タイトル:【LA】地下の子犬たちマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/14 05:28

●オープニング本文


 ジェームス・ブレスト(gz0047)は溜息をついていた。
 彼のデスクに大きな箱がある。そこから、きゅんきゅん声がする。
「おお、神よ」
 頭を抱える。
――俺はなぜ、ここまで、こんな運命を背負わないといけないのかっ!
 箱の中には子犬が3匹居るのだった。何かのミックスらしいが、詳しいことは分からない。
『箱の中の』つぶらな瞳が何かをねだっている。
「飯か‥‥ああわかった」
 仔犬用ドックフードを山盛りにした皿を箱に入れた。

 話はさかのぼる。
「なに? 地下鉄の復興のために機材を運んだら、犬が陣取って子犬を生んでいてたぁ?」
 彼は要望書を持ってきた部下に叫ぶ。
 ぶっちゃければそうだった。
 生後4週間以上なのか、もうチョコチョコ歩き回っていたらしい。親犬の方は、もう疲労と栄養失調で力がなかった(現在入院中)。動物保護に連絡入れたのだが、どこも復興に忙しく、相手も止めて残念そうに受け入れを断る状態らしい。
 こうして、「UPC軍で里親捜しが上手な大尉」の元に3匹が居る。
「いや、だからって押しつけられても困るぜ。くそう」

 結局、ジェームスは『子犬の里親募集。何度でも言ってやる! 子犬の里親だ! 熱意と愛情をも込めて育ててやると言う奴こい!』
 悲鳴に似た、依頼書がUPC本部に届くのである。

●参加者一覧

千道 月歌(ga4924
19歳・♂・ST
ハンナ・ルーベンス(ga5138
23歳・♀・ER
サイト(gb0817
36歳・♂・ST
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
雪待月(gb5235
21歳・♀・EL
神咲 刹那(gb5472
17歳・♂・GD
カンタレラ(gb9927
23歳・♀・ER
ベラルーシ・リャホフ(gc0049
18歳・♀・EP

●リプレイ本文

●将来駄目パパ?
 ジェームス・ブレスト(gz0047)が仔犬たちの入った箱をみながら、「おお、神よ」と嘆いている声は廊下にも聞こえていた。
 それを、廊下で聞いていたハンナ・ルーベンス(ga5138)は心なしか溜息をつきながら、間を置いてキッと顔を引き締める。
 ノックしてから入ると、ジェームスの部下たちに挨拶してから。
「こんにちは、ブレストさん」
「‥‥あ、シスター?」
「‥‥廊下まで聞こえていましたよ‥‥」
 彼女は真面目な顔から怒り顔になって、
「困ったときだけ神様にお願いしようとなさるから、神もお怒りになるのです‥‥。仔犬の里親探しで泣き言では、将来駄目パパまっしぐらですよ!」
 その剣幕に、身じろぎするジェームスだった。
「俺、あの親父みたいになるのか? それは嫌だっ!」
 しかし言葉が出ない、将来駄目パパと言われて思わず言い返してしまった。
「それは冗談ですけど‥‥」
 ハンナは微笑み、
「生後一ヶ月の仔犬には離乳食を用意する物なのです」
 仔犬を抱き寄せてなでていた。
「‥‥そうなのか?」
「水かミルクでふやかせばいいでしょう」
 ハンナが仔犬たちを見て微笑み、離乳食を作り始めた。
 犬たちはくんくん鳴いており、御飯を待っているようである。

「また動物にまみれてるって、聞いてっ!」
 次にやってきた、橘川 海(gb4179)が元気よくジェームスに挨拶した。
「好きでこうなってんじゃねっ〜‥‥。お前も里親希望者か?」
「ううん。LAの事がだんだん分かってきたから一寸大尉さんとお話ししたかったの」
「‥‥そ、そうか」
「最恐のキメラは怖かったよ」
「‥‥ああ、話には聞いているがアレで世界崩壊は(大人の事情で)危険すぎる。よくぞ止めた」
「うん」
 どういうことか分かる人には分かる話だが、ロスはやたらと危険が多い事だ。

「はじめまして、雪待月と言います。仔犬の里親さん募集はこちらでいいのでしょうか?」
 雪待月(gb5235)が入ってきて微笑みながら、入ってきた。
「そうだ。3匹だけどな」
「あら可愛いです。しばらく遊ばせて貰ってもよろしいでしょうか?」
「そうだな、まだ全員来てないようだし、いいぞ」

「どうも〜、こんにちは〜、わんちゃんがいるって言うから引取りに来たけど♪」
 中性的な容姿の少年、神咲 刹那(gb5472)が元気良く入ってきた。
「あ、刹那くん」
「雪さんも来たんだ」
「もしかして里親希望?」
「はい、そうです」
 二人は簡単な会話をして、一緒に仔犬たちと遊び始めた。
「元気で良いね。良かった」
 栄養失調など色々心配事があったが、ジェームスは命を預かっている事に責任を持っているのか、素人ながらもがんばっていたようである(医師の指示もあったらしい)。

「子犬くんの里親を募集されてると伺って来たのですが、こちらで宜しいですか?」
 同じように里親希望として、 サイト(gb0817)も来た。
 あとは希望より、犬と遊ぶこととジェームス慰め(からかい弄り)で来ている、千道 月歌(ga4924)、カンタレラ(gb9927)、犬を飼いたいが、貧乏の出なので、遠慮気味のベラルーシ・リャホフ(gc0049)と続いてやってくる。しかし、月歌はしっかり、犬のおもちゃを持ってきており、遊ぶ気満々に見える。海とカンタレラは知り合いらしくて、挨拶と雑談をかわしていた。何かしらどこかで縁のある人達であるようだ。
 皆が思うことの共通点として、ジェームスの人柄に好感を持ているか、『いろいろ災難があって同情する』と言うことだろう。それを肴に、からかうつもりでいる人もいるが、それは別に問題もない。
「エースと聞いているけど、凄い人というより苦労していそうです」
 本来なら全戦で戦う。しかし、今の計画上では、デスクワークが多いらしい。色々ストレスが溜まっていると思われる。
「くっくっく、年末は休暇を取ってフィアナ・ローデン(gz0020)のライヴにいけるんだ。そのためには熱意で全部の担当を解決してやるぜ」
 結局はめげてなかった! 単純明快さに、苦笑する傭兵たちだった。

 ある程度話を纏めていくと、雪、サイト、ハンナ、刹那が里親希望とわかり、ジェームスはメモを取った。
「で、どうする? 3匹しかいないんだけどな‥‥?」
 ジェームスの問いに、
「私は、辞退しようと思います。ハンナさん、サイトさん、刹那さんなら、幸せにしてくれと信じていますので」
 雪が辞退を申し出た。
「ふむ、籤かもしくは‥‥」
 ジェームスが話を続けようとしたとき、
「仔犬たちに選んで貰う方が良いという手もあるけど?」
「‥‥ええと、そうですね。私も仔犬が選んだ人が良いと思います」
 月歌とベラルーシが言う。
「そう、それそれ‥‥」
 ジェームスがうんうん頷く。
「それに、さすがにここでは狭いですし、公園で考えましょう、ね?」
 この仕事場では狭いので、ハンナが提案する。誰も異論を唱える人はいなかった。

●名前のセンス
 仔犬たちと遊ぶために本部から少し離れた広い公園で遊ばせている。そのなかで、名前をどうしようか考えていた。
「『ラッキー』『リッキー』『ロッキー』と言う名前で如何です?」
「凄い単調ですよ? 雄ならランサー、雌ならリールかな」
「ボルシチ、ドラニキ、ブリニーというのはどうでしょうか?」
「なんて、美味しそうな名前って、料理名をつけるのは一寸駄目かも知れませんよ?」
「そうですか」
 名前を考えている人もいれば、自分が里親と確定してからという人もいる。
「情熱(passion)・勇気(courage)・勝利(victory)とかどうだよ」
 ジェームスが言うと、
「それもなんだかおかしいよ」
 総ツッコミを受けた。
 ネーミングセンスは個性もあるので、壊滅的なのか横に置こう。ただ、
「くず鉄と、言う名前をつける人はいないから」
 刹那の言葉に、
「「全く、それはないな。犬がかわいそうだ」」
 全員同意した。

●犬と遊ぶ
 カンタレラと海は犬と遊んでも大丈夫な私服だ、カンタレラはジーンズにカットソー、フリースのカジュアルでアクセサリも皮ものだ(布より耐久性と犬の毛がついても大丈夫なように)。海は明るい色のシフォンティアードスカートと、ショートブーツ。しかも見えても、犬がスカートの中に入っても言いように、黒のレギンスをはいているそうだ。
「もう、スカートの中にはいっちゃ‥‥。きゃう」
 早速、特別仔犬が海にじゃれている。予想通り仔犬がスカートの中に入ったようだ。
「ほら、これが野性というものよ? いざというとき、誰かを守るための牙よ‥‥!」
「うううっ!」
 もう一匹の仔犬がおもちゃやカンタレラの腕をじゃれ噛みするのを、彼女は微笑んで一緒に遊んでいる。
 さらに、仔犬は海から月歌にむかってじゃれ始める。
「よしよし‥‥こらそんなになめるなって‥‥あ‥‥左目だけはなめないで‥‥壊れたら直せないから‥‥ダメだって‥‥あああ!!」
 左の義眼を舐められそうになってワタワタするところ、海が仔犬を抱いて助けてあげた。
「もう、おいたは駄目だよ‥‥ってくすぐったいよ! あはは」
「くぅん」
 今度は海がほっぺを舐めらたので、お返しに仔犬にキスをする。
 元気があって良いなと思う和やかな時間が過ぎている。
 残る仔犬はおとなしく、サイトやハンナ、雪に月歌になでられたり、抱きかかえられたりしていた。ただ、やんちゃな犬もおとなしい犬も、ベラルーシをみると、戸惑った顔をしている。
「嫌われているのでしょうか?」
 落ち込む姿の彼女が哀れだった。
「あきらめてはいけません、心を開けば、きっと分かってくれますよ?」
 ハンナがベラルーシを慰めた。
「はい‥‥」
 ハンナの言葉に、少し救われた気もする彼女であった。

 サイトはジェームスに、自分の世話になっているところは沢山動物がいると言う。
「なので、それで淋しいおもいはさせないと思います」
「そうなのか? そう言うなら。しかし結局は犬が決めるかもしれねぇけどな」
「そうですね」
 サイトは元気よく遊ぶ犬たちを見て微笑む。
「でも、大尉も大変ですね」
 月歌が話しかける。
「ああ、確かに大変だ。本当なら前線でHWを叩き潰しに行くはずなのにな」
「凄腕のエースとは聞いていますが、気の良い熱血お兄さんみたいです」
 月歌はそうジェームスの印象を言うと、
「よせいやい照れるぜ」
 はっはっはっと笑う。
「動物に好かれているならいっそブリーダーにでも」
「戦士にそんな余裕はないな‥‥。常に戦いだ!」
 格好つけてきりりと言い返すジェームスだが、いつの間にか頭に仔犬をのせされていたので威厳もかっこよさもなかった。
「おおう!」
 もちろん不意打ちに驚く。
「隙を見せては駄目じゃない? ふふふ」
 そうした悪戯をしたのはカンタレラだった。

●真剣な話から、ロングボウ‥‥え?
 今はサイト仔犬と追いかけっこをしていたが、犬の元気さに負けて、息切れする。犬にせがまれているようだ。刹那もとても楽しそうで、
「雪さんもこっちに」
「はい」
 雪を誘って、仔犬たちと遊んでいた。
 それを、ハンナが遊び疲れた仔犬を抱いている。
 海もその隣で座ってジュースを飲んでいた。
 その、風景を見て海は、
「‥‥この街は私たちが荒らしてしまったんですね」
 その言葉に責任を感じていた。
「‥‥戦争だからな。何処も同じだけど。守るために俺たちがいる。それは壊されるまえに守り抜ければいいけどな。上手くいかん事も事実だ」
 ジェームスが海の言葉にそう返す。
「大尉、私たちが出来る事ってなんですか? 教えてください」
「戦うしかない」
「というと?」
「ああ、KVを駆りバグア共を叩くだけでなく、どんなことでも戦いだって事だ。俺は戦うしか脳がねぇから、上手いことは言えないが、何か守りたい事や、打ち込みたいことも立派な『戦い』だぜ? それにお前にはしっかりした信念があるだろ? それと熱意や根性があれば何でも出来らぁ」
「はい! ラウンドナイツはもう無いですけど、その志はこの胸にあります!」
 にこやかに海は笑った。
 隣にいるハンナも黙って微笑んでいた。
「それにしても、本当にお前動物とか好きなんだな?」
 先ほどまで犬と戯れてはしゃいでいる海を見てのジェームスの感想だった。
「ええ、もちろん! 凄く可愛いじゃないですか! あの姿が可愛くて!」
「ああ、生き物だからな」
「そうですね、あの子も生き物なのです。最近手入れしていると無骨でも、昨日を全面に押した‥‥」
「はい?」
 ジェームスとハンナが目を丸くする。
「「?」」
 休憩に入ったカンタレラもちょうど海の『話』を聞いている。
「最近整備して、凄い可愛いと思ってるんです! コンセプトも潔いし、カラーリングも‥‥」
 うっとりと海は何か仔犬と別の存在の事を語り始めた。3分スピーチでは足りないぐらい語り始めている。
「‥‥ええと、な、なにが可愛いんだ?」
 ジェームスはおそるおそる、海に訊ねる。
「へ? ロングボウですよ?」
「仔犬の話だと‥‥思っていたが‥‥」
「ああ! ごめんなさい!」
 別の世界にトリップしていた海はまっ赤になった。
「それだけ何かを大事に思えるって事が素敵で、この上なく綺麗な物だと思うわ。そのまま綺麗な心でいてね」
 しかし、カンタレラは感激を受けたのか、海をほめていた!
「超展開過ぎるぜ‥‥」
 ジェームスは一寸吹き出すのを我慢するようにぷるぷる震えていた。
(「その、愛情があればロングボウも大喜びだな!」)

●里親が決定
 小一時間ほど仔犬と接していたら、刹那とサイト、ハンナに結構懐いているということがわかり、この三人に決まったようだ。
「里親になってくれてありがたい」
「雄だね。では、ランサーだ! よろしくね」
「わん!」
 刹那の言葉に仔犬は反応する。
「‥‥大丈夫、貴方達はこれからお世話しますから‥‥お母さんもじきに良くなって‥‥お母さん?」
「あ、親犬さんはどうなるのでしょうか?」
 ハンナや雪が気づく。
「できれば、私が引き取りたいのですが‥‥」
 ハンナが申し出た。
「おお、それは大変助かる。シスター」
「はい、退院などの時期を知りたいですね。打ち合わせを‥‥」
「一度病院に行く方が良いか」
 と、話していると、他全員から、
「定期的に母親と会わせることもいいですね」
 と言う意見も出る。異論は出ない。もちろん良いことだからだ。

 こうして、無事に4匹とも里親が決まった。数日後に母犬は退院してハンナと帰るという。

●災難大尉
 別れ際にサイトがこう言うと、ジェームスは『それは勘弁してくれ!』と頭を抱えた。
「今度はワニの里親を募集することになるんじゃないでしょうか?」
 今回集まった全員も、「もしかして」か「ああ、やってそうだ」と思ってるので余計に彼は頭を抱えていた。