タイトル:夏の紅白対抗水鉄砲合戦マスター:真太郎
シナリオ形態: イベント |
難易度: 易しい |
参加人数: 34 人 |
サポート人数: 0 人 |
リプレイ完成日時: 2009/08/17 08:19 |
●オープニング本文
ギラギラとした真夏の日差しがさんさんと降り注ぐ空の下、ラスト・ホープにある運動場では水着姿の男女が紅白に分かれて睨み合っていた。
水着の彼らの手には鉄砲、小銃、バズーカの3種類の武器が握られており、今からそれらの武器でもって激しい銃撃戦が行われようとしていた。
だが、それらの武器の銃口から飛び出すのは肉を引き裂き、鉄板をも貫く鉛の弾丸‥‥ではなく、
この真夏の暑い最中でなら当たるとむしろ嬉しい『水』だった。
そう、彼らは今から水鉄砲で水を掛け合って戦うのである。
一見とっても子供っぽいお遊びの様に見えるが、その水鉄砲を操るのはいずれも常人離れした力を持つ能力者達だ。
たとえ水鉄砲であろうとも彼らが放てば‥‥やっぱり単なる水である。
そして彼らの足下にはなみなみと水が満たされたバケツが両陣営に一つずつ置かれていた。
この戦いにおいて水は最も重要なファクターを有している。
一見マヌケではあるが、彼らはこのバケツの死守もしつつ戦う事になるのだ。
こうして戦いの準備は整い『夏の紅白対抗水鉄砲合戦』がいよいよ開催される事となった。
●リプレイ本文
紅組
石動 小夜子
空間 明衣
鳴神 伊織
新条拓那
カルマ・シュタット
九条院つばめ
ユーリ・ヴェルトライゼン
ミース・シェルウェイ
レイヴァー
周藤 恵
レミィ・バートン
田中 アヤ
シェリー・クロフィード
水無月 春奈
天原大地
美黒・改
リサ・クラウドマン
白組
聖・真琴
如月・由梨
月影・透夜
新井やすかず
レイン・シュトラウド
最上 憐
ヨネモトタケシ
朔月
田中 直人
リヴァル・クロウ
依神 隼瀬
ゲオルグ
冴城 アスカ
鹿島 綾
フィルト=リンク
日野 竜彦
犬神 狛
パーン
夏の太陽の光が照り返す空の下、乾いたピストルの音と共に両陣営から一切に選手達が走り出す。
白組は数人をバケツの防衛に残して攻める戦術。
対して紅組は全員で攻める戦術。
そんな両陣営がちょうどコートの真ん中で激突をする。
「いくよ、小夜ちゃん」
「はい」
最初に戦端を開いたのは足の速さを活かした拓那と小夜子のペア。
二人は敵から放たれたバズーカや小銃の弾をヒラヒラと避けて肉薄すると水鉄砲を発射。
小夜子に狙われた新居は避けたが、拓那に狙われた犬神は避けきれず倒された。
「くっ、1人も倒せず退場とは、無念じゃ‥」
その直後に両陣営の本体も激突。
新居は乱戦の中、小銃でミースに狙いを定めた。
今回新居は三毛猫の紅白大会『公式』マスコットキャラ『紅白くん(仮称)』を誕生させるべく、お饅頭を持って大会実行委員長の所へ根回しを行った。
『紅白くん(仮称)』は頭に紅と白2本のはちまきを巻き、胸に『紅白』のロゴの入ったTシャツとハーフパンツを着ている。
新居はわざわざ試合前にそのきぐるみでダンスパフォーマンまで行った。
その情熱がどこからきているのかは不明だが、現在は水着姿でねこぐろーぶだけを装着している。
そしてミースに向かって発砲、1発で仕留めた。
「え? 俺、まだ1発も撃ってないのに‥‥」
「てっきり敵も必死で守ってくると思っていたのに、まさか守りを捨てて全員で突撃してくるとは思いませんでした」
レインは小銃で積極的に強そうな敵を狙撃していたが、不意に目の端で左サイドからバケツに向かって駆け抜けるユーリの姿を捉え、そちらに駆け出しながら小銃を向け、狙いを定めて発砲。
「っ!?」
ユーリは飛来する水弾に色が付いている事を視認した直後、着ていたTシャツを捲り上げ、腹で水を受けた。
「‥‥危なかった」
「え?」
何の事かと思ってレインがユーリのTシャツを見ると、そこには何かプリントがされていた。
「これは?」
「こないだの皆既日食が綺麗だったから、その写真で作ったTシャツなんだ」
「あ! すみません。そんな大切なものにペイント弾なんて撃ってしまって‥‥」
「いや、幸い無事だったし気にしなくていい。でも、やっぱり脱いでいた方がいいな」
ユーリがTシャツを脱ぐと、その下は白のスクール水着だった。
「‥‥あの、なんでスクール水着なんですか?」
「え? 前にガラポンで貰ったのだけど、何か?」
レインの疑問にユーリが不思議そうな顔で尋ね返す。
ユーリは男性用スクール水着が女性用を上回るほど希少な水着と知らなかっただけなのだが、
(「そういう趣味の人なのかな?」)
レインは脳裏に竜彦の姿を思い浮かべながらそう納得した。
その頃、乱戦になった隙に白組からはバケツを狙う突撃部隊の真琴、透夜、リヴァル、由梨、アスカ、竜彦が一気に飛び出す。
「透夜さん! ボス! 私らの連携見せたろぉじゃん☆」
「おぅ! いくぞ真琴!」
「あぁ、敵だとこの上なく脅威だが、味方だと頼もしいな」
「銃は苦手ですからね。私はバケツ狙うのみです」
「今回はドッヂボールの借りを返さなきゃねぇ」
「明日の食費のため、意地でも負けられない!」
だが
「行かせませんよ」
「ここから先には通しません」
「易々と通れると思うな」
「味方がかく乱してる隙に突破するつもりでしょうが、読めてますよ」
伊織、つばめ、カルマ、レイヴァーが立ち塞がって弾幕を張り、由梨は伊織に、アスカがカルマに倒される。
「応戦しろ!」
「押し通る!」
レイヴァーの攻撃を避けたリヴァルが反撃し、透夜が近距離からバズーカを放ちながら突破を図る。
「にゃふふ〜♪ 水着姿のつばめちゃん‥か〜わいぃなぁ☆ でもシャツで隠すのは減点〜。だ・か・ら、水でスケスケにしちゃるぅ〜〜♪」
真琴はつばめに襲い掛かった。
「ひゃぁぁぁ!!」
だが、つばめの攻撃を先に食らって自分の方が濡れてしまう。
「ありゃ?」
「ふぅ、危なかった‥‥」
つばめがほっと胸を撫で下ろす。
そして竜彦は
「行かせないよ日野君ッ! これでもくらいなッ!」
「う‥う、撃ちます!」
「いくぜ、竜彦!」
「とりあえず、何の恨みもありませんけど落ちてもらいますよ、日野さん」
「たっくん。覚悟するのである」
レミィ、惠、大地、春奈、美黒から一斉に狙われた。
「ちょっと待てぇーー!! 何でみんなで俺を狙ってるの? 俺なにか悪い事した? 実は俺みんなに嫌われてる?」
竜彦が半泣きになって尋ねる。
「え? 誰も嫌ってないよね」
「も、もちろん‥です」
「弟を嫌う姉がいる訳ないのである」
「俺も竜彦好きだぜ」
「という訳で、覚悟してください」
返答は笑顔の一斉射。
「ギャーー!!」
もちろん全弾避けきれる訳がない竜彦はずぶ濡れになって撃沈した。
「あははっ。人気者は辛いわね、竜彦くん」
「ま、みんなからの愛情と思って受け止めとけ」
「こんな人気や愛なんていらないよ‥‥」
大笑いするアスカと苦笑しながら励ましてくれる綾に竜彦は憮然とした顔で答えた。
「みんなに好かれててうらやましいぜ、竜彦」
「だったら馬鹿兄も今すぐずぶ濡れにしてあげるよ!」
大笑いする直人にアヤが真っ向から突っ込んでくる。
「へっ! できるもんならやってみやがれ!」
「にゃははは〜♪ いくですよ〜」
アヤを迎え撃つ直人にシェリーがバズーカを向ける。
「って2対1かよ」
「直人、援護してやる」
辛くも避けた直人に依神がフォローに入り、小銃でシェリーの足を止める。
「にゃ!」
「サンキュー依神。アヤっ! 日頃の恨みを晴らしてやるぜ!」
「それはこっちのセリフよ、馬鹿兄! 覚悟しろー!!」」
兄と妹はそれぞれの水鉄砲を構えると近距離から発射。
二人の間に圧縮された水が飛び交う。
だが、20年近く兄妹をしている二人は相手の動きが読めるため、なかなか当たらない。
「いい加減当たりなさいよ!」
「そっちこそ、早く当たれ!」
水鉄砲ではなく口で喧嘩を始めたその時
「ぐぉ!」
シェリーの放ったバズーカが直人の頭に直撃して吹っ飛んだ。
「やったー♪ どんなもんですかー♪」
「シェリーちゃん、ナーーイスッ♪」
アヤとシェリーが嬉しそうに手を打ち合わせる。
「すまん直人。抜かれた」
「言うのおせぇよ‥‥」
片手で拝んで謝る依神に直人が上半身を起こして突っ込む。
「安心しろ、仇はとって‥」
パシャ
「‥‥すまん、やられた」
「おぉぉーーーい!」
依神は再び直人につっこまれた。
「あははっ。まぁすぐに復活できる。次がんばろう」
依神は直人を連れて自陣に戻る。
その際、直人はチラリと依神の様子を伺った。
スレンダーではあるが、微かに胸は膨らんでいる。
(「やっぱり女だったんだな‥‥いや、別に疑ってた訳じゃねぇんだけど‥」)
「ん、どうかした?」
「いや! なんでもない」
何故か気恥ずかしくなった直人は視線をわずかに反らした。
そんな激闘の果て、透夜とリヴァルだけが紅組の囲みを突破した。
紅組のバケツには守りはおらず、後は突っ切るだけだ。
「いくぞ、月影」
「おぅ!」
しかし、
「行かせません!」
「二人とも、ごめんよ」
背後から強襲した小夜子は拓那の肩を足場にして飛び上がり、上から透夜を狙い撃って倒し、リヴァルは拓那に倒された。
「くそっ!」
「みんな、すまない‥‥」
こうして白組の突撃部隊は全滅した。
そして前線の白組はレインが弾切れで下がったため、新居1人となった。
「せめて後一人」
新居は最後の1発をレミィに放ち、着弾も確認せず自陣に向かって走ったが、後ろからレイヴァーの攻撃を受けて倒された。
一方、狙われたレミィは
「危ねぇレミィ!」
大地が身を挺して庇っていた。
「え? 大地‥‥どうして?」
庇われたレミィが不思議そうに大地に尋ねる。
「あっ、いや、だって‥‥。俺はもう弾切れだからよ。弾が一杯残ってるレミィが生き残った方がいいだろ」
本当はそんな理由ではないのだが、大地はそう言って誤魔化した。
「‥そっか。でもあたし、自分の身は自分で守るからさ。大地も自分の命は自分のために使ってよ」
「あぁ、すまねぇ」
「うん。でも守ってくれてありがとね」
少ししょげた大地にレミィが笑いかける。
「お、おぅ‥‥」
そんなレミィの笑顔に見とれた大地はわずかに顔を赤らめた。
「よし、カウンターだ!」
紅組は弾切れの者は給水に下がらせ、残りで敵陣に突撃を始めた。
白組の防衛班は憐、ヨネモト、朔月、ゲオルグ、綾、フィルトの6人。
「ぞろぞろときましたな。では、砲撃開始といきますか」
ヨネモトは小夜子に向かって攻撃したが全弾避けられた。
(「昔、妹が言っていた、こういった団体戦のコツは‥」)
フィルトはバズーカを構え
「知り合いを見かけたら真っ先に倒すように」
アヤとシェリーに向かって思いっきり撃ち放った。
「ひょえぇ〜!」
「フィルトちゃん容赦な〜い!」
二人は体勢を低くし、頭を抱えながら走って避ける。
「良く来たなアヤ。だがしかし、ここまでだ。胸囲‥もとい、脅威は実力を以って排除する。――濡 れ る が 良 い」
綾は同名のアヤに向かってバズーカで砲撃を開始。
「ちょ、ちょと綾さん! 本気であたしのこと狙ってない?」
「もちろん本気だ! 濡れろ濡れろ〜!」
「うひゃぁぁーー!!」
アヤは地面を転がってなんとか避けた。
「アヤは避けたか、じゃあ次はシェリーの番だ。さぁシェリー。――濡 れ る が 良 い」
綾が今度はシェリーにバズーカを向ける。
「やばっ! 避けてシェリーちゃん」
「うん!」
「ハハハッ! 逃がさんっ!」
だがシェリーが動く前に綾が発砲。
「きゃうっ!」
シェリーは胸に水弾を喰らって吹っ飛んだ。
「俺も“大きい”からな。それの弱点は良く分かっている‥!」
綾が妙にシリアスな顔でうんうんと頷く。
「シェリーちゃ‥‥んん!?」
シェリーに駆け寄ったアヤは目を丸くしていきなりシェリーの胸を鷲掴んだ。
「にゃあ!! な、な、な、なにしてるのアヤちゃん!?」
シェリーが顔を真っ赤にして動揺する。
「ち、違うのシェリーちゃん! シェリーちゃんのブラが取れちゃってるから、それで‥‥」
アヤも顔を赤くしながら必死に説明する。
「え?」
視線を下げると確かにブラがなく、大事な所をアヤが手で隠してくれていた。
「きゃーーーっ!! あ、あ、ありがとうアヤちゃん。でも、ボクのブラどこ?」
「えぇ〜と、ど、どこかな‥‥」
二人はとっても怪しい体勢のまま周囲に視線を巡らせる。
「ほれ、とりあえずこれで隠してはどうじゃ」
そこに傍で見ていた犬神が駆けつけ、顔を背けながらタオルを差し出してくれた。
「あ、ありがとう」
シェリーはタオルを受け取って胸に巻いたが、
「‥‥長さが足りないね」
「うん」
隠す事はできたが、縛って止められるだけの長さはなかった。
「す、すまん」
「ううん。これでとりあえずは隠せるから大丈夫ー」
「あ、あったよ。シェリーちゃん」
両手が自由になったアヤがシェリーのブラを見つけてきた。
「ありがとう、アヤちゃーん」
「ここじゃ着けれないから控え室に行ってきたら」
「うん。犬神さん、タオルありがとー」
「ちょ! 手はなしちゃダメ!」
「にゃ?」
シェリーが犬神に手を振ったため、ずり落ちそうになったタオルをアヤが慌てて押さえた。
「‥‥」
そんな光景をじっと見ていた朔月は
「リサっ!」
リサの胸に向かって小銃の水を浴びせかけた。
「キャ、冷たっ! あ〜ぁ、やられちゃいました‥‥」
リサはずぶ濡れになったが、もちろんブラは取れていない。
朔月はポタポタと水を滴らせるリサを見つめていたが、やがてガックリと膝を付いた。
(「くっ! なんで俺はバズーカにしなかったんだ‥‥」)
そして深く深く後悔した。
だが、すぐに気を取り直して立ち上がり、2丁の小銃を両手にガッチリと構える。
「いくぜ! 2丁ライフル、ファイヤァー!!」
ちょっとやけっぱち気味に叫ぶと、微妙に射線を変えた2丁小銃の連射でレミィの競泳水着と明衣の赤いビキニで白抜きでハイビスカスの模様の水着に水色の斑点がついた。
「キャ!」
「冷たっ! あ〜あ、せっかくここまで来たのに‥‥。あれ、なにコレ? もしかしてペイント弾?」
「あ、ホントだ、色付いてる」
「ちょっと! これじゃあせっかくのハイビスカスが台無しじゃない!!」
「あぁーゴメン! でも発案者は俺じゃなくて月影さんだから」
「あっ、馬鹿! ばらすな!」
透夜が慌てて叫ぶがもう遅い。
「月影殿の仕業かぁ〜‥‥」
怒りを瞳に宿した明衣が透夜をジロリと睨みながら1歩1歩近づいてくる。
「いや、ちょっとしたイタズラのつもりだったんだが‥‥」
「ふ〜ん‥‥で?」
透夜が額に汗を滲ませながら言い訳するが、明衣の怒りの眼光も歩みもいっこう収まる様子がない。
「‥‥す、すまない。これ以後ペイントの使用は禁止する」
「うん、よろしい」
透夜が素直に謝ると明衣は一転、笑顔を浮かべて許してくれた。
そうして弾幕を潜り抜けた紅組が目指す白組のバケツの脇には何故かダンボールが置いてあった。
「ダンボー?」
「なぜあんな物が?」
怪しさ大爆発な代物だが中に誰かが潜んでいるだろう事は誰の目にも明らかだった。
「あの〜、あれってダンボールに当ててもアウトになりますか?」
「もちろんです」
そしてリサに確認をとったレイヴァーに中に潜んでいたゲオルグはアッサリと撃退された。
「我の作戦は完璧だったはず‥‥何故失敗したのか‥‥?」
「当たり前だ。だからやめろと言っただろう、ミミルグよ」
不思議そうに首を傾げるゲオルグにリヴァルが呆れ顔でつっこんだ。
「ふむ、では次は別の手を使うとしよう」
「まだあるのか‥‥」
「この手はできれば使いたくなかったのだが‥‥」
そう言うゲオルグは捨て身の特攻隊に志願した兵士の様な表情をしていた。
「ところでリヴァルさん。さっきから妙な視線を感じないですか?」
「‥‥ぅ。き、気のせいだろう」
「いや、実はわしもさっきから妙な視線を感じておる。なんなのじゃこの気配は?」
「ダメだ犬神氏! 振り向くな! もし目でも合おうものなら大変な事になるぞ!!」
「わ、分かった。忠告に従っておこう」
リヴァルがあまりにも真剣に訴えてくるので犬神は素直に頷いた。
「あぁ、そうしてくれ。ミミルグもだ、いいな」
そんな白組ベンチの後ろの物陰ではぐふふと笑う二つの瞳が怪しく輝いていた。
その瞳の持ち主の名は障子にメアリー。
敵に回すと面倒だけど、味方に回すと迷惑‥ってよく言われる皆のアイドル(自称)だ。
(「水を掛け合って、がんばって遊ぶ様子だなんて‥コレは、なんてメアリーちゃんの為にあるような見守りポイントが高いゲームなのかしらっ!! もう本気で萌えに萌えられるシチュエーションね☆」)
そんなメアリーは水着姿で水を滴らせている男性達にハァハァだ。
(「しかも今回は大地ちゃんが特にポイント高いわ。あのシャイなところがキュンとしちゃうぅぅ!! これは是非とも見守らないといけないわっ!!」)
そしてメアリーは大地に向かって熱視線を送った。
ぞくっぅ!!
「うおぉぉぉ!!」 <●><●>
紅組ベンチで休憩していた大地は突如襲い掛かってきた悪寒に雄たけびを上げて立ち上がった。
「うわっ! なに大地、どうしたの?」
レミィが大地の雄たけびに驚き、心配する。
「いや、なんか今すっげぇぞくっときたんだよ」 <●><●>
「風邪?」
「いや、そんなんじゃねぇ‥。何て言うか、こう‥もっと霊的な感じの奴だ」 <●><●>
「え? あははっ、なに言ってるのよ大地。こんなカンカン照りの真っ昼間に幽霊なんて出るわけないでしょ」
「嘘じゃねぇって! ここヤベぇよっ! ぜってぇ何かいるってぇ!! 信じてくれよレミィ!」 <●><●>
レミィはカラカラと笑ったが、大地は必死に訴え続け、最終的にはベンチに座らなくなった。
もちろん、それで悪寒が消える事はなかったけれど。
それはともかく。
朔月も弾切れになった今、白組で戦える物は憐一人だけとなったところで、まずカルマが給水中のレインに狙いをつけた。
「ごめん、退場してもらうよ」
「くっ!」
レインは避けられず遭えなくアウト。
「‥‥ん。バケツ。死守。防衛。防御」
憐は水鉄砲を構えると、拓那に向けてパパパパパンと一気に6連射した。
「うわっ!」
だが拓那は上半身を地面とほぼ水平になるくらいまで後ろに反らし、辛くも避けた。
その間に小夜子が綾を倒し、カルマが朔月を倒し、レイヴァーがヨネモトとフィルトを倒した。
「二挺拳銃(トゥーハンド)の名は、伊達ではありませんよ‥‥?」
レイヴァーがそんな二つ名など持っていないのに得意気な顔で2丁拳銃を構える。
そしてバケツの守りは憐一人だけになり、バケツは無防備だ。
「チャーーンスっ!!」
そこにアヤが思いっきり走りこみ
「てぇーーーーい!!」
ボカン
とバケツを蹴倒した。
「やったやったぁ〜!!」
「アヤちゃん、すごぉーーい!!」
「うおぉぉーーー!!
「キャーーー!!」
アヤが諸手を上げて喜び、シェリーも一緒にはしゃぎ、紅組メンバーが歓声を上げる。
「あぁぁ‥‥」
一方、白組メンバーはガックリとうなだれた。
「落ち込むのはまだ早ぇぇぇーー!! 時間はまだまだあるんだ! こっちもバケツひっくり返して逆転してやろうぜ!!」
しかし真琴が激を飛ばし、すぐに持ち直させる。
「おや、思ったよりも早く持ち直しましたね」
「バケツは倒したし、みんないったん下がろう」
ここで紅組は自陣まで下がり始める。
そして白組で最初にやられた真琴、由梨、アスカ、竜彦、犬神が復活。
「おっしゃ! ふっかーーっつ!」
「次はこちらがバケツを蹴る番ですね」
「今はバケツを守る必要はないんだし、全員で攻めあがりましょ」
「あぁ、さすがにもう集中砲火はないだろうしね」
「今度は刺し違えても倒してみせるぞ」
紅組もユーリ、ミースが復活し、給水の済んだ伊織、つばめ、惠、春奈、シェリー、美黒と一緒に攻め上がる。
しかし
「そのバケツ貰います」
由梨が全速力で一気にバケツの側まで攻めあがってきたため慌てて防備を固めた。
まずは春奈とシェリーのバズーカで砲撃したが易々と避けられた。
「もう弾切れですー」
「バケツを狙おうにもありませんし‥‥ここは素直に給水しますか」
続いて小銃を持つ、伊織、つばめ、ユーリが弾幕を張る。
「くっ!」
さすがの由梨の実力者の混じったこの人数の攻撃を避けきる事はできず被弾した。
しかし紅組の弾をかなり減らす事には成功する。
「いっくぞ〜つばめちゃん。もう一度勝負だ! 今度こそスケスケにするっ!」
続いて真琴が強襲し、つばめに2丁拳銃を向ける。
「スケスケになんてなりません!」
つばめの残弾で応戦したが避けられてしまった。
「ぬはは、喰らえ!」
そしてとうとう真琴にシャツを塗らされてしまう。
「あ〜ぁ‥やられちゃいました」
「ほ〜ら、つばめちゃん。濡れたシャツ着てたら気持ち悪いでしょ。脱いだら」
「いえ、この日差しならすぐ乾きますから‥」
「えぇ〜! せっかくなんだからみんなに水着姿見せようよ〜」
「いえ、お見せできるほどのものじゃないんで‥」
つばめは苦笑しながら不満顔の真琴を残してベンチに向かった。
「バケツは蹴らせない!」
「そんなひょろ弾じゃ当んないわよっ! と」
アスカにはミースが迎撃したが軽々と避けられ、それどころか2丁拳銃で反撃されて倒されてしまう。
「ごめんね。でも勝負の世界は厳しいのよ」
アスカはカウボーイハットを拳銃で押し上げて二コリと笑った。
そして竜彦と犬神が前線に到着すると、美黒とちょうど復活した大地が挑みかかってきた。
「おぬしはあの女子と何やら因縁がありそうじゃな。なら、あっちの男はわしが引き受けよう」
犬神は美黒を竜彦に任せ、大地の方に足を向ける。
「おぬしの相手はわしじゃ。いざ尋常に勝負!」
「おぅ、その勝負うけた。いくぜ!」 <●><●>
大地は応じると真っ直ぐに犬神に突っ込んでゆく。
「心意気は良いが、それでは狙い撃ってくれと言っている様なものじゃぞ」
犬神は自前のH&KのMP5型の水鉄砲を構えて連射。
しかし大地は自分のバズーカを盾にして身を守った。
「なんと!?」
「避けるばかりじゃつまんねえだろ?」 <●><●>
大地はニヤリと笑うと犬神の懐に入り込み、至近距離からバズーカを放つ。
「ぐはっ!」
高圧水弾をまともに喰らった犬神は後ろに吹っ飛び、地面に倒れた。
「ふっ、今日こそ決着つけてやる!」
「返り討ちにしてやるであります。弟が姉に敵う訳がないである」
竜彦は美黒の横に回りこむように駆け出す。
美黒は竜彦の姿を追いながらバズーカを発射。
「今だ!」
その瞬間を見極めた竜彦は急停止して避け、一転、美黒に真っ直ぐ突っ込んだ。
美黒はすぐに次弾を装填して発射したが、竜彦は身体を寝かせ地面をスライディングしながら避ける。
「しまったのである!!」
そして美黒の懐に入った直後、2丁拳銃を撃ち放った。
美黒の身体に水しぶきがかかり、美黒がガックリと膝を落とす。
「強くなったであるな、たっくん。さすがは美黒の弟‥‥」
「いや、俺の方が兄だから、今それ証明したから、いい加減認めようよ」
「そんな事ないのである! たっくんは永遠に美黒の弟なのである!!」
「はいはい。言い訳は後で聞くから、とりあえず自分のベンチに戻ってよ」
「うぅ〜‥‥」
竜彦は不満顔の美黒を退場させると、犬神の元に向かった。
「すまぬ、大口を叩きながらこの様じゃ‥」
「いえ、お陰で兄の威厳が保てましたよ。ありがとうございます」
竜彦は犬神に礼を言い大地に向き直ると、惠と復活したレミィが合流していた。
「3対1はちょっと卑怯よね。手を貸すわよ、竜彦くん」
そして竜彦の方にはアスカが駆けつけてくれた。
「アスカさんと竜彦くんか。相手にとって不足はないね。水鉄砲とはいえ本気で行くよ!」
「よし、いくぜ!」 <●><●>
「は、はい‥。無駄撃ちは、出来ないから‥落ち着いて、狙わなきゃ‥えっと‥‥ご、ごめんなさぁいっ!」
謝りながら惠がバズーカを発射。
アスカは避けたが、その間にレミィと大地が突っ込む。
「レミィちゃん覚悟! ‥と見せかけて大地くんにバン!」
アスカはレミィに向けていた銃身をフォローに入ろうとしていた大地に向けなおして撃った。
「え? うわっ冷ぇ!」 <●><●>
いきなりの事だったので咄嗟に反応ができず、大地はもろに水をかぶった。
「じゃ、今度こそホントに覚悟してね、レミィちゃん」
「あたしは大地ほど甘くないですよ!」
レミィはアスカの連射を避けると、横に回りこんで撃とうとする。
しかし
「俺を忘れないでくださいよ、レミィさん」
アスカの後ろから竜彦がひょいと顔をだし、弾を撃ってきた。
「あ、危ないレミィさん!」
惠が咄嗟に放ったバズーカが竜彦を捕らえる。
「うわっ!」
そしてレミィの方は咄嗟に身を投げ出し、地面を転がって避けていた。
しかし膝立ちになったところでアスカの鉄砲が側頭部に押し付けられる。
「レミィさん!」
惠がアスカにバズーカを向けてトリガーを引くが既に弾はない。
「残念、チェックメイトよ」
アスカはウィンクしながら引き金を引き、レミィの頭に水をかぶせた。
「じゃ、次は惠ちゃんね」
「え? えっ?」
そしてアスカは戸惑っている惠にも水をひっかけた。
「はい、アウト」
「あぁ〜〜ん。くやしいぃぃーー!!」
「あははっ。復活したらまた戦ってあげるわよ。じゃあね」
悔しがるレミィそう言い残してアスカは紅組のバケツに向かった。
「ご、ごめんなさい、レミィさん。えっと、あの‥私、肝心な時に、役にたたなくて‥‥」
「も〜、なに言ってるのよ惠。惠は竜彦くん倒してるじゃない。私よりも活躍してるって」
「えっと‥あ、あれは‥む、無我夢中で‥‥」
惠が照れくさそうに笑う。
「ところで惠。あんた服、透けてるわよ」
「え?」
惠は自分の服を見下ろした。
惠は自分の体型に合う水着を持っていないので今日は体操服とブルマで参加していたのだが、その体操服が水に濡れ、下着が透けて見えてしまっていた。
「キャアっ!!」
惠は顔を真っ赤にして腕で自分の胸を庇った。
「あはは、まぁ乾けば見えなくなると思うけど」
「‥ほら、これ使え」 <●><●>
大地が自分の頭に巻いていたタオルを惠に差し出した。
「‥え?」
「乾くまではそれで隠しときゃ問題ねぇだろ」 <●><●>
「えっと‥あの‥あ、ありがとう、ござい、ます‥」
男性恐怖症の惠は恐る恐る手を伸ばして大地のタオルを受け取った。
「よし、じゃ戻ろっか」
その頃、復活を果たした透夜、リヴァル、やすかず、直人、依神も戦列に加わり、更にレイン、ヨネモト、朔月、綾、フィルト、ゲオルグも後から続き、今度は白組が数で紅組を圧倒しようとしていた。
しかし紅組はバケツの防衛に足の早い小夜子、拓那、伊織を据えて対応したため、なかなかその牙城を崩せずにいた。
そして伊織の残弾で依神と直人が早々にやられた。
「また俺達いいとこなしだな」
「言うな!」
紅組のバズーカ隊は砲撃でユーリと給水中だった春奈とシェリーを倒したが、それで弾切れになった。
「困りましたね」
「自分達は補給を絶たれると途端に役立たずになりますな」
「後はかく乱して的になるかバケツを蹴るかぐらいしかできないしね」
「我には他にできる事が一つだけあるが、今はまだその時ではない」
フィルト、ヨネモト、綾、そして何故か上着を羽織っているゲオルグがバケツの復活を心待ちにする。
「いっくぞぉ〜!カルマさん☆ ‥なンちて♪」
真琴がカルマを狙うと見せかけて伊織を狙うが避けられた。
「安いフェイントだな。隙だらけだよ真琴さん」
「そうかな? ぶっ飛べ!」
と見せかけて真琴の背後から透夜がバズーカで攻撃してきた。
しかしカルマは透夜が攻撃してくるだろう事は読んでいたため、アッサリ避けた。
「甘いぞ。二人がコンビで攻撃してくる事ぐらいお見通しだ」
だが、不意に透夜が仕掛けたのとは反対側から放たれた弾がカルマの身体を濡らす。
「なに?」
「ふっ、さすがに俺の後にリヴァルが狙撃してくる事までは読みきれなかったみたいだな」
透夜が得意気に笑う。
「くっ‥‥」
さすがのカルマもこのトリプルフェイントは読みきれず、倒された。
「次はアル。お前の番だ」
「リヴァル、お前で俺の相手が務まるのか? リサさんの前だからって無理に格好つけない方がいいぞ」
「リ、リサは関係ないっ!」
と言いつつちょっと動揺するリヴァルにレイヴァーが2丁拳銃を連射。
横への手首のスナップを利用し、水が面になって広がる攻撃を仕掛ける。
「くそっ! やっかいな攻撃だ」
それを辛くも避けたリヴァルが小銃で反撃するが、すぐに弾切れになった。
「弾が‥‥」
「補給がないのは辛いなリヴァル」
レイヴァーはそう言ってリヴァルに接近すると近距離から水弾を浴びせかけて倒す。
「くっ‥‥なに、お前達もすぐにそうなる」
リヴァルはそんな捨て台詞を残して自陣に戻った。
「よし、旦那の不始末は嫁に取ってもらうとしよう。真琴殿、勝負だ!」
「あははっ。透夜さんはまだ旦那じゃないけど、いいよ〜。でも、教室の私とは一味違うよン♪」
真琴はダッシュして一気に間合いを詰めると2丁拳銃を明衣に乱射した。
しかし明衣はジャンプして避け、真琴の頭上をとる。
「暑さでやられたとか言う娘こそ頭を冷やしたら?」
そして空中で逆さになって2丁拳銃を乱射した。
「うわっ!」
真琴は前に飛び、更に前転して避ける。
「だいたいこの暑さに加えていちゃつくな!」
「今日はまだいちゃついてねぇー!」
そして振り返る真琴と、着地した明衣が同時に発砲。
命中したのは真琴の弾だった。
「あははっ。やっぱり私じゃ真琴殿には敵わないか」
「ううん、そンな事ない。結構ヤバかったよ」
さっきまでの激闘が嘘だったように笑いあう二人だった。
その頃バケツを防衛している3人にはやすかず、レイン、朔月が小銃で相手の射程外から攻撃を加えていた。
そして遂にレインの弾丸が拓那を捕らえる。
「あぁ〜ゴメン小夜ちゃん。後を頼むよ」
「はい、任せてください」
拓那は小夜子の手を握るとベンチに向かった。
「よ〜し、敵の牙城の一角が崩れたぞ。もう一押しだ!」
そこで紅組はバケツに向かって一斉攻撃を慣行。
「近寄らせません!」
小夜子が残った弾で真琴とアスカは倒したが、それが最後の抵抗となった。
「多分、これなら当てられる、はず‥‥?」
再復活した由梨がバケツ手前まで駆けつけ、バズーカを発射。伊織に直撃した。
「‥当たってしまいましたか。皆さんすみません」
「まずい!」
レイヴァーが大急ぎでバケツの陣地に入ろうと走る。
「今だ!」
だが、ゲオルグが素早くメイクし、羽織っていた上着を脱ぎ捨て、スポーツタイプの女性用水着とショートパンツ姿になってレイヴァーの前に立ちはだかった。
そして
「まじかる冥土? りりかる☆みみるぐ、登場!!」
思いっきり可愛いポーズをとり、そんな電波な事をのたまった。
「‥‥」
「‥‥」
まるで時間が凍結したかのような静寂に競技場が包まれる。
「‥‥えい」
そんな最中、一早く凍結から立ち直ったレインがバケツを蹴った。
「‥‥あ」
それで全員の凍結が解ける。
「えっと‥や、やった?」
「うん、やった」
「わ、わ〜い」
喜ばしい事のはずなのに、その前に起こった出来事の衝撃が大きすぎてイマイチ感動が薄かった。
「あの‥さっきのはそう言えとリヴァルさんに脅されたのです」
まさかここまでの事になるとは思っていなかったゲオルグがそんな言い訳をしたが、それを信じる者は誰もいなかった。
「見苦しい言い訳はよせ、りりかる☆みみるぐ。もう手遅れだ」
リヴァルがそんなゲオルグの肩をポンと叩いた。
ともかく、こうして紅組もバケツを失った。
この時点での得点は
紅組24
白組20
そして白組のバケツが復活し、紅組を攻勢をかけてその差を縮めたものの逆転する事はなく、紅組のバケツが復活した後でまた差は開いた。
その後、両陣営ともバケツは蹴られる事なくゲームは進み、時間が残り30秒となる。
「もうバケツは意味がない。全員で総攻撃をかけるぞっ!!」
『おぉーー!!』
「こちらも攻勢をかけます。相打ち覚悟で戦えばこちらの勝ちです」
『おぉーー!!』
そして最後の戦いが始まった。
「小夜ちゃん。どうせなら残り全員俺らでやっちゃおっか♪」
「はい、どこまでもお供します」
「さーぁ、一気に蹴っ散らすぞー!」
拓那と小夜子のコンビが突っ込んでゆく。
「道を切り開く。行け、真琴!」
「オッケ〜! いっくぞ〜〜おらぁあーー!!」
白組からは真琴と透夜のコンビが突撃する。
「やっとここまで来れた‥‥。さて、非常に個人的だけど‥‥つばめちゃん、勝負ッ!」
「はい、受けてたちます。でも、依神さんには悪いですが‥‥今回も勝たせていただきますっ!」
つばめが先制の一撃を放つ。
「っ!」
ギリギリ避けた依神は反撃したが、つばめは身を屈めて避けると2撃目を放つ。
「冷っ!」
「うふふっ、私の勝ちですね」
「あ〜ぁ、やっぱりつばめちゃんは強いね。今度戦うなら味方同士がいいかな」
「それもいいですね」
二人はニッコリと笑い合った。
「‥‥ん。あっ。あんな所に。巨大化した。オリム大将が」
「それはさすがに無理があると思いますよ」
「‥‥ん」
パパパパパパン
伊織の冷静に突っ込まれた憐は構わず鉄砲を連射した。
しかしすばやくステップを踏んで避けた伊織が反撃する。
「受けなさい!」
「‥‥ん。当たらない」
この二人の勝負は結局双方の弾切れで終わった。
「レインくん。その可愛い顔をびしょびしょにしてあげるよッ! 惠、援護よろしく〜♪」
「はい。え、援護‥します!」
惠はレインの足元を狙ってバズーカを撃った。
たとえ当たらなくてもレインの足を鈍らせる作戦だ。
「危なかった‥」
案の定、レインはバックステップで避けた。
「貰ったっ!」
レミィはレインの着地の瞬間を狙って鉄砲を連射。
「あぅ!」
見事、レインの顔に命中させた。
「やった!」
レミィがガッツポーズをとる。
「やられてしまいました‥」
レインが肩を落として顔に手をやると、何故か赤い水がついた。
「あれ、ペイント弾」
「うん。ちょっと借りたんだー」
レミィはレインがどんなリアクションをとるかとワクワクしていたが
「そうなんだ」
レインはそう言うだけで表情一つ変えない。
「もーー! なんでリアクションがまったくないのよー!」
いつも澄まし顔のレインが驚いたり困ったりするところが見たくて仕出かした事だったので、レミィはとっても不満だった。
「そう言われても困るんですけど‥」
だが、とりあえずレインはちょっとだけ困った顔は見せてくれた
パンパン
そうこうしている間に試合終了の合図であるピストルが2回打ち鳴らされた。
「‥‥終わった、のか?」
「結果は?」
全員が一斉に得点版を見る。
そこには
紅組59
白組56
と記されていた。
『やったぁぁーーー!!』
紅組メンバーが喝采を上げる。
「やったー♪」
「勝ったぁー♪」
アヤとシェリーが満面に笑みで抱き合う。
「よーし! 紅組3連勝!」
カルマが雄たけびを上げる。
「やったね、惠、大地♪」
「はい‥嬉しい、です」
「やっぱりやるからには勝たねぇとな!」 <●><●>
レミィ、惠、大地の3人も笑顔で喜んでいる。
「あははっ、勝ったよ小夜ちゃん」
拓那が思わず小夜子を抱きしめた。
「は、はい‥」
小夜子も顔を赤らめてドキドキしながら拓那に抱きつく。
そして耳元にこっそり
「今日の拓那さんも素敵でした」
と囁く。
「え?」
すると拓那も水に濡れて普段とはまた違った艶っぽさ醸し出している小夜子にドキドキしてくる。
そして
「うん、小夜ちゃんも素敵だったよ」
拓那も小夜子の囁き返した。
一方、白組の面々の表情はやっぱり暗いものの、気落ちしている者はそれほどいない。
「お疲れ様でした、皆さん」
「あぁ、ありがとう」
フィルトも紅白関係なくタオルを配り、受け取る方もみんな笑顔だ。
それはきっと勝負に負けた事は悔しくても、水を掛け合って子供の様に騒いだ事が楽しかったからだろう。
「みんな、記念撮影をしないか? こんな事もあろうかとカメラを持ってきているんだ」
紅組白組関係なくユーリが全員に声をかける。
「記念撮影か‥‥」
「うん、いいんじゃない」
「やろーやろー」
誰からも反対意見が出なかったので、全員再び競技場に集められた。
「よし、いくぞ」
ユーリがカメラのタイマーをスタートさせて、みんなの元に走ってくる。
「みんなーーいちたすいちはーー?」
『にーー♪』
カシャ
「うん、きっといい写真になる」
ユーリが満足顔でカメラを回収した。
「よーし! じゃあ紅白亭いっくぞ〜〜!!」
今回は負け組なので、ちょっとやけっぱち気味の真琴が音頭をとる。
「紅白亭?」
「おいしいラーメン屋さんです。紅白大会の後はそこに行くのが恒例なんです」
「負けた組が買った組に奢るのもな」
つばめの説明に透夜が苦笑を浮かべながら補足する。
「にゃははは〜♪ ラーメンは貰ったのですよ♪」
「‥‥ん。‥‥また。負けた。やけ食い。食べ尽くす」
「ほほぉ〜、それは良いこと聞いたぞ。真琴殿、月影殿、私には汁なし坦々麺を頼む」
「食べるなら、冷やし中華やつけ麺が良いかもしれませんね。恒例のラーメンでは流石に暑いですし」
「たっくん。ご馳走さまなのである」
「お、俺いま文無しなのに‥‥。やっぱ皿洗いか?」
「リサは何がいい?」
「リヴァルさんが奢ってくれるんですか? じゃあ冷麺で」
「俺は普通に醤油で‥あっ追加トッピング全部のっけちゃってー」
「俺は『冷やしラーメン』で。『冷やし中華』とか『つけ麺』とかじゃなく、冷たいスープに麺が入ってるの。間違えるなよ?」
「う〜ん、やっぱりラーメンは豚骨じゃないと‥」
「俺は白いとんこつスープに黒いイカスミ麺の入った『とんこつイカスミラーメン』で! あ、もちろん自分で払うよ」
「私も自腹だけど何にしようかしら?」
「ところで、この人数が入りきれるのでしょうか?」
「白組は全員外で食べればなんとかなるんじゃない?」
「そりゃあ暑そうだ!」 <●><●>
一行はそんな風にわいわいと騒ぎながら紅白亭に向かった。
その後ろには、やっぱりぐふふと笑う怪しい影を付き従っていた。