タイトル:【JTFM】補給線分断作戦マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/14 22:40

●オープニング本文


 キメラ闘技場陥落。
 その吉報に喜べたのは、ほんの束の間の事だった。
 なぜなら、キメラ闘技場の陥落に合わせた様にエクアドルからソフィア・バンデラスが大群を率いてカリを強襲。
 駐留していた守備兵力を一掃し、カリを占拠してしまったからだ。
 この事態に対してUPC南中央軍は直ちにカリ奪還作戦の立案に入ったのだった。


「キメラ闘技場に兵力を集中しすぎて他の基地を手薄にしすぎたか‥‥」
 UPC南中央軍の総司令官であるジャンゴ・コルテス大佐が険しい表情でカリを中心とした戦術マップを見て呻く。
 緊急に開かれた作戦会議にはUPC南中央軍の佐官位と、ヴァルトラウテの艦長であるビビアン・O・リデル中佐、副長のチャールズ・ハイデマン少佐も参加していた。
 会議が開始されてから30分が経過している。
 しかし未だ有効な作戦案は出ていなかった。
 ビビアンもその間ほとんど発言していない。
 だが、場の雰囲気のまれて怯えていたわけではなく、策がない訳でもない。
 ビビアンはジッと戦術マップを睨み、頭の中でUPC南中央軍からもたらされたカリ周辺の敵戦力と分布等の情報を統合、分析し、現在成し得る最善の戦略を練り上げているのだ。
「ですが‥‥これは逆にチャンスかもしれません」
 そして一つの解を得たビビアンは戦術マップから顔を上げた。
「なに?」
 会議室にいた全員がビビアンに注目する。
「カリを強襲した敵戦力はほぼ航空兵力のみでした。そのため現在カリに駐留している敵兵力は少ない‥とは言えませんが、決して多くはありません。今ならそのまま包囲殲滅する事も可能なはずです。そのためにはエクアドルとカリとの間の補給線を叩いて敵を孤立させる必要があります。現在、敵陸戦部隊がエクアドルからカリに向けて移動しているのが確認されていて、今はまだパスト辺りです」
 ビビアンが戦術マップ上のカリの南方、エクアドルとの国境近くにあるパストの町を指し示す。
「今から戦力を集めれば、ポパヤン辺りで迎撃できるはずです。そしてそのままポパヤンを占拠し、敵の補給戦を断ちます」
 ビビアンの指がすっと動き、パストの町の更に北にあるポパヤンの町を指す。
「補給線を断たれたと知った敵はすぐにポパヤンの町を取り返そうとするでしょうが、敵が動くよりも先に東西南北の4方向プラス地上の5方向からカリに進攻し、包囲殲滅します。以上が私の立案したカリ包囲殲滅作戦ですが‥‥えぇ〜と‥‥どうでしょうか?」
 作戦内容を説明している時は興奮していて勢いのあったビビアンだが、説明し終わったところで普段の気弱な部分が表に出てきた。
 しかしこれでもボリビアでの大規模作戦を乗り越えた事でかなり精神的に強くなった方なのである。
「悪くない策だ。リデル中佐。続けてくれ」
 コルテス大佐が満足気に頷き、先を促した。
 その事にビビアンは内心でホッと安堵の吐息をつく。
「ありがとうございます。それでは作戦の詳細をお話します。まずはポパヤンの占拠、これが出来ないと話になりません。そしてカリ包囲戦ではエクアドル方面の南側に最も敵の攻撃が集中すると思われます。ですから出来ればポパヤンには今の段階からできるだけ多くの戦力を送り込んでおきたいんです。なので‥‥」
 ビビアンは少し言いよどんだが、目の端でチャールズが小さく頷くのが見えた。
 その事で覚悟を決め、口を開く。
「ヴァルトラウテでアンデス山脈西側を南下し、ポパヤンの西側から一気に強襲をかけたいと思います」
「え!?」
「なんだって!?」
 他の者達が驚きを露にするが、ビビアンは構わず続ける。
「慣性制御装置を搭載しているヴァルトラウテなら山脈ギリギリまで降下しての飛行が可能です。それならば敵のレーダーにも掛かり難いですし、万一山脈にぶつかってもヴァルトラウテの電磁フィールドなら耐えられます。決して不可能ではありません!」
 ビビアンは断言し、一同を見た。
 皆の視線がビビアンに集中する。
 不信そうな顔をしている者もいる。
 無理だと思っている者もいるだろう。
 小娘の考えた浅はかな策だと思っている者もいるかもしれない。
 だがビビアンには成功させられる自信があった。
(でも‥‥受け入れてもらえるかは分からない‥‥)
 緊張で心臓がドクドクと脈打つ。
「いやはや‥‥随分と大胆な作戦だな」
 コルテス大佐が呆れた口調で言う。
 ビビアンの心臓がドキリと跳ねた。
 総司令官であるコルテス大佐が否定すれば、おそらく他の者達も否定するだろう。
「リデル中佐、本当にそれは可能なのか?」
 コルテス大佐は48歳で能力者になり、数多くの戦場を潜り抜けた歴戦の兵士であり、今でも前線で戦い続けている猛者だ。
 その眼光を鋭く、見つめられた者はそれだけで射竦められる。
 怖い。
 恐怖で体に震えが走る。
 心臓が痛いくらいの勢いで拍動する。
 嫌な汗が背中を伝う。
 思わず逃げ出したくなる。
(でも引かない。私は艦長なんだもん。ここで引いちゃダメだ! それに、ヴィーお姉ちゃんならこんな時は絶対に毅然とした態度で1歩も引かないはずだもん!!)
 ビビアンは敬愛し、自分の目標である叔母のヴェレッタ・オリム中将の事を思い描いて自分を叱咤し、コルテス大佐を見返す。
 そして
「可能です」
 ハッキリと肯定した。
 すると、コルテス大佐は口の端を少しあげて笑った。
「‥‥分かった。リデル中佐、君に今作戦の指揮権を与え、カリの奪還を命じる」
「‥は、はい! 了解しました」
 ビビアンは思わず立ち上がり、焦りながらも敬礼を返した。

 こうして、ヴァルトラウテの艦長であるビビアン・O・リデル中佐を司令官とした『カリ包囲殲滅作戦』が開始され、急ピッチで準備が整えられた。
 そして多く者の達に見送られ、ヴァルトラウテは大空へと飛び立っていった。



 ヴァルトラウテはアンデス山脈から吹き下ろす風に煽られ、何度となく山脈にぶつかりそうになりながら山脈に沿って南下。
 幾度か本当に山肌にぶつかりもしたが電磁フィールドに守られた船体は傷つくことなく、座礁も墜落もしなかった。

 そしてヴァルトラウテはポパヤン西方部で山脈を越え、町に向かって一気に加速。
 レーダーが町を捉えた時点でKVの格納庫のハッチを解放した。
「ジェームスさん、マチュアさん、傭兵の皆さん。発進願います」
 格納庫で待機中だった各KVのコクピットにビビアンの声が届く。
「了解だ、ビビ艦長。後は任せてくれ。ジェームス隊、発進する!」
 ジェームス・ブレスト(gz0047)率いるフェニックスとスカイセイバーとワイズマンの部隊が飛び立つ。
「さぁ、行くよみんな! マチュア隊、出撃!」
 続いてマチュア・ロイシィ(gz0354)が率いるマリアンデールとスピリットゴーストの部隊が飛び立つ。
 そして最後に傭兵部隊が出撃。
 合計24機のKVがポパヤンの町に向かって飛来していった。

●参加者一覧

鷹代 由稀(ga1601
27歳・♀・JG
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
エリアノーラ・カーゾン(ga9802
21歳・♀・GD
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
佐賀重吾郎(gb7331
38歳・♂・FT
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD

●リプレイ本文

●ポパヤン・バグア中継基地

「キメラ闘技場を落としたと思ったら、まさかカリが奪われるとは‥‥」
 キメラ闘技場攻略に一役買っていた神棟星嵐(gc1022)が悔しげに呟く。

「結構な数だよなー‥‥無茶なオーダーは中将譲り?」
「確か多いですけど、リデル中佐の作戦を成功させたいですし、頑張りましょう」
 多数のワームと無数とも思えるキメラ群を目にして苦笑を浮かべるユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)を周防 誠(ga7131)が励ます。

「うぃっす、去年の学校占拠事件以来? ま、今日はよろしくね」
「あぁ、今回もよろしく。まずはうるさい怪音波を止めるよ」
 鷹代 由稀(ga1601)の挨拶に答えてマチュア・ロイシィ(gz0354)の部隊が砲撃を開始。
 『ファルコン・スナイプ』で放たれたキャノン砲とレーザー砲が箱持ちムカデごとCWを次々と破壊してゆく。
「次はお前達の突破口を開いてやる」
 怪音波が消えるとマチュア隊のマリアンデールが荷電粒子砲を『掃射モード』で発射。
 進路上のキメラと小型陸戦型ワームを薙ぎ払い、生き残りもスピリットゴーストがキャノン砲で潰してゆく。
「おーおー、敵さん吃驚してるっぽい。リデル中佐の発案らしいけど、ここまで綺麗に強襲を決めるってのは、見事なモンね」
 エリアノーラ・カーゾン(ga9802)がビビアンの策とマチュアの手並みに感心する。
「ここまでは順調、後は私達KV隊の働き次第‥ってトコか」
「そうだね。お膳立ては完璧。さあ、ここからは自分達のお仕事だ」
「迅速な敵破砕が味方の負担を減らすでござるからな」
「まあとにかく頑張ろうか」
 エリアノーラ、蒼河 拓人(gb2873)、佐賀重吾郎(gb7331)、ユーリがブーストで突撃。


「こちらも作戦通り、敵の陣形を崩しに掛かりましょう!」
「よし、開戦の狼煙だ‥‥受け取れ!!」
 星嵐と漸 王零(ga2930)がM−181大型榴弾砲を発射。無数の榴弾がRCとTWに降り注ぐ。
 しかしTWは四肢を甲羅に納めて耐え、RCも直撃したがまだ健在だ。
「まずは数を減らさないとね‥‥頂き!」
 だが周防が損傷率の高いTW2体とRC1体をスナイパーライフルLRX−1で狙撃して撃破する。
 以後は味方のフォローや、攻撃を仕掛けようとする敵の牽制等を行っていった。
「敵も多い、すべき事も多い‥‥こりゃ忙しいですね」


「んじゃ、こっちもおっぱじめますか。ジェイナス、目標を狙い撃つ!」
 由稀は突撃中の前衛を援護するため『スナイピングシュート』を起動し、8.8cm高分子レーザーライフルで中央のゴーレムを狙撃すると、手早くエネルギーパックをリロードして隣りのゴーレムも撃ち抜く。
 しかし残りのゴーレムが各種の銃器を掃射。やや遅れている佐賀を除く前衛3機に無数とも思える銃弾とレーザー光が殺到する。
 ユーリと拓人は高い回避力を駆使して弾幕を潜り抜けた。
 エリアノーラには9割程が命中したが、厚い装甲に傷が刻まれた程度で済む。
 だが、その間に態勢を整えたTWとRCがプロトン砲の集中砲火を浴びせる。
 弾幕を抜ける際に体勢が崩れていた拓人は全てを避けきる事はできず3発被弾。ユーリも1発喰らう。
 エリアノーラの頑強な装甲でも超々高熱光を連続で浴びては無事では済まず、損傷を受けるが並外れた耐久力のお陰で戦闘に支障はない。
「前衛はゴーレムに取り付いたね。それじゃ、あたしは亀退治といきますか」
 前衛の行方を見届けた由稀は標的をTWに変えて照準器に収めると、特注のライフルグリップのトリガーを引いた。


「今度はこっちの番だ」
 敵の弾幕を潜り抜けた拓人は剣持ちゴーレム(剣G)に機刀「獅子王」で斬りつけた。
 しかし盾で受け止められ、剣の反撃がくる。
「遅い」
 だが拓人はヒット&アウェイで既に間合いの外だ。
 斧Gがフェザー砲で追撃してきたが、それも避ける。
 だがその間に槍Gが横に回り込み、槍で突いてきた。
 大きく避ければ回避できるが、それではRCにGを被せた射線上から出て狙い撃ちにあう。
 仕方なく初撃は身を捻って避け、次撃は獅子王で受けたが3撃目は脇腹に突き刺さった。
「くっ!」
 その隙に剣Gと斧Gが左右から迫る。
「数が多すぎる‥‥」
 一対多にならぬようにしたい拓人だが、RCの射線に敵を入れつつ3機のGを相手にしては非常に難しい。
 周防がRCやGに牽制攻撃してくれるが、狭い回避範囲内で巧みに位置を変え、Gに囲まれない様にするのが精一杯だ。
 それでは3機のGが次々と仕掛けてくる攻撃の全てを避けきる事はできず、機体に傷が幾つも刻まれてゆく。
 だが転機はすぐ訪れた。
「取り戻しつつあるこの地上を、再び奪われるわけにはいきません!」
 星嵐が駆けつけ、近接高分子レーザーガンを斧Gに掃射して気を引いた。
 斧Gはレーザーを浴びながらも星嵐に迫って斧を振り下ろし、薙ぎ払う。
 想像以上に振りの速い斧を星嵐は避けきれず胸部装甲が損壊。
 横薙ぎはブレードで受けたが威力を殺しきれず肘が鈍い音を立て、機体が吹き飛ばされる。
「堪えろブルーゴッテス!」
 バーニアを制御して転倒せず着地するとレーザーガンを掃射して牽制。斧Gが盾を構えた隙に間合いを詰めてツインブレードで斬りかかる。
 初撃は盾で防がれたが横に回り込みつつ柄を旋回させ、逆の刃で胴を凪ぐ。
「沈んで貰います!」
 続けて内臓『雪村』で同じ箇所を斬り裂く。
 光の刃は装甲を融解させ、内部機構も裂き、そのまま胴を真っ二つにした。

 一方、Gが1体減って負担が軽減した拓人も攻勢に転じ、Gを1体葬っていた。



 ユーリは双機刀「臥竜鳳雛」で剣Gで斬りかかったが盾で完全に防がれた。
「頑丈な盾だな。だが!」
 しかし機体を屈ませてソードウィングを広げ、その場で旋回して足を斬り落とす。
「まず1機!」
 そして槍Gを重機関砲で牽制して動きを止め、警戒していたRCのプロトン砲を避ける。
 更に横合いから振り下ろされた斧Gの斧も避けて死角に入り込み、双機刀で胴体を斬り裂く。
 だがその直後、片足の剣Gが慣性制御で浮き上がり、R−01改の背面を大きく斬り裂いた。
「それは反則だろう!」
 ユーリは振り返ってクロスさせた双機刀で剣を受けて抑え込み、盾の逆側に機体を捻って『Aファング』を付与した剣翼で腕ごと剣を斬り落とし、そのまま『Aファング』付与の双機刀で頭と胴体を抉ってトドメを刺す。
 だが、Gを倒して動きが止まった所をRCが狙い撃ってくる。
 すぐに回避機動に入ったが何発か避け損ねて装甲が融解、機体が小爆発を起こす。
「くそっ! うっとおしいなぁ!」
 そしてユーリの動きを止めるべく2体のGが立ち塞がる。
「片方は拙者に任せるでござるよ」
 移動力の差で遅れて到着した佐賀が両手に構えた90mm連装機関砲で斧Gに400発もの銃弾を叩き込んだ。
 だが全て盾で防がれ、目標を変えた斧Gが佐賀に迫って斧を叩きつけてくる。
 佐賀は機盾「バックス」で受け止めたが、その威力は凄まじく、衝撃で盾を持った左腕が折れた。
「何という馬鹿力!?」
 そして更に斧が叩き込まれ様としたが
「させませんよ」
 周防が斧Gの右肩を狙撃して粉砕。斧が腕ごと地面に落下する。
「すまぬ周防殿」
 その隙を逃さず佐賀はヴィガードリルを斧Gの損傷していた胴体部に抉りこむ。
 ドリルの内部に小型ブースターが火を噴き、高速回転するドリルが火花を散らして体内深くまで破壊し尽くし、斧Gを機能停止させた。



 エリアノーラが試作型スラスターライフルでGを牽制しつつ接近すると、2機は盾で防いで銃器で反撃し、別の2機が接近してくる。
 銃弾は装甲で弾き、双機槍「センチネル」のカートリッジを炸裂させて向かってくる槍Gを突く。
 槍Gは盾で防ぎ、槍で反撃してきたが双機槍で弾いて懐に潜り込むと、電磁ナックルαを腹部に叩き込んで高圧電流を流し込む。
「先の後の先、ってヤツだっけ、これ」
 そして振り返り様に剣Gの剣を双機槍の二叉の穂先で受けて切っ先を絡め取り、そのまま捻って相手の体勢を崩すと近距離からライフルを連射。無数の弾痕を剣Gに穿つ。
 半壊した剣Gは退がって銃を乱射し、周囲からも銃弾、フェザー砲、プロトン砲が浴びせかけられ、装甲の薄い部分からダメージが蓄積してきた。
「さすがにこの数が相手だとちょっと辛いわね」
 並のKVなら大破している所だが、まだ十分戦えるエリアノーラは剣Gに追い縋って双機槍で突く。
 しかし剣Gは盾で受け、剣で反撃。
 双機槍で受けると、またカウンターで槍先を胴体に深々と突き入れた。
 剣Gはそれで機能停止したが、その隙に3機が背後に回りこむ。
 だが
「誓約の名の元に漸王零‥‥推して参る!!」
 3機に王零がスラスターライフルを掃射しながら強襲をかけた。
 そしてジャイレイトフィアーを構えると斧Gの損傷した腹部に突き立て、刀身を高速回転させて体内を完膚なきまで破砕する。
「ここは我に任せろ」
「分かったわ。じゃ、お願いね」
 残りの2機に睨みを利かせている王零に後を任せ、エリアノーラはPRMを『抵抗』モードで全開にし、RCの討伐に向かった。


「ゴーレムは此方で引き受けます。蒼河殿はRCとTWをお願いします!」
「分かった。周防君、援護を頼む」
「了解です」
 星嵐が剣Gをレーザーガンで牽制している隙に拓人もエリアノーラに合わせてRCへ突貫。
 剣Gはレーザーを喰らいながらも星嵐に接近して剣を振るってきた。
 星嵐はツインブレードで受け流して斬り返すが盾で受けられる。
 更に両者の間で刃が舞い、捌き、受け、弾くが、星嵐の攻撃は盾でほぼ防がれてしまう。
「ならば!」
 星嵐は『雪村』を盾に突き立てて貫通させ、盾を持つ手を破壊する。
 盾が落下して剥き出しになった頭部をブレードで跳ね飛ばし、更に首から刃を突き立てて体内も破壊し、勝利を掴んだ。


「ユーリ殿、拙者も突貫いたす。援護して下され」
「分かった、サポートする」
 佐賀もユーリが槍Gを重機関砲で足止めしている間に敵の中衛に向けて駆け出す。
 槍Gは弾幕を盾で防ぐと盾を構えたままユーリに突進し、盾の影から槍で突いてくる。
 双機刀で槍を弾き、横に回りこもうとしたが、槍Gは盾をユーリに向けたまま退がって再び槍を突き出す。
「くそっ、引きこもるなよ」
 槍は避けて間合いを詰め、足元を狙って剣翼を薙ぎ払ったが盾を下げて防がれる。
 だが盾が下がった瞬間に折りたたまれたままのショルダーキャノンを頭部に向けて発射。顔面が弾け飛ぶ。
「これで終わりだ!」
 槍Gがよろけた隙に『Aファング』を付与した双機刀を装甲の隙間に突き入れて一気に斬り裂き、出来た隙間にもう1本の刀を突き入れて中枢部を破壊した。

 その頃、佐賀はRCではなくTWに突撃していた。
「TWは顔面破砕、脚部粉砕でござる」
 だが、由稀が狙撃で数を減らしているとはいえ、TWはまだ6機も残っている。
「えっ? 1人で突っ込むの」
「無茶です佐賀さん! 鷹代さん援護を」
 由稀と周防が慌ててTWを狙撃。どうにか3機撃破したが、残り3機のプロトン砲の集中砲火が佐賀を襲う。
 超々高熱の光がたちまち機体を融解させ、『斜め四十五度・改』を使う間もなく佐賀のノーヴィ・ロジーナbisは爆散した。



 エリアノーラはプロトン砲を撃たれる前にブースト機動で中央のRCに肉薄しつつ体色を確認。
「緑ね」
 知覚が有効と判断して電磁ナックルαを腹に叩き込む。
 高圧放電が瞬き、腹が黒く焼け焦げたがRCは平然と爪で反撃してきた。
「物理特化になってない?」
 そう、RCは平常時も体色が緑なのだ。
 辛くも双機槍で爪を防ぐが、RCは続けて至近距離からプロトン砲を連射してくる。
 モニターが赤色に染まった後、ブラックアウトした。
「何?」
 ダメージを調べると頭部が損傷した事が分かる。
 そして衝撃がコクピットを揺さぶった。
 サブカメラに切り替わってモニターが回復すると、RCの大口を開けて右手に喰らいつき、噛み砕こうとしているのが見えた。
「このぉ!!」
 エリアノーラは左手のライフルの銃口を焦げた腹に押し付け、0距離で発射。
 腹が弾けて貫通し、血と内臓が飛び散る。
 するとRCから力が抜け、ズルリと地面に倒れ伏した。


 拓人もRCの緑の体色を確認するとブースト機動で一気に間合いを詰め、『接近仕様マニューバ』を起動し、『雪村』から光の刃を伸ばす。
「はっ!」
 袈裟斬りで胴体を斜めに斬り裂き、手首を返して真横に一閃、腹を横一文字に斬り裂く。
 斜めと横に血飛沫が上がり、内臓がどろりと地面に零れ、RCは前のめりに倒れた。
 そして拓人は倒れたRCの首を獅子王で刎ねる。
「トドメは念入りに。君達には何度も痛い目を見てるんでね」

 だが、エリアノーラと拓人がRCを倒した直後、TWからプロトン砲の集中砲火が浴びせられた。
 エリアノーラは身を固めて耐え、拓人は回避したが、その間に2機のRCがガッチリと大地を踏みしめ、二門のプロトン砲に充填したエネルギーを一気に解き放つ。
「しまった!」
 眩く溢れんばかりの赤色の光が辺りを包み込むかの様に広がってゆき、エリアノーラと拓人も飲み込まれた。

 『プロトンバースト』

 レックスキャノンのプロトン砲による最大出力での広範囲砲撃だ。
 やがて光が収まると、そこには装甲を融解させてぶすぶすと煙を上げているがしっかり立っているエリアノーラのシュテルン・Gと、地面に横たわって完全に動かなくなった拓人のミカガミが現れる。


「おのれ! よくも仲間を2人も!!」
 G2体を倒し終えていた王零はブースト機動で一気にRCに迫るとF・I・ナックルで腹に衝撃と閃光を叩き込み、続けて真デアボリングコレダーも同じ箇所に叩き込んで腹を破裂させる。
 更にジャイレイトフィアーで頭部も破壊する完全なオーバーキルを行った。

「よくもやってくれたわね!」
 エリアノーラは残っていた錬力をPRM『攻撃』モードに使い、ライフルでRCの片足を潰し、片膝をついた隙に接近すると双機槍を口腔に突き入れてカートリッジを炸裂。伸びた槍先が頭部を貫通する。
 そして双機槍を引き抜いて胴体も縦に斬り裂き、RCにトドメを刺した。


 一方、残る3体のTWも由稀と周防が狙撃して倒し、小型ワームやキメラもマチュア隊が同じ頃に全滅させていた。
 こうしてポパヤンの町のバグア勢力は一掃されたのだった。




●ヴァルトラウテ艦橋

 ヴァルトラウテからもポパヤンの町での戦闘が終結した様子は伺え、ジェームス・ブレスト隊からも敵部隊を全滅させたという報が届く。
「ふぅ〜‥‥。無事にポパヤンを占拠できたみたいですね」
 艦長席に座るビビアン・O・リデルが大きく安堵の吐息をついて体を弛緩させた。
「はい。これでカリとエクアドルを繋ぐ補給線は断たれました。ですが、これからが本番です」
 副長のチャールズ・ハイデマンが姿勢を崩さず答える。
「‥‥そうですね。これは言わば前哨戦。補給を断たれた敵は死に物狂いで反抗してくるでしょう」
 ビビアンは険しい表情でカリのある北の方角を眺めるのだった。