●リプレイ本文
●準備中
「万が一、事が起こったときに手はずは、観客の誘導は冷静に。アヤカと俺らや、一番近くにいる傭兵達でフィアナを護衛して裏口から避難。OK?」
ジェームス・ブレスト(gz0047)が会場の巡回や緊急時の避難などの打ち合わせをする。
「わかったニャ」
アヤカ(
ga4624)がウンウンと頷いている。
「あとは、大まかに臨機応変だ!」
「ニャ! ぶっちゃけたニャ!」
それが終わったあと、ジェームスは急いでステージを見に行った。そこでは、フィアナ・ローデン(gz0020)リハーサルを行っているのだ。
「このためだけに、仕事を全部終わらせたんだからな! 確り警備するぜ!」
「本当にファン何だにゃぁ」
苦笑しているアヤカであった。
ステージには「Twilight」の小鳥遊神楽(
ga3319)と乾 幸香(
ga8460)、葵 コハル(
ga3897)、皐月・B・マイア(
ga5514)が、バックバンドやコーラスなどの担当としてフィアナと打ち合わせをしている。
「フィアナさん。このカウントダウンライブ、必ず成功させましょうね」
「はい、成功させましょう」
神楽とフィアナがそう話している。
マイアは大きなステージにどれだけ人が入るかと想像する。しかし満員ではないかと思うと、緊張する。
「IMPのコハルさんと同じステージに立つなんて、ちょっと贅沢ですね。コハルさんに負けないようにわたしも張り切っちゃいますね」
「そんな事ないよ〜。気楽に、気楽に」
幸香とコハルも和気藹々と話している。
そう、緊張することもなくリハーサルは進む。
テンポの調整、何処でトークをするのかを大まかな分刻みで調整していくのだ。かなりの時間を要するライヴになるため、休憩も挟むタイミングも必要だ。
「やっとここまで来たんですね。でも、ここも彼女には通過点でしかない‥‥けれども大切な一歩。来年もこうしていられれば良いですね」
風雪 時雨(
gb3678)はステージから少し離れた場所でその光景を見ていた。
「それ、かなり死亡フラグだぞ? 少年」
「うわぁ!」
後ろからジェームスが声をかけてきたので時雨は驚く。
「こいつ、いつフィアナと恋人同士になってるんだよ。羨ましいヤツめ! その辺の所詳しく聞かせろ〜」
「イダダッダ。ま、待ってください! いや、その、その話は何処で聞いたんですか! ジェームスさん!」
ジェームスは時雨にヘッドロックを極めていた。
かなりハイテンションなジェームスに対応できる人はそういないだろう。
彼に、時雨は前の【Woi】の時フィアナが歌を歌うという事で助力してくれたジェームスに礼を言うのであった。
辰巳 空(
ga4698)は医務室で応急処置用の医療道具の確認と、会場を見回って環境を把握していた。
「無事に終われば事も無しと思いますね」
誘導は現地の会社がやっているために、傭兵達は自分の役目に専念できる。すでに並んでいる人から、武器の所有などがあれば預かり、慌ただしく動いているようだ。売店の方もドリンクとグッズ売り場が慌ただしい。
楽屋裏で休憩をしているステージ班は、出汁の香りに「ここLAだよね?」と首をかしげる。
「年越し蕎麦です」
飯スタント時雨が答えた。
「よく見ると」
「あ」
「そうよね?」
「改めてみると、日本人ばかりですね〜」
今回フィアナを取り囲む人はほとんどが純・日本人か何かしら日本の血を引いているである。そしてフィアナも日本文化や食べ物が好きだ。
●行列
「御目出度いクマー」
鈴葉・シロウ(
ga4772)がキリリと眼鏡をかけて、行列に並んでいた。
「オンリーとか言わないように。そして、私は泣きません」
カメラ目線で何かに訴える。しかし、目から汗は出る。
「やぁれやれだねぃ。今年もどうにか乗り切ったぜ人類。そして頑張ったな私。というわけで久方ぶりに羽根を伸ばさして頂きましょう」
フィアナに彼氏が出来るという話は、小隊員から聞いている。なので、恋を知った彼女の歌がどのように変わったか楽しみであった。
チケットを貰った紅月 風斗(
gb9076)は、この歌手はどういう人なのかを少し期待しながら、待っている。
「うな、今日はヨロシクなのですよ! ライヴ行った事ないけどっ!」
守部 結衣(
gb9490)が櫻庭 亮(
gb6863)の手を取って、開場を待っていた。
「ああ、そうだな。フィアナって北米では結構名の売れている人だって」
実は、この2人ライヴは初めてらしい。
日本のそれとは勝手は違うが、大まか似ている。さらに亮からすると、このライヴは正念場で大勝負だった。はしゃぐ結衣と少し反対に、心の中で緊張していた。そう、大きな戦いが彼にはまっている。
時間の合間に、グッズ販売店に寄ってCDを買う。ただTシャツなどは事務所の方針なのか、それほど売って無くて完売していたようだ。
「歌で勝負ってかんじなのかな?」
「かもしれないな」
2人はますます楽しみにしていた。
『では、関係者エリアと一般エリアの境目で会いましょう』
『了解です』
鹿嶋 悠(
gb1333)は携帯のメールでリズ・A・斉藤(gz0227)と打ち合わせする。リズはフィアナと仲が良くなっていたので、関係者チケットを貰っていた。会う約束を何回か打ち合わせて鹿嶋は一般参加として並ぶ。
「あれ? 鹿嶋」
キョーコ・クルック(
ga4770)が隣に並んで、意外な人を見るように声をかけた。
「キョーコさん? こんばんは」
「フィアナの歌を聴きに?」
「え、そうですけど」
「‥‥ふうん♪」
一人で来るというのがなにやら悲しいとは思うが、何かしら噂は聞いているので、キョーコは含み笑いをこぼしていた。
「いや、だからそう言う事とは‥‥」
焦る鹿嶋だが、キョーコも何故一人かと問うと、
「ジェームスがちゃんと仕事してるかなー? って来たの」
「え? ジェームスってあの?」
鹿嶋は驚く。
「そう、ブレストの」
「ほう。又珍しい人が」
何故そんなところにいるのか、鹿嶋は気になった。キョーコが大まかに事情を説明したら、彼は納得したようだ。
その間、ジェームスがくしゃみをしたことなんて、この二人は知らない。
時雨の妹、風雪 六華(
gb6040)も一般参加だった。顔見知りの人とはかなり離れているため、会話は出来ない。
「兄さんが暴走してなきゃいいけど‥‥」
周りで惚気オーラを出していたら困るという不安があるようだ。そのためにエアーバットを携帯している。ツッコミはハリセンじゃないのかというツッコミは受け付けないようだ。元からハリセンは現時点で支給品から無く、取り寄せるに苦労するのである。
●開場
リハーサルも終え、予定通りに開場アナウンスが英語で流れる。人だかりがステージを埋め尽くしていく。袖からマイアが人だかりを見ると、後ろにいたフィアナに
「う〜ん‥‥凄い人だねぇ。フィアナ、緊張してない? ‥‥ふふ、今更か」
と、微笑むとフィアナも、
「少しはするよ。心地よい緊張があると歌えるから。マイアは?」
彼女も笑う。
「私は大丈夫。何だかんだ言って、フィアナに付き合っていたら慣れてきたし」
マイアとフィアナの仲はとても良い。
「じゃじゃーん!」
コハルは、巫女服で登場してきた。ステージ組は目を丸くする。
「「どうしてその格好なの?」」
神楽達が訊ねると、目を光らせてコハルは答えた。
「これ? これはね、日本で神様に仕える人が着る伝統的な装束で、これを着てる人を『巫女さん』て言うんだよ。リピートアフターミー? 『ミ・コ・サ・ン』」
「わかるって!」
ほとんど日本人。さらにフィアナは日本びいきにヲタクとくればそれが何であるか分からないはずがない。
「気にしちゃ負けダヨ♪」
「その格好で弾けるの? 袖とか‥‥ああ、大丈夫かな? その丈なら。でも、マイアもメイドで居るから、カオスぶりは別に気にしてないかな」
「フィアナ、恐ろしい子!」
冗談な事をやっているコハルだが、実は時雨と同じように、北米横断にずっとフィアナと共にいた一人なのだ。
ステージと観客のエリアに空間があるところでジェームスが警備している。なにかアホなことをしていると思いきや、真面目に警備をしていた。それを知ったシロウは、並んでいるときに見かけたキョーコの所によって、報告する。
「真面目に仕事しているよ。予想外だよ」
「そのようねぇ。たぶん裏でいっぱい馬鹿なことをしてると思うわ」
白熊と厚着のメイドがジェームスを観察していた。
このあと、会えればからかおうという話に落ち着く。
鹿嶋の方はリズと無事合流し、比較的込んでいない場所に立っていた。
「凄い人だかりです。ハロウィンとは違うみたい」
「フィアナさんはこんなに凄い人気だったのか‥‥、改めて思い知らされます」
人の多さに二人は驚く。
波に攫われないように、鹿嶋はリズの手を確り握っていた。
「‥‥っあ」
リズは頬を朱に染めて、俯いてしまう。
「リズさん?」
「あ、いいえ‥‥離さないでください」
「‥‥あ、はい」
鹿嶋は彼女の言葉にまっ赤になり開いている方の手で頬を掻いていた。
●開演
最後の調整でギターやキーボードに人があつまると、暗いステージに向かってフィアナコールが会場いっぱいに響き渡った。
「よし、レッツゴー!」
「おー!」
ステージ組は気合いを入れる。
「フィアナさん、あたし達の調子は最高よ。だから、あたし達に負けないように最高のステージを努めてちょうだいね」
「はい。任せてください」
先に、楽器担当各位、「Twilight」の神楽とキーボードでコハルが登場する。
イントロを流すと、歓声が上がり、そのあとに、小走りにフィアナがステージに現れる。
彼女の声は観客に負けないぐらいはきはきとしており、そのまま歌い出すと、周りのファンは盛り上がりの歓声を上げる。
で、ジェームスも仕事を忘れたかのように、フィアナの歌を聴いていた。
「よっしゃー! フィアナキター!」
「何してんの? ジェームス仕事は?」
「うおうわ!!」
真横からキョーコがジェームスに声をかけたのだ。妙な悲鳴を上げているジェームスにキョーコは溜息をつく。
「ちゃ、ちゃんと仕事してるって!」
後ろめたいので、キョーコから視線をそらした。
「ジェームス。真面目に仕事していると思ったら予想通りですね」
「な、やってるって」
シロウの追撃に、ジェームスはそれしか言えない。
「前の廃人同然の姿からは一変して、私は驚くけどね」
キョーコは苦笑するも、
「というか、テンション上がるとけが人はやばいぞ?」
「え?」
いきなり真剣な顔になるジェームスに、キョーコは驚いた。
「気付かないと思うか? あのときは黙っていたが‥‥ライヴは結構ハードだ。早めに医務室で休んだ方が良いぞ」
「? どういう事かな?」
シロウがキョーコとジェームスの間で首をかしげるが、直ぐに納得して、
「では、私が医務室に連れて行きましょう。レディを大事にするのは私のポリシーです」
と、紳士(?)のように対応する。
「なんだ、直ぐ分かっちゃうんだ」
ばれちゃった仕方ないなぁと、キョーコは苦笑した。
「なにぶん戦った怪我人を見ているのはわかるさ。では、鈴葉頼む」
ジェームスは頭を掻きながら答えて、シロウがキョーコを医務室に連れて行く姿を見送った。
ホールから二人が消えたあと、
「いひゃっほー! フィアナー! っと、真面目に警備しないとな‥‥」
テンションに引きずられているジェームスであった。
亮と結衣は、モッシュからはぐれないように自然と手を繋いでいた。歌は明るめのものからバラードなどとかなりジャンルが多く、飽きさせない。
「凄い人だね」
結衣が亮に言うと、
「初めて聞いたけど、すごいな。人気の意味が分かる」
亮も、頷いた。
風斗は一人静かに聞いている。
「‥‥いい歌を歌うんだな、優しさが感じられる」
鹿嶋もリズも遠くからだが、フィアナの歌を聴いている。
「良い歌ですね。私たちもがんばらないと」
「‥‥リズさん? ですね。俺たちを応援する歌も歌ってくれている」
あれから手は繋いでいる。
六華は、時雨に会えずジェームスとも会えなかったため、辰巳の医務室にむかい、辰巳経由で動に狩らないかと交渉して、最後に呼ぶから指定の場所で待っていることとなった。
ソデ側で警備をしているアヤカは、今のところ以上はないという連絡を受ける。
「こちらも異常はないにゃ」
「年越し蕎麦の出汁がピンチにならないか?」
ジェームスが訊ねる。
「それは時雨とスタッフの当番ニャ。‥‥でもあたしも少しやろうかニャ?」
まあ、バカ行動をしており、どう見てもサボっているようにしか見えないエースなのだが、そういう風に見えるだけだろうと言い聞かせて、彼を信頼して、アヤカは少し年越し蕎麦の準備を手伝うのであった。
フィアナのトークで、
「応援に来てくれた人達を紹介します。ギター「Twilight」の小鳥遊神楽!」
その言葉に少し、どきっとした神楽だが、ギターソロで応えた。
「キーボード、巫女服を着ているけど、IMPの看板、葵コハル!」
「やっほー!」
コハルもキーボードソロで自己紹介する。
ドラム、ベースと紹介してから、フィアナはゆっくりと、ロスの状態、戦いのことを話していくが、元気を分かち合いたい事、様々な苦難を立ち向かえるよう、勇気や希望を届けに来たと話し始める。そのあいだ、誰もが黙って聞いていた。
そこで、新しい歌を披露していった。
途中で、幸香とマイアが神楽とコハルと代わり、演奏を続けていく。もちろん、フィアナは、
「メイド姿でも舞台の小妖精・マイア・B・皐月!」
と
「神楽と一緒にバンドを続けている「Twilight」の乾 幸香!」
しっかり紹介する。
声が大丈夫なのか不安になるが(特に辰巳)、さすが歌の訓練をしているのか、失敗はなかった。
コハルがバックコーラスに変わって、コーラスが必要な歌が多くなる。そしてより一層、盛り上がりを見せていくのであった。
コハルはテンションが高くなって、フィアナの後ろでコーラス以外の役目もやって、休憩でソデに戻るときは息を切らしていた。
●カウントダウン
予定通りに、カウントダウンに入る。その前のトーク。
「さて、カウント誰がメインでするの?」
コハルが、マイクでフィアナに訊ねる。
普通は、フィアナがカウントダウンをするのだが‥‥。
「言い出しっぺで、コハルちゃんも同じように」
「わおー!」
カウントダウンはコハルの案で、カウントしてから『happy new year』と叫ぶことになった。会場に居る人全員で。
怪我をしているキョーコは、裏からフィアナが指定席の座席に移され、聴いていた。其処までのサービスが出来るのは前に事務所に来てジェームスの問題を解決したからである。
「ここは見晴らし良いね」
フィアナのカウントダウントークの中でシロウはジェームスに後で飲みに行かないかと誘っていた。
打ち上げがあるとしても、おそらく警備は実際の打ち上げと時間差で行われるだろう。サインを貰うぐらいなら出来たとしても、今回も女性陣が多いので男としては肩身が狭い。そう思ったジェームスはOKと言った。
「向こうで言うところの三次会ぐらいになるけど、いいか?」
「問題ない」
独り者同盟みたいな悲しい握手が交わされた。
「では、カウントいきますっ!!」
「5、4、3、2、1‥‥ハッピーニューイヤー!!!」
コハルとフィアナは大ジャンプする。
それに倣って、テンションが高くなった観客も大ジャンプした。
それからもまた、テンションが高い歌が会場に流れる。
「年が越しましたね」
辰巳は、ほぼ平穏に医務室でライヴを観る。キョーコとシロウがやってきた程度で、問題がなかった。あとは、ファンとして最後まで無事を祈るだけである。
「みんな、ありがとー!」
最後、アンコールにも応えて、「ピース・ザ・ワールド」を大合唱。こうして、カウントダウンライヴは終わった。
●打ち上げ
「フィアナちゃんお疲れ様ニャー!」
アヤカがダイフクと一緒に、フィアナに抱きついている。
「お疲れ様、皆さん」
フィアナが、アヤカを撫でながら、スタッフや神楽、マイア達にお疲れの挨拶をする。
「年越し蕎麦できましたよ」
辰巳と時雨が人数分用意していた。
「おお、ちょうどおなかが減っていたんだ!」
コハルが喜んでいる。
ジェームスは、全体の警備に忙しく、今回欠席だという。
「お疲れ様、フィアナ」
「うん、ハッピーニューイヤー、時雨」
ニッコリと微笑むフィアナの額やあちこちは汗と湯気がたっていた。ステージに立っていた人は全員そうだった。
「恋をすると綺麗になるってゆーけど‥‥‥発育までしてたらおかーさん許しませんよ!!」
「で、コハルちゃん! いつの間にあたしのお母さん?!」
コハルはアヤカに負けじと抱きついて、オヤジ臭いことをやってくる。それを時雨が割って遮っていた。
「はいはい、ここでそんな事すると困ります」
「バスト少し大きくなったかなー」
ぼそっとつぶやくコハルに、
「ぶっ!」
敏感に反応した、時雨がまっ赤になった。
「このメンツだと、じゃれ合いが普通なのかしらね?」
神楽と幸香は苦笑している。
「今回はとても良い経験になったわ。ありがとうフィアナさん」
「いえ、一緒にステージに立てて嬉しいです。神楽さん、幸香さん」
「Twilight」の二人とは普通に会話。握手をして少し話し食していた。
コハルがアヤカと一緒に時雨を弄る中で、妹も入ってきたため其処はカオス会話になる。フィアナはマイアと他のスタッフに「お疲れ様です」と挨拶回りをしていた。
(「そしてフィアナにまた新たな一歩になるように、私はそう願うよ」)
マイアは、フィアナの後ろ姿をみてそう思っていた。
「色々あったけど、今年はお互いガンバロー!」
「うん、がんばろー!」
コハルは最後までテンションが高かった。
このあとにも、キョーコやシロウからの伝言もあり、フィアナにはまた元気がでてきた。
「今年の抱負は‥‥まだ考えてないけど、良い物にしたいね」
●ダンディに?
ジェームスは警備の仕事が終わったあとに、クマと一緒に飲むという約束をした。ショットバーで、二人はウィスキーを飲みながら、
「独り身は辛いよな」
と、クマが言う。素顔のままなのだが、何故か白熊の顔に見えるのは酔っている所為だとおもいたい。そう思いたい。
「いや、戦いだけで浪漫があるって物だ」
ジェームスが格好つけてロックを飲む。
「しかし、その気持ち、わからんでもない」
クマの肩を叩くジェームスに、クマは涙を見せた。
●恋の行方1
まだ、新年の祝いで周りが騒いでいる中、亮と結衣はその人混みから離れていく。
彼も結衣もこの先何があるか、予想が付いているのか、黙ったままだった。
人混みからかなり離れたところで、亮が止まる。
「亮くん?」
振り向く亮に、結衣はドキドキする。彼の表情は真剣であり、今から言う言葉を出す勇気と、傷つく畏れでせめぎ合っていた。
しかし、彼は勝った。
「ぁー‥‥その、なんだ。結衣‥お前の事が好きだ。付き合って貰えるかな?」
と、新年の告白。
その言葉に、結衣はまっ赤になって俯く。
「えっと‥‥うん、いいですよ。亮くん‥‥言葉遣いも性格もヘンなボクだけど、そんなボクでもいいなら‥‥!」
彼女もまっ赤に、YESの返事。
「ありがとう‥‥そうだ‥‥明けましておめでとう」
「うに、うん‥‥あけましておめでとう! 今年も、これからもずっと、ヨロシクなのです!」
結衣は、彼に抱きついて、大好きな人のぬくもりを感じていた。亮も、優しく彼女を抱きしめた。
●恋の行方2
鹿嶋とリズは会場をでて、近くの公園に向かう。其処で大事な話があるというのだ。
「お話ってなんでしょうか?」
「えっと、かなり遅くなりましたが‥‥クリスマスプレゼントです」
鹿嶋はポケットから、小さな箱とカードをリズに渡した。
「え? 開けて良いですか?」
リズの問いに鹿嶋は頷く。
彼女は、箱を開けて「あ、綺麗」と天使の羽根飾りをみて感嘆の声を上げてから、カードを見ると固まった。
『I love you.』
「え? えっと‥‥あわ、あわ‥‥」
この状況で、リズの思考回路が止まっている。カードと鹿嶋をみて、驚いているのはわかりきっている。
「以前、あんな事を言った手前、今更何を言っているのかと言われそうですが‥‥、俺の素直な気持ちです。付き合って頂けませんか?」
真剣な鹿嶋の表情。
「あう‥‥あう‥‥」
リズは返答に困っていたのだが、意を決したように、鹿嶋に抱きついた。
「はい‥‥嬉しいです‥‥。鹿嶋さん」
そして、二人は唇を軽く重ねた‥‥。
(「彼女のためにも、生きて必ず帰ろう、必ず」)
●年があけ
「フィアナ」
時雨がフィアナを呼ぶ。
「ん? 時雨どうしたの?」
「これからは、どうするのかなと」
他愛のない、問い。
「始まったばかりだし、お仕事の計画はしっかり立ててる。時雨とのデートとかは少なくなっちゃうのは残念だけど」
「‥‥」
「守ってくれると信じてるよ」
フィアナの笑顔はとても眩しかった。
こうして、無事にカウントダウンライヴは終わる。
新たな一年にそれぞれが、一歩確実に踏み出したのであった。