●リプレイ本文
●活気ある復興
傭兵一行は、目的の町に着いた。建設中の建物が建ち並び、活気に満ちあふれている。
「開拓か、いいじゃないか。破壊に負けない心が生む出す創造、Always Beginning。人が志を持って歩みだすのを邪魔するのならばキッチリと排除してやるのダー」
レベッカ・マーエン(
gb4204)は、その活気をみて決意を新たにしている。
ユーリア・パヴロヴナ(
gc0484)は、
「ん、良いところね。昔住んでいたところを思い出すわ。」
と、故郷を思い出しているところ、
「ほう、そうなんだ。雰囲気が?」
「そうね、こう活気を取り戻すために頑張ってるところかな?」
イース・キャンベル(
gb9440)が訊いてきたので、彼女は微笑んで答えた。今も、元気なところだと信じている。
「作っても、こうして壊してくるバグアは絶対許せない」
イースは握り拳を就くっていま、間近にあるバグアの驚異に怒る。
「そうですね‥‥」
優(
ga8480)が静かに頷き、みんなを見ていた。
椿骸(
gc1136)は煙草を吹かしては、携帯灰皿に吸い殻を入れると、また煙草を取り出して吸い始める。しかし椿骸の目も、ほとんど無言のアンナ・キンダーハイム(
gc1170)、ボウッとしている様に見えるライフェット・エモンツ(
gc0545)、メイドのリュティア・アマリリス(
gc0778)も『この街をバグアから守る』という熱意は見て取れた。
(「出来れば派手に行きたい物だが」)
椿骸はそう考えているが口に出さず、アサルトライフルを携え、優やイース、レベッカ(妙にテンションが高く、早足で進んでる)の後ろを歩いていた。
「必ず守りたいです。私と同じ目に遭わないように」
リュティアはそうつぶやくと、ライフェットと優は彼女をみて「そうですね」と頷いたのであった。
偵察にでた能力者は、集会場のような所も兼ねた酒場(西部劇風な作りである)に、町の代表者とお茶を飲んでいた。
「待っていたよ。そして良く来てくれた」
「はい。では早速詳しい話を聞かせて欲しいのですが」
優が代表と握手してから話が始まる。
「数が20と聞きましたが、全部群で? いくつか別れていたのでしょうか?」
優が地元の能力者に訊ねると、
「5匹で1群のようだ。俺の見る限り数だとそれを4つみたんだ」
彼は答える。
「そうか。では、こっちから質問なのダー」
「なにかな?」
「翼をはやしていると言うが、それ自体で飛んでいたか?」
「見たときはなかったな。ずっと歩いていた」
「‥‥となると、自力で飛ぶと言うより滑空用ということか」
レベッカは考え込む。
「やはり結構な数ね。囲まれないように注意して、班は距離を開けて移動かしら?」
ユーリアも状況を訊いて考える。
全員で話合った結果、森に入って殲滅する班A・Bを二つ。森外れで防衛ライン担当班Cを一つという話になり、Aは優、椿骸、イース。Bはリュティア、ユーリア、レベッカ。防衛戦はライフェットとアンナとなった。
近くの森の位置を教えて貰い、徒歩で向かう一行だった。
●数の驚異
森には生物の気配がなかった。静まりかえっている。森の前に立つ一行は、辺りを見渡して危険がないか見る。
「キメラのせいで、動物は逃げ出したのか?」
イースは、手に持つ超機械「守鶴」(茶釜の形)を強く握りしめた。怒りがこみ上げてくる。
「危険があったら呼笛や照明銃で連絡を。防衛戦は確り守ります」
ライフェットが殲滅班メンバーに言った。後ろでアンナが頷いている。
「大船にのったつもりでまかせるのダー」
ハイテンションのレベッカはエネルギーガンを掲げて歩き出す。もちろん、後衛という立場は守りリュティアやユーリアより前には行かないが。優とイースの支援をつとめる椿骸は、
「‥‥森の中じゃ火事になるよな‥‥しかし煙草が吸えなくなるのは‥‥きついな」
とつぶやきながら煙草を我慢し、ポケットの奥底に煙草セットを仕舞った。
大凡30mは離れてA班とB班は敵がいないか探す。
『翼が滑空のためだけには得ていれば移動は歩きだろう』というレベッカの推理は当たっている事を願い、森を進む。藪があれば、刃の付いた武器で薙ぎ払って、道を作る。無線は常時接続しており、定時連絡は順調に行えていることからまだ、目標は居ないと分かった。
『こちらA。もう少し右側に進む』
『了解』
B班が地図からすると、奥まで入るかは要らないかの所で、無線の電波が悪い。
「ん? 森の奥に入り過ぎ?」
ユーリアが一般の無線機なので障害物が多くなるとノイズは入る。しかし、このノイズは想定内のノイズだった。
『きこ‥‥え‥‥』
「‥‥きたっ!」
無線のノイズが酷くなる。目視は出来ないが、間違いなくキメラが居るために妨害ノイズが入った証しだ。すぐに無線を切る。
「私が護ります!」
メイド服のスカートがたなびき、リュティアが愛刀の【OR】ツヴァイメッサー「アマリリス」を抜いて、敵の気配先まで一足飛びする。同時に、狼5体が彼女に襲いかかってくる! レベッカはすぐに呼び笛をならしながら、エネルギーガンでリュティアの横から襲いかかる狼を撃ち貫く。ユーリアは、彼女とは反対方向の狼を小銃「クリムゾンローズ」で撃ち相手を怯ませた。メイドの剣士は狼1体の噛みつきをぎりぎり躱し、円閃をこめて切り裂く。
「この二匹は私が倒します!」
「あまったものは、あたし達に任せるのダー! おおっと!」
レベッカは突進してきた狼をすんでの所で撃つが、掠っただけらしく、そのまま突進される。しかし、ポリカーボネートで何とか防ぎきったが、衝撃だけは吸収できず、ゴロゴロ転がってしまう。
「うわー!」
「レベッカ! 大丈夫?! このっ、キメラ共、いい加減くたばりなさい!」
ユーリアはレベッカを襲った狼を撃つも、木々が邪魔で1発は木に当たってしまうが、もう一発は確実に脳天を貫いて仕留めた。
「大丈夫。こんなのかすり傷だ!!」
彼女は倒れ込んでも、そのままの牽制射撃で狼を近づけさせなかった。
リュティアが二匹を華麗な剣舞で仕留めた頃には、2人も1匹倒していた。
「一群片付けましたね」
「向こうも戦っているようだけど‥‥」
「まだ気配がありますね‥‥」
ノイズだけの無線機を聞いて、騒ぎを聞きつけたキメラが居ると分かる。
「サーチ&デストロイ! なのダー!」
「そうしましょう」
優達のA班は、2つの群に同時に襲われていた。半円のように狼が囲んでいる。イースのGooDLuckのお陰で、不意打ちだけは避けられたのだ。
「厄介ですね、いきなり襲いかかられる前でよかったです」
「全くだ。支援も難しいぞ」
「向こうも遭遇したみたいです‥‥呼笛が聞こえました」
背中をあわすように後退し、もう少し開けた場所で戦おうと考える。
キメラの群も、そのまま襲わず、隙を狙うかのようににじり寄るだけだ。この近郊はすぐにでも崩れそうである。
「‥‥私が飛び込みます。そのあとは‥‥」
「何とかしてみせるさ」
「フォローは任せてください」
散開。狼も飛び出す。
椿骸は木々の後ろに隠れ、優に援護射撃を行う。弾は木々に弾かれるのだが、跳弾により、数匹は危険と思ってそのまま突進しない!
「よしっ!」
「10時から!」イースが叫ぶと、すぐにリロードして又援護射撃に回る椿骸。
優は、戦闘機械とまではいかないが、優雅な件捌きで確実に1体を二刀の剣撃で仕留めていく。周りを囲んだ4匹は物言わぬ骸となっていた。
「きゃうん!」
その瞬間を見ていた3匹は森奥に逃げ込んでいく。残った2匹は、イースと椿骸に体当たりしてくるが、木々を壁にしている2人は、上手く転がり躱した(木は折れて今にも倒れそうだが)。
「‥‥この‥‥っ」
イースが超機械の電磁波で、その狼を焼くとすぐさま駆けつけた優が月詠で一匹を、機械刀「凄皇」でもう一匹を斬り倒した。
「流石歴戦の人です」
イースは彼女の強さに驚きを隠せなかった。
「‥‥ふぅ‥‥2匹逃げられましたね」
この先を進むのは、地元の人が良いかもしれないと判断する。
しばらくすると、無線が回復し、B班から連絡が来た。
『こちらA班。そっちの守備はどう?』
『B班。3匹逃げられた。キメラになっても本能で逃げるという事は覚えているみたいだ』
『一旦引き返しましょう。迂回されて防衛ラインまで来ていると言う事はないだろうけど‥‥』
『了解』
時間は夕暮れ。視界的有利はおそらく狼キメラにあるだろう。相手は鼻が利く。しかし、闇の中で動くのは、人間として不利なことが多い。
防衛ラインに戻った殲滅班をみたライフェットとアンナは、
「怪我しているなら手当もしないと」
アンナは拡張練成治療を施し、ライフェットに救急セットを渡して手当をした。
「そっちに異常は?」
殲滅班が防衛ライン班に訊ねると、
「こっちには、キメラは来なかったです」
「5匹逃がしてしまった。ひとまず報告しないと」
「‥‥ですね」
町に戻った一行は、5匹逃がしたというと、代表とその能力者は
「後はこちらで何とかできそうだ。お疲れ様。ありがとう」と感謝の意を示すと、ささやかながらの宴会に招待してくれた。
●戦い終わって
イースは町の大工さん達に話をしていた。
「手伝ってくれるのかい。兄ちゃん」
「思うんです。銃を持って、敵を撃って。それだけじゃなくて他にも、あいつらに立ち向かう方法があるんじゃないかって。だから、その手伝いをさせて下さい」
「よし! 力あるだろうし、木材はこんでくんな!」
「はい!」
復興される町並みを見て、イースは『戦うだけが能力者じゃない』と常日頃思っていたのであった。
「増援が呼べると言う事ですか?」
リュティアが代表者と話をしていた。
「ああ、緊急で頼んだわけだけど、地元の能力者が近々増えるし、今居るヤツでも5匹なら近づけさせないぐらいは出来るって。全部片付けてくる意気込みは嬉しいけど、これ以上あんた達に無茶をさせられない。感謝している」
そう、何とかなるという意味は、ここを故郷としている能力者が近々集まるそうなのだ。
「頑張ってくださいな」
「ああ、いい町にしてみせるよ。今度はキメラ退治じゃなく、発展した町を見て欲しい」
「はい。できれば、町を見せてもらえませんか?」
「いいとも。案内しよう」
リュティアは町の案内をしてもらっていると、散策しているユーリアと出会った。そのまま、2人は代表と町を散策することになった。
リュティアは、町を歩いていて、その活気を見る度に、
(「護れてよかったです」)
と、思ったのであった。
護れた町は、これからどんな発展をするのだろう。傭兵一行は、期待をふくらませていた。