●リプレイ本文
●おいかけろ!
「そっちにいましたか?」
「いやみてない。結構素早いな」
石動 小夜子(
ga0121)と新条 拓那(
ga1294)は猫喫茶から逃げた猫を追っている。キメラが出没し倒されたあと、事件現場に足を運ぶ野次馬が行き交う中。足元で走る猫を探すのは難しい。もっとも身軽な猫にしてみれば、人が多いと驚いて逃げたくなる。
「しかし困ったものだね。ジョーは近くの物陰にいそうですが」
「車の下とかかな?」
コインパーキングに止めている車の下をのぞき込む。
「いないな」
「では、あっちでしょうか?」
小夜子はパーキングの奥にある車を指さした。
「どれどれ‥‥ってうわああ!」
拓那が下をのぞき込んだ途端、影が顔面をかすめていった!
「あ、まちなさい、ジョー」
「にゃうにゃうにゃー」
ジョーは又別の所に潜り込んで、震えている。まだ事件の恐怖がぬぐえていないようだ。
そこに、のしのしとミロが歩いてきては、ジョーを見て、拓那と小夜子を見ると、あくびをしてどこかに去っていこうとする。
「あ、こんな所にミロさま‥‥。ミロさまミロさま、どうぞ元の場所にお戻りくださいませー。
今なら猫缶のほかに、つけてしまいますから。コレを!」
転がったままだった拓那が、すくっと立ち上がりから、恭しい「おいでおいで」する。まるで、お嬢様やらお殿様に付き従うような口調というかそんな感じだ。
一方ミロさまとはいうと『下々の願いどうしようかのう』と言うような威厳を醸し出して、考えていた。後ろに震えているジョーがいるの事と、その二人の雰囲気をみて、品定めしているような目になっていた。
「すごい、店の人が言ってるように、威風堂々としてなんとなく高貴な‥‥きがする」
拓那は少し気圧されそうになった
「はあ、とても素敵で、可愛いです」
「あ、小夜子‥‥さん? 可愛いのはわかるけど」
猫2匹の姿を見て、ほんわりとなった小夜子に、拓那は、
(「やっぱり小夜子さんは可愛いなぁ」)
と、微笑む。
「おっと、ミロ様、ジョー。猫缶ですよ!」
猫缶を取り出しては開けて、トレイに空けてみた。空腹だと食いつきそうだ。ジョーは車の下からでないが、ミロはゆったりと歩いては、キャットフードを匂いって食べた。ジョーもミロがそうするので、おそるおそる車の下から出てくる。その顔は『食べて良いの?』『こわくしない?』の表情だった。小夜子は又、和みの笑顔になった。
「ああ、かわいいです‥‥いまなら‥‥でも‥‥」
何かしら葛藤している。
しかし、キャットフードとの距離が微妙なのか、ジョーは1m先で止まった。未だ警戒している。小夜子が、ミロが食事中の場所より離れていって、バトルハタキを振ってみた。はたきの帯がぱたぱた動く。ジョーはびくっとしたが‥‥逃げないでじっとそれを凝視していた。
「お遊びましょうね?」
動くはたき。それを睨んでいるジョー。
体感時間で3分。ジョーはぴょんとハタキに飛びつく。そしてじゃれ始めた。
「はい、大丈夫ですよ。
今捕まえれば、どれだけ至福な‥‥、でも未だ遊んでいたいです‥‥」
ハタキをぱたぱた猫じゃらしのように動かしながらも、猫とのひとときに幸せを感じている小夜子であった。その幸せそうな顔に拓那はまた、(「やっぱり可愛い」)と微笑むのだった。
ミロは相手がお客らしいと思い、その場で転がる。
「?」
『もふれ』
と、言われたような気がした。
「はは! ミロさま!」
拓那はミロのフサフサの毛を撫でて行く。徐々に体も近づけていくと、ミロは満足そうに目をつむる。彼は抱っこしてみた。一寸重たい。
「ミロさま続きは店で良いですか?」
ケージを見せると、ミロは『はいれと?』と怪訝な顔をする。
「しばらく我慢して欲しいですね」
『‥‥』
何となく通じたようで、ミロはおとなしくケージに入ってくれた。確り鍵を閉める。ケージの中のミロもまた威風堂々としていた。なんか絵になるなと拓那は思った。
一方、ジョーは相手に敵意がないとすると、じーっと小夜子を見ては、恐る恐る彼女に近づいて体をすり寄せた。
「まあ、かわいい」
小夜子はジョーを抱き寄せては、優しく撫でた。ジョーはゴロゴロ喉を鳴らす。先の騒ぎの驚きは治まったようだ。
「さて、連れて帰りましょう」
「そうだね」
二人は微笑みながら、店に帰って行く。
●えのころ
「『えのころますたー』の名は伊達じゃないニャ!」
アヤカ(
ga4624)は猫槍「エノコロ」を目の前にいるこなんの前で振っている。距離は大凡2m。
『げせぬ』
という顔をしても、アヤカの猫じゃらし捌きに目を奪われおり、『解せぬ』顔のまま、エノコロの行き先を追い続けた。しかし、バスケットに入っていた、ダイフクがエノコロに飛びかかってしまう。
「ニャー! これはダイフクのじゃニャいニャ!」
ダイフクは熱中して、聞いてなさそうだが、こなんと目が合うと逆毛立てて、ばひゅーんとどっか2逃げていった!
「ああっ! ダイフク!」
まさか、自分の猫を追いかけるハメになるとは。
こなんはと言うと、その場で「解せぬ」としたところてこてこと去っていこうとする。アヤカは5分ぐらいして、自分の猫を捕まえて息を切らして戻ってくるが、当然こなんは其処にいない。
「しっぱいした‥‥ニャ」
今度は確りダイフクをバスケットに入れて、猫喫茶の人に預かって貰い、捜索を再開する。
しかし、直ぐに見つかる。車のボンネットの上で、相変わらずの顔つきでアヤカを見ていたのだ。
「さて、今度は大丈夫ニャー」
再びエノコロを動かすと‥‥、
「ニャ!」
こなんはエノコロに飛びつこうとしたのだが、勢い余ってアヤカに体当たりした様になったのだ。ころんと転がってびっくりしたこなんが逃げようとするが、アヤカが捕まえる。又追いかけっこはごめんだ。
「こら、おとなしくするニャ。いた、ひっかいたニャ! にゃにゃー!」
じたばたするこなんを必死におとなしくするアヤカだが、元から猫の扱いが上手いため、直ぐにこなんはおちついた。
「ぐーぐー」
腹の音ではない。こなんが威嚇っぽい声を出しているだけ。それが、
「くるる」
と、良い意味で興奮したときの喉を鳴らす音を出していた。決して鳩の鳴き声ではない。
「よし、こなん。おうちに帰るニャ」
「くる〜」
●ツンデレ
近くの公園。
えのころを振っている大曽根こまき(
ga8244)。そこで、れんがじっと見ていた。距離は3m。能力者ならば、一足の距離。しかし猫の機敏さは能力者に匹敵することがよくある。普通の人が走ったり力尽くで猫を捕まえたりするのは難しい。この『力尽くという最終手段』を行えるから頼まれたわけである。
れんはそのえのころに全く興味を示さない表情でそっぽを向いているが、こまきは、彼の目をよく見ている。ちゃんと追っていた。しかし『そ、そんなの興味ないんだからね! か、勝手に振っておきなさいよ!』と言う態度を頑なに取っている。
「むりですか‥‥」
自分が上手くできてないのか、あまり反応しない猫を見た。
「うーん」
そして、じっとしてから2分。
お互い公園でぼうっと日向ぼっこをしているような、喧騒など関係ない和やかな雰囲気になった。
「こういうのも‥‥いいのでしょうかね」
『そ、そんなことなんだからね!』
寄らず近づかずの距離はまだ続く。
「あ、いけません‥‥。ちゃんとおうちに戻さないと‥‥」
こまきは段ボール箱を少し遠くに置いてみた。
れんの表情は変わる。
箱を見て‥‥
ズサー!
猫が滑り込んで箱に入った! 其処まで箱がす好きなの?! とこまき驚く。最初から箱を出しておけば良かったと思うぐらい。中を覗くと、本当に幸せそうで満足顔のれんが箱に入ってた。
こまきはおそるおそるれんを抱いて、依頼主の店に戻っていった。
●猫と和む
猫喫茶はキメラに襲われたことで、店の一部が壊れている。奥の方の猫を世話する場所で4人は猫と遊んでいる。
「おー、すごいのびるー」
ミロをのばしてみて遊ぶ拓那。ミロは少し嫌がっているが、仕方ないとあきらめている。
猫一杯の状況に、どうすればいいかわからないこまきにアヤカが、
「猫は、こうするといいのニャ」
「え、そ、そうなのですか?」
と、猫の扱い方を教えながら、猫と遊んでいた。
小夜子の隣にはずっとジョーがいる、とっても気に入られているようだ。
「あそびますか?」
『‥‥』
猫は「くるるぅ」と鳴いた。
小夜子はとても幸せそうにジョーを撫でる。それだけでも良いらしい。
「はは、俺も猫好きだけど、小夜子のそれは俺よりもっとだね〜。全くもう、妬けるじゃないか」
「拓那さんも負けじとですよ?」
冗談を言う拓那に、小夜子は微笑む。
探す所などは苦労したが、こうして猫と戯れて和む時間できた事で、心が癒される4人であった。