●リプレイ本文
L・Hの一角にある屋内競技場のバスケットコートの周囲はバスケ好きなたくさんの観客で賑わっていた。
そしてコートの片側からRedS(レッズ)のメンバー
C:セラ・インフィールド(
ga1889)
PF:聖・真琴(
ga1622)
SF:石動 小夜子(
ga0121)
PG:新条 拓那(
ga1294)
SG:レティ・クリムゾン(
ga8679)
の5人が入場してくる。
RedSはカバの刺繍が入った赤いキャップとスカジャンをユニフォームにし、小夜子の抱いている赤いカバがマスコットだ。
中でも真琴はオーダーメイドの『ボーン・ヘッド』、『アロー・テール』、そして『エアリアル』のバッシュを身に纏っていてやる気満々である。
そんなRedSのメンバーが、
『にゃんにゃんにゃん♪』
両手を頭に上げ、腰をふりふり『にゃんにゃんDance』で入場した来たものだから一部の観客は思わずズッコケた。
一方、WVW(ホワイトバニラウルフ)のメンバー
C:鳴神 伊織(
ga0421)
PF:リヴァル・クロウ(
gb2337)
SF:朔月(
gb1440)
PG:大槻 大慈(
gb2013)
SG:周防 誠(
ga7131)
の5人は
「第二回と聞いて駆けつけた、ハリセンドラゴン参上!!」
まず竜の着グルミを着てハリセンを持った大慈がコートに登場。
「そしてホワイトバニラドッグもWVWの応援に駆けつけたぜ!」
続いて白い犬の着グルミの朔月も現れる。
二人はピョコピョコとヒョウキンなダンスを踊りながらコートの中央まで移動し、観客席に向かって大きく手を広げた。
「只今よりWVWの入場です。皆様拍手でお出迎え下さい」
その光景に呆気にとらえていた観客達は思わず拍手をしてしまう。
拍手にあわせて残りの3人もコートに駆け込み、2人に「イェーイ」とハイタッチして整列していった。
「あ〜‥今回は向こうの方が目立っちゃってるなぁ〜。やっぱネコ耳とネコグローブも付けりゃよかった」
WVWのパフォーマンスを見た真琴が悔しげに呟く。
「まぁまぁ、大事なのは試合だろ。さぁ、折角だし皆で気合いれようぜ?」
そんな真琴をなだめて拓那が皆で円陣を組ませる。
「発表しますっ! RedSは勝ぁつ♪」
「ふふっ、今回も勝てるよう頑張りますね」
「あぁ、RedSの強さを披露しよう」
「ゴール前は任せてください」
そして真琴、小夜子、レティ、セラが自らの決意を語り、
「絶対勝つぞー! RedS!」
『おー!』
拓那の声に合わせて5人が気合を入れた。
そして両チームでセンターラインで顔合わせした後、キュッキュとバッシュを擦らせて選手達がコートに散る。
ジャンパーは周防とセラ。
「前回のリベンジをさせてもらいますよ」
「私は前回はいなかったのですけど、負けるつもりはありません」
ピー
試合開始のホイッスルが鳴り、ボールが高々と上がる。
それと同時に周防とセラが跳び、手を伸ばす。
そしてボールを弾いたのは周防だった。
「よし!」
ボールは朔月がすかさずキャッチし、速攻をかけようとしたが、
「いかせねぇ!」
真琴がすばやくブロックしてボールを弾く。
だが零れ球は伊織がキャッチし、リヴァルにパス。
リヴァルがドリブルで敵陣へと攻め上がる。
「先取点もらった!」
そしてインサイドからシュートを放ったが、
「甘い!」
横合いから追いついて来たレティが飛び出し、シュートを弾く。
零れたボールは周防がキャッチし、すぐにシュート体勢に入る。
「打たせません」
しかしセラが立ち塞がってシュートコースを塞ぐ。
だが周防は素早くシュートをドリブルに切り替えてセラを抜くと、レイアップを決めた。
「あちゃぁ〜。先取点はまた向こうに決められちゃったかぁ〜‥」
「なに、すぐに取り返すさ。行くぞ」
苦笑いをする真琴の肩をレティがポンと叩いた。
RedSはセラから拓那、真琴へとパスを繋ぎ攻めあがってゆく。
大慈は真琴のボールを狙ってカットにいったが、真琴はまったくスピードを落とさずレッグスルーでかわす。
「あれ?」
続いてリヴァルがカットに来たが後ろの拓那にパスを出し、自分はダッシュでリヴァルの脇をすり抜けた。
「くっ!」
リヴァルは必死で追ったが足は真琴の方が速いため追いつけない。
拓那はアウトサイドのセラにパスを出し、セラは伊織にマークに付かれる寸前に真琴にパスを出す。
パスを受けた真琴はそのままレイアップを決めた。
「どうだ見たかぁ!」
こうしてRedSはあっと言う間に2点返した。
だがWVWは伊織と朔月とリヴァルでパスを繋いで一気にゴール前までボールを運ぶと朔月がフェイントで小夜子をかわし、あっさりゴールを決める。
「この調子で引き離すぞー!」
しかしRedSもセラ、拓那、真琴、セラ、レティの順にパスを繋ぎ、3ポイントラインでパスを受けたレティがマークについている周防をドリブルで抜くと見せて、3ポイントシュートを放つ。
「ここだっ!」
だが、それを読んでいた周防がシュートを阻んで弾いた。
「やるな」
「前回PGだったレティさんがSGになったという事は点を取りに来るつもりだって事ですから、3ポイントでくると思ってましたよ」
周防は解説しながらもガッチリマークしてくる。
「読まれていたか、さすがはシューターだな」
レティは不適に笑い返し、マークを外そうと足を動かした。
その頃、弾かれたボールはリヴァルが拾い、ゴール前にいる大慈にロングパスを出していた。
そして大慈はセラに阻まれる前に思い切って3ポイントシュートを放つ。
「入れぇー!!」
しかしボールはリングに当たって跳ね返った。
「あぁぁ〜‥‥」
だが、跳ねたボールはインサイドに駆け込んだ伊織がキャッチし、すぐにその場からシュートを放つ。
「させねぇっ!」
しかし真琴が思いっきり跳んで手で弾いたため、ボールはボードに当たって跳ね返った。
「リバウンド!」
そのボールを追ってセラと大慈が跳んだが、身長差で勝るセラが掴む。
「新条さん!」
セラはすぐに中盤にいる拓那にパスを出し、拓那が速攻のカウンターを決めた。
「よし、これでまた同点だ」
WVWは再び素早いパス回しで朔月にボールを繋いで突破を図ろうとしたが、朔月へのパスを読んでいたセラにカットされ、零れ球を小夜子に拾われてしまう。
「今だ、行け小夜ちゃん!」
「はい」
「行かせねぇ!」
拓那の声援を受けた小夜子がドリブルで駆けようとするが、その前に朔月が立ちはだかった。
しかし小夜子はレッグスルーでフェイント入れて朔月を抜き去る。
「あ、ヤベ」
朔月はすぐに小夜子の後を追ったが、追いつく前にリヴァルのマークを外してゴール前に走りこんだ真琴にパスを出されてしまう。
「小夜ちゃん、ナイスパス」
そして真琴がレイアップを決める。
「よ〜し、逆転!」
「くそっ、すぐ取り戻すぞ」
「おぅ!」
WVWは今度はうまくパスを繋いで朔月にまでボールを回したが、インサイドに切り込もうとした朔月を小夜子が阻んだ。
「あぁ〜隙がねぇ〜‥」
仕方なく朔月は一旦伊織にボールを戻そうしたが、
「甘ーい! パスするのがみえみえ〜♪」
パスを読んでいた真琴にカットされる。
「よし、カウンターだ」
零れ球を拾った拓那が攻め返そうとするが、すぐに大慈がマークに付く。
「行かせ‥」
「まこちゃん!」
しかし大慈がセリフを言い終わるより先に真琴にパスを出された。
「えぇーー!!」
だが、そのパスに素早く反応した伊織がガッチリと掴み取る。
「そう易々とカウンターなどさせませんよ」
そしてすぐにフリーになっていた大慈にパスを出した。
「大慈さん」
「おぅ!」
大慈はドリブルでインサイドに切り込み、シュートを放つ。
しかしゴール前で跳び上がったセラに叩き落され、零れ球もレティに取られてしまう。
「いくぞ、カウンターだ」
「させませんよ」
レティは速攻をかけようとしたが、すぐに周防が立ち塞がる。
だがレティは背を向け、身長差を活かして周防の懐に入るとフェイントを入れて周防の脇を抜けた。
「しまった!」
レティはそこから中盤までボールを運ぶと、インサイドに走りこんでいる拓那にパス。
「今です拓那さん」
「よし!」
小夜子の声援を受けながら拓那がシュート体勢に入った。
「打たせません!」
そこに伊織が跳びだ出しブロックに来る。
だが拓那はシュートフォームからボールを床に放ち、逆サイドから走りこんできた真琴にパスを出した。
「拓那さん、ナイスパース」
真琴はボールを受けるとレイアップを決める。
「いぇーい4点差〜♪」
真琴が指を突き上げておどけると、WVWのメンバーは悔しげに顔を歪ませた。
「これ以上点差をつけられるのはマズイよなぁ〜。なんとかゴールを決めないと‥‥」
朔月はそう呟くが、ぐっと腰を落として大抵のフェイントには対応できる瞬発力と器用さを兼ね備えた小夜子をドリブルで抜くのはなかなかに難しい。
仕方なく朔月はパスを出したが、それも小夜子に弾かれてしまった。
「あぁーまた! 小夜子って大人しそうな顔してるけど意外とテクニシャンだよね。そのテクニックで拓那も喜ばせてるんだろ〜」
「えっ!? いえ、そんな事は‥‥」
なので心理的に攻めてみたら赤面した小夜子の動きが少し鈍る。
「朔月ちゃん! 試合中に妙な会話しない!」
しかし拓那にも聞かれたため止められてしまった。
「ちぇ‥」
その頃、小夜子が弾いたボールは伊織が拾っていた。
「貰い!」
だが、そのボールを狙って真琴が手を伸ばす。
しかし伊織は自分の背中にボールを回し、逆の手で取って真琴の手を避けて抜き去った。
「えっ!?」
そしてインサイドに切り込むと、すぐにセラが前を塞ぎに来る。
伊織はセラに接近される前に低い位置から片手ですくい上げるようにスクープショットを放った。
「あ‥」
セラが成す術もなく目でボールを追ってゆくと、スポっとゴールに吸い込まれる。
「これで2点差ですね」
「ねぇ、伊織さんって昔バスケやってた?」
真琴が伊織を呼び止めて尋ねた。
「いえ、学生の頃に嗜んだ程度です」
「えっ!? だってアレ、素人の動きじゃないよ」
「一応、事前にルールブックなどは読みましたからね」
「いや、本を読んだぐらいで出来るもンじゃないって‥‥」
真琴は疑いの眼差しを向けたが伊織は意味深な微笑を浮かべるだけだった。
そうして点差を詰めたWVWだが、RedSはセラ、拓那、小夜子とパスを回し、小夜子が朔月をドリブルでかわして一気に切り込んでシュートを決め、あっと言う間にまた点差を広げる。
WVWはパスを回しながら周防を攻め上がらせ、3ポイントシュートで一気に差を縮めようと試みるもレティのマークが厳しくてその隙がない。
「くそっ!」
仕方なく周防は逆サイドの朔月にパスを出そうとしたが小夜子にカットされてしまう。
「よし、速攻です」
ボールを拾ったセラはすぐにセンターライン付近にいる拓那にパスを出す。
拓那はそのままドリブルでインサイドに切り込みシュートを放った。
「破っ!」
しかし伊織が持ち前のジャンプ力を発揮して高々と跳び上がり、拓那のシュートを叩き落す。
そして床を跳ねたボールをリヴァルと真琴が追う。
「おぉぉーー!!」
足の速さでは劣るリヴァルだが思いっきり助走をつけて飛びつきボールを抱え込む。
「朔月!」
そして床に倒れ落ちながらも朔月にパスを出した。
「ナイスガッツ!」
朔月はすぐさま敵陣目指してドリブルを始めたが、後ろからは小夜子が追ってくる。
「これ以上行かせません!」
そして3ポイントライン付近で追いつかれた。
だが朔月は構わずそこからシュートを放つ。
「え、スリー?」
朔月が3ポイントシュートを打つとは思っていなかった小夜子は驚いたが、ボールはリングに弾かれた。
しかし逆サイドからゴール下に走り込んだ周防がボールに向かって跳躍。空中で掴んでそのままリングに叩きつけた。
「入ったらラッキーだったんだけど‥ま、しょうがないか。サンキュー誠」
朔月は苦笑いを浮かべ、周防に手を振った。
「さぁみんな、もう1度引きはなそうぜ!」
セラからパスを受けた拓那がゆっくりドリブルしながら仲間を鼓舞する。
そして敵を引き付けた所で小夜子にパスを出す。
しかしパスを受けた小夜子の前で朔月が手を広げて立ち塞がる。
小夜子はフェイントを入れて抜こうとしたが朔月はフェイントにかかる事なく小夜子のドリブルを止めた。
「そう何度も抜かせないぜ」
「‥‥」
小夜子は再び抜くと見せて、逆サイドのレティにパスを出した。
レティはパスを受けた直後に素早いモーションで3ポイントシュートを放ったが、
「おっと」
周防がギリギリでボールに触れたため微妙に軌道が反れた。
「リバウンド!」
レティはゴール下の真琴に叫んだが、真琴はリヴァルのスクリーンアウトに阻まれたため、リングに弾かれたボールは伊織が掴んだ。
「速攻です」
伊織はボールをセンターライン手前まで運ぶと朔月にパスを出す。
「任せろ!」
そこから朔月は小夜子、セラをドリブルで抜き去りレイアップを決めた。
「おぉー! すげぇぞ朔月!」
「ははっ、ようやく身体があったまってきたぜ」
朔月は駆け寄ってきた大慈とハイタッチをして笑った。
これで同点となり、その後もRedSが点を入れてはWVWが取り返すを繰り返したが前半残りわずかなという所でRedSが2点リードして14対16となり、そのまま前半は終了した。
「皆さん、飲み物やレモンの蜂蜜漬けを用意してますのでどうぞ」
「お、サンキュー小夜ちゃん」
「ん、うまいな。疲れが取れそうだ」
ハーフタイム中、RedSは小夜子が用意した差し入れを頂きながら休憩していた。
「バスケットボールなんて学生時代以来でしたけど、意外と身体は動いてくれるものですね」
「意外とどころじゃないよ。セラさん上手じゃん!」
「無駄に背が大きかったですから昔はよく誘われてやっていたもので‥」
真琴に褒められたセラは少し照れた。
「皆さんお疲れ様です」
一方、WVWにはリサ・クラウドマン(gz0084)が差し入れにやって来ていた。
「すまんなリサ」
「助かりますリサさん」
「いえ、これぐらい気にしないで下さい。ところで‥あの二人は休まなくていいんですか?」
リサはまた着グルミを着てコートで観客にパフォーマンスをしている大慈と朔月を指差した。
「ま、本人達がやりたいと言ってるんですからやらせておきましょう」
とりあえず観客には受けている二人に周防は苦笑を浮かべながらスポーツドリンクを飲んだ。
そしてハーフハイムが終わり後半戦。
ジャンプボールはまたセラと周防だ。
ピー
ホイッスルと同時に跳んだ両者の高さはほぼ同等であったが、僅かに身長の勝るセラが制した。
弾かれたボールはすぐに小夜子が拾って真琴、レティへとパスを繋ぐ。
「行かせん!」
パスを受けたレティにはすぐにリヴァルがマークについたが、
「止められるか? 私のシュートを」
レティはロールターンでさらりとかわし、3ポイントラインからシュートを放ってネットを揺らした。
こうしてWVWは後半開始30秒でいきなり5点差をつけられたのだった。
「なに、この程度ならすぐに取り返してみませすよ」
そう頼もしげに告げた周防は3ポイントライン付近でボールを受け、自分をマークするレティに対して3ポイントシュートを放つと見せてドリブルで抜く、と見せて3ポイントシュートを放つダブルフェイントを入れたが、レティはそれにすら反応してみせた。
「易々と3ポイントを打てるなどと思わないことだ」
「ふぅ、やっぱりレティさんの相手はしんどいですね‥」
不敵に笑うレティに周防は苦笑を浮かべた。
一方、レティに弾かれたボールは伊織が拾い、マークにきた拓那を大慈にパスを出してかわす。
そして大慈からのリターンを貰ってシュート体勢に入った。
「打たせません」
しかしセラが伊織の前に立ちふさがり、シュートコースを塞いでくる。
伊織は構わずシュートを放つフリをしてドリブルでセラをかわして跳躍。ガツンとボールをリングに叩きつける様なダンクを決めた。
こうして差をつめたWVWだが、その後もまたRedSに点を入れられ、それをまたWVWが取り返す展開が続く。
しかしWVW18対RedS21のRedSボールでゲームが動いた。
セラから拓那、レティへとパスを回し、周防と1対1になったレティは3ポイントシュートを放つと見せかけてドリブルで抜き去ろうとした。
しかし周防はフェイントにかからず、レティは周防のディフェンスを崩せなかったため逆サイドの小夜子にパスを出す。
だが、小夜子のマークに付いていた朔月が小夜子がボールを掴んだ直後の隙を狙ってボールを弾いた。
「フン!」
「あっ!」
そして零れ玉を拾った伊織が敵陣に攻め上がる。
「行かせないよ伊織ちゃん」
しかし拓那が伊織の進路に立ち塞がり、ドリブルを止めた。
「くっ、朔月さん」
伊織は拓那のディフェンスの隙をついて左サイドから攻め上がっていた朔月にパスを出した。
しかし3ポイントライン付近でボールを受けた朔月の前に小夜子が回り込んでくる。
だが朔月は構わずシュート体勢に入り、逆サイドでは周防がゴール下に走り込む。
「打たせません!」
そして小夜子がシュートコースに手を掲げた直後、朔月がドリブルで小夜子をかわしてインサイドに切り込んだ。
「まずい!」
セラは朔月の突破を阻止しようとゴール下に走り込む。
しかし朔月はゴール下に切り込みながらセラのマークが外れてフリーになった大慈にパスを出した。
「あ!」
「しまった!」
「入れっ!」
そして3ポイントラインから放たれた大慈のシュートはゴールをくぐってネットを揺らした。
「よっしぁあーっ!」
大慈がその場でガッツポーズを取って吠える。
「ナイッシュー大慈!」
「同点だーー!!」
仲間達も集まり、大慈を褒めたたえた。
「みんな、まだ同点になっただけだよ。気にしない気にしない」
セラからパスを受けた拓那が仲間を鼓舞しながら中盤までゆっくりボールを運び、前線の小夜子にパスを出す。
もちろん朔月がマークに付きに来るが小夜子はボールを受けずにそのまま横に弾き、インサイドの真琴に送る。
「ナイス小夜ちゃん!」
真琴は虚をつかれているリヴァルをロールターンでかわし、一気にゴール下まで走りこんでレイアップを決めた。
「へっへぇ〜♪ どンなもンよ!」
「くっ‥」
真琴はご満悦な顔をリヴァルに向けながらボールを手渡した。
また差をつけられたWVWは伊織と大慈でパスを回している間に残り3人をインサイドに送り込む。
「リヴァルさん」
そして伊織がリヴァルにパスを出したが、リヴァルは敢えてそのパスを取らずにスルーし、ボールはその先でゴール下に走りこんだ朔月は受けた。
「貰った!」
朔月はそのままレイアップを決めようとした。
しかし
「届け!」
ゴール下のセラが懸命に跳んでギリギリ触れたため、ボールはバックボードに弾かれた。
「すまん、リバウンド取ってくれ!」
「任せろ」
リヴァルすぐに跳んで手を伸ばしたが、
「にゃろぉー!」
リヴァルの更に上を跳んだ真琴が精一杯手を伸ばしてボールを掴み取った。
「渡さん!」
リヴァルはすぐにボールを奪おうとしたが、真琴は身体を捻ってなんとか拓那にパスを出す。
「よし速攻!」
拓那はドリブルで敵陣に走りこんだが、すぐに周防に追いつかれてしまう。
しかし拓那はそこからボールをゴール目掛けて思いっきり投げた。
「頼む小夜ちゃん!」
「はい!」
小夜子はゴール下まで全力で駆けて跳躍。空中でボールを掴むとそのままゴールに入れた。
「ナイッシュー! 流石だね小夜ちゃん♪」
「いえ、拓那さんのパスのお陰です」
「ふふ、謙遜しなくてもいいよ。この調子でガンガン決めちゃって」
「‥‥はい」
拓那が頭を撫でると小夜子は嬉しそうに笑った。
「4点差か‥‥」
「まだ時間はあります。じっくり取り返しましょう」
「そうそう、俺がまた3ポイント決めてやるよ」
気落ちするリヴァルをパスを出した伊織とパスを受けた大慈が励ましながら前線に上がっていく。
「‥‥よし!」
リヴァルも気合を入れ直して二人の後を追う。
やがて大慈のボールを拓那がカットに来たが、大慈は後ろの伊織にバックパスを出すと自分は拓那の壁になって伊織を前に進ませる。
伊織はそのままドリブルでアウトサイドまでボールを運んだが、眼前からはレティが、後背からは拓那が迫る。
「周防さん」
伊織はサイドの周防にパスを出すフリをして大慈にバックパスを返した。
「えっ?」
大慈は拓那が虚をつかれている間に3ポイントラインからシュートを放った。
「入れぇー!」
だが大慈の祈りはボールがリングに弾かれて潰えた。
「あぁーー! せめてリバウンドは取ってくれ!」
ゴール下ではスクリーンアウトで互いの身体を押し合いながらセラ、真琴、レティ、周防、リヴァルが一斉に跳ぶ。
そしてリバウンド合戦は僅差で制したのは周防だった。
「よし」
周防はその場ですぐにシュート体勢に入る。
「させない!」
しかしすぐにレティがシュートコースを塞ぎに来る。
だが周防はその場から後ろに跳び、フェイダウェイシュートでレティのブロックをかわしてゴールを決めた。
「ふぅ〜‥‥」
床に尻餅をついてゴールが入るのを見届けた周防は微笑を浮かべながら安堵の溜め息をついた。
そうして再び2点差に追いついたWVWだが、その後も点入れられては入れ返すを繰り返す展開が続き、差はなかなか縮まらない。
そして後半戦も半分過ぎてWVW25対RedS29でWVWボールの時、再びゲームが動いた。
素早いパス回しから3ポイントラインでボールを受け取った周防はレティと対峙した。
低く腰を落として手を左右に広げるレティは相変わらず隙がない。
周防はそんなレティにの股を抜くようにドリブル仕掛けたがレティのマークは外れない。
周防はそこから片手でインサイドに切り込んだリヴァルに床にワンバンさせたパスを出す。
だが、そのパスも読んでいたレティは手を伸ばしてカットしにきた。
しかしボールは床を跳ねた直後、周防の手元に戻ってゆく。
「なに!?」
周防はボールにバックスピンをかけていたのだ。
周防は戻ってきたボールを掴むと素早いモーションでシュートを放つ。
ボールは綺麗な放物線を描き、そのままゴールに吸い込まれた。
「よーーし1点差!」
WVWが歓声を上げる。
「やってくれたな」
「はは‥。本当はもっとガンガン決めるつもりだったんですけど、レティさんをだし抜くのはホント大変ですよ」
苦笑を浮かべるレティに周防が笑い返した。
だが次のRedSの攻撃ではレティが魅せる番だった。
さっきとは逆にWVWの3ポイントラインで周防と対峙するレティ。
「さっきの借りを返そう」
レティは周防をドリブルで抜く、と見せて後ろに下がり、3ポイントラインの1m後ろからシュートを放つ。
「まさか!?」
入る訳がないと思って周防が目で追うと、ボールはボードとリングに当たって真上に上がる。
そして何度かリングに当たって跳ねた後、ゴールに入って床に落ちた。
「ふっ‥」
レティは不適に笑い、周防に親指を下に向ける。
「はは‥まいったね‥‥」
周防は苦笑いを浮かべるしかなかった。
これでまた4点差になったがWVWも負けてはいない。
素早いパス回しで朔月にパスを繋ぎ、ドリブルでアウトサイドまでボールを運んだ朔月はブロックにきた小夜子に抜くと見せかけて周防にパスを出す。
「いきますよ、レティさん」
「来い」
周防はドリブルでレティの左側から抜くと見せて途中で急停止し、レッグスルーでボールを左手に持ち替えてフックショットを放った。
「くぅっ!」
しかしゴール手前で咄嗟に反応したセラがジャンプしてボールを弾く。
そして零れ球は小夜子が確保したが、
「貰い!」
小夜子が振り向いた直後の一瞬の隙を付いて朔月がボールを掠め取った。
「あ!」
朔月はそのままインサイドに切り込み、レイアップに入る。
「させねーー!!」
だが真琴が朔月の前に飛び出し、片手を伸ばしてブロックする。
「甘いぜ」
すると朔月は空中でボールを持ち替え、後ろから走りこんできたリヴァルにパスを出す。
「ナイスパスだ朔月」
パスを受けたリヴァルはそこから跳躍し、ボールをゴールに叩き込んだ。
「よしっ!」
「あーーくっそぉ〜! ボスにダンク決めさせちまったぁ〜〜!!」
そして小さくガッツポーズをとるリヴァルの横で真琴が悔しがった。
これで2点差に追いついたWVWだったが、この時点で残り時間は後1分を切っていた。
「絶対あと1ゴール取るぞ!」
『おー!』
「死守だ! 攻めつつ死守する!」
『おー!』
そしてセラから拓那にボールが回され、ゆっくりと拓那がドリブルで攻め上がる。
「取る!」
「小夜ちゃん」
ボールをカットしにリヴァルが突っ込んできたが、その前に拓那が小夜子にパスを出す。
小夜子はドリブルでインサイドに切り込もうとしたが
「ここは通さねぇよ!」
朔月のブロックで足を止められた。
「くっ!」
「小夜ちゃんこっち!」
どうしても朔月のマークを外せない小夜子にリヴァルのマークを振り切った真琴がインサイドの走りこんで手を上げる。
「聖さん!」
小夜子はその場でジャンプし、朔月の頭越しに真琴にパスを出す。
「俺を忘れんなー!」
しかし二人の間に大慈が割って入って力一杯跳び、ボールを弾いた。
大慈はそのまま顔から床に落下したが、ゴールは朔月が確保する。
「走れリヴァル!」
「もう走っている!」
朔月はRedSのゴールに向かって駆け出したリヴァルのパスを出した。
「ヤベッ」
真琴がすぐに後を追う。
「ふふふ、この俺様の目の黒いうちはここは通さないよリヴァルくん」
そして中盤で待ち受けていた拓那がリヴァルの進路を阻む。
「いや、押し通る!」
そう意気込んで勝負を仕掛けたリヴァルだが拓那のディフェンスは厚く、逆にその足を止められてしまう。
「リヴァルさん!」
リヴァルが攻めあぐねていると後ろから伊織が駆けて来る。
「鳴神!」
リヴァルは伊織にボールを託し、自分は拓那の壁となった。
「真琴ロケーッツ!!」
しかし追いついてきた真琴が伊織のボールを狙って手を出してきた。
「っ!?」
辛くもカットは避けた伊織だが、真琴に行く手は塞がれる。
「さぁ、時間まで私と遊ンでもらうよ」
「いえ、すぐお暇します」
いやらしく笑う真琴に伊織はそう告げて抜きにかかる。
しかしパスはないと見越してドリブルにだけ集中した真琴のディフェンスは易々と抜けるものではなかった。
「ほーれほれ、時間がないぞ〜」
しかも真琴は心理的プレッシャーまでかけて伊織を揺さぶってくる。
「くっ‥」
そして真琴を抜けぬまま時間は残り後10秒を切り、味方はゴール下どころかインサイドにすら辿り着いていない。
(「一か八か!」)
伊織は覚悟を決めると、センターラインと3ポイントラインの中間である今の位置から思い切ってシュートを放った。
「え?」
「ブザービッター?」
「無理だ。あの位置から入るわけがない」
「いや、入るっ!」
「っていうか入ってくれぇーー!!」
WVWの期待が込められたボールをRedSが目で追ってゆく。
そして
ガツン
と、ボールはリングの淵に当たり、ゴールから弾かれた。
ピピーー
そして試合終了のホイッスルが鳴る。
スコアーボードは WVW:30 RedS:32
「よしっ!」
「勝ったぁ!」
「やったね小夜ちゃん」
「はい、嬉しいです」
「RedS二連勝だーー!!」
RedSは大歓声を上げ、抱き合って喜び始める。
「くっ‥負けた‥‥」
「あ〜ぁ、二連敗かぁ〜‥」
「あとワンゴールだったのに‥‥」
「えぇ、惜しかったです‥」
「ともかく全力は尽くしたんです。最後まで胸を張っていましょう」
そして悔しげな表情を浮かべるWVWはRedSとセンターラインに並び、互いに礼を返した。
こうして第二回LBAはまたもRedSの勝利で幕を閉じたのだった。
●ラーメン屋『紅白亭』
「それではRedSの二連勝を祝してぇ〜」
『かんぱ〜い!』
真琴の音頭でグラスが打ち合わされる。
「そして‥‥今回もラーメンはWVWの奢りだーー!!」
その一言でRedSメンバーはわーっと盛り上がった。
「おぅ、何でも頼めぇ!」
「もーじゃんじゃん食え!」
「全部奢ってやる。ありがたく食べるがいい」
一方のWVWは精一杯の虚勢を張った。
「じゃ遠慮なく。俺はチャーシューメンと餃子ね。小夜ちゃんは?」
「私は偶には変わった物を、という事で、冷やし中華をお願いします」
「じゃあ餃子は俺のをシェアしようか」
拓那と小夜子は仲良く餃子を分け合う。
「本当に何でもいいんですか? 迷いますね‥‥」
セラがメニューを見ながら悩む。
この店は最近色々な注文をつける客が増えたためメニューの数もそれに合わせて増え続けているのである。
「私のは当然ボスの奢りだよね。あ、リサさんもボスに奢ってもらいなよ」
「え、でも‥‥」
客席にいたリサも真琴に連れられてこの場におり、戸惑った顔でリヴァルを見る。
「遠慮するなリサ。好きなものを頼むといい」
「そうですか? じゃあ‥トッピングが全部入ってる、この満漢中華冷麺で」
よりによって一番高い冷麺だった。
「それ美味しそうですね。じゃあ私もそれで」
セラもそれに乗っかった。
そうしてRedSが本当に遠慮なく頼んでいったのでWVWは涙目になる。
「盛岡冷麺ある? なければじゃじゃ麺でもいいけど」
やがてWVWも注文を終え食事が始まる。
「久しぶりでどうなる事かと思いましたが‥今日は楽しかったですね」
「えぇ、ホントに楽しかったです」
「やはりバスケは面白いな」
「試合中の小夜ちゃん、カッコよかったよ」
「そんな‥拓那さんも素敵でした‥」
「なぁ、俺の3ポイント凄かっただろ!」
そうして皆でラーメンをすすり、敵味方関係なく今日のゲームを振り返りながら楽しいおしゃべりに興じるのだった。