、盾を反れた刃が身を傷つける。だが軽傷だ。
 続いて背後で窓が割れ、キメラが顔を覗かせる。
「後ろからも?」
 窓のキメラは口を開けて銃弾を連射してきた。
「うひゃぁぁ!」
「危ない!」
 悲鳴を上げる石榴の前にヨネモトが出て、その重装甲で全ての銃弾を弾いた。
「どうやら口から吐けるのは火だけではないようですね」
 沙雪は冷静に分析すると一気に差を詰め、疾風迅雷で斬りかかるがキメラは窓から飛び上がって天井に張りつき、更に銃弾を浴びせかけてくる。
「このっ!」
 石榴は天井のキメラに向かってハンドガンを放ったが、キメラは巧みに避けた。
 だが、その隙に沙雪が壁を使った三角飛びで天井まで飛び上がる。
「ハッ!」
 そしてキメラの腕と足を1本ずつ切り落として天井から剥ぎ落とす。
 床に落ちたキメラはすぐに起き上がろうとしたが、それより先にヨネモトが蛍火を突き立ててトドメを刺した。

 もう1体のキメラはリヴァルが盾で身を守りながら月詠でキメラの身体の各所を突いて弱点を探っていた。
 心臓部は手ごたえが薄かった。しかし胴体の下腹部ぐらい貫いたところでキメラは活動を停止した。
「どうやら、ここが弱点の様だな」

 その後もホテル内の捜索を続けたが、結局生き残りは玄関で救出した一人だけで、キメラも3体しかいなかった。



●学校

 その頃、小野塚 愛子(gz0218)は学校の食堂で返り血を拭い落としていた。
「‥‥ふぅ。人間の血って最初は暖かくて気持ちいいんだけど、乾くとパリパリになるのが嫌よね」
 そして髪を拭き終えて校庭に出ると、銃撃音が響いていた。
「まだ制圧できてないの」
 愛子は忌々しそうに体育館を見る。
 体育館の周りには7体のマネキン型キメラがいたが、町の各所から武器を求めて集まった兵士達が籠城戦を続けていた。
「さっき洗ったばっかりだっていうのに‥‥」
 愛子は溜め息をつくと大剣を手にし、体育館に向かって歩き出した。



●防衛施設

 アレックス(gb3735)と祠堂のAU−KVにタンデムして南の防衛施設に来たB班は銃撃の音を耳にした。
「きっと生き残りの人がいます」
「何処だ?」
「東側から聞えてきます」
「よし行くぞ。しっかり掴まってろ!」
 東に向かうと、塹壕に篭って4体のマネキン型キメラを迎撃している兵士達の姿が見えた。
「いた!」
「このまま突っ込む!」
 2機のAU−KVがキメラに向かって疾走すると、気づいたキメラが振り返って迎撃態勢をとった。
 つばめと綾乃はAU−KVから飛び降り、地面を滑りながら着地。
 アレックスと祠堂はAU−KVを身に纏うと『竜の翼』を発動。更に加速してキメラに突撃した。
 対するキメラは口腔を開き、アレックスには銃弾を連射。祠堂には電磁波を掃射した。
「おぉぉぉーー!!」
 アレックスは身を固めて銃弾を弾き、一気に肉薄してエクスプロードで1体のキメラを串刺しにする。
「インテーク開放‥‥ランス『エクスプロード』、イグニッション!」
 そしてエクスプロードの炎でキメラを内部から焼き払って早々に1体倒す。

 強力な電磁波を浴びた祠堂は全身を焼け焦げさせたが、痛みを感じない祠堂は構わず突撃し、蛍火を切り払った。
 しかしキメラは身をくねらせた避け、反撃の刃がリンドヴルムを貫く。
「くっ!」
 刃が身体を貫く不快感の後に血が噴き出す。
「祠堂さん!」
 祠堂の危機につばめが駆けつけ、ルピネススピアを構えた。
「破っ破っ破っ! せいっ!」
 つばめはキメラの腹と胸に突きを放って態勢を崩したところで槍を旋回させてキメラの足を払い、転倒させる。
「このぉ!」
 倒れたキメラの腹を祠堂がペルシュロンで踏み砕き、胸を蛍火で貫いて倒した。

 綾乃はS−01で牽制射撃を行ってキメラの気を引き、朱鳳と氷雨を抜き放って『ファング・バックル』を発動。
「いきます!」
 キメラの横凪の刃をしゃがんで避け、続けて振り下ろされてきた刃は朱鳳で受け流して懐に潜り込み、氷雨で膝関節を切り裂いて機動力を奪う。
「やぁ!」
 そこから更に朱鳳を切り上げて片腕を切断。
 キメラが残った腕で切りかかってきたが身体を半回転させて避け、その流れで回し蹴りを胴に叩き込んで蹴り飛ばす。
「任せろ!」
 そこにアレックスが走りこみ、エクスプロードで胴貫き、焼き殺す。

 残った1体もつばめと祠堂が倒し、全てのキメラを駆逐し終わった。

「ありがとう、助かった」
 塹壕に篭っていた兵士の一人が心底安堵した様子で礼を言ってくる。
「いえ、間に合ってよかったです」
「もぉ大丈夫ですよ♪」
 つばめと綾乃がにっこり微笑む。
「生き残っているのは‥これで全員か?」
「あぁ。ここで構築作業を行っていた者のほとんどがこの塹壕に避難したはずだからな」
 祠堂の質問に答える兵の後ろには40人ほどの兵士がいた。
「そうか‥‥」
「でも、まだ他にも生存者がいるかもしれないですよぉ」
「そうだな。あんたらはここに篭っててくれ。もしまたキメラに襲われてら無線をくれ。すぐに来る」
「あぁ、頼む」
 アレックスはそう言い残すとAU−KVをバイク形態に戻し、綾乃を後ろに乗せて走り出す。
 その後ろにつばめを乗せた祠堂のAU−KVも続いた。
 
 そしてタクティカルゴーグルで哨戒を行っていたアレックスが一台のトラックと、トラックに何かを積み込んでいるマネキン型キメラ2体を発見した。
「いたぞ、キメラだ。トラックに何か積み込んでやがる」
「何かを持ち出そうなンて‥泥棒さんです」
 後ろの綾乃がむぅ〜と頬を膨らせて可愛らしく怒る。
「‥‥なっ! あいつら兵士をトラックに積み込んでるぞ」
 アレックスがタクティカルゴーグルの倍率を上げて何かを兵士だと確認した。
 どうやら全員が怪我をして掴まった兵士のようだ。
 だが怪我人であるにも関わらずトラックの中に無造作に放り込んでいた。
「怪我をしている人をまるで荷物の様に‥‥許せないです! すぐに助けに行きましょう!」
「もちろんだ!」
「とばすぞ」
「はい!」
 4人はキメラに速攻で奇襲を仕掛け、反撃の隙も与えぬまま殲滅した。
「助けに来たぞ、無事‥か‥‥」
 トラックの荷台を見たアレックスは言葉を失い絶句した。
 荷台には50人ほどの負傷兵が無造作に積み重ねて乗せられており、苦しげな呻き声を漏らしている。
 床には血溜まりが広がっており、下敷きになっている兵の中には既に冷たくなって動かない者もいた。
「ひどい‥‥」
 つばめが顔を青ざめさせ、口元を手で覆う。
「すぐに助けますっ!」
 綾乃は荷台に乗り込んで負傷兵を助け出してゆき、つばめも救急セットを取り出して治療を開始する。
「さっきの兵達にも手伝わせよう」
 祠堂が無線で塹壕の兵を呼ぶ。
「こちらB班。トラックに積まれた負傷兵を保護した。俺達は彼らを手当てしてから合流する」
 アレックスもA班に無線をし、作業を手伝った。

 そうして兵達の救助を行っている最中、不意に何処からか轟音が鳴り響き、遠方から煙が上がった。
「えっ?」
「なんだこの音は?」
 それは愛子が体育館の物資に火をつけて爆発させた音と煙だった。



●学校

 そして学校ではB班より先に到着したA班が運悪く愛子と鉢合わせしていた。
「名のある御仁と御見受けします‥御名前は?」
「小野塚‥愛子」
 愛子は怪訝な顔をしながらもヨネモトに名乗った。
「ねぇ愛子ちゃん。私の声に聞き覚えないかな?」
 石榴の問いに愛子が首を傾げる。

「強化人間に見つかった。今時間を稼ぎつつ後退する隙を窺っている。できるだけ早く来てくれ」
「はい、すぐに行きます。それまで無理はしないで下さい」
 二人が愛子の気を引いてくれている間にリヴァルは無線機でB班と連絡を付けた。

「‥‥命乞い女?」
「うん、そう。私、弓亜 石榴。それで今回も見逃してくれると嬉しいな〜って思ってるんだけど」
「無理。今度はちゃんと殺す」
 愛子はアッサリ断って大剣を構えた。
「待って! その前に質問いい? 何でこんな事したの?」
「‥‥人が憎いから。人は醜く汚く残酷で最低最悪の下劣な生物。あたしは誰よりもそれを知っている。そんな人間達にあたしがされた事と同じ痛みと苦しみを返すの」
「ほう、君は随分と人間らしいことを述べるのだな」
 リヴァルの言葉を聞いた愛子の目に憎悪が灯る。
 そして一瞬で間合いを詰めるとリヴァルを大剣で袈裟切りにした。
「なっ‥‥」
 リヴァルの身体から盛大な血飛沫が舞う。
「あたしをあんな下劣な生物と同じに見るなぁっ!!」
「想像以上に速いですなぁ」
 ヨネモトはリヴァルを救うべく蛍火を振るったが愛子は軽やかに避け、反撃の刃を繰り出す。
「ぐぅ!」
 一撃目はなんとか蛍火とメタルガントレットで受けたが、2撃目3撃目がヨネモトを深く切り裂く。
 だが、その隙に『疾風脚』で愛子の背後に回った沙雪が疾風迅雷を背中に突き立てた。
「やらせません」
 しかし疾風迅雷は愛子のFFに阻まれ、傷一つつける事ができなかった。
「そんな‥‥」
「ふん!」
 愛子は後ろ蹴りを放って沙雪を吹っ飛ばす。
「ぅ‥‥」
 鳩尾に蹴りを喰らった沙雪は地面に這いつくばって呻いた。
「くそぉ!」
 リヴァルは痛みに耐えながら愛子の顔面に盾をつきたて視界を奪う。
「邪魔」
 盾はすぐに弾かれたが、その一瞬の隙にヨネモトが左右の蛍火で間断なく斬りかかる。
 愛子は大剣で防ぎ、弾き、受け流したが、最後の一刀だけは避けそこねた。
「浅い‥‥」
 だが、それは腕を僅かに裂いただけでヨネモトは悔しげに呻く。
 しかし
「‥‥痛い。い、い、痛い! 痛い痛い痛い痛い痛ぁぁーーーいぃっ!!」
 愛子は怯えた表情を浮かべて激しく痛がった。
「え?」
「なに?」
「よく分かりませんがチャンスです。今のうちに後退を」
 ヨネモトはそう告げると『二段撃』と『スマッシュ』を発動。
「刻ませて頂く、我流‥烈双刃!」
 斬り上げ、斬り下ろし、薙いで、突く、鋭い4連撃を見舞った。
 愛子は3撃までは避けたが、4撃目が身体を捉えて深く傷つける。
「嫌ーーっ! 痛いの嫌。熱いの嫌。寒いの嫌。暗いの嫌。嫌嫌嫌嫌嫌ーーーっ!」
 愛子は絶叫を上げ、涙を流しながら大剣をヨネモトに振り下ろす。
 その攻撃は速くて鋭く、ヨネモトを受ける事さえできずに何度も身体中を切り裂かれた。
「ぐうぁっ!」
 血まみれになったヨネモトは蛍火を取り落とし、地面に倒れ伏した。
「ヨネモトさん!」
 沙雪は『瞬天速』でヨネモトに駆け寄って抱きかかえ、一気に離脱をはかる。
「なんで? どうして? いじめないで、殺さないで、あたしを殺さないでお父さんっ! 殺さないでぇぇーーーっ!!」
 愛子は二人を追うどころか、逆に頭を抱えて泣き叫びながら自分もその場から逃げ去った。

「ヨネモトさん!」
 そしてヨネモトは意識がなく、傷も深刻な状態だった。



 その後、駆けつけたB班と共に学校に残っていたキメラも殲滅したが、体育館の兵士達は全滅。学校内も愛子に殺された死体が残されているだけで生存者はいなかった。

 そして町に残された死体と生存者の数を合わせても、元いた兵士の数に達しない事が判明した。