●リプレイ本文
●子供用プール ファミリープール
鳴神 伊織(
ga0421)と天城・アリス(
gb6830)はまず子供用プールの調査にやってきた。
「天城さん、私は別件で遅れを取ってしまったため走る事さえままなりません。キメラが現れた際は前衛をお願いします」
「では私が囮となってプールサイドまで誘き寄せますので、とどめを鳴神さんにお任せします」
アリスはまず棒で水面を叩いたり、水中に差し込んだりして探ってみる。
伊織もプールの端から棍棒で水中を探ったが反応はなく、それほど広くない子供用プールの探索はすぐに終わった。
「ここにはいないみたいですね」
「では次に行きましょう」
二人はファミリープールでも同様の探索を行ったが、スライムを発見する事はできなかった。
●飛び込みプール
リヴァル・クロウ(
gb2337)はサランラップで覆った防犯ベルを入れた中華鍋に6m程の紐を付けてプールに沈めた。
「なにやってるの、リヴァルさん?」
槇島 レイナ(
ga5162)が不思議そうな顔で尋ねる。
「スライムは音に引き寄せられる性質を持っている可能性がある。なので防犯ベルの紐が切れた時点で引き上げればスライムが釣れる筈だ」
「なるほど〜」
「他の方法としては超機械『ST−505』の音波を水中に向かって発信すればスライムのFFが反応して視認できる様になるだろう」
「へぇ〜リヴァルさんって頭いいのね」
「いや、そんな事はない‥‥」
リヴァルは褒められてやや照れたが、決してレイナの方を見ようとしない。
なぜならレイナはビキニの水着姿で、110cmの豊満なバストを惜しげもなく晒している状態なため、奥手で色事が不得手なリヴァルにはとうてい直視できるものではなかった。
「準備完了だ。始めよう」
リヴァルはST−505で音波を発しながら、鍋にスライムがかかるのを待った。
しかし何時まで経っても紐にも水中にも変化はない。
「音による反応じゃないのかしら? じゃあ体温、あるいは二酸化炭素に反応して‥‥。とにかくこのままじゃ埒が明かないわ。潜って様子を見てくるわね」
「待て! 独りで行くのは危険だ」
「大丈夫よ。襲われたら『瞬速縮地』で罠の方に引き寄せるから注意して見てて」
レイナはリヴァルが止めるのも聞かずプールに飛び込んだ。
仕方なくリヴァルは水中のレイナを注視する。
レイナは息が続く限りプールの底を泳ぎまわったが結局何事もなく浮上してきた。
「これだけやっても何もないって事は、ここにはいないのかしら?」
●波のプール
「とりあえず波は止めてもらった方がいいですね。波があると余計に見づらいのです」
鬼灯 沙綾(
gb6794)の指示で波が止まる。
「これで探しやすくなったの。妾が考えるに‥『音』と『熱』もしくは『赤外線』が敵の知覚方法じゃないか? なので」
九頭龍・聖華(
gb4305)は試作型水陸両用槍『蛟』を手にすると、プールの縁と水を叩き始めた。
「ほーれ、旨そうなエサが居るぞ! 出てこい! でてこい」
「えぇー!! ボクがエサ役なんですかぁ〜?」
「もちろんじゃ。敵も肉付きのよい沙綾の方がうまそうに見えるに決まっておる」
聖華が沙綾が着ている白のスクール水着の下に押し込まれて窮屈そうにしているバストを指差す。
(「うぅ‥‥好きで大きくなった訳じゃないのに‥‥。やっぱり胸なんて大きくてもいいことなんてないのです‥‥」)
沙綾は心の中で涙しながら自分も長い棒で水面を叩いたり水中を探ったりした。
しかし、
「‥‥出てこんの」
「‥‥ですね」
何時までやってもスライムが現れる気配はなかった。
●流れるプール
「この暑さでスライムも水遊びしたくなったのかな。けど、ココは人間用だからね。申し訳ないけどご退場願いましょうか!」
新条 拓那(
ga1294)は借りてきた大判ネットを広げると片端を石動 小夜子(
ga0121)に渡し、自分はプールの対岸に渡った。
「じゃあ、このままぐるーっと一周回るよ」
「はい」
二人は底引き網漁の要領でプールの中をさらい始める。
そして半周ほど回った時、急にネットに重い手応えがかかった。
「フィーッシュ!! かかったよ小夜ちゃん! 引っ張り上げて!」
「はいっ!」
思わず歓声を上げた拓那と小夜子はネットを手繰り寄せてたが、重くてなかなか引き上げる事ができない。
「これは思った以上に大物だ‥‥」
拓那の手にネットが喰い込み、額に汗が滲む。
「‥‥こちら石動です。流れるプールでスライムをネットに捕縛しました。す、すぐ来てください」
小夜子がなんとか無線機を取り出して救援を求めると、すぐに仲間達が駆けつけネットに手をかける。
「みんな、一斉に引くよ」
「せーの!」
『おーえす! おーえす!』
全員で引くと、さすがのスライムも徐々に引き上げられてくる。
だが、その間にスライムに絡んでいるネットが溶け始めきた。
「このままじゃ逃げられてしまうのですよっ!」
「仕方ない」
拓那は服を脱いで水着姿になり、エアタンクと試作型水中用拳銃『SPP−1P』を装備してプールに飛び込んだ。
「喰らえっ!」
そして4発全弾発射し、スライムを弱らせる。
「妾達もやるぞ!」
「はい!」
聖華とアリスはプールサイドから『蛟』を突き立て、スライムに引っ掛けた。
「今です!」
そして一気にネットを引き上げる。
打ち上げられたスライムは全高1m足らず、全幅4m近い大物だ。
「以前相手したスライムは剣で斬れましたけど‥‥」
小夜子はスライムの背後に回りこんで退路を断つと、試作型水中剣『アロンダイト』でスライムを切り裂いた。
千切れたスライムの断片は地面に落ちて動かなくなる。
「食いでありそうな大物なのに、食えぬというのは勿体ないのぉ‥‥」
聖華は悔し気な顔で『抜刀・瞬』を使って武器を『蛍火』に持ち替え、身を屈めて居合い抜きに『エアスマッシュ』を上乗せて撃ち放ち、スライムの身体を分断してゆく。
「ピアノ以外は専門外なのだが‥‥」
リヴァルはST−505から超音波を放ってスライムの身体を分解していった。
「私は槍じゃないと調子が出ないのよね〜」
レイナは武器を『イグニート』に持ち替えて頭上で旋回させ、その勢いのままスライムを斬り裂き、突いて、薙ぎ払った。
その度に引き裂かれたスライムが焼かれて炭化していく。
「これでトドメなのですよー!」
そして沙綾のククリナイフがスライムの最後の塊を細切れにしてトドメを刺したのだった。
「残っていた‥ではお話になりませんので、もう一度他のプールも念入りに探索しておきましょう」
伊織の提案で再度探索を行ったが他のスライムは見当たらず、スライムの残骸を片付けてこの依頼は無事完了した。
●ご褒美タイム
「思いっきり遊ぶですよー♪ ウォータースライダーとか滑りたいです」
モチベーションが鰻上りな沙綾がプールに向かって走り、イルカがプリントされたワンピースを着たアリスが続く。
「アリスちゃんは何処から行きたいですか?」
「え? 私は流れるプールや波のプールで泳いでみたいです」
「じゃあ、まずは流れるプールで泳ぐですよ! そして波のプール、それからウォータースライダーを滑るのです!」
「だったら私も一緒に行っていい?」
「は、はい‥構わないの‥ですよ」
普段は人見知りが激しい沙綾は年上のレイナに少し緊張気味に答える。
「ありがと、じゃ行きましょ」
「あの‥拓那さん。お待たせしました」
貸出用の白いワンピースの水着を着た小夜子が浮き輪を持って拓那の元にやって来る。
(「小夜ちゃんの水着姿を見るのは久しぶりだけど、やっぱり頭がクラクラしそうなほど魅力的だよ‥‥」)
拓那は水着姿の小夜子を見た瞬間、この上なく胸が高鳴った。
(「拓那さんの水着姿、相変らず素敵です‥」)
一方の小夜子もドキドキしていた。
「ううん、俺も今来たところだよ」
だが拓那は小夜子に変に意識させないためにも努めて紳士的に振舞った。
「この水着、似合っているでしょうか?」
「うん。去年のビキニも良かったけど、ワンピースもとっても似合ってるよ、小夜ちゃん」
「ありがとうございます」
満面の笑顔を浮かべる拓那の返事を聞いた小夜子が恥ずかしそうに頬を染めながら、とっても嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、泳ぎましょうか」
「うん、まずは流れるプールでのんびりしよう」
「はい」
小夜子は浮き輪に乗って浮かび、拓那はその浮き輪に掴まってゆっくりと泳ぎだした。
「今日は誘ってくれてありがとうございます、リヴァルさん」
リヴァルにプールに誘われたリサ・クラウドマン(gz0084)が微笑む。
「いや、無料で遊べるというので、その‥‥折角だし、いい機会だと思ってな」
「うんうん。リヴァルにしては珍しく気が利いてるわよね」
リサの隣りで二人の友人のフィオナが笑っていた。
「‥‥フィオナ、何故お前がいる。俺はお前まで呼んだ覚えはないぞ」
リヴァルが渋面になってフィオナを見る。
「まぁまぁ、どうせなら大勢で遊んだ方が楽しいでしょ。さ、リサさん、着替えに行こう」
フィオナはリサを連れて更衣室に消えた。
そしてリヴァルが早々に黒のトランクスに着替えて待っていると、リサは水色のビキニ、フィオナは借物の白のビキニで腰にパレオを巻き、パーカーを着て出てきた。
「お、お待たせしました‥」
リサは水着姿を見られて恥ずかしいのか少し緊張した様子でリヴァルの前に立つ。
「‥‥」
だがリヴァルはリサの白くて滑らかな肌や水着姿に見とれ、言葉もなく立ち尽くしている。
「リヴァル。何か言ってあげなさいよ」
「‥は!」
フィオナに脇腹を突つかれてリヴァルが我にかえる。
「そ、その‥‥水着、良く似合っている」
「あ、ありがとうございます」
そして二人で顔を赤らめあった。
「じゃあ、さっそく遊ぶわよ」
フィオナはリヴァルに柔らかくて大きい棒を渡すと、自分も棒を持ってプールに浮かべた大きな板の上に乗った。
「リヴァル‥日頃の決着つけさせてもらうわ!」
「‥良いだろう。俺もお前に対して日頃の鬱憤が溜まっていた所だ」
「じゃあリサさん、援護よろしくっ」
フィオナがリサも板に乗せ、棒を渡す。
「待て! 二人がかりとは聞いてないぞ」
「ハンデよハンデ。行くわよ、リサさん」
「はい。リヴァルさん、お遊びなんですから遠慮なくかかってきてくださいね」
「そ、そう言われても‥‥」
「えぇーい!」
リヴァルがまだ戸惑っている間にリサが笑顔で攻撃してくる。
「くっ!」
リヴァルは自分の棒で受け止めたが
「隙あり!」
その隙にフィオナに足元を払われる。
「うぉ!」
リヴァルはなんとか踏ん張ったが
「つん」
ドボーン
更に胸を突かれて結局は落水した。
「イェーイ」
フィオナとリサがハイタッチで手を打ち合わせる。
「伊織さんもやりませんかー?」
リサがプールサイドのベンチにいる伊織に呼びかける。
「私ですか? でも私は怪我をしていますので‥‥」
「ここなら浅いですから大丈夫だと思いますよ。せっかくプールに来たんですし、どうですか?」
「‥‥そうですね。確かに何もせずに帰るのも味気ないですし」
伊織は念のため持ってきていたビキニに着替えてくると板の上に乗った。
「リヴァルさん、お相手願えますか」
「あぁ、こちらこそ願ってもない相手だ」
リヴァルも板に上がって棒を構えた。
そして
「破っ!」
ドボーン
再び落水した。
「‥‥意外と高いですね。それに急です」
ウォータースライダーにやって来たアリスが下を覗き込む。
高さは14m。最初の傾斜は65度で、かなり急角度だ。
「アリスちゃん、怖いのですか?」
「お、驚いただけで別に怖くは‥‥」
強がっているがアリスの表情は不安そうだ。
「大丈夫なのですよ。ボクが先に行くから、お手本にするのですよ」
沙綾はニッコリ笑うと勢いよくスタートを切った。
「ひゃっほー! なのですぅ〜♪」
そして沙綾の嬉しそうな歓声が徐々に遠ざかってゆく。
「‥‥」
それを見ていたアリスだが、やはり踏ん切りがつかない。
「なんなら私と一緒に滑る?」
「‥はい。よろしくお願いします」
恥ずかしかったけれど恐怖の方が勝ったアリスはレイナの膝の間に腰を下ろした。
「じゃ、いくわよ」
「はい」
そして
「キャアーーー!!」
二人で絶叫を上げながら左右に曲がりくねり、時にはくるくる回転もしながら一気に滑り降りた。
「あははっ、凄い悲鳴だったのですよ。やっぱり怖かったですか?」
「いいえ、とっても楽しかったです!」
アリスが瞳をキラキラさせて答える。
「じゃ、もう1回行くのですよ」
「はい!」
「レイナさんは?」
「私はいいわ。お腹も空いてきたし、何か食べてくるわね」
レイナはここで二人と別れ、飲食店へ向かった。
飲食店には山積みになった皿の横でひたすら食事を続けている聖華の姿があった。
「もしかしてコレ一人で全部食べたんですか?」
「うん‥スライム‥食えなかった‥から‥お腹すいて‥るの‥」
ざっと見ても20人前はある。
聖華も人の三倍以上は食べる方だが、ここまでは無理だ。
「店が‥潰れるまで‥ひたすら‥食いまくる‥」
本気か冗談か分からない事を言う聖華。
「ま、いっか」
レイナもとりあえず自分の分を注文しに行く。
「え〜と‥とりあえず上から下まで全部」
「ひいぃぃ!! まただぁーー!!」
店員が悲鳴を上げた。
「ふぅ‥‥」
拓那と一緒にウォータースライダーを滑り降り、プールサイドに上がった小夜子がふと息を吐く。
「疲れた小夜ちゃん?」
「あ、はい、少しだけですけど。拓那さんは?」
「うん、俺も少し疲れたかな。一息入れようか」
「はい」
二人はパラソルの下の移動し、デッキチェアを二人分並べて横になった。
拓那が横を向き、水に濡れ、魅惑的な肢体を横たわらせた小夜子を見る。
「ぁ〜‥よかったら枕代わりに使う? これ。ごつい腕だけど、無いよりはマシだろ」
「えっ!? ‥‥は、はい。では‥‥」
小夜子は顔を赤らめながら拓那に寄り添い、差し出された腕に頭を乗せ、手を拓那の胸に添える。
(「うわぁ〜! 小夜ちゃんの身体って、暖かくて柔らかいなぁ〜‥‥」)
(「拓那さんって逞しくて暖かい‥‥」)
そうすると自然と肌と肌が触れ合い、互いの体温まで感じられてしまう。
(「間近なのは恥ずかしいですが‥偶にはこういうのも良い、ですよね‥‥」)
小夜子はドキドキと心臓を高鳴らせながら瞳を閉じ、拓那の温もりに包まれているような感覚に身を任せた。
拓那も小夜子の温もりを感じながら、いとおしそうに頭を撫でた。
●閉館
「今日はいーっぱい遊んだのですよっ!」
「満腹‥満足‥」
「そりゃああれだけ食べればね。店員さん泣いてたわよ」
「レイナさんも人の事は言えませんよ」
「素敵な思い出ができました」
「うん、来てよかったよ」
「また来れるといいな」
「はい、また来ましょう」
10人は軽い疲労を感じながらも満足気な様子で帰路についたのだった。