●リプレイ本文
空は雲ひとつない晴天で格好の行楽日和。
なのに遊園地の入り口に集合した傭兵達のほとんどは表情をどんよりと曇らせていた。
「これはデートではなくオリムた‥たんの護衛、護衛、護衛‥‥」
紫檀卯月(
gb0890)が必死に自己暗示をかける。
「化粧と服装のミスマッチは気にしない。というかコスプレだと思えばOKだろう」
「いや、あれは既にそういう次元を超越していると思うが‥‥」
「私なんて直視するだけで精一杯ですよ‥‥」
緑川 安則(
ga0157)の意見に水無月 湧輝(
gb4056)と弧磁魔(
gb5248)が異を唱える。
「何を言ってるんです! ミニスカおりむん超カワイイじゃないですかっ! 僕は大歓迎でっせ! むしろ抱き締めたいっ!!」
ヴェレッタ・オリム(gz0162)にマジ惚れしている翠の肥満(
ga2348)だけは絶好調だ。
「オリムたん、小雪のお弁当気に入ってくれるでしょうか〜?」
「矢神様が心を込めて作った物ならオリムたんもきっと喜んで下さいますわ」
お手製の弁当が入った【子狐屋】専用食材ボックスを手にしながら不安そうに呟く矢神小雪(
gb3650)をメシア・ローザリア(
gb6467)が優しく励まし、今日が楽しい日になるよう『GooDLucK』を使用した。
やがて1台のハイヤーが入り口に到着し、ふんだんにフリルのあしらわれたゴリックロリータ服を着たオリムが出てくる。
「ブーーーッ!!」
運悪くそれを直視してしまった者は思いっきり噴いた。
(「なんだアレはぁーーー!?」)
(「やめてえぇーー!!」)
(「こわすぎるぅぅーーー!!」)
「みんな、おはよー」
ほとんどの者が恐慌状態に陥る中、
「おはよーー、オリムたん♪ 僕は『みどりお兄さん』だよ〜。オリムたんと遊園地に遊びに行きたくてやって来たんだ。よろしくね」
翠の肥満が満面の笑顔で出迎えて手を握る。
「うん、よろしくー」
そして他の者も順番に自己紹介をしてゆく。
「リ、リティシアです。よ、よよ、よろしくおお願いします!」
遊園地に行けるという事で喜んでこの任務を承諾したリティシア(
gb8630)だったが、オリムを前にして完全にビビリまくっていた。
「よろしく〜。リティシアちゃんの服もかわいい〜♪ おそろいだね〜」
「おはよう、オリムちゃん。今日はお姫様みたいな可愛い服だね」
最後に緑川が手の甲にそっとキスする。
「わ! オリムたんホントにおひめさまみた〜い」
オリムが恥ずかしそうに頬を染める。不気味ではあるが恐ろしくレアな光景だ。
「オリムたん。これを着ければもっとお姫様らしくなれましてよ」
メシアがコサージュをオリムの髪につけてあげた。
「ん〜どうかな?」
破壊力が更に増していた。
「よく似合うよ。すごくかわいい」
「今すぐお嫁さんにしたいぐらいだよ〜」
緑川のセリフは100%お世辞だが、翠の肥満のは完全に本音だろう。
「えへへ〜、ありがとー」
「さぁ、オリムたんはまず、どれに乗りたいのかな?」
緑川がにっこりと微笑んでオリムの手をとり、園内へエスコートする。
「ジェットコースター♪」
「よし! じゃあ最初はジェットコースターだ〜♪」
さりげなくオリムの逆の手を握った翠の肥満が先導する。
(「ここでおりむんの好感度をドシドシ上げて行きまっせ!」)
●ジェットコースター
ジェットコースターには翠の肥満、湧輝、リティシアが一緒に乗る事になった。
本当は小雪も乗ろうとしたのだが身長制限で弾かれたため乗れず、がっくり落ち込んで今は卯月に慰められている。
「オリムたんはいちばんまえ〜」
「オリムたんの横は僕が乗りますっ!」
「じゃあ、わたくしは後ろで‥‥」
「‥まぁ、一回くらいなら乗ってもいいだろう‥‥」
そうして4人の乗り込んだコースターはグングン坂を上って頂上へ、そこから一気に急降下。
「きゃーー!」
リティシアが可愛い悲鳴を上げて湧輝の腕にしがみつき、前ではオリムも翠の肥満に腕にしがみつきながら逆関節を極めていた。
(「なぜ逆関節!?」)
オリムはどうやら無意識に掛けているらしい。
翠の肥満は腕を外そうとしているがガッチリ極まっていて外れない。
しかもコースターが揺れる度に翠の肥満の腕関節が
ゴキッ
グリュ
ゴキュ
と歪な音を立て、
「っ! ぅ! ぁ!?」
翠の肥満が声無き悲鳴を上げる。
そしてジェットコースターを乗り終えた翠の肥満の腕は歪な形になっており、弧磁魔から練成治療を受けた。
「大丈夫ですか?」
「はは‥これぐらいへっちゃらです」
翠の肥満が力なく笑う。
「あーーおもしろかったぁ〜。オリムたんもう1回のりたーい」
「‥‥え?」
傭兵達の顔が引きつった。
「よ〜し、みどりの兄さんも乗っちゃうぞ〜!」
治療を終えた翠の肥満がオリムの手を取る。
「よせっ! 今度は折れるかもしれんぞ!」
「ふっ、オリムたんのためなら腕の1本や2本惜しくないですよ」
翠の肥満は歯をキラリと光らせて親指を立てると再びジェットコースターに乗り込んだ。
そして乗り終える度に弧磁魔の練成治療を受けたが、3回目でポッキリと逝ったのだった。
●メリーゴーランド
「うーたん、いっしょにのろー」
「えっ、自分ですか?」
ご指名を受けてしまった卯月は仕方なくオリムに付き合う事にした。
(「まぁ、メリーゴーランドなら危険はないでしょう‥‥」)
そう思って安心していた卯月だが、
「ゆきちゃん、しゃしんとってねー」
「うん、任せて〜」
「写真!?」
小雪がカメラを構えているのを見て顔を青ざめさせる。
「小雪! どうせ写真は後で没収されるでしょうから、写真は取るフリだけで頼みます」
オリムとのツーショット写真などを撮られては堪らない卯月は小雪に駆け寄り、小声でそう頼む。
「分かりました〜」
そして笑顔で快諾した小雪だったが、
「オリムた〜ん、笑って〜。じゃあ次は抱きついてみようかぁ〜。うん、いいよいいよ〜」
思いっきり二人のツーショットを激写しまくった。
「ちょ!? 小雪! ホントにそれはフリですか!? 思いっきりフラッシュ焚かれてますよ!」
「ちゃんとフリだけですよ〜♪」
そして小雪は卯月が戻ってくる前に画像データをメシアに保存してもらう。
「ふぅ〜‥いい仕事しましたぁ〜」
それを見届けた小雪はとってもいい笑顔だった。
●コーヒーカップ
コーヒーカップには緑川とようやくオリムに慣れてきたリティシアが乗り込んだ。
「回すぞ、そらっ!」
「あははっ、みどりんもっとはやく〜!」
「やめてぇー、めがまわる〜〜」
顔にさえ慣れてしまえば精神年齢が近いリティシアはオリムとすぐに仲良くなって一緒に遊園地を楽しんでいた。
「‥‥微笑ましい光景ですわね」
このメシアの意見には賛否両論あるだろうが今は気にしてはいけない。
「‥まぁ、女傑も子供の頃は普通の子供ってことか‥‥。楽しんでいるようで結構なことだ」
メシアが二人の様子を見て目を細め、湧輝が手を振ってきた二人に手を振り返す。
「オリム大将はきっと疲れておられたのですわ。ですからあの様に子供に戻られたのです。軍隊の将ではなくとも、わたくしも以前は次期当主。脆さを理解する心を失えば、ただの獣。休息が必要ですの、生きる限り‥‥。超越してしまえば、人間を否定することになる」
「それなら大将が獣にならないよう、俺たちで十分に楽しませなくてはいけないな‥‥。だがあのはしゃぎっぷりだと元に戻った後、大変そうだな。肉体的に」
「ふふっ、大将の御歳だとそうかもしれませんわね」
湧輝の冗談にメシアが微苦笑を浮かべた。
●お弁当とおやつ
「さ〜お弁当にしましょ〜」
「矢神様のお弁当楽しみですわ。わたくし和食って初体験ですの」
小雪の用意したお弁当はおにぎり・海老フライ・煮物・焼き魚・味噌汁といった日本食だった。
「オリムたん好き嫌いはないよね? これ、食べてみる?」
「たべる、あ〜ん」
オリムは大きく口を開き、緑川に煮物を食べさせてもらった。
「じゃあおかえし。みどりん、あ〜んして」
「‥‥あぁ、ありがとう」
緑川は一瞬戸惑いを見せたものの、素直に食べさせてもらう。
「はいは〜い! オリムたん! 僕にも食べさせてっ!!」
翠の肥満も恍惚の表情で食べさせてもらった。
そうしてみんなで賑やかに小雪のお弁当を食べ終えた。
「ゆきちゃん、とってもおいしかったよ」
「わたくしも堪能させていただきましたわ」
「えへへ、喜んでもらえて小雪も嬉しいのです」
小雪は照れつつも嬉しそうに笑う。
ランチの後はリティシアの持ってきたお菓子を食べる事になった。
「オリムたんはどれが食べたいですか?」
「う〜ん‥‥あ、ポッキー」
好みが分からなかったので色々持ってきた中でオリムの目を惹いたのは意外にもポッキーだった。
「ねぇ、ポッキーゲームしよ」
「‥‥‥‥‥‥え?」
その一言で場の空気が完全に凍りついた。
「神様ありがとーーー!!」
翠の肥満だけは滂沱の涙を流して感激していたが敢えて無視。
「じゃあ、ジャンケンね」
この時7人の心は一つだった。
『必ずオリムたんを勝たせる!』
しかし、
「あ〜ん、オリムたんまけちゃった」
(「なぜーーっ!!」)
(「なんで自分はパーを出したのか‥」)
(「パーを出したこの手が憎い〜!」)
こうして恐怖のポッキーゲームが始まった。
緑川は口をうまく使って自らポッキーを折った。
「残念、折れてしまいました」
弧磁魔は1口でギブアップ。
「無理です‥。あのアップには耐えられませんっ!」
リティシアは目を瞑って頑張るも3口でリタイヤ。
「顔はやっぱり怖いです‥‥」
翠の肥満は
「カリカリカリカリカリカリ」
「キャ!」
もの凄い勢いで齧って急接近、寸前でオリムの方が逃げた。
(「惜しいっ! でも怯えるおりむんも可愛いですねぇ〜」)
だんだん変態入ってきている翠の肥満だった。
「もー! みどりお兄ちゃんこわいよ〜」
「ごめんごめん。お詫びにアイス買ってあげるよ。何がいい〜?」
「‥‥トリプルでもいい?」
「もちろんさ〜!」
翠の肥満はダッシュでトリプルアイスを買ってきた。
「うわぁ〜! ありがとう、みどりお兄ちゃん」
オリムは瞳をキラキラと輝かせて受け取ると、翠の肥満の頬にべちょりとキスをした。
翠の肥満の頬に口紅だけでなくファンデーションまでもがベッタリと貼り付く。
「げげっ!」
「うわぁ〜‥‥」
それを見た7人は思いっきり引いた。
「うひょーーー!! 僕もう一生顔洗わな〜〜い♪」
だが当の翠の肥満は完全に有頂天になる。
「洗えっ!!」
「今すぐ落としてこい!」
「不気味なもの見せないでぇ〜〜!!」
でも他の者には思いっきり突っ込まれた。
●お化け屋敷
お化け屋敷には湧輝、弧磁魔、リティシアが一緒に入る。
「ま、真っ暗ですね‥‥」
リティシアは入ってすぐ湧輝のシャツを掴んだ。
「こ、こわいよぉ〜‥‥」
オリムもすぐに弧磁魔の手をギュッと握る。
「だ、ダイジョブですよオリムたん。わ、私がついてまます‥‥」
弧磁魔もギュッと握り返して励ますが、その声は恐怖で震えていた。
「最近は、随分と造形に気を配ってるんだな。昔はここまで作りこんでいなかったがな」
平気なのは湧輝だけだ。
そうしてビクビクしながら進むと、いきなり足元が少しだけガクンと下がり、頭上から長細い何かがボトボトと降ってきた。
『キャーーー!!』
オリムとリティシアは相方を連れて猛ダッシュ。
しかし行く先では倒れていたゾンビが床を這いながら迫ってくる。
「ギャーお化けぇ!?」
「イヤァーーー!!」
オリムは恐怖のあまり弧磁魔の背中にしがみつく。
するとオリムの豊かな胸の膨らみが弧磁魔の背中にむにゅっと感じられた。
(「お‥‥大将のって大きくて柔らかい‥‥」)
弧磁魔は恐怖を忘れて一時その感触に酔いしれ、更には出来心で太ももにも手を伸ばしてしまう。
「キャーーキャーー!!」
しかしオリムは背中にしがみ付くだけでなく、腕を弧磁魔の顎の下に入れて反対側の襟を取り、片手は脇の下から入れて巻き上げ、首の後ろを押さえて締め上げた。
いわゆる、片羽絞である。
「また締め技?」
驚く湧輝の前でオリムは悲鳴をあげながらギリギリと締め上げる。
(「く、苦しい‥‥。でも背中は気持ちいい‥‥。太もも柔らかい‥‥」)
正に天国と地獄。
(「‥あ、でも‥意識が‥遠の、い‥て‥‥」)
弧磁魔は苦痛と快楽を感じながらガクンと締め落とされた。
「‥‥」
その光景に湧輝とレティシアだけでなくゾンビまでもが唖然となる。
「うわぁぁ〜ん!」
そしてオリムはダランと弛緩した弧磁魔を抱えたまま出口に走っていった。
●プリクラ
「オリムたん。わたくし達とプリクラを撮りません事?」
「うん、とる〜♪」
メシアの提案で一向はオリムとプリクラを撮りに行く事になった。
「オリムたん、フレームはどれにいたします?」
「う〜んとね、コレ〜」
まずはメシアが一緒に撮り、他の者達も順番に撮ってゆく。
メシア、緑川、小雪、リティシアは仲が良さそうに
卯月、湧輝、弧磁魔は微妙に引きつった笑顔で
翠の肥満は必要以上にべったりくっついたプリクラがそれぞれ出来上がる。
「みんなでとろ〜」
「全員入れるだろうか?」
「詰めればなんとかなりますわよ」
「‥ぅ、狭いです」
「ほら、みんな笑ってください♪」
最後は無理矢理9人詰め込んだプリクラを作った。
「監視の目を誤魔化してくださいませ」
「了解」
そしてメシアは仲間に壁になってもらい、プリクラを0と1でアナログ化し、配列をアナグラムして保存する。
「これはわたくし達とオリムたんとの大切な思い出ですもの。誰にも渡せませんわ」
●観覧車
「観覧車にはオリムたんと二人っきりで乗せてくださいっ!」
翠の肥満が皆に向かって頭を下げる。
どうやらそれ程までにオリムと二人っきりになりたい様だ。
「こういうものは‥気に入った相手と乗るものだろう。オリムの意思が重要だな」
「みどりお兄さんはこう言ってるけど、オリムたんはどうかな?」
「いいよ〜」
緑川が確認すると、オリムはあっさりOKした。
「よっしぁ!! じゃあ乗ろうオリムたん!」
翠の肥満はガッツポーズをとると、さっそくオリムの手を取って観覧車に乗り込んだ。
二人を乗せた観覧車はグングンと地上から遠ざかってゆく。
「うわぁ〜、たか〜い♪ それにゆうひがきれー」
「そうだね」
翠の肥満は景色を眺めるオリムの横に並び、さりげなく肩に手を回した。
「でも、オリムたんの方が綺麗だよ」
「‥え?」
翠の肥満の言葉にオリムが頬を染める。
(「‥‥いける!」)
オリムの乙女の様な反応に確信を持った直後
翠の肥満は夢から覚めた。
「‥‥‥夢オチだぁーー!! ふざけんなぁっ!! 僕はそんなの認めないぞ! フィクションだ? 知るもんけェ! 僕が現実に変え」
無理です。
<END>
「無理でもENDでもないっ! 僕とおりむんの物語は‥」
<今度こそEND>