●リプレイ本文
:フェイズ1
『こちら能見・亮平(
gb9492)。状況は?』
篠崎 公司(
ga2413)の元に、別班から連絡が入った。
「こちら篠崎。海域内を哨戒中。まだ目標を発見できていません」
『了解した、斥候を続けてくれ。変わったことがあったらすぐに連絡を。交信終了(オーバー)』
「了解。そちらも気をつけてください。交信終了(オーバー)」
ナイトフォーゲル、RN/SS−001リヴァイアサンのコックピット内にて、篠崎は一息ついた。
作戦の第一段階。
ABCの三班に分かれ、内A斑は海中の斥候として目標の位置を確認。然る後に上空に待機している第B班より爆雷攻撃。
篠崎と同じく、リヴァイアサンに搭乗している和 弥一(
gb9315)とが、この斥候任務についていた。
「まだ、目標は確認されてはいませんか‥‥」
篠崎がそうつぶやいた、次の瞬間。
『こちらリヴァイアサン、和機! 目標を発見した!』
和のリヴァイアサンから、連絡が入ってきた。
『こちらリヴァイアサン、篠崎。目標の位置を確認しました。今から言う位置および深度の海底に、爆雷投下願います』
和の機体から連絡が中継され、B班へと伝達されていく。
「‥‥確認した。二人とも、行くぞ」
F−104バイパーに搭乗している能美は、戦地に赴く直前に、静かにつぶやいた。彼らは待機し続け、そして出動のその時を待っていたのだ。
そして、たった今。その時は来た。A斑の和と篠崎から連絡が入り、三機のナイトフォーゲルは緊急発進。現場へと急行していた。
能見のバイパーを含めたナイトフォーゲル三機は、そのポイントへと飛翔する。
シン・ブラウ・シュッツ(
gb2155)。彼もまた、PM−J8アンジェリカのコックピット内で待ち続けていた。出撃するその時を。
「こちらシン。A斑応答せよ。現在、攻撃地点を確認し、低空で飛行中です」
シンのアンジェリカと並んで飛行しているナイトフォーゲル、KM−S2スピリットゴーストには、D・D(
gc0959)‥‥赤き髪の美しき傭兵が搭乗している。
「こちら、D・D。投下ポイント了解、爆撃に入る。水中班、退避してくれ。交信終了(オーバー)」
『こちら篠崎、了解しました。気をつけて。交信終了(オーバー)』
篠崎らとの連絡を終え、D・Dは目を閉じ‥‥目を見開いた。
が、それとともに。
周辺に、「霧」が発生し始めた。
海中に、雨が降っていた。
爆雷と言う名の、死をもたらす雨。それは、海中を進む命なき存在、自動移動・爆破兵器であるバグアのヘルメットワーム・ジャンクバーサーカーへと降り注ぐ。
一体が、爆雷を受け爆発四散した。それとともに、強烈な衝撃波が周辺へと伝播し、海中を荒れ狂った。
が、その嵐はジャンクバーサーカー‥‥がらくたで構成された狂戦士を減らしていた。それは喜ぶべき事‥‥のはずなのに、なぜか喜べない。
「‥‥どうやら、敵も少しは対処してはいるみたいですね」
思わずシンはつぶやいていた。自分でも驚くほど、悔しさをにじませた口調で。
投下した爆雷の数と、それが敵を撃破した時の爆発の数。
それが、つりあわなかった。明らかに、敵はそれほど爆破できていなかったのだ。
「ちっ! ここまでか!」
D・Dもまた、同じような口調でつぶやく。ファルコンスナイプを用いて投下したため、ある程度の効果はあったようだ。が、それでも十分とはいえない。
だが、この攻撃で全てを倒せるなどとは彼らも考えていない。
第一ラウンドは不発であっても、次がある。第二ラウンドは一本取らんと、彼らは仲間に連絡を入れた。
:フェイズ2
「了解です。迎撃体勢を維持のまま、待機します。交信終了(オーバー)」
熊谷真帆(
ga3826)。黒髪の少女は、ナイトフォーゲルのコックピットの中、外部カメラが写す外の風景を見つめていた。彼女の愛機は、XF−08D改・雷電。
「B斑は爆雷投下を実行しましたが、キリグモが海上に霧を放ち、上空からの攻撃を防いだようです。それにどうやら、広範囲に陣形を広げて誘爆を防いでいるようです」
C班‥‥陸上迎撃班の仲間たちへと、熊谷は言葉をかけた。
「やーれやれだ。やつらも馬鹿じゃあないってこったな」
その一人は、世史元 兄(
gc0520)。愛機はF−108改・ディアブロ。
「ある程度の自己判断能力を有している‥‥のでしょうか? どちらにしても、そんな無差別破壊兵器などを許すわけには参りません」
ナイトフォーゲルLM−01改に乗っているのは、青き瞳のメイドにして、美しきレディ。リュティア・アマリリス(
gc0778)。
三機ともに、枕崎市の海岸にて待機し、海中から現れるだろう撃つべき敵、倒すべきバグアの出現を待ち続けていた。
「ともかく、A班の篠崎さんと和さんの活躍に期待しましょう。もっと、数を減らしてくれればいいのですが」
言葉とともに、熊谷は待った。
海中に待機している、A班二機のリヴァイアサン。爆雷投下が終了し、接近している最中だった。
『篠崎さん、あれを!』
和が指し示した。それは、超遠距離に望遠したカメラアイ越しの、海底の風景。
だが、その海底の地平線。そこを、大量の何かがうごめいている様子が映っていた。それが、一方向へ、即ち陸上へと向かい進むのが見て取れる。
「‥‥思った以上に、数があるようです」
篠崎はそれを見て、静かにつぶやいた。そいつらは互いの機体を密集させず、ある程度間隔を取っていたのだ。
すでに能美らより、爆雷投下完了の連絡を受けていた。が、海上にキリグモが電波障害を発生させる霧を散布し、更に広範囲に散開しているために、爆雷の攻撃は予想よりも効果は無かったとの事だ。
現在は、キリグモの霧の範囲外へと出ている。作戦通り、俺たちは陸上迎撃班に合流している頃。作戦は、次の段階に入っていた。
作戦の第二段階。
海中より、遠距離攻撃で目標を迎撃。
幸いにして、ソナーは正常に作動している。キリグモを起動させていないのか、あるいは一体しかないのか。どちらにしても、水中班二名にとってはありがたい。
「あんな物を、陸に上がらせるわけにはいかないな」
リヴァイアサンのコックピット内で、操縦者が決意も新たにトリガーを握る。
「その通り、上陸する前にやっつけましょう」
篠崎の声にも決意が溢れ、身体に力が染み渡る。
「魚雷‥‥発射!」
引き金を引き、頼もしい発射音とともにリヴァイアサンより放たれたのは、DM5B3重量魚雷。水中をまるで砲弾のごとく突っ切って、狙ったジャンクバーサーカーへと接近していく。
とたんに、強烈な爆発が発生し、海底を衝撃と地響きとが支配した。狙われたジャンクバーサーカーが爆散するとともに、水中を衝撃派が伝播する。
「こっちも、負けてられませんね! 対潜ミサイル‥‥発射!」
R3−O、4機の対潜ミサイルが和のリヴァイアサンから発射された。ソナーも正常に稼動、視界もクリア。この状況では外しもしないし、外れもしない。
強力な対潜ミサイルの攻撃により、数機のジャンクバーサーカーが脚部を破壊された。歩くことが出来ず、ひっくり返って動けない。それを見て、快哉の笑みを和は浮かべた。
しかし、笑みはすぐに引っ込んだ。
数が多く、そして間隔を空けているジャンクバーサーカー。だが、攻撃を受けたそいつらは、二手に分かれたのだ。数機が、和と篠崎のほうへ。そして大半が、そのまま枕崎の海岸へ。
「なっ‥‥!?」
自動追跡する、無人兵器かと思いきや。この行動は‥‥!?
だが、その迷いを数秒で克服した篠崎は、すぐに迎撃態勢を取った。こちらに向ってくる数は、少々多くはあるが倒せないほどではない。それに、こちらへと一直線に進んでくる。ならば、勝ち目はある。
「篠崎さん! やつら、こっちに向ってきますよ!」
「ええ、分っています!」切羽詰った和の声を聞きつつ、返答する篠崎。
代わらず、それらは接近している。海中を歩行によって移動しているため、その動きは鈍重だ。だがそれは、次第に回避が出来なくなる事をも現す。倒しても倒しても、徐々に新手が攻め込んできて、最後には弱点を突かれてそのまま倒される。
そうならないためには、どうするべきか。迎撃しつつ、退却するしかなかろう。
しかし、敵は今度は、水中を漂い始めた。まるでクラゲかなにかのように。水中に浮かび、たゆたうようにして迫り来る。これでは、脚を打ち抜いたところで同じだろう。爆破させるしか、手は無い。
「ならば、とことんまで狙い撃つしかないでしょう! 行きますよ!」
二機のリヴァイアサンは、装備された主兵装、スナイパーライフルD−06の狙いをつけて、撃った!
:フェイズ3
第三段階、地上に待機した第C班が、B班とともに狙撃による遠距離攻撃。
その作戦を、今まさに実行しなければならない事を、彼らは理解した、彼らの目前、その海を、次々にヘルメットワームが迫り、浮かび上がってくる。
リュティアのLM−01が、背負っている責任の大きさを感知しつつまた一機を打ち抜いては破壊していった。
それとともに、熊谷の雷電は手に持ち、構えていた。試作型のブリューナグが火を噴き、次々に爆発が起きては跡形も無く消し飛ぶ。
「戦場の風紀委員真帆ちゃん、ここに見参。特攻は許しません」
実体弾をともなう兵装は、次々と大爆発を起こさせ、そしてそれが起こるたびに派手な水しぶきが立っていった。
「リュティアすまん!何機かそっち側に行った!」
「任せてください!」
ブリューナグが撃ちまくられ、世史元は己の分をフォローされ、やがてはジャンクバーサーカーのような敵が滅ぶ様を何度も何度も見た、というのだ。
C班に負けじと、B班の三名。シン、D・D、能美も負けていなかった。C班とともに、いきなり海中から現れるジャンクバーサーカーに驚きながら、それに攻撃を放ち、再び地獄へと蹴り落としていく。
シンのアンジェリカの持つガドリングが火を噴き、D・DのスピリットゴーストのRP1マシンガンが炎を放つ。そのたびに、ジャンクバーサーカーという名の自爆兵器が、爆発し、爆裂していった。
能美はエミタの力を用い、自身の能力を引き上げていた。更に、その力を用いて可能な限りのヘルメットワームをとらえ、迎撃していく。
彼らの獅子奮迅の活躍により、全てのジャンクバーサーカーが上陸し、地上で爆発する事は無かった。
ただの数機を例外として。
別の方向から、いきなり数機が上陸してきたのだ。そいつらは火線を潜り抜け、なんとかして枕崎への上陸を成功させてしまった。
「私に任せて!」
一番近くにいた、熊谷がそれに対処する。
武装のSESに、己のパワーを伝播させた熊谷は、そのままブリューナクを的確に、勢いよくぶち放った
「ここは‥‥ジャンクバーサーカーの墓場です」
上陸したバーサーカーの爆破とともに、迎撃は完了した。
:フェイズ終了後
「諸君の活躍に、感謝する」
この任務の担当官が、彼らへと礼を述べた。
「だが‥‥この事件、これでは終わりそうに無い様相を見せつつある」
事件解決したわけではない、と。少なくとも、何か含みがあるのだろうと思わせる口調だった。
「このジャンクバーサーカー。これに酷似した機体が、諸君らが枕崎防衛に携わっている間に発見された。別の地点でな」
別の地点で? いったいどういう事なのか。
「わからん。しかし、何かが起こっているような気がしてならない。ともかく‥‥」
彼は一息の後に言った。
「何かあったら、すぐにまた活躍してもらうことになるかと思う。とりあえず、待機していて欲しい」
この事件はこれではすまず、何か新たな事件の引き金になっている。そう思わざるを得ない一同だった。