タイトル:獣は暗闇からマスター:塩田多弾砲

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/05 23:12

●オープニング本文


 熊本県球磨郡、湯前町。
 熊本市に近いため、ここは日本・九州エリアでも安心して生活できる場所のひとつ。
 しかし、バグアが存在する限り「安心」などという概念は無い事を、町民は知った。

 湯前町からほど近い地点。そこにバグアの存在が確認され、果たしてそこにはキメラが数体確認された。事態を確認したUPC正規軍は出撃し、目標と交戦、それを殲滅させた。
 死体を確認したところ、それは間違いなくバグアのキメラだった。この事件は、これで終了。その時だれもがそう思った。
 が、一ヶ月後。湯前町にて奇妙な失踪事件が発生し始めたのだ。

 サラリーマン、主婦、学生。
 彼らは、何の関係も関連も、共通点すらなかった。そんな者たちが、いつの間にか行方不明に。
 そして、ある警官も。彼もまた、自分が連続失踪事件の関係者に、それも被害者になるなどと思ってもいなかった。

 夜間パトロールが強化され、雛山巡査は、同僚の大谷とともに今日も人気の無い場所を回っていた。
「なあ、そろそろ一休みしようぜ」大谷が提案してきた。
「ああ、いいな。そうしよう」夕方から、ずっとパトロールしていたのだ。じきに真夜中になる。一休みするのも悪くは無かろう。
 ふと、何かの気配を感じ取り、雛山はそちらへと懐中電灯を向けた。
 何かがいる、何かが闇の中に潜んでいる。それは人間ではない、獣めいたそいつの吐息と足音が聞こえる。
 そこは、公園内を流れる川、ないしは下水道の口が開いている場所。その獣は、下水道から出てきたに相違あるまい。前方10m程度の場所にいるが、足音からしてこちらへと接近しているようだった。
 拳銃を抜いた雛山と大谷は、注意深く狙いをつけつつ、懐中電灯をそれに向けた。ひょっとしたら、バグアか。あいつらのキメラか、あるいは宇宙から持ち込んだ怪物か。
 懐中電灯の光に照らし出された「そいつ」。それは、確かに人間ではなかった。牙と爪を備え、四足で歩くそれは、人間とはまったく異なる存在だった。
 そいつを見た大谷は、安堵した。
「なあんだ、ワン公か。ほら、おいでおいで」
 鼻を鳴らし、尻尾を振りつつ、野良犬は二人の警官に近づいてきた。どこかから漁ってきたのか、そいつは口に白っぽい何かをくわえている。
 雛山もまた安堵したが、次の瞬間に凍りついた。頭をなでてやろうと近づいた大谷もまた、犬に対し戦慄した。
 犬は、何も変わったところのない、ごく普通の野良犬。しかしそれがくわえていたのは、まぎれもない人間の手首だった。

 犬がくわえてきた左手首には、行方不明になったサラリーマンの妻と同じ結婚指輪が薬指にはまっていた。
 夜が明けてすぐ、雛山と大谷は下水道内の捜索隊に加わった。犬は下水道内に入り込み、どこかで手首を手に入れて外に出てきた。下水道の「どこ」からか、それを探す事が急務。
 万が一にとUPCの兵士も同行し、下水道内部の探索が開始された。
 警官四人に、兵士が一人の五人チーム。それが五チームあるのだ。総勢二十五人。何かを見つけるには十分のはず。
 やがて、捜索開始から二時間。チーム4から連絡が入った。
『人間の死体を発見した』という連絡の直後、悲鳴が響き、連絡が途絶えた。チーム3とチーム2が急行したが、彼らも同様に、悲鳴とともに連絡が途絶。
「こちらチーム1、雛山。大谷、応答しろ」
「こちらチーム5、大谷。そっちは大丈夫か?」
「ああ。そっちは?」
「下水道の臭さで死にそうな事以外は、大丈夫だ。それよりも‥‥」
「分かってる、賭けてもいいが、きっと犯人と遭遇したに違いない!」

 賭けは、当たった。
 途中で合流したチーム1と5は、チーム2と3が連絡した、チーム4の連絡途絶地点へと到着した。
 そこには、漂っていた。強い悪臭が。下水のそれのみならず、漂う別の悪臭。鮮血の匂い、死体が腐りゆく腐敗臭。それらが混ざったそれは、まさに死の匂い、地獄の匂いに他ならない。
 そこは、下水道の中継地点。本道に支道がいくつか別れ、ちょっと広くなっている。その一角に何かが積み上げられていた。
 ライトを当てた雛山は、最初にそれが下水道のゴミか何かと思った。が、すぐにそれは間違いだと悟った。普通のゴミには、人間の手足が突き出ていたりはしない。乱雑に積み上げられているものが、人間の死体、もしくはその成れの果てである事を理解するのにさほど時間はかからなかった。
 ライトに浮かび上がったのは極僅かな光景だが、雛山はそれに感謝した。もしもここの光景が全て光の下にさらけ出ていたら、おそらく一生消えない悪夢を刻み込まれただろう。いや、既に刻まれつづけている。
「危険です、下がって!」
 二人のUPC正規兵が、軍用銃を手に前に進み出る。
何かが銃口の先にいる。間違い無い。獣めいた吐息と気配、動き回る何かの足音。
 近くを何かが走り回っている。そいつは、壁や天井をも足場にしてすばやく跳躍し‥‥新たな獲物と認識した雛山らへと襲撃した。
 発砲した兵士だが、次の瞬間。雛山は見た。彼らの喉が切り裂かれ、大量の血潮がほとばしるのを。そして、その数秒後。チーム1とチーム5もまた、仲間たちの後を追った。
 雛山もまた拳銃を構えたが、その構えた腕ごと引き裂かれたのを知った。

「雛山巡査は救援を呼んだが、それが最後の行動になった。救助隊が急行したが、その時には既に全員が殺されていたのだ。チームの機材に残されていた記録映像。そこから、この事件が発覚したわけだ」
 UPC本部にて、司令官が君たちに状況を説明する。殺された五人の兵士は、彼の部下だったらしい。言葉の端々に無念さが感じられた。
「間違いなく、バグアのキメラ。それが地下の下水道に潜んでいる。残っていた死体から、こいつが行方不明の人間を捕らえ、殺して食らっていた犯人だと判明した。映像は暗すぎて、そいつがどういう姿をしているかははっきりしない。しかし部分的に写っていたところから、そいつが手と足らしいものを持っているのは間違いなさそうだ」
 君たちの前には、編集済みの、件の怪物と思われる何かを移した映像を流していた。暗くてほとんどわからない、カメラワークも安定していないために何が移っているか定かではないが、確かに言うとおり人間、または類人猿めいた手足を持ってはいるようだ。
 が、その動きは非常にすばやく、カメラは追いきれていない。写したと思ったら、すでにそいつはカメラの死角へと逃げてしまっていた。
「パニックを防ぐため、町民には『ガス漏れの調査』という名目で避難させている最中だ。ここでやつを逃がしたら、他の町で同じ事をするだろう。死体の中には、行方不明になった者以外にも、未確認の被害者が多く確認された。君たちに頼みたい。湯前町の下水道内へと潜入し、こいつを殺してくれ」

●参加者一覧

漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
斑鳩・八雲(ga8672
19歳・♂・AA

●リプレイ本文

 そこは、悪臭を放っていた。
 まるで何かの生き物が、だらしなく口を開けているかのような、そんな錯覚を見る者に覚えさせる。汚水が涎の様に垂れ、漂う蒸気から、ひどくいやなにおいを周辺へとふりまいていた。
「まいったね、こんなとこに入り込まなきゃあならないとは」おどけた口調で、周防 誠(ga7131)は感想を述べた。
 彼の言葉に、他の四人も同感だった。
「仕方ないだろう。文句を言ったところで、バグアが聞いてくれるわけでもあるまい」
 下水道の出入り口へ、メスのように鋭い視線を向けつつ、南雲 莞爾(ga4272)は周防に言った。あの中に、討つべき怪物、殺すべき殺し屋が潜んでいる。それを思うと、彼の四肢には力がみなぎり、戦闘するための準備が整うかのよう。携えた月詠の刃が怪物の命を切り裂くその時は、じきに訪れるだろう。
「言われた機材は、こちらに用意しました」
 警察とUPCの一般作業員が、彼らに言われて用意したものを脇へと置いた。漸 王零(ga2930)はそれらをざっと調べたが、どうやら問題は無さそうだと判断した。
「ご苦労でした。あとは我々にまかせてもらいます」
 機材の中から、ワイヤーナイフ‥‥一定の長さのワイヤーの両端に、ナイフを取り付けたもの‥‥を手に取りつつ、終夜・無月(ga3084)は満足そうにうなずく。
「さて、それじゃあ参りましょうか。この悪臭の中に入り込んで、わざわざ臭くなるのもまた乙なものかと」機材の中から防臭マスクを取り出した斑鳩・八雲(ga8672)は、にこやかな口調を崩すことなく、それを口へと付けた。

 マスク越しにも、悪臭が漂い、鼻腔を侵食していくかのよう。このマスクは機能しているが、それでも完全に臭いを遮断できてはいない。そして目の前に広がる下水道内の闇は、小心な者ならば即座に回れ右をさせて、逃げ帰らせるに足る恐怖の臭いをもかもしだしている。
 しかし恐怖の臭いは、五人の能力者にとっては何の障害にもならない。たとえ今回のキメラ以上の怪物が、十匹、否、百匹、闇の中に隠れていたとしても、彼らは恐怖など感じないだろう。彼らの有する豪胆さの前には、闇は進行の障害、臭いは不快な要素に過ぎず、任務を遂行するにおける邪魔者に過ぎない。そんなものに恐怖など感じない。感じる必要も無い。
 闇夜の吸血鬼に対抗するかのごとく、彼らは五名で十字の列を組んで進んでいた。
 周防を中心に、前衛を受け持つは王零。彼の手には名刀・国士無双とショットガンが握られている。ショットガンの内部には、蛍光ペイント弾。それが暗闇の中で、怪物に目印をつけてやれればいいのだが。
 その周防は、ドローム製SMGを手に、ゴーグル越しに闇の中を見据えている。
 周防の左右には、それぞれ南雲と斑鳩。
 南雲の武器は、片刃の直刀「月詠」と小銃「ブラッディーローズ」。ジャケットとヘル メットなどで、防備も万全。だが、それでも注意は怠らない。
 斑鳩もそれは同様だった。防臭マスクを付けた彼の顔には、目を守る防塵ゴーグルと頭部を守るヘルメット。ジャケットが彼の体を包んで守っている。
 武装は、特殊拳銃、真・デヴァステイターと刀。これらをいつでも使えるように注意しつつ、歩を進めていた。
 しんがりに終夜。彼も南雲同様に「月詠」を手にしている。もうひとつ携えているのは、大ぶりな特殊拳銃、フォルトゥナ・マヨールー。装弾数は少ないが、その分威力は凄まじい。その威力が実戦の時に役立てば良いが。
 終夜は、申請し支給された肉‥‥精肉店から提供された、内臓や廃棄するクズ肉を、少しづつ撒いていた。撒きつつ、先へと進む。
 地図は自分の手には無いが、すでに頭の中に内容は叩き込んである。それに、周防が有しているため、詳細の確認は彼に任せよう。
 皆が、支給されたランタンや懐中電灯などを持ち、証明を確保していた。移動中に敵が襲い掛かってきた時。それに対処できるようにと、彼らは細心の注意とともに、大胆にも闇を切り開いていく。
 だが、遠くの闇の中。
 その光に惹かれたかのように、何かが動き出した。それは光、ないしは光を持つ者、撒かれている肉片を求め、長い手足を伸ばして歩み始めた。

 進軍し、30分ほど。
 何かが、彼らの前に現れた。
「!」
 驚愕とともに、王零は目の前に現れた影に、ペイント弾を放った。
「どうした?」
「いや‥‥当てたと思うが‥‥」
 全員が、そこに何かを「見た」。前方の闇の中に、何かが存在したのを「見た」。が、今は何も無い。気配も消えた。
 あるのは、ペイント弾を撃ち込んだ「痕跡」のみ。王零は確かにそこに何物かの気配を感じ取り、ペイント弾を撃ち込んだのだ。
 後ろの湿った壁には、当たり損なったペイント弾のペイントが付着している。
「‥‥外したか‥‥いや‥‥」
 何かには、当てた。それが証拠に、下水道の奥、手持ちの光が届かない場所へと、ペイント弾の蛍光塗料が続いている。闇の奥の奥に、蛍光塗料を付けた「何か」が動き、消えていくのを彼は見た。

中継点にたどり着いた五人。そこは、以前に訪れた調査隊の手により、遺体は回収されていた。
 しかしそれでも、漂う強い腐敗臭が残る。それは、マスク越しにも十分伝わってくるほどの強烈さ。
 五人の勇士たちは、それに気分を悪くした。そして、五秒で立ち直り、十秒ですべきことをせんと活動を開始した。
「みんな、わかってるか?」
「ああ、まかせてくれ」周防の言葉に、王零が請合った。ランタンと懐中電灯が投げかけている光のみが、この周辺を照らしている。が、彼の言葉に周防は頼もしさを感じていた。
 終夜が、申請した機材のなかより、ワイヤーナイフを手に取った。
ワイヤーの両端に、ナイフをとりつけたもの。この切っ先を、出入り口周辺部に突き刺して、出入りができる程度にワイヤーを張る。そして目標がここにきたら、残りのワイヤーナイフで完全に出入りできないようにする。
 それでここからの逃走は不可能になるか、そうでなくともかなり動きが阻害されるはずだ。少なくとも、逃げ道をふさぐ事はできる。
 終夜がそれを確認している間、他の四人は各々で迎え撃つ箇所を確認して、それぞれに散開する。
「それなりに、場所はあるな。ならば‥‥」
「ここをやつの墓場にする事は、十分可能じゃあないかな。にしても、この臭いと汚さにはまいったね」
 王零の言葉に、周防が軽い口調で答えた。確かに周防の言うとおり、この腐臭と悪臭がないまぜになった臭いには、気が狂いそうだ。マスクをしてこれならば、この悪臭がいかにすさまじいものかが容易に想像できる。それを確かめたいとは思わないが。
 懐中電灯を照らすと、ぬるぬるした壁には梯子があり、そこから続いてさらなる上にも下水口があった。あそこもふさいだ方がよかろう。
 が、どうやらなんとかこの場所で戦う事はできそうだ。パイプの影や、壁のくぼみなど、各々が壁を背にして、どこの出入り口から出てきても対処できるようにと待機状態になった。
 あとは、怪物がここに来てくれるかが問題。
 探し出す戦いから、待ち続ける戦いへと切り替わった。それとともに彼らは、長い時間を下水道内で過ごし始めた。

 ランタンの明かりのみが、周囲に光を投げかけている。一時間ほど経ったかと思い時計を見ると、ここに待機してから十五分ほどしか経っていない。五人は、ただひたすら待った。
 終夜もまた、作業を終えていた。後は待つのみ。しかし、待機が終わったその時には、怪物の命も終わる時。
 失った両親と妹の事を、あえてここで思い出した。そして、悲しみと怒りの感情を思い出す。その感情が、新たな力を、バグアとバグアが産み落とした怪物を討つ力を練り出すために。
「! ‥‥やつめ、来たようだな‥‥」
 ランタンの明かりを持った南雲が、何かに気づいたように言った。それと同時に、ランタンの明かりを絞る。
 暗闇に、ほのかに漂うは薄明かり、そして中継点の中央に盛られた腐りかけの生肉の山。
 聞こえてくるのは静寂、‥‥いや、そのなかに、わずかではあるが、水溜りを踏むような、びしゃびしゃという音が。
 かすかに響くそれは、次第次第に大きくなる。あきらかに、音の主が接近してくるのがわかる。
 闇の中から、「それ」が顔を出した。
「!」
 思わず声を上げそうになった一行だが、それを寸前で飲み込み、息を潜める。
 水音とともに、それが現れた。
 最初に見えたのは、ペイント弾の蛍光塗料によって汚れた、鋭い爪。
 突き出した顔は、悪意にゆがんだ悪夢のそれ。歪ませた誰かによる、何かの悪意ある冗談の産物であるかのよう。
 ひょろ長い手足は筋張っており、たくましさは感じさせない。が、そいつの秘めた怪力は侮るべきものでないことを、この場にいる五人は理解していた。そして、そいつは怪力に加え、電光石火の素早さをも持つ事も。
 そいつは、光も暖かさも、生命そのものすら憎むように、バグアが作り出した怪物の一体。そいつの名は「オンコット」。
 そいつは、散乱していた生肉の欠片を拾っては、薄汚い口へと放り込んでいた。そして、目前に捜し求めていたものを、ふんだんな腐肉を発見。それをさらにいぎたなく食らおうと、飛びつくようにして向かっていった。
 が、すぐにオンコットは飛び上がり、天井へと張り付く。それに一瞬遅れ、オンコットがいた場所への銃撃掃射が、肉へと行われた。
「ちっ! やはり噂にたがわず、早いです!」
 覚醒した斑鳩がうめいた。すでに彼の左のひじから先が、うっすらとした光に包まれているのを他の連中は見た。
 他の者たちも、皆が覚醒を完了していた。天井へと逃げた怪物を追い、そのまま、そいつは消えていったという怪物の話。神社内では、そういった白紙の状態に引き戻された怪物がいる。
 右目を銀色にした周防、および南雲とは、このこしゃくな怪物へと弾丸をぶち込まんと、銃を向け弾丸を放った。が、それでもそいつは軽やかに 攻撃をかわしつつあった。
 が、金色の瞳と化した終夜と、体内から黒と銀の闇を漂わせている王零。覚醒した二人は、オンコットへと更なる一撃を食らわせた。
 接近し、月詠の刃を食い込ませた終夜。彼の武装のエミタを作動させ、オンコットの長い手足のひとつを切り落としたのだ。
 たまらず逃げ出すオンコットだが、逃げ道はふさがれていた。ワイヤーがかの怪物の阻害を完全に断っている。
「汝の悪しき業、全て我が貰い受ける‥‥流派極技‥‥閃断蓮破!!」
 王零が、携えていた国士無双の、ないしはそのエミタを発動させて怪物に止めを刺した。苦悶の叫び声をあげつつ、そのまま、怪物は自分が今まで手をかけた人間たち同様、他者に命を奪われてその尊さを知った。

「悪魂滅葬‥‥何時の行き先は永劫終えぬ絶望の極地‥‥虚光と知れ」
 王零の言葉が響く。後始末を終え、引き上げる時。
 物を言わぬ屍と化した怪物の骸へと、皆は一瞥した。

 その後、何事も無く住民はもとに戻り、そして暗闇に潜む怪物は居なくなった。
 これで、亡くなった人々が浮かばれれば良いがと、思わずには居られない皆だった。