●リプレイ本文
●A班
周防誠(
ga7131)のワイバーンを先頭にして、リオン=ヴァルツァー(
ga8388)の阿修羅、ゲック・W・カーン(
ga0078)のスカイスクレイパーで隊列を組んだA班は、スカイスクレイパーでアンチジャミングを行いつつ、IRSTで穴の調査しながら進んでいた。
その結果、穴は意外と強度が高く、派手な爆発物でも使わない限り崩れる事はないだろうと判明する。
「アースクエイクがつい最近、掘った穴‥‥いったい、何に使うつもりなんだろう‥‥? 奥に、何があるかはわからないけど‥‥急いで、調べたほうがよさそうだね‥‥」
リオンがそう結論づけた直後、ゲックのレーダーが進行方向に動体反応を捉えた。
「レーダーに感あり! この反応は‥‥HW5機とEQ1体。だが普通のHWだけじゃねぇ、本星型って奴も混じってるぜ!」
「そんなのをほったらかしにしておいたら、僕たちに不利益を生むのは確実っぽい‥‥」
「本星型HWと遭遇するのは3回目ですよ。防御力とFF強化が厄介です。戦闘にはちと狭いが仕方ない‥誤射だけは勘弁願いますよ? それじゃ、行きますか!」
周防を仲間に呼びかけると『マイクロブースト』でワイバーンを加速させ、瞬時に先頭のHWをグングニルの射程内に捉えた。
「貫け、グングニル!」
周防はグングニルを最大まで引き伸ばして柄後部のブースターを点火。
そこにマイクロブーストの加速力も上乗せし、最大出力でHWに打ち込んだ。
1撃目で装甲が完全に吹き飛び、2撃目で内部機構を破壊、3撃目で貫通。瞬く間に1機撃墜した。
「僕達にとってうってつけの任務だ。いくぞLeo!」
リオンは愛機の『Leo』に呼びかけると、周防が倒したHWの後ろにいるHWに向けて対戦車砲を発射。
コクピットにまで重く響く反動の後に轟音を伴って135mmの砲弾が飛来し、HWを貫く。
「急げ! こんな状況でも無けりゃ、あの新型とサシでまともに戦える可能性は少ない。1機でも多く堕とすぞ!」
続いてゲックが高分子レーザー砲を放ってHWに穴を穿ってゆく。
だが、2機の攻撃に耐えたHWはプロトン砲に光を灯して発射態勢に入った。
「ここで仕掛けてくるか‥自分の機体の真後ろに入ってください!」
周防は後ろに2機を庇いながらアイギスを正面に構え、衝撃に備えた。
その直後、穴の中が光に包まれたかと思うと、熱と光の奔流が3機を襲う。
穴の壁面が焼かれて融解し、穴の中の温度が急激に上昇してゆく。
だが、そんな攻撃に晒されたにも関わらず3機はほぼ無傷だった。
それも全て先頭で盾となった周防のワイバーンの高硬度な装甲のお陰である。
「よっし! 反撃開始だ!」
ゲックとリオンは周防のワイバーンの陰から飛び出すと、すかさず対戦車砲とレーザー砲を撃ち込んでHWにトドメを刺す。
そして周防はワイバーンを再びマイクロブーストで加速させ、2機のHWの後方にいた本星型HWにグングニルの3連打を喰らわせた。
しかし本星型HWのFFが不気味な輝きを放ち、必滅のグングニルの威力を無理矢理に抑え込んでしまった。
「やはりこのFF強化は厄介だな‥‥。しかし何時までエネルギーがもつかな?」
周防は不敵な笑みを見せるとグングニルを打ち込み続けた。
その度にFFが輝きを放って威力を殺されるが、敵はエネルギーを消費しているはずである。
ゲックもレーザー砲を連射し、エネルギー切れになったカートリッジが自動排出される。
ゲックがリロードしている間にリオンが対戦車砲を撃ち放ち、轟音を響かせる。
HWも反撃のプロトン砲やフェザー砲を放ってくるが、その度に周防が自らの機体を盾として後方の2機を守り続けた。
そうして強化FF越しに攻撃を続ける事十数回。
細かいダメージを蓄積させられた本星型HWは遂に浮力を失って落下し、その機能を停止させた。
「よし! あと1機だ」
最後の本星型HWがプロトン砲に光を灯したが、
「させないよ!」
それより先にリオンの阿修羅がサンダーホーンの伸ばしてHWに打ち込み、電磁パルスを流し込んだ。
更にリオンはサンダーホーンを器用に操ってHWに巻き付け、動きを封じてみせる。
「よし! 捕まえた」
リオンはそのままHWを抑えこんで死角に回ると近距離から対戦車砲を叩き込んでゆく。
砲弾の威力は強化FFで減衰させられるが、そのまま砲身が焼ききれるまで撃ち続けた。
ゲックもリロードを終えたレーザーを再び連射。無数の光線がHWを貫いてゆく。
周防も正面からグングニルを打ち込み続け、HWの装甲に穴を穿ってゆく。
そして最後はリオンの対戦車砲がHWの中心部を破壊し、トドメを刺した。
「よっしゃあ! この残骸を持ち帰ろうぜ。強化FFの秘密が分かるかもしれねぇ」
だが、不意に機能停止したはずの本星型が爆発。穴が崩れ始めた。
「くそっ! バグアお得意の自爆で隠滅か」
「急いで離脱しましょう!」
3人は各KVを方向転換させると全速力で離脱した。
●B班
「しっかし何でこんな穴なんて掘ったのかしら‥‥」
先頭を行くワイバーンに乗ったレイラ・ブラウニング(
ga0033)が穴の様子を眺めながら不思議そうに呟く。
3機の中で最も改造率の低いレイラだが、
『最年長のおねーさんとしては後ろの二人を傷物にさせる訳には行かないのよね!』
という理由から先頭に立っていた。
「入り口を隠蔽する工作があった以上、単なるアースクエイクの移動痕では無いでしょう。戦術レベルではなく戦略レベルの工作行動である可能性も十分あります」
隊列の一番後ろのワイバーンに乗る水上・未早(
ga0049)が自分の見解を述べる。
「レーダーに反応有り!」
やがてレイラのレーダーが前方に敵機の反応を捉えた。
「接近戦を仕掛けるわ、援護ヨロシク!!」
レイラは先頭のHWにクロスレンジを仕掛けるため『マイクロブースト』を発動させて加速。
「撃ちます、射線を空けてください」
「飛べっ! ガトリングナッコォ!!」
前にいる2機の隙間をぬって発射された水上のスナイパーライフルがHWを貫き、少し遅れてミア・エルミナール(
ga0741)の阿修羅のガトリングナックルがHWに叩き込まれる。
続いてレイラがクロスレンジ攻撃を仕掛けようとしたが先にHWの砲身に火が灯り、プロトン砲が発射された。
「くうっ!」
レイラは咄嗟にアイギスを構えたが、至近からのプロトン砲の直撃でアイギスはすぐに赤熱化し、機体各所も融解してスパークを上げ始める。
「そう簡単にやられはしないわよ!」
しかし攻撃に耐え切ったレイラは前足に装備したライトニングファングでHW引き裂き、機体を捻ってソードウィングを叩きつけて更に切り裂いた。
この一撃でHWは浮力を失って地面に落ち、完全に沈黙する。
だが今度はすぐ後ろにいたHWがフェザー砲を発射。
レイラのワイバーンに無数の穴が穿たれてゆき、コクピットが激しく揺れ、ダメージランプが幾つも点灯して危険を知らせるアラームが鳴り響く。
「伏せてレイラさん!」
ミアはレイラのワイバーンを飛び越えるとガトリング砲をばら撒きながら接近し、頭部のツイン・クラッシャーホーンをHWに突き立てる。
「叩き潰してやるっ!」
ミアは阿修羅の四肢を踏ん張らせると、首を縦横に振るいツイン・クラッシャーホーンでHWを引き裂いてゆく。
その間にフェザー砲が何発も喰らったが気にしない。
「気合じゃー、頑張ればどうとでもなるー!」
そうして根競べを制したミアの阿修羅の足元にはズタズタになったHWが横たわった。
しかし、そのHWの後ろから今度は本星型のHWが姿を見せ、プロトン砲を発射した。
阿修羅が頭部から融解してゆき、メインカメラが吹き飛び、前足が曲がり、機体各所で小規模の爆発が起こる。
「熱っ! 熱っ熱っ! あちちっー!」
コクピット内の温度も急上昇し、操縦桿が過熱して握っていられなくなり、計器類がドンドン死んでゆく。
「ミアさん、退がって!」
今度は水上が前に出て自機のワイバーンを盾にしてミアを救い、レーザーカノンを本星型HWに向かって連射した。
しかし本星型HWの表面でFFが煌き、レーザーの威力が明らかに減衰してHWに突き刺さる。
「これが報告にあった強化FFですか‥‥」
水上はスラスターライフルも撃ちこんでみたが結果は同じで、ライフル弾もその威力を弱めてHWに当たった。
しかし完全に無効化できる訳ではないらしく、本星型HWの装甲にはレーザーで小さく穴が穿たれ、ライフル弾による傷もついている。
「だったら壊れるまで殴り続けるまでだっ!」
ミアは残りのガトリングナックルを全弾発射。
「その通り、攻撃あるのみよ」
続いてレイラも高分子レーザーを撃ちまくる。
HWの装甲で爆発とレーザーの光が何度も明滅してじわじわとダメージを与え続けてゆく。
HWからはプロトン砲やフェザー砲が発射されるが、水上のワイバーンが盾になって防ぎ、水上もレーザーカノンで反撃して断続的な攻撃を続ける。
「機体が潰れるのが先か、錬力が切れるのが先か、いったいどちらでしょうね」
猛攻に晒され続けた本星型HWがグラリとよろめき、地面に墜落して動かなくなった。
そしてもう1機の本星型HWも水上が攻撃を防ぎながら集中攻撃を続けて撃破。
「気合と根性の勝利!」
ミアがコクピットの中でガッツポーズをとる。
残りはEQのみだが、後ろから攻撃をしている間に穴を掘り終え、穴の向こうの海に落ちて逃げていった。
「もう少し倒すのが遅かったら逃げられていたかもしれないですね。本星型HWを殲滅できて本当によかったです」
しかし水上が安堵している間に本星型HWが自爆し、3人はEQが掘り抜いた側から離脱した。
「さぁ、帰りましょ、流石に汗で気持ち悪いから早くシャワー浴びたいし」
レイラがコクピットのハッチを開けて外の空気を入れる。
「同感。コクピットの中がも〜サウナより暑くてたまんないよ〜!」
ミアもコクピット開け、パイロットスーツを脱ぐと下着姿になって潮風に身体を晒した。
「うはぁ〜涼しいぃ! 生きかえるぅぅ〜〜」
●C班
レーダーとIRSTで穴の奥を警戒しながら進むラルス・フェルセン(
ga5133)のワイバーンが何かの熱源反応を捉えた。
「‥‥これは大きな‥アースクエイク? それとHWが2機に‥本星型HWが2機いる様ですね」
「穴掘ってまで逃げたいだなんて‥‥本星型HWって、そんなに無くしちゃ困るモノってこと‥かな」
「おそらくはそうなのでしょうね。シェスチ君、気を引き締めて参りましょう」
ラルスとシェスチ(
ga7729)は共に『マイクロブースト』を発動させて一気に加速し、HWに接近した。
「捉えましたよ」
そしてラルスは先頭のHWを射程に捉えた瞬間に高分子レーザー照射。
「‥逃がさない」
続いてシェスチがスラスターライフルを発射。
暗闇の中を3条に光と30発のライフル弾が曳光弾を伴って飛び、HWに突き刺さる。
しかしHWからもプロトン砲が発射され、穴の中に光が満ちると同時にラルスのワイバーンが超高熱に晒された。
頭部や前足が赤熱化して融解を始め、モニターの映像が歪み始める。
だが2機はそんな超高熱を突っ切ってHWに接近。
まずはシェスチのワイバーンがスパークワイヤーを発射しHWを絡め捕ると同時に高圧電流を流し込む。
「捕まえ‥‥たっ!」
高圧電流に晒されたHWが激しく明滅し、動きを鈍らせた。
「シャスチ君、上手いです。この機、活かしませんとね」
その隙にラルスが両前足に装備したレッグドリルをHWに突き立てる。
高速回転するドリルが火花を散らしてHWの装甲を突き破り、内部機構を破壊した。
ドリルを引き抜いたラルスは機体を捻り、ソードウィングを振るって切り裂き、トドメを刺す。
「まずは1機撃破ですね」
しかし、後続のHWが再びプロトン砲を掃射。
さらに後ろの本星型HWもフェザー砲を連射してくる。
ラルスのワイバーンは首が溶け落ちてメインカメラを失い、機体各部損傷を受けながらも次のHWの懐に飛び込み、レッグドリルを突き立てて本星型からの攻撃の盾とした。
「これで撃てないでしょう」
そしてラルスはHW越しに背面に装備された高分子レーザー砲を伸ばして本星型に向かって乱射した。
しかし本星型の強化FFが煌き、レーザーの威力を悉く減衰してゆく。
シェスチもスラスターライフルを撃ったが結果は同じだ。
「逃がす訳には参りませんからね。穿ちます!」
しかし2機は構わず攻撃を続け、ジリジリと本星型をダメージを与えてゆく。
本星型は確かに角度的にラルス機は狙えないが、盾にしているHWから僅かにはみ出しているシェスチ機に集中砲火を浴びせ始めた。
「うわっ!」
無数の砲火に晒されたシェスチのワイバーンは尻尾が吹き飛び、右後ろ足が損傷による動作不能を起こし、各所にスパークが起こる。
そして盾にされたHWも黙ってはいない。
慣性制御機能で機体を左右に振り、ラルスのワイバーンを穴の壁面にぶつけて拘束を振りほどくと至近距離からプロトン砲を発射した。
ラルスのワイバーンは前足が完全に融解して立てなくなり、胴体部にも深刻なダメージを受け、コクピットの計器類も半分以上が機能停止、ダメージランプは全身の至る所に点灯した。
「損傷率‥結構きてますね」
それでもラルスは火器管制が動く限り攻撃は止めなかった。
しかし本星型のフェザー砲がワイバーンに突き刺さると、コクピットは完全に機能を停止した。
「‥‥せめて1機だけでも!」
シェスチはスパークワイヤーを発射して本星型を拘束すると至近距離からスラスターライフルと高分子レーザー砲を乱れ撃ちにする。
本星型は強化FFで防ぐが、その装甲は何十発ものライフル弾を受けて歪み、レーザーに何度も貫かれた胴体は火を噴いており、もう満身創痍だ。
しかしシェスチもフェザー砲の集中砲火を受け続けており、ワイバーンは装甲が弾け飛び、全身に穴を穿たれ、既に立っている事さえ出来ない有り様になっていた。
そして拘束していた本星型のプロトン砲の光がシェスチのワイバーンを包み込み、徐々に融解、耐え切れなくなった各部が火を噴いて爆発する。
「うわぁ!」
その爆発はコクピットにまで及び、シェスチの身体も炎に煽られた。
「くそぉ‥‥あと一息なんだ。動くんだクドリャフカ!」
シェスチは火傷を負いながらも操縦桿を握り、必死に愛機に呼びかけたが、クドリャフカにはもう動けるだけの力は残されていなかった。
やがてEQが穴を掘り終えて穴の中に太陽の光と潮の香りが満ち、本星型HW達は悠々と空に飛び立ち、EQは海中へと逃れたのであった。
その後、水上が事前に要請していた哨戒機が本星型HWを追ったが最後までは足取りが追えず、アメリカ大陸方面に飛び去ったとしか分からなかった。