タイトル:姿無き侵略者マスター:塩田多弾砲

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/24 13:19

●オープニング本文


 某月某日、15:00。
 UPC東アジア軍日本本部所属、別府駐屯地。
 基地の連絡員は偵察部隊からの定時連絡を受信していた。
『別府駐屯地、応答せよ。こちらUPC東アジア軍所属偵察機「オニヤンマ1号」』
「こちら、UPC東アジア軍日本・別府駐屯地。感度良好、どうぞ」
『現在、カルト山周辺を飛行中。未だにバグアらしき基地は見当たらない。引き続き、偵察活動にあたる。どうぞ』
 偵察部隊の、空からの偵察・哨戒活動。
 ここ数日の間、航空部隊は戦々恐々としていた。この周辺を飛行中のUPC航空機は、何者かに撃墜される事が多かったのだ。
 犯人は不明。否、バグア以外にありえないが、狙撃した存在の姿はいまだに判明されず。
 ヘルメットワームの目撃例もあったが、確たる情報は無く、バグア秘密基地も確認されていない。また、レーダーには怪しい反応も確認されていない‥‥時折、誤作動したかのように何かを感知することはある。が、わずかなものだ。
 カルト山周辺は、福岡市から離れてはいるが、戦闘区域から遠く離れているわけではない。まだこの周辺区域はバグアの勢力圏内ではないはずだ。
「こちら別府駐屯地、了解。やつらの隠れ家を見つけたら、すぐにでも教えてくれよ。交信終了」
『「オニヤンマ1号」。了解、まかせておけ。交信終了‥‥』
 次の瞬間、爆発音とともに、それが途切れた。
「どうした! オニヤンマ1号! 応答せよ!」
『メイディ! メイディ! こちら‥‥‥ニヤンマ1号‥‥突如カルト山麓の森‥‥より狙‥‥被弾! 繰り返す‥‥ルト山麓森林内より狙撃され、被弾!!』
 オニヤンマ1号のパイロットは、これを最後に音信不通となった。

 UPC本部はこの報告より、バグア軍による攻撃と認定。正式に捜索・基地の破壊が命ぜられた。かくして、別府基地より編成された捜索特務部隊が編成、戦闘爆撃部隊が出撃した。
オニヤンマ1号のパイロットが命と引き換えに連絡した、狙撃ポイントとおぼしき地点。そして回収されたボイスレコーダー。
 それらから推察された、狙撃ポイント。その付近に到着したとたん。
「隊長! 我が軍の機が破壊されました!」
 まったく別の場所から打ち上げられたミサイルが、爆撃機に直撃し破壊したのだ。
 幸いにも、被害は前世紀に用いていた旧式の爆撃機、および無人制御のロボット戦闘機であったため、人的被害は最小限度で済んだ。が、それにしても尊い人命が失われたのは事実。
 なんとか脱出したパイロット。彼が撮影した「破壊兵器」の映像。それはまぎれもなく、地球製のミサイルであった。それが、爆撃機やオニヤンマ1号を破壊したのだ。

 別府基地・科学分析班による報告では、用いられた兵器はミサイル、それも人類側から奪取された兵器を改修したものに相違ない‥‥とのこと。しかし、残骸の中に、わずかではあるがバグアのヘルメットワームに用いられているのと同じ、特殊金属が含まれていた。

 空中からの接近が困難と知り、地上から偵察歩兵部隊が接近する事に。
「バグアだ!」
 カルト山麓、森林内。偵察歩兵部隊は、そこでバグアの一団を発見した。
 木々が倒され、広場のようになっている場所。そこに憎むべきバグア人の姿が認められた。木々に偽装した、巨大な何か‥‥おそらくは、移動砲台か大型ミサイル戦車。彼らはその周辺に歩哨に立ち、警戒態勢に入っていた。晴天下のこの状況ならば、肉眼では判別できる。が、夜間や遠目からでは、ここに何があるのかを確認するのは困難だろう。
「間違いない、やつらだ。こんなところに設営していたとはな‥‥」
 おそらくは、福岡市からこの周辺にまで侵入していたのだろう。UPCのレーダー網をかいくぐり、基地を設立するとは。
 ふと、バグアたちは何かに気づいたかのように動き始めた。上空を見ると、UPCの無人偵察機が接近している。
「隊長、攻撃しますか?」
「待て、やつらが何を企んでいるのか。それを見極めてからだ」
 部隊が見守る中、バグア人たちはアリのように巨大マシンに取り付き、動かした。
 ミサイルが発射される音が響いた。そして放たれたミサイルは、その姿を現し、無人偵察機へと命中、爆散させた。

 本部に帰還した部隊だが、別働隊は更に重要な情報を携えていた。
 カルト山の山腹に穿たれた、大きな穴。そこへ、ヘルメットワームが一機飛来したというのだ。山腹に偶然そのまま入り込むところを発見し、部隊はそれに倣って内部へと侵入した。
 それによると、人工的に掘られただろう洞窟内にはバグア人の兵士が数多く駐留し、警備に当たっているとの事。そして、数機のヘルメットワームが着陸して、移動作戦司令室が内部に展開していると。
 洞窟の入り口には立体映像を展開し、発射口を隠し、山肌そのもののようにカモフラージュされていた。おそらくは、光学迷彩装置を応用したものであろう。

 今までに判明した事実をまとめると、以下の通りに。
 敵は、人類が破棄または奪取した兵器を改修し、それにバグアの技術によって新機能を持たせ、運用テストを行っている。
 それは、強力なレーダー妨害機能を兼ね備えた、光学迷彩装置。現時点で考えられるのは、バグアはそれを地球のミサイル発射基地に用いようと、カルト山に設置。そして、強力な電波妨害装置を搭載したミサイル発射装置を、森林内に偽装し配備。
 オニヤンマ1号他を迎撃したのは、これらに相違あるまい。人類側の兵器をテストに用いているのは、そのテスト用装置が奪われた時に、できるだけテクノロジーを回収されて判明されないための措置であろう。ここから指令を下し、カルト山周辺に配備したミサイル発射装置を動かして、接近する航空機を迎撃しているのだ。
 不幸中の幸いなのは、光学迷彩装置は、洞窟入り口を覆い隠すほどの巨大なものであったこと。ミサイルそのものを透明にさせる事まではできないということだ。
 だが、発射装置は移動可能であり、その位置も、全部で何機存在するのかも定かではない。姿無き発射装置を全て別個に攻撃したところで、カルト山本部に連絡が入り、結果バグアどもは総攻撃をしかけるか、退却するかのどちらかだ。
 現時点で考えうる作戦としては、工作員がカルト山内秘密基地に潜入。内部で展開している発射装置の位置と総数を確認した後に、その情報をUPC別府基地へと送信。それを元に、UPC基地より緊急発進した攻撃部隊が、ロングレンジよりミサイル発射装置、およびカルト山基地へと攻撃。これを殲滅する。
 すでにカルト山周辺のバグア人を殲滅しないことには、非戦闘区域の一般市民にも犠牲が出ることは必至。早急に事にあたらねば。

「早急に、能力者たちを招集せよ。姿無き侵略者たちへ、挑戦する者たちを集めるのだ!」

●参加者一覧

ファファル(ga0729
21歳・♀・SN
白鴉(ga1240
16歳・♂・FT
真壁健二(ga1786
32歳・♂・GP
篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
オルランド・イブラヒム(ga2438
34歳・♂・JG
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
崔 南斗(ga4407
36歳・♂・JG
ゴルディノス・カローネ(ga5018
42歳・♂・SN

●リプレイ本文

「よし、もう一度作戦内容を確認する」
 カルト山を臨み、ファファル(ga0729)が皆へと目を向け、声をかけた。
 既に基地より、車両や地図、各種機材・装備は借りている。なんでも、ここ数日のバグア軍との小競り合いで、基地のほうでもかなり消耗してしまっているらしい。借りたこれらの機材も、次の補給が来るまでは貴重なものであるため、大切に使って欲しいと念を押されていた。
 彼女たちを乗せて国道210号線を走るのは、別府基地に配備されている軍用の大型ジープ。旧式ではあるが安定し、汎用性のある頑丈な車であった。その後部にて、ファファルは仲間たちとともに最後の打ち合わせを行っていた。
「作戦行動において、チームを二つに分ける。A班は篠崎 公司(ga2413)、宗太郎=シルエイト(ga4261)、ゴルディノス・カローネ(ga5018)、それに私。B班は、白鴉(ga1240)、真壁健二(ga1786)、オルランド・イブラヒム(ga2438)、崔 南斗(ga4407)。
 各自内部に侵入し、班に別れ行動。基地内では打ち合わせどおりにサインや手信号で、会話は極力控える。A班長は私が、B班長はオルランドが担当。
 情報収集を優先、戦闘、及び無線連絡は極力回避。情報奪取後、互いに無線をいれ、基地を脱出し、UPCに連絡。安全圏へと離脱する。
 以上、何か質問は?」
「ひとつだけ」挙手した宗太郎は、淡々とした口調で質問した。
「先生、バナナはおやつに含まれますか?」

「現時刻、17:00。ミッション・スタート」
 魔女すら凍えるかのような印象を与える、冷静にして冷徹なファファルの声とともに、任務開始の幕があがった。
 ジープは、10km後ろ、国道210号線で降ろしてもらった。撤退時に備え、近くにて待機はしてもらってはいる。が、それがかなわぬ可能性も充分にある。そのような状況にならぬようにと、篠崎はひそかに願った。
 八名の戦士たちが進軍するその先には、緑がしたたる森林が立ちはだかっている。が、彼らにとってはそんなものは障害にはならない。このミッションが失敗した暁には、UPCが、ひいては人類がこうむる被害はどのようなものになるか。
「!!」
 彼はいきなり、先行していた白鴉の肩を引いた。
「うわっ! な、なんすか‥‥」
 篠崎は抗議する白鴉へ、指差す事で返答した。
 そこには、旧式な赤外線探知装置があった。それは作動しており、皆はまさにそれに引っかかる直前だったのだ。
「回避しましょう。左からならば抜けられます」
 周囲を分析し、篠崎はルートを指差した。

 鬼がひそむ、地獄への顎。
 基地入り口の様子は、まさにそれ。まばらではあるが、歩哨に立っているバグア人どもの姿も見える。だが、あまり人数を置いていない様子から、どうやら彼らはかなり安心しきっている様子だ。それが、こちらにとって有利に働いてくれればいいのだが。
 そう考えながら、オルランドは目指す先‥‥小さな坑道への入り口をめざした。
 バグアが二人、歩哨に立っているが、彼らは退屈しきっている様子で、なにやら話し合い、下劣さを感じさせる笑い声をあげていた。地球人類をネタにしたジョークでも言い合っているのか。
 あそこは、なんとしてでも侵入しなければならない入り口。止むを得まい。
「(交戦を許可。一撃で倒せ)」ファファルは、声に出さずに指示を出した。
 藪に隠れつつ、ゴルディノスはサブレッサーを取り付けたスコーピオンを向けた。ファファル、そして崔と、視線のみで会話する。
 いきなり飛び出し、再び藪の中に消える崔。彼の姿を見て、二人のバグア人たちが接近してきた。ゴルディノスのスコーピオンが、消音機により押えられた銃声を発しつつも弾丸を放つ。瞬く間に血祭りにあげられたバグア人。
 もう一人のバグア人は、その攻撃をよけたものの、後ろから宗太郎の接近を許してしまっていた。宗太郎の刃が、バグア人の絶望とともにきらめき、その命を奪い去った。

『行くぞ!』
 バグア人の歩哨、ないしはその死体を隠し終えた後、ファファルのA班、オルランドのB班は、侵入を開始した。
 篠崎、宗太郎、ゴルディノスのA班は、ファファルとともに鉱山入り口から内部へ。白鴉、真壁、崔のB班は、オルランドとともに別の入り口からやはり内部へと入り込んだ。
 ファファルら四人は、坑道から基地内を進んでいた。鉱山の坑道、ならびにその内部図は頭の中に叩き込んである。坑道は天然の洞窟にもつながっており、その内部をバグア人は基地へと改装し用いている。
 自分がバグアならば、どこにコンピューターを置くか。冷静沈着な彼女の頭脳が、計算しつつ基地内へと進んでいく。

 同じく、オルランドたちB班もまた、別の地点から内部へと侵入に成功していた。
「はは‥‥なんだか、生きた心地がしないね」先行する白鴉が、小声で思わずつぶやく。
 オルランドと真壁は覚醒し、特殊能力をいつでも使えるようにと控えていた。オルランドは瞳が赤くなり、真壁は横幅がさらに広がっていた。しんがりは、崔。彼は二人の覚醒が解けた時のための、覚醒はしていなかった。ひどくタバコが吸いたかったが、作戦任務中である事を思い出し、思い直す。
「はやいところ、終わらせて思いっきり一服したいもんだ」
 タバコへの欲求を押さえ込み、彼は周囲を見回した。やがて彼の視線が、「コンピューター室」の案内板を見つけた。

「(落ち着け‥‥焦れば判断力が曇る)」
 覚醒したゴルディノスたちは、バグア人の追及の目を逃れんとしていた。
 基地内を、深く静かに侵攻中、バグアの警備員が立てる足跡を聞き取った。それを知ったA班は、すぐに手近な部屋の中へと入り込み、やり過ごそうと試みた。
 幸い、内部はガラクタ置き場に使われているようで、隠れる場所には困らなかった。屹立する壊れた機械類と、鉄くずになった武器が、四人の地球人の存在を隠す。
 が、二人のバグア人はそれらをかきわけ、自分たちが聞いた物音の正体を知ろうとしていた。
「(止むをえん‥‥戦闘行動に‥‥)」移ろうとしたファファルだが、一秒早く彼らはあきらめ、引き返していった。
 緊張をといたゴルディノスに、安堵したため息をつく篠崎と宗太郎。(「まったく、ひやひやします」)と、宗太郎は心の中でつぶやいた。
「(? あれを‥‥)」
 ふと、篠崎はあるものをみつけ、それにあごをやった。
 そこには、開いた通風孔があった。ちょうど人ひとりが、かがめば充分に通り抜けられそうな通路。それが黒々と、口をあけている。
 どうしたものか‥‥。ファファルは思案したが、すぐにその考えを改めねばならなくなった。
 外に、再び音が聞こえてきたのだ。それは先刻の兵士が、新手を連れて戻ってきたのか。あるいは、別の兵士たちが、気配をかぎつけ調べにやってきたのか。
 こうなったら、見つからないために行う事はひとつ。迅速に、全員が通風孔へと潜り込んでいった。

「くそっ!」
 思わず、崔は言葉に出して毒づいた。
「コンピューター室」は、確かにかつては中にコンピューターが入れられて、稼働していたことだろう。実際そこは、鉱山内部の自動掘削機をコントロールするための施設であった。
 しかし今は、そこにはPCなど一台たりとも置いてはいない。おそらくは、閉山する際に関係者が撤去したのだろう。替わりに置いてあったのは、各種の檻と、中に入っている奇怪な動物‥‥キメラ。まちがいなく、ここはキメラの置き場所として用いられている部屋だ。
 だが、そのうちの大き目の折が、掛け金が外れて内部が空になっているのが発見された。
 獣臭と、そして近くに転がっているものから、まず間違いなく中には何かがいたにちがいない。
「ひっ‥‥!」白鴉は、転がっているものの異様さに、おもわず息を呑んだ。
 科学者か作業員らしきバグア人の死体が、そこには転がっていた。それは喉が食い破られていた。
 そして、部屋の隅から、ひときわ大きい何かの足音が徐々に近づいてきた。

 通風孔から降りた場所。
(「災い転じて、福となす、ですね」)
 篠崎は思った。そこは、地球製のコンピューターが何台も置かれた、PCルームであったのだ。
 バグアのテクノロジーが使われていないのは、意外であった。いや、ここから地球人のふりをして、地球の情報網に潜り込むことはたやすい。おろさくは、そういう事をも予定に入っているに違いなかろう。
「(すぐに取り掛かれ)」
 ファファルが手振りで指示を出し、三人はすぐに端末に取り付いた。
 この中に、探しているものがあればよいのだが。ファファルも自分でPCの端末に取り付きつつ、捜し求めている情報を検索し始めた。

 オルランドは白鴉と、崔は真壁とともに、背中合わせになって襲撃に備えた。同時に、積まれた檻の陰より、何かの気配が漂ってくる。
 全ての方向に注意を向け、全ての方向からの音を聞く四人。
 そして、出し抜けにそれが襲ってきた。
「これは‥‥犬!?」
 真壁の考えていた事は、半分当たっていた。犬ではなかったが、犬を連想させる姿の怪物がそこにはいたのだ。
「コボルト‥‥!」
 オルランドは、それを見てふとつぶやいた。まさに、鉱山の中に潜む邪悪な妖精・コボルトを、それは連想させた。
 全体は、犬と言ってさしつかえない。しかし、犬にしか見えないそれは、犬を必要以上に歪め、犬で無くしたものに換えてしまったようにしか見えないからだ。
 全体のシルエットと体つき、姿は、犬に他ならない。が、そいつの全身には、赤銅色のうろこにおおわれており、体毛は無かった。
 らんらんと光る目は、まるでホオズキのように赤く怪しく輝いている。
「コボルト」は犬のそれをさらにおぞましくしたような鳴き声で、吼え、威嚇すると‥‥襲いかかってきた。

 彼らは、パニックに陥った。怪物に、キメラに出会うと予想はしていたが、実物を目にするとやはり混乱する。
 そして、2秒でパニックから立ち直ると、もう1秒かけて戦闘準備を整えた。
 最初に戦闘を開始したのは、崔。銀の髪、青き右の瞳、そして黒き肌となっていた彼は、キメラの攻撃に先んじ、携えていた弓より矢を放った。
 活性化したエミタが発したエネルギーがこめられた矢が放たれ、コボルトの前肢へと命中。そいつに確実にして痛恨のダメージを与えた。
 それを見て、真壁も行動に出た。
「!」瞬天速にて、一気にコボルトへと接近した彼。間合いを詰めた次の瞬間、エミタが発するエネルギーがこめられた両手のファングが、コボルトの胸を深く切り裂いていた。

『‥‥こちらA班 目標物確保。急ぎ撤退しろ』
「‥‥こちらB班、了解」
 キメラとの戦闘を終えた直後。ファファルからの連絡が入った。
 その場にいた四人に、その言葉は伝わり、そしてしかるべく彼らは行動に移った。

 カルト山・外部。森林地帯。
「‥‥来たか」
 オルランドたちB班の姿を認め、ファファルは安堵を感じさせる口調でつぶやいた。
「遅くなった。そちらの守備は?」
「上々だ、奴らには気づかれていない。奴らの移動砲台‥‥かなりの数と場所に展開していたが‥‥このデータを送れば、もう心配は要らないだろう」
 移動砲台の数と、その展開地点。ファファルたちはそのデータを入手するのに成功した。
「任務完了、これより帰還する」

 再び、10kmの道のりを徒歩で進んだ一行。
 待機していたジープに拾われると同時に、ファファルたちは得たデータを手渡した。
 同行していた通信兵により、データは本部へ送られ、そして数分後。カルト山周辺地域の移動砲台、ならびにカルト山へと、多量のミサイルが降り注いだ。
 砲台は破壊、そしてカルト山そのものも崩落し、バグア前線基地は壊滅した。

「ふ‥‥いい湯だ」
 温泉につかるファファルの顔に、久方ぶりの笑みが浮かんでいた。作戦成功の褒賞として、別府温泉に入れる事になったのだ。
 他のメンバーも、湯につかり、それぞれ楽しんでいた。
「一度試してみたかったが、なるほど、これが温泉というものか」湯船に浮かび、ゴルディノスは満足げに堪能していた。
「ああ、学生時代に旅行して以来だが、やはり良いものは良いな」崔もまた、リラックスした表情を浮かべている。
「あー、寒い日に温泉‥‥極楽です」宗太郎もまた、湯を堪能。
「いやほんと、命が延びる気分ですよね。任務成功の後ですから、なおの事格別です」白鴉はそれに相槌を打ち、はしゃいでいた。
 まだこれから、彼らは多くの戦いを行っていく事だろう。しかし、それに対する気力がみなぎり、充実していくのを、全員は感じていた。
 これは、一時の急速にすぎない。しかし、明日への気力を充分に満たす事はできた。
 バグアの手から、地球を取り戻すため。皆はその気持ちを新たにするのであった。