●リプレイ本文
『俺様はスーパーバグア、シェアトだ! 前方の地球人ども、邪魔だ! どけ!』
迎撃に出た傭兵達に向かってオープンチャンネルで通信が飛び込んでくる。
「‥‥よりにもよって8番かよ」
北京でやりあった同型機だが、搭乗者があのシェアト(gz0325)だと分かると時枝・悠(
ga8810)がややゲンナリした声を漏らす。
「頭悪くても強ぇのは知ってっからな‥‥。けど、簡単にゃ行かせねぇよ☆」
聖・真琴(
ga1622)は不敵に笑うと通信機をONにした。
「フォウン・バウ‥かぁ。ステアーよりカッコ良いな♪ すーぱーなヤツぁ乗物も違うねぇ☆」
『ほう‥貴様、なかなか見所があるじゃないか。そう! 俺様のフォウン・バウのカッコ良さはバグア1! いや銀河1と言(以下略)』
真琴におだてられたシェアトはFBのカッコよさを雄弁に語ってくれた。
「さすがスーパーバグアにフォウン・バウ。俺達の攻撃なんて回避はおろか、フィールドすら張る必要はないんだろうな」
続いて月影・透夜(
ga1806)がおだてて行動を縛ろうとする。
『ふっ‥‥俺様のフォウン・バウは華麗に攻撃を避け、鮮烈に敵を沈める姿が最も美しいのだ! それが分からんとは‥美意識の欠片もない奴め』
(くっ! こいつ!!)
鼻で笑われた上シェアトに美意識を説かれた透夜はカチンときたが、その怒りは砲弾に込める事にした。
「あっ、すーぱーおばかさんのシュアトだよね。あそぼう」
『‥‥』
今度は瑞姫・イェーガー(
ga9347)が無邪気に誘ったが無視された。
「むししないでよ〜。おばか、おばか、すーぱーおばかのシュアト♪」
『‥‥ガキ、俺様と話がしたかったら名前ぐらいちゃんと覚とけ』
さすがのシェアトもこの程度の挑発には乗らないようだ。
『分かったらそこをどけ。俺様は急いでるんだ』
「救援ですか? それでしたら、ここで私どもと少々時間を潰されては如何でしょうか。味方が壊滅の危機に颯爽と現れる、というのは演出としては、決まれば格好良いですからな」
「それに時間が無いなら、速効で自分達を倒してから行けばいい。それとも‥その自信はありませんか?」
『ふ‥‥いいだろう! そこまで言うなら少しだけ相手をしてやる!!』
飯島 修司(
ga7951)と周防 誠(
ga7131)が言葉巧みに引き止めると、シェアトはとうとうその気になった。
「あ、戦うのはいいけど、私達にただ勝つだけじゃあ不十分だと思うんだ。攻撃する前に、技名と内容をちゃんと説明してからの方が良いんじゃないかな」
弓亜 石榴(
ga0468)がシェアトに隙を作ろうと提案してみる。
『安心しろ。俺様の声と攻撃は相手の魂にまで届く。内容の説明など不要だ!』
「じゃあ‥どうせ敵に勝つなら、攻撃前にもっと長くてカッコイイ名前を叫んだ方が良いんじゃない?」
『それも既に検証済みだ。そして‘スーパーバグア’は華麗さ崇高さ偉大さカッコよさなど全ての要素が詰った究極の言葉だと俺様は確信した! ‘スーパーバグア’このセリフだけで全ての事象は完結するのだ!! ハァーーハッハッハッ!!』
しかし石榴の企みはシェアトの【スーパーバグア万能論】によって頓挫し、そのままなし崩し的に戦闘が開始されたのだった。
「何かワクワクするねぇ♪ 気合入れてこぉぜ【鬼さんズ】☆」
強敵を前にしても恐怖より歓喜が沸き起こる真琴は同じA班の石榴と狐月 銀子(
gb2552)を鼓舞し、OGREのスロットルを噴かした。
「開幕から派手に行くわよ‥」
そして銀子がオービットミサイル「ロヴィアタル」を、真琴がI−01「パンテオン」を発射。計1000発の小型ミサイルがFBに殺到する。
「奴なら防御なんてせず、ミサイルを‘華麗に’回避するはずです! 注意を!」
周防の言葉に乗せられたのかは分からないが、シェアトは速度を落とす事なくミサイル群に突っ込み、ヨーイングやローリング等のマニューバで1000発のミサイルの間を縫うように飛び、全て避けてしまう。
『ハーハハハッ! この程度で俺様を止められると思ったか!』
しかし第一幕が避けられるのは想定内である。
続けて最後尾のC班の修司がK−02小型ホーミングミサイル250発を発射。
だがコレも囮。
修司が間髪入れず放ったG放電装置で誘爆させ、やや遅れて同班の周防が放つK−02を本命とし、敵の足を止める作戦だ。
しかし放電は小型ミサイルを1、2発潰しただけで他へは誘爆しなかった。
「それなら数で抑え込む!」
だが悠が新たにK−02全弾と、GP−7ミサイルポッドを300発発射。
修司と周防も残りのK−02を発射し、合計1800発の、まるで壁の様なミサイル群がFBに襲い掛かり、爆発。
まるで空が割れたような轟音が響き、目の前が赤、白、黄色の爆発に染まる。
「さぁ出て来い‥次は砲弾を喰らわせてやる」
爆発を抜けてきた所を狙い撃とうと透夜がKA−01試作型エネルギー集積砲を向けた。
しかし
『ハァーーハッハッハッ!! 貴様の望み通り華麗に避けてやったぞ!』
通信機からシェアトに高笑いが響いてきた。
「え?」
「うしろ!」
声が聞こえても慌てる事なく、すぐ索敵した瑞姫が位置を指摘する。
「テレポートか!」
そう、シェアトはK−02が命中しかけた直後にテレポートで後ろに回りこんだのだ。
『次はこちらの番だ!』
FBの先端部が開き、内部の拡散プロトン砲に赤色の光が灯る。
「ヤバっ!」
石榴が咄嗟にラージフレアを周囲にバラ撒き、
「そうはさせないにゃー!」
瑞姫がブーストで機体を旋回させ、ツインブースト/Bも起動してスラスターライフルで砲身を狙い撃つ。
しかしシェアトは機体を傾けて避け、プロトン砲から無数とも思える超々高熱の光線がシャワーの様に照射された。
強力無比な破壊力を秘めたプロトン光が8機のKVに突き刺さり、装甲が一瞬で融解、内部機構が焼かれ、コクピットが激しく振動し、機体各部の機能が次々と死んでゆく。
FBから一番離れていたA班は、瑞姫の警告を受け、ツインブーストを駆使して離脱を図ったため初撃を喰らっただけで有効射程外に逃れる事ができたが、3機とも深いダメージは負っていた。
瑞姫は撃った後すぐに離脱しようとしたが間に合わず、連続的にプロトン光を喰らった機体が耐え切れなくなり爆散した。
他の4機は全弾喰らい、どの機体も装甲があちこち融け落ちて内部機構が剥き出しになり、各部に走ったスパークが小爆発を引き起こす。
どの機体も被害は甚大で、もし今シェアトに再攻撃をされたら全滅しかねない。
だが、
「さあて、オウガ戦隊の機動力見せたろーじゃない♪」
「オウガ戦隊とは上手いね!」
「ははっ、3機で引っ掻き回してやろぉぜ!!」
A班がブーストで旋回してFBに側面に回り込み、まず石榴がラージフレアを撒いてFBの重力波レーダーを撹乱し、次いで銀子が十式高性能長距離バルカンで弾幕を形成しつつUK−10AAMを発射。
『ちっ』
AAMは慣性スライドで避けられてフェザー砲で撃ち落されたが、その隙に真琴がブーストで接近。
真琴に気づいたシェアトがフェザー砲を向けてきたが、
「OGREの機動力見せたらぁっ!!」
その瞬間TB/Aを発動して急上昇。更にスラスターも全力噴射して機体を横滑りさせて射線を外しつつFBの死角に回り込む。
おそらくシェアトには真琴のOGREが不意に眼前から消えたように見えただろう。
真琴は上と横からの強烈なGに歯を喰いしばって耐えつつスロットルを全開まで叩き込んだ。
OGREが跳ねる様に加速してFBに突撃、大きく広げたソードウィングで胴体部を抉った。
「どうだっ!」
『ほぅ‥地球人に慣性制御の真似事のできる奴がいるとはな‥‥面白い!』
シェアトは機首を巡らせて真琴を追った。
「追って来やがったか」
真琴はFBと距離とタイミングを計ってスモーク・ディスチャージャーを噴霧。
「これはオマケだよ」
更に石榴が煙の中にラージフレアも撒き、シェアトの視界とレーダーを眩ませて離脱する。
そうしてA班がシェアトを引き付けている間に他の4人は断線した回路や機構を繋ぎ合せて止まりかけたエンジンや火器管制を回復させ、機体をどうにか戦闘可能状態まで復旧させた。
「サンキュー真琴。反撃開始だ!」
透夜はブーストで機体を旋回させるとKA−01でエネルギー加速された砲弾を放つ。
シェアトは機体をローリングさせて避けたが、続けて修司が対空機関砲「ツングースカ」が弾幕を展開。
FBは加速しつつ機体を上下左右に振って弾幕を潜り抜けるが、そこを周防が対空砲「エニセイ」で狙い撃つ。
「当たれ!」
1発、2発と外れるが、3発目が命中。FBの装甲が砕けて体勢が崩れた。
「今です!」
その隙を逃さず周防と修司で集中砲火を浴びせる。
更に空戦スタビライザーを起動させた悠がブーストで接近し、FBをロックオン。
「次は私とも踊ってもらうぞ。スーパーバグアともあろう者が、ダンスの心得も無いとは言わんだろう?」
トリガーを引き、SESエンハンサーで電荷されたレーザーガン「フィロソフィー」から発射された光が空を裂き、FBの装甲を貫く。
4人の連携攻撃により、FBの装甲の一部が砕け、幾つもの弾痕とレーザー痕が刻まれた。
『まさか俺様のフォウン・バウにここまで傷を負わせられる地球人がいるとはな‥‥いいだろう!! 少しだけ本気で相手をしてやる!! 俺様が本気を出すのは‥‥‥ぇー‥‥ぁー‥‥まぁ結構久しぶりだっ!!』
シェアトが大仰だがあまり締まらないセリフを吐き、
『まずは貴様だ!』
周防のワイバーンに迫る。
修司がすぐにツングースカで弾幕を張るが、FBは慣性制御を駆使した鋭角的な機動で射線を外して避けてゆく。
「速い!?」
先程よりも明らかに機動速度の上がったFBに目を見張った周防は咄嗟にスラスターを全力噴射。
間一髪で衝突を回避したが、FBはワイバーンの背後で急旋回して後ろに付く。
『望み通り速攻で倒してやろう』
FBのフェザー砲から虹色の光が溢れ出し、機体の後方へ流れ広がってゆく。
近くにいた修司からは、まるでFBが虹色のベールに包まれている様にも見えた。
『スー(大仰な技名省略)』
そしてフェザー砲から放たれた光弾が次々と周防のワイバーンに浴びせられ、着弾の度に機体の内部機構が粉砕され、衝撃が周防を襲う。
「これは、装甲が無効化されている!?」
周防はスロットルを全開まで叩き込み、スラスターとマニューバを駆使して回避機動を行ったがフェザー砲の照準は少しも外れない。
やがてエンジンが爆発して機体の後ろ半分が吹き飛び、前半分が地面に墜落していった。
「あれが、敵の無効化攻撃か‥‥」
その光景を注視していた修司は確信した。
「どうやら本気を出すってのはハッタリじゃないみたいだな」
悠がスタビライザーとエンハンサーを起動して残りのGP−7を全弾発射、修司もスナイパーライフルD−02で狙撃するが、FBの動きが速すぎて捉える事ができない。
だが2人が気を引いている間に透夜が上空に上がり、FBの動きを予測してブースト機動で急降下。
「喰らえ!」
しかしシェアトは機体を90度傾けて剣翼を避ける。
「まだ終わりじゃない!」
だが透夜はFBを追い抜くと左右のスラスターを噴射。180度のドリフト急旋回をして対峙しながらKA−01を砲身をFBに向けて発射。放たれた砲弾がFBの翼を撃ち抜く。
「どうだ!」
『く‥やるな。だが詰めが甘い!』
シェアトは180度旋回でスピードが落ちて格好の的になっている透夜のディアブロにフェザー砲を連射。
キャノピーが割り、計器類が砕け、操縦桿が折り、透夜の体も光弾が貫通して血飛沫が舞い、操縦不能になった透夜とディアブロが炎を上げて落ちてゆく。
『お前とはダンスを踊る約束だったな』
シェアトは宙返りすると今度は悠に迫る。
「あぁ、カリが陥落するまで踊っててもらう!」
悠はレーザーで迎撃したが容易に避けられ、弾が切れた直後にシェアトが眼前にまで迫って人型に変形。
『ス(中略)クロス!』
両腕から伸びたビームソードを交差させる様に振るい、アンジェリカの機首を両断。コクピットを切り離された機体はコントロールを失って地面に激突した。
「やっぱハンパなく強ぇな‥‥。だが、行かせねぇ!!」
「そうそう。こっちの機体だってマトモじゃないって見せてやらないとね」
銀子は石榴が撒いたラージフレアに紛れてレーダーを妨害しつつ残っていたオービットミサイルを発射し、真琴と銀子がツインブーストでミサイルを追う様にしてFBに迫る。
「いくぜっ!」
そして真琴が剣翼で突撃すると見せかけて2機とも逆噴射をかけて急制動。シェアトの攻撃のタイミングに揺さぶりをかけて銀子がスラスターライフルを正射。
FBは機首を上げて避けたが、回避した方向を見極めた真琴が急加速で迫り、剣翼を煌かせる。
「喰らいな!」
『甘い!』
しかしFBはビームソードで剣翼を受けてそのまま切断。片翼を失ってバランスを崩した真琴のORGEに組み付いた。
「なに!?」
『フハハハッ! 残念だったな。ゼダ・アーシュや他のジハイドなら翻弄できたかもしれんが、俺様とフォウン・バウにはもう通用せんぞ!』
シェアトは至近距離からフェザー砲を連射。光弾が次々とORGEを貫通してエンジンが火を噴く。
「真琴ちゃんから離れなさい!」
銀子はFBの背後に回りこんでライフルを放つが、FBは180度旋回してOGREで受け止めた。
「なんて事を!」
『ス(中略)クラッシュ!』
そしてOGREを振りかぶって銀子のオウガにぶつけた。
グシャリと破砕音が響き、シェアトは重なり合った2機にフェザー砲を浴びせかけて同時に破壊した。
次に標的となった修司はツングースカで弾幕を張って進攻を止めようとするが、FBは弾の間を縫うように接近してくる。
そして弾が切れた直後、加速して肉薄すると人型に変形した。
(やはりそうきますか)
だが、その攻撃を読んでいた修司はFBの眼前にG放電装置を発射。
『くっ!』
変形中だったFBは避けられず頭部を損傷する。
しかしシェアトは構わず近距離から拡散プロトン砲を発射。
無数の超々高熱光が修司のディアブロに突き刺さる。
修司は咄嗟にブーストを吹かして射程外に離脱するが、
『逃がさん! ス(略)』
飛行形態に戻ったFBが追いすがりフェザー砲を連射。
光弾が次々とエンジンに被弾し、爆発。その爆発は機体の中枢部にまで及び、修司のディアブロはその場で爆散した。
『さて‥‥』
シェアトは攻撃してくる素振りがなかったため後回しにしていた石榴に機首を向けた。
「えぇ〜と‥‥その機体って一体幾つの特殊能力を持ってるの?」
戦っても勝ち目のない石榴は話をして時間を稼ごうとしたが
『‥‥単なる雑魚か』
それで完全に興味をなくしたシェアトは機首をカリに向けて加速する。
「あ、待って!」
石榴は慌てて追いかけたがFBの速度には追いつけず、やがて視界から完全に消えたのだった。