●リプレイ本文
「験担ぎで来たって言うのに、キメラに出くわすとは」
木場・純平(
ga3277)が舌打ちして、かなりパニックになっている人混みの中に駆け込んでいった。
「警備の人‥‥いたいた。すまない、俺は能力者だ」
「き、キメラを退治してください!」
「その前に避難誘導が先だろう。無線は?」
「キメラが来てから全く通じて無くて‥‥」
避難誘導を仕様にも連絡が取れないと警備員が言う。キメラの電磁波が一般電波を妨害しているのだ。
「く、なら‥‥」
彼は、避難誘導を警備員と一緒に行い、「私は能力者だから、安心してください」とパニックになっている人々に言う。しかし、逃げ惑う人にはその声は余り届いてないように見えた。
「一人じゃ無理か‥‥」
それでも、必死に彼は呼び続けた。
一番被害に遭っているのは、巫女がいっぱいいる、おみくじ売り場である。
「広い道は参拝客。細い道は巫女達の避難路に」
手伝いで宮司をしに来ていた紅月 風斗(
gb9076)が、やってきて提案する。巫女達と近場の警備員は頷いて、その指示に従った。
そこで、幸いに木場と警備員の連携がとれていく。
「新年早々ネタキャラ投入って、どれだけ人材豊富なのよ!」
月代・千沙夜(
ga8259)が巫女のバイトをして、他の一般巫女を庇う。
「巫女たん、ハァハァ」
「うわー! よるなー!」
舐められそうな所を超機械「ザフィエル」の指揮棒を振って、焼き払う。
「きくぅ!」
「うわ! きもい!」
電磁波のダメージを与えているが、このヲタク顔トラキメラ、恍惚していたので気持ち悪い。まさに、『この業界ではご褒美です』という満足顔。呆然としていれば舐められるので、超機械攻撃を連射する。
「もえ〜じにー!」
何とか舐められる前に、1頭を倒した。
「トラウマになりそう‥‥げ、まだいるの?」
安堵する間もなく、数頭のヲタク顔トラキメラがハァハァ言いながら、彼女ににじり寄る。
そこで、風斗がヴァジュラを持って彼女と、隣にいた小麦色の肌の巫女に呼びかけた。
「お前、能力者か」
「え、そうだけど?」
「なら、避難を先にしたい」
提案をする。その間にやってくるキメラを何とか受け止めては、蹴り上げて距離を離す。
「俺が反対方向に向かうからその間に」
小麦色肌の巫女が言う。
「‥‥任せた! って『俺』?」
男の娘巫女Anbar(
ga9009)が駆け出す。彼が何故巫女になっている理由は、何かの手違いらしいが、彼の名誉のために黙っておく方が良いかもしれない。
「巫女たん、ハァハァ」
(「依頼としてきていたけどこうなるとは‥‥新年から厄日だ‥‥いや、まて、コミレザの時と比べれば、こんなのたいしたこと‥‥耐えられる!」)
うっすらと涙を見せて彼は走る。それに涎を垂らして向かってくるキメラが気色悪い。
神社の中程の甘酒売店でのんびりしていたはずだったが、騒ぎを知った蓮角(
ga9810)とトロ(
gb8170)は、
「‥‥正月からなんて物を出してくるんだ、バグアめっ」
怒りをあらわにする。
「トラキメラアルか?」
甘酒を一気飲みしてカップを握りつぶすチャイナ服のトロ。どうも、「トラとは許せないアル」という、 自分がトラ風に覚醒する分、敵対意識を加速させたようだ。
戦いに出向きたいのだが、人の波をかき分けて向かうのは無理がある。いきなり現れてパニック状態を納めて避難誘導しないと行けない。
「先に一般人の安全だ‥‥すみません電話などは‥‥妨害電波で無理‥‥こまったな‥‥」
「キメラにはそう言う阻害能力がアルネ。ここは地道に誘導アル」
二人は中程にいる、警備員や誘導員を見つけては、能力者と明かし、避難誘導を手伝った。
「あ、子供が泣いてるアル」
トロがはぐれて泣いている子供を直ぐに抱きかかえて、人の波から外れる。
「ままー ままー」
「大丈夫アル。この子をお願いアル、警備員さん」
「あ、わかった」
トロは、避難誘導に精をだし、蓮角も老人をいたわりながら、ともに、人を助けていく。
一方、神社の別の区画で殺陣芝居をしていた夜刀(
gb9204)はさんざんな目に遭っていた。
巫女服での演武をしていたために、真っ先に餌食になったのだ。ちなみに彼は男である。それが幸いしてか、一般客は直ぐに逃げる事が出来た。
「こんなふざけたキメラ造りやがって‥‥バグアも新春は暇なのかよ!!」
パイルスピアで受けをするも、キメラの鼻息が酷く根負けしそうだった。
力押しで負けてしまい、ベロリとなめられる。
「ぎゃあああ! 新年早々、オトコのプライドぶち壊しだ‥‥アハハ‥‥」
其処で彼はキレる。敵の鼻に指を突っ込むと、気持ち悪がってのけぞるキメラにパイルスピアで払い、キメラを吹き飛ばす。
女子供を避難させていた、赤い霧(
gb5521)も一人で戦っている夜刀をみて助太刀し、ヲタクトラキメラを沈黙させた。
「大丈夫か?」
「‥‥うははは‥‥余り大丈夫じゃない‥‥こうなりゃ‥‥一斉清掃だ‥‥っ」
しかし、夜刀は泣きそうだった。いや、泣いている。
そこで、巫女姿のAnberが数体のキメラをおびき寄せているところを見つけたため、
「女性が危ないな‥‥助けよう」
赤い霧が、獣のような気配を発し、雄叫びを上げた。
「グゥオオオオ!」
「うりゃああ!」
Anberは自身障壁やGooDLuckを駆使し、腿に隠していたアーミーナイフをつかって防御するなか、後ろから来た2名の能力者の援護もあり、なんとか彼自身の『仕事』を果たせそうである。
キメラが殺陣芝居の広場に集中し集合したことや剣撃やキメラの叫びを聞きつけられるため、避難誘導も一般警備や神社関係者で何とかなるようだ。そこで、残っている能力者が集まってきた。神社でバイトしていた人は確り武器を持ってきている。
残る六体のヲタク顔のトラキメラを、始末する事に集中できる。
「虎対虎! さぁ相手になって貰うアル!」
トロはやる気満々だった。
しかし、キメラは虎の風貌になっているトロを見ても、Anber、千沙夜、夜刀の巫女に向かって「ハァハァ」言っていた。つまり、メッチャスルー。
「これはこれで、何か凄い腹が立つアル!」
疾風脚と急所突きを篭めたアーミーナイフの突きを、ヲタクの顔にめき込ませた!
「きゃいーん!」
鬱陶しいとばかりに爪で反撃するキメラだが、トロはよけながら、確実にキメラにナイフを突き刺す。多少はキメラの爪の攻撃が掠って怯むこともあったが。トロの一撃は徐々にヲタクの顔は眼鏡が割れて鼻血が出ていくことで手応えがあった。余計不細工になったと言わざるを得ない。
「うわ! きもちわるい!」
蓮角がそうぼやきながらも、風火輪で追撃する。二人の連携で一体を倒す。残り5。
叫ぶ獣の赤い霧は、銀色の左目を輝かせて、ガノをぶんまわしてキメラを叩ききる。キメラは邪魔された怒りから、彼に体当たりし、はじき飛ばす。しかし、傷を無視して突進していく。彼は、女子供が危機と知るや、怒りが爆発しているのだ。
「グガアアアア!」
しかし一対一ではさすがに難しい。千沙夜が「ザフィエル」を振り、援護でキメラを焼く。怯んだキメラに赤い霧のガノが脳天をたたき割った。残り4。
Anberは、武装をあまり持っていなかったのだが、それでもいまの巫女の立場を利用し、牽制やキメラのおびき寄せで誘導できる。ほどよく誘導しては、風斗と木場が一体を囲む。木場がワンツーで怯ませると、風斗が禁忌「レーヴァテイン」で斬りつける。巫女を舐めたい一心のキメラは二人を体当たりや爪で弾く。
「しまった!」
「この先に!!」
キメラは近くにいた夜刀に向かう!
「みこたーん! ハァハァ」
「くそう! よるな!」
パイルスピアを突撃対策の構えで串刺しにした。残り3。
イアリスを構えながらザフィエルで、牽制していく千沙夜は、確実にキメラを弱らせていくが、まるで「ご褒美〜」と彼女に寄ってくる。
「くるなぁ!」
イアリスでキメラにとどめを刺した千沙夜だった。残り1。
残った1体は、怒りに身を任せていた(理由は色々)夜刀と赤い霧、トロにフルボッコされたのだった。
こうしてキメラ乱入事件は終わる。
「涎だらだらで気持ち悪い〜」
夜刀はガックリと膝を折った。
傭兵達は後片付けの処理もある程度すんだところで、神社関係者からお礼を言われた。夜刀は特別に神社の奥にある風呂場を借りてべとべとの体を洗え、何とか肉体面では綺麗になった。赤い霧は活性化で自分の傷を治してから、そのまま去っていった。彼曰く「無神論者なので」と言うことらしい。
木場は言葉に甘えて休息したが、しばらくしてから普通に参拝しおみくじを引いて帰って行くそうだ。
蓮角も籤を引いたが「うん、微妙」と言うだけだった。凶や大吉では無かったらしい。
「どうでした?」
「こっちは微妙かな」
木場と蓮角はおみくじの内容を見せてお互い苦笑した。
残りの傭兵達は神社の関係者控え室で雑煮やお茶を振る舞われた。
「僕、甘酒飲みたい!」
トロの要望も叶い、彼女はとても満足だった。チャイナ服で寒かった分、甘酒がとても美味しい。
夜刀はしっかり二拍一礼を行って、思いっきり願掛けをしていた。今回の事件の帳消し二なるぐらいの実りを祈ったと言う。
神社の混乱は半日程続いたが、次の日にはいつもの通りになったと言う話を聞き、一行は安堵したのであった。
今年もいい年でありますように。