●オープニング本文
前回のリプレイを見る「‥‥そもそも、あの大量の敵機の数に対し、見通しが甘かったのだ」
「‥‥浅知恵のおかげで、こちらは尻拭いかね」
「‥‥能力者サマはナイトフォーゲルでごり押しすりゃ、万事解決とでも思ってるんだろうさ」
「‥‥戦略も戦術も立てず、大群に少数で突っ込むなんざ、何考えてやがる」
壱岐島攻略、失敗。
そこから言われ続けているのは、先の作戦失敗における非難。
この件のUPC司令官・坂本は、次の作戦立案のために、情報収集を行っていた。
壱岐島に埋設されていたゴーレムが起動。そこに大型ヘルメットワームが飛来し前線基地を設営しようとするも、UPC軍の猛攻により壱岐島西南部・百合岳に撃墜。その際に、大型ワーム内に搭載していたレックスキャノンが起動。敵味方関係なく攻撃するように。
三十機のゴーレムに、十機のRC。司令官は、これらの殲滅を依頼。
能力者たちの作戦は、起動システムを破壊する事でゴーレムが停止すると推測。その後RCを順次攻撃・破壊を想定。
が、システムを破壊してもゴーレムは止まらず、逆に埋設されていた残存兵力が起動。圧倒的な戦力差の前に、能力者たちのナイトフォーゲルは惨敗。
そして現在。バグアの勢力は続々と集まりつつある。九州本土への侵攻準備は、整いつつあるのだ。
しかし、こちらもそれを指をくわえて見ているわけではない。
前回の作戦失敗時から、ずっと情報収集を行ってきた。このために時間と予算もかなり費やしたが、作戦が成功すれば十分に元が取れる。
もっとも、これがうまく行かなければ‥‥その時は破滅だ。
「現時点で収集した情報、そしてそこから推測される可能性。これらから現状と、攻略のためにこちらで立案した作戦内容を述べる」
会議室にて、坂本は君たち能力者へと説明を始めた。
壱岐島本島。
バグアの大型ワームが飛来し、壱岐島の中央・壱岐市に着陸。そこに前線基地を設営し、司令官の指令の元、確認されているゴーレム及びヘルメットワーム全機をコントロール下に置いている。
その数、ゴーレム六十体。小型・中型ヘルメットワームに関しては、歩行ユニット「アームズオプション」を装着型が二十、通常の飛行型機体が三十。
それらは現在、島の南北、南は岳ノ辻、北は神岳を中心として、陣営を張っている。
だが、壱岐島の西南部・百合岳。
ここには、先の戦いで撃墜され墜落した大型ワームと、そこから出動したレックスキャノンが、いまだに陣取っている。
RCは今も、百合岳に接近する存在を攻撃しつつある。それだけでなく、更に機体内部に搭載していた残りのRC、およびタートルワームも、全て出動させているのが確認された。
そしてそれらは、一定の距離内へと接近した存在全てを敵とみなし、攻撃を仕掛けている。UPC軍はもちろん、味方である壱岐島本島のバグアや、ゴーレム、ヘルメットワームに対しても例外ではない。
更に奇妙な事に、壱岐島のバグア部隊は積極的に百合岳へと攻撃していない。RCやタートルワームに対してもコントロールを奪取する事もなく、自爆を促すような事も行っていないのだ。
一定距離内に入らなければ、攻撃しないから‥‥と思われていたが、理由はそれだけではないように思われた。
そして調査の結果。この件について、以下の推測および仮説が導き出された。
重要な点は、三点。
1:現時点でも、百合岳に墜落した母艦内部には、バグア指揮官が生存している。
2:そいつは、おそらく負傷し発狂または混乱の状態に陥っており、壱岐島に降り立った味方のバグアも敵だと認識し攻撃している。
3:さらに、強力な爆弾を抱えており、そのトリガーを握っている。
過去の二点、深島および甑列島でのデータを徹底的に検証し、一番目が判明した。この指揮官が母艦内部で全RC及びタートルワームにリンクし、制御しているのだと。
そして二番目。これも完全な確証が得られないため、推測にすぎないが。
壱岐島からの命令を受け付けず、逆に攻撃してくる理由。
それは、敵味方の判断ができず、とにかく接近するもの全てを攻撃し破壊するようにという、混乱した精神状態にあるためであろう。そうでなければ、味方に救助を要請するか、あるいは自決を命じられそれに従うはず。そうしない理由は、制御する者がまだ内部で生存しているが、外からの命令を受け付けない状態にあるため‥‥としか説明がつかない。
RCやタートルワームに関しても同じく。あれだけの戦力があるなら、壱岐島の連中が遠隔制御し、自分たちのコントロール下に置くはず。仮に制御不可能で、なおかつ攻撃を仕掛けてくるなら、自爆させてもおかしくない。なのに、それも行っていない。
その理由が、三番目の理由。百合岳の母艦内部には、強力な広域破壊用爆弾が搭載されていたのだ。
本来は九州攻撃用に装備されたものだが、それの威力は百合岳を中心に数キロ四方を確実に吹き飛ばせるほど強力らしい。
RCやヘルメットワーム全機が破壊されたら、戦闘続行不可能とばかりに、母艦内のバグア指揮官はそれを起爆させるだろう。壱岐島のバグアは、それを恐れていたために静観を決め込んでいると予測できる。
だが、この状況は利用できる。
ここから導き出し、立案された作戦は以下の通り。
:ナイトフォーゲルで百合岳周辺のRCおよびタートルワームを、壱岐島へと誘導。同じく壱岐島のヘルメットワーム及びゴーレム部隊も、百合岳方面へと誘導し、互いを交戦させる(壱岐島と百合岳の距離ならば、RCが航行する事は十分可能)。
:そして百合岳を手薄にさせた隙に、能力者の別動隊が、百合岳に墜落している母艦へと接近。指揮官のバグアを殺害し、母艦のコントロールを奪取。爆弾の起動装置を解除。
:その後で、同士討ちし数を減らしたバグアの残存戦力を、待機していたUPC正規軍攻撃部隊、および能力者たちのナイトフォーゲルにて攻撃し、これを一掃する。
「‥‥今度と言う今度は、失敗は許されない。もし今回も成功しなかったならば‥‥多大なる被害が出る事は火を見るより明らかだ。この作戦、参加を希望する者がいたらすぐに名乗り出てくれたまえ」
そうだ。今度こそ成功させなければ。これが与えられた最後の機会になるかもしれん。
目覚めたレギオン‥‥大勢の魔物を討ち取るチャンスは、この一回きり。この一度の機会に、全てを委ねよう。
能力者たちの希望者が出る事を期待しつつ、坂本司令官は深呼吸をして気を落ち着かせていた。
●リプレイ本文
能力者たちは、機上の人となり、悪鬼が群棲している島へと向かっていた。
『‥‥こちら、作戦司令本部。全員の姓名および搭乗機体名を答えられたし』
「こちら、イーリス・立花(
gb6709)。機体名、ナイトフォーゲルACS‐001HパピルサグII『Nachtgriz』。感度良好!」
「‥‥BEATRICE(
gc6758)、ナイトフォーゲルAー1DロングボウIIともども、異常、ありません‥‥」
「クラフト・J・アルビス(
gc7360)、搭乗してるのは、ナイトフォーゲルEFー006ワイバーンMk. II『ハウンド』。現在、順調に飛行中」
「こちら、終夜・無月(
ga3084)。機体名、ナイトフォーゲルXFー08Bミカガミ『白皇 月牙極式』。現在敵影なし」
『こちら、作戦司令本部。現在姓名および機体を確認‥‥』
その間、指令室に向かった時の事を、皆は思い出していた‥‥。
「‥‥おい、来たぜ。能力者サマがよ」
「‥‥へっ、また適当に力技で突っ込むだけだろ」
「‥‥だろうな、無責任に思いつきで動かれちゃ、たまったもんじゃねえぜ」
「‥‥どうせ連中は、俺ら一般兵なんか手駒か弾除けにしか思ってねえのさ」
BEATRICEは、何度そのような陰口を聞いたかわからない。
「‥‥どうか、していたのですね。私は」
それを耳にして、彼女はつぶやく。
「弱兵が強兵に挑むのです。なのに、そんな事も忘れていたなんて‥‥」
発生した重苦しい空気を払拭しようと、イーリスは明るい口調で話しかけた。
「気にしない気にしない。ああいう風に言われるのは、それだけ成功が期待されているって事の裏返しよ。陰口は気にせず、落ち着いていきましょう」
「ええ、前回の雪辱戦。必ず‥‥成功させます」
神棟星嵐(
gc1022)もまた、悔しく思う一人。自分の判断の誤りで、成功できたはずの作戦を失敗させてしまったのだ。無念の気持ちは、皆と同じ。
そうだ、今度こそ‥‥成功させねば。
「ええ、神棟さん〜。がんばりましょうねー」
八尾師 命(
gb9785)が、いつもの口調で彼に同意した。
司令室。作戦の打ち合わせにて。
主な作戦内容は、軍から提案されたものをほぼ踏襲している。
百合岳に陣取るワーム、レックスキャノン(RC)およびタートルワームを、壱岐島本島へと四名がKVにてひきつける。
そして、RCとタートルとが壱岐島へと向かわせ、徒歩班二名が百合岳に墜落している大型母艦ワームへと接近。内部に侵入し、指揮官バグアを発見し殺害。爆弾を発見し解除。
然る後、壱岐島本島へと外海にて待機していたUPC軍本隊と協力し、全てのワームを攻撃、破壊する。
数刻後。
能力者たちは、機上の人となり、悪鬼が群棲している島へと向かっていた。
『‥‥姓名および、搭乗機体の確認‥‥。確認完了。これより、作戦を開始する。諸君の武運と成功を祈る』
「「「「「「了解!」」」」」」
フェイズ2:強襲/誘導
前回の任務においては、百合岳には近づく事すらなかった。
こうして今回接近してみると、そこはまさに自然の楽園だった。‥‥ただし、悪魔に乗っ取られ、穢されつづけている楽園ではあるが。
「‥‥今度こそ、終わらせなきゃね」
こつん。モニターに拳を小突き、イーリスは目を閉じ‥‥開いた。
「GO!」
パビルサグ?が空を裂き、突撃する。その後ろから、クラフトのハウンド、終夜の白皇、BEATRICEのロングボウ?が続いた。さながらそれは、槍を構えた騎士たちが、悪魔の群れに騎馬を突撃させているかのよう。
悪魔の群れ‥‥ないしはその一体から、攻撃が放たれた。対空プロトン砲による砲撃が、ナイトフォーゲルへと襲い掛かってきたのだ。
イーリスが機体を旋回させる。が、地上の砲撃は早く、激しい。機体の操縦桿を巧みに動かすも、重く、なかなか思う通りには動かせない。
「くうっ‥‥!」
それは、他の機体も同じようだ。BEATRICEのロングボウ?もまた、砲火に晒され、機体に無理をかけてしまっている。
「負け‥‥ません!」
普通の人間なら、気絶しておかしくないほどのG。しかしBEATRICEはそれを耐えきり‥‥上昇し、きりもみ状に飛行した。
「やつら、慌ててるな。‥‥ほれほれ、とっとと出てこいよ」
クラフトはつぶやきつつ、モニタを見た。BEATRICEの動きに翻弄された地上の敵が、そこには映っている。
レックスキャノン、背にプロトン砲を背負った恐竜の姿が、そこにはあった。レックスと名が付いているにも関わらず、恐竜としてはヴェロキラプトルに似ている。が、その大きさは本物のラプトル以上、T−レックスにも匹敵するほどの巨大さ。
おぞましきトカゲの怪物は、空を飛ぶナイトフォーゲルに対して、かみつかんばかりに吠え続けていた。
「ターゲット確認‥‥発射」
BEATRICEのロングボウ?より、K−02ホーミングミサイルが放たれた。それはプロトン砲の砲火を潜り抜け、百合岳の地面へと命中する。
RCに当たらず破壊はできなかったものの‥‥RCへと衝撃を与える事は出来た。
その事に更に怒ったかのように、プロトン砲の砲撃が激しくなる。やがて‥‥一体のRCが空中のKVを追い、海中へと飛び込んだ。
その一体に追随し、更に別の一体、また一体と海中に飛び込み、水をかく。
「いいぞー。ほーれこっちこっちー、ちゃーんとついてきてねー」
聞こえるはずはないだろうが、クラフトは自機ハウンドのコックピット内にて、RCを嘲った。
が、次の瞬間。
「‥‥高熱源体感知! 来る! かわせっ!」
終夜の言葉が終わらぬうちに、海中から大口径の巨大プロトン砲の閃光が放たれ、空中を焼き焦がした。
とっさに、四機ともそれをかわす。ギリギリのところだった。
「‥‥ふうっ、みんな大丈夫? 水中にタートルワームがいるのを忘れてたわ。気を付けてね!」
終夜の機体も、無事なようだ。
危ないところだったが、連中は誘いに乗った。次の段階に移る時だ。
「‥‥こちらイーリス。地上潜入班、聞こえる?」小さく、厳かな口調でイーリスは連絡を入れる。
「敵ワームが追撃しはじめたわ。そちらも行動開始してちょうだい!」
フェイズ3:潜入/突破
「‥‥はいー。こちら八尾師、了解ですー」
「こちら、神棟。了解しました」
百合岳付近に待機していた、二人の能力者‥‥。彼らは連絡を受け、行動を開始した。
敵のワーム‥‥RCとタートルワームが壱岐島へと向かったのを確認した。それらは、続々と百合岳を離れていく。今こそ、母艦へと向かう絶好の機会に違いあるまい。
二人は徒歩で進み‥‥そして、母艦を発見した。
「‥‥カメラの類、気にするだけ無駄かもしれませんが‥‥」
物陰から、神棟は目前の巨大なワームを睨みつける。動かないその様は、あたかもたった今死んだ恐竜の骸のよう。
だが、この恐竜はまだ生きている。飛行はできないだろうが、少なくとも心臓部はまだ稼働し、RCやタートルワームの母船として機能している。‥‥爆弾もまた、然り。
だからこそ、慎重に慎重を重ねて行動せねば。
「‥‥見つけましたよ〜」
しばらく観察した結果、八尾師は侵入路を発見した。格納庫のハッチだが、墜落時に破損したらしく、隙間が空いている。人ひとりが入り込むには、申し分ない。
内部は、あちこちが壊れ、所々は機械がむき出しになっていた。乗組員の死体もいくつかあったが、すでに腐敗し、乾燥しつつある。その悪臭に、八尾師と神棟はぞっとした。
が、深部まで入り込むと‥‥そこは墜落時の破壊からは免れている。が、どちらの方向に進んだものか、見当がつかない。
「バイブレーションセンサーでは‥‥どうやら、あちらの方角にバグア人がいるようです」
神棟が指摘したその方向は‥‥コックピットらしかった。
そちらへと、二人は慎重に、歩を進めていく。八尾師は、日頃の呑気さをどこかに忘れたかのように‥‥緊張した面持ちで、先へ向かって行った。
「どうやら‥‥先に進んでくれたようね!」
イーリスが、少しだけ安堵した口調で呟いた。少しだけ、ではあったが。
百合岳から、RCの群れとタートルワームが追ってきたのを確認したイーリスたちは、本島にて中央突破を試みたのだ。
島に陣を張っていたゴーレムたちが、起動し‥‥攻撃してきた。フェザーやプロトン砲が、空中のKVを襲う。が、全速力で飛ぶKV四機には、かすりもしない。
否、かすらせなかったのだ。空中とはいえ、敵陣突破は難しい。ましてや、下方から無数のゴーレムが砲撃してくるのだ。
その対空砲火の中を‥‥イーリスは、飛ぶ、進む、突っ切っていく。
「‥‥いっ‥‥けぇぇぇぇーっ!」
ブーストがKVに、イーリスの愛機に更なるスピードを与え、宙を切る。それはさながら、疾風のごとく。風切る弾丸と化したKVが、戦場となった大空を突っ切っていく。
だが、空中にも敵は存在する。数機の小型ヘルメットワームが応戦にと躍り出るが。
「邪魔を‥‥するなーっ!」
GP−02Sミサイルポッドから放たれたミサイルが、そいつらへと引導を渡した。
やがて、イーリス、終夜、BEATRICE、クラフトは‥‥戦場を突っ切り、壱岐島本島・南西部の敵陣、ないしはその背後へと回り込んだ。
「‥‥こちら、クラフト。いいニュースだよー」
クラフトのハウンドより、連絡が入った。
「ゴーレムとRCのお二方、仲良く喧嘩おっぱじめたみたいだぜー」
フェイズ4:挟撃/攻撃
ゴーレムが、プロトン砲を放つ。
が、それを回避すると、大きく跳躍し‥‥RCはゴーレムへと飛び掛かった。そのまま、強力なあごがゴーレムの首をがっちりととらえ、噛み千切る。
ゴーレムもまた、応戦する。が、数の上では劣っているのに、その動きが付いていけない。ゴーレムの動きに比べると、RCはかなり素早く‥‥数の上でのハンデをものともしない。
無論、ゴーレム側も距離を取ったり、接近戦を仕掛けたりもする。が、接近戦を仕掛けたとしても、その牙だらけの顎がゴーレムの手足をかみ砕き引きちぎり、鋭く巨大な爪の生えた後足が、ゴーレムの胴体へと蹴りで穴をあける。
距離を取っても、RCはプロトン砲で砲撃し、同じくゴーレムを破壊。
ゴーレム側も、なんとかRCの生体部分へと攻撃し、負傷させ、撃破する機体もあったが‥‥すぐに別のRCにより破壊された。数の上では勝っていたのに、押されつつあったのだ。
「‥‥これは、なんと‥‥」
BEATRICEはその様子を、奇妙な感覚と共に見ていた。
『RCが味方だったら、おそらくはすごく頼もしいだろう』そんな考えが、頭に浮かんでいた。
プロトン砲の、さらなる一撃。それは今までのRCに比べ、かなり大きく激しい。
海中から、その主が現れた。その姿はさしずめ、巨大なる亀。
タートルワームが、上陸したのだ。そいつは背の甲部分に設置されたプロトン砲の砲口を、壱岐島、ないしはゴーレム部隊へと向け‥‥撃つ!
木々とともに、多くのゴーレムが爆発し、消し飛んだ。
前に各個撃破を試みた時に比べると、まるで嘘のようだ。これならば、敵戦力の殲滅とまでいかずとも、かなりの打撃を与えられるはず。
加えて、イーリスらにより、ゴーレムは後方からも攻撃を受けている。数が多い分、挟撃されているゴーレムにとっては不利になりつつあった。
だが、このままの状態を、長く続かせるわけにはいかない。
まだだろうか。母艦内の八尾師と神棟は‥‥。
その時、RCの動きが鈍った。
バグア兵が、銃を抜き打つ前に。
八尾師と神棟の持つ銃が、そのバグア兵の脳天を貫いていた。
しかし、そいつは既に死にかけていた。胸に大きな怪我を負っており、さらには全身にも深い傷がいくつか。これで生きていろと言うのは、人間ならばまず無理だろう。
そして更なる捜索の結果、爆弾も発見。八尾師はそれの解体に取り掛かるところ。
「こちら、神棟。聞こえますか?」
神棟が、イーリスらへと連絡を入れる。
「現在、母艦内のバグア兵を殺害。発見した爆弾も、八尾師さんが解体しています。しばしお待ちください」
フェイズ5:終焉/結果。
やがて、RCの動きが鈍くなり、苦しげな動きと声を上げ、ゴーレムに襲われるようになってから。RCは反撃するものの、今度は逆に統率がとれた行動がとれず、反撃されるようになっていた。
そして、その時点で。すでに壱岐島におけるRCにより、ゴーレムはその多くが襲われ、破壊されていた。
間髪入れず、KVの攻撃がそこに襲い掛かる。加えて、外洋に待機していた正規軍の海軍もまた、この戦いに参加。
「今度こそ、落とすよー」
クラフトのスナイパーライフルが、地面のバグア司令本部へと襲い掛かり、指揮官の命を落とす。
「ラージフレア、発射‥‥! 離脱、します‥‥!」
BEATRICEが混戦状態の壱岐島内部へ、その兵器を放り込む。
「こんなもの、かしらね。撤退するわよ」
終夜が、その目前の戦いを目の当たりにしつつ、撤退し始めた。死屍累々の呈を見せ、RCやタートルワームも、ゴーレムやヘルメットワームも、双方がひどく傷つき、そのほとんどが破壊され、倒れていた。
「‥‥軍に伝達。百合岳の爆弾解除。および、壱岐島本島内のワームも、数を減らせました。至急、離脱します。攻撃を開始してください。くりかえします、攻撃開始」
イーリスの「攻撃開始」の連絡が入るや否や。
壱岐島本島に、爆発という花が咲き始めた。
そして。
壱岐島のバグア、およびワームとそれに関する仲間たちが、完全に駆逐できたとの報告が入った。
作戦は、成功したのだ。
「こちらイーリス。各機へ連絡。聞こえる?」
「こちら、BEATRICE。作戦完了ですか?」
「ええ。ふう、ちょっと大変だったけど、なんとかなったわね」
現在、残存する戦力へ。UPCは攻撃をしかけ、殲滅していた。
その後。
壱岐島には戦火の爪痕が、かなり痛々しい様相で残るようになったものの……。それでも、バグア兵の魔の手が伸びる様な事はなかった。
改めて、この戦いを終わらせたように、バグアとの戦いも終わらせるよう、願い誓う皆であった。