タイトル:【リズ】蟻塚要塞の開放マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/19 23:06

●オープニング本文


 まえに偵察に入った蟻塚要塞は大きな道から少し離れている物の、元はヘンダーソンヴィルという町だった。ほぼ、このバグア政権の中枢であるナシュビルから21km先である。
 リズは、ゲリラとして活動している人々に少し連絡は付けているが、実績がないことで交渉は芳しくなかった。彼女が地道に連絡を取り合っていた、各集落からゲリラへの要望がでる。
「まずはあの蟻塚を墜としてくれ。それならばお前を信じていく」
 きわめて自然な要望だった。リズもそのために偵察を頼んだのから。
「分かりました。もし、陥落できたら」
「みなまで言わなくて良い」
「はい」


 準備のために一旦デトロイトに戻った彼女は、武器の手入れをしていた。
「戦うか?」
 養父のウィルソン・斉藤(gz0075)が新聞紙越しに娘に聞く。
「ええ。故郷を取り戻す。それが私の使命だもの」
「‥‥死ぬな」
「分かってるよ。養父さん」


 蟻塚要塞と言われているのは、各地の見張り台などが全て蟻塚のそれであり、アリ型キメラによって移動を行っていると偵察で分かっていた。墜とすためにKVを使用するのは当然だが、リズの思いは「町として再興できる被害にとどめたい」と思っている。前に人質もしくは捕虜を発見できなかったが解放できれば、その人達を探し出し救い出せるだろうとおもったのだ。そのためには電撃もしくは奇襲が好ましい。
「私は、この街を再興できる拠点として開放をしたいのです。KV出撃許可は、斉藤少佐の申請により得られています。敵の数は蟻キメラが多数ですが、人を数人乗せるということからワーム型もいると見て良いでしょう。前回の偵察ではワームが確認出来ませんでしたが、ゴーレムとHW、CWが待機しているという可能性は否めません。どうか助力お願いします」
 彼女はいつもの雰囲気と違い、真剣な目で傭兵達に蟻塚要塞について話をしたのだった。

 本格的な解放運動が始まる。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
セージ(ga3997
25歳・♂・AA
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
神撫(gb0167
27歳・♂・AA
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
鷲羽・栗花落(gb4249
21歳・♀・PN
ゼンラー(gb8572
27歳・♂・ER

●リプレイ本文

●強襲作戦
「故郷の開放、とうとうスタートに乗り出しましたね」
 鹿嶋 悠(gb1333)がつぶやいた。傭兵の作戦を聞いて頷いているリズ・A・斉藤(gz0227)は鹿嶋を見て、決意の目をして頷いた。鹿嶋もそれに頷くも、
(「安全なところで指揮を執って欲しかったのですが‥‥。それを嫌がるでしょうね」)
 と、思っていた。
 恋人はKV戦の経験は少ないと聞く。しかも、無改造の岩龍。鹿嶋やその友人、参加している傭兵達のKVはかなりチューンをした機体であるのだ。
 龍深城・我斬(ga8283)は鹿嶋とリズの雰囲気を見て、
(「うーん、彼に空班を譲って班を調整してあげればよかったかなぁ?」)
 と、思っていたが、口には出さなかった。
「いよいよリズの宿願である故郷奪還の第一歩だな。俺も出来うる限り力を尽くさせて貰うぞ。一緒に頑張ろう」
 榊 兵衛(ga0388)がリズに言う。
「はい、よろしくお願いします」

 作戦は蟻塚要塞とワームの撃破。しかも、町への被害は最小限に抑える為、ほぼ瞬時に終わらせなければならない。エンゲージしたときにはすぐに応援を呼ぶ可能性もあるために、ほぼ1分以内で作戦を完遂しないといけないのだ。
 町の被害を最小限に抑えることについては、熊谷真帆(ga3826)が大いに賛成していた。
「私も故郷の温泉を破壊されたら軍を憎むかも。取返しつきません」
 と、言うのだがリズ自身は軍属ではない。
「今回は軍の依頼じゃなく、私個人での要請したものです。ただ、養父が軍属だったので、多少の都合は‥‥」
 リズが彼女にそう答えると、
「なるほど。自分の手で解放するというはよいことだと思うですよ。これは余計に気合いがはいりますです」
 真帆は改めてこの作戦に意欲を固めていた。

 作戦は空陸2班に分かれてワーム・キメラ群排除をした後に要塞を一気にロケットランチャーやミサイルポッドにて破壊することだった。リズは情報管制に努めていくことになる。

 幾度の作戦の確認を行った後、11機のKVが飛び立っていった。視界に広がるのは風のトンネル。それが一気に晴れ渡ると、アメリカ中陸部にある建物よりひときわ目立つ蟻塚が見えてきた。
「目標視認! 今から作戦を開始する!」
 一気に蟻塚に向かって飛ぶ11機。相手も気がついたのかHWとCW7体が上昇してくるのを目視で確認する。かすかにサイレンの音がする。遠くで警報が鳴り響いているようだ。
「‥‥空は任せてください‥‥」
 ベル(ga0924)がLe cielで少し前にでる。
 続いて、
「鹿嶋ほど頼りにはなんねーかも知れないッスけど、あんたを墜とされないように頑張るッスよ!」
 六堂源治(ga8154)がリズに呼びかけてから前に出た。
「あ、はい! よろしくお願いします」
「ボクも援護するからね!」
 鷲羽・栗花落(gb4249)もアジュールを空班の陣形を崩さないように飛んでいく。
「ではいきますか。やり方はほぼ六堂さんと同じように!」
「そのあと、各種担当の獲物を倒すッスよ!」
「‥‥了解‥‥です‥‥」
「GO!」
 3機は一気にブーストし、上昇してくるワームに突っ込んでいく。
 それが非常に幸いしてか、相手の初動は遅れ、バイパーのスラスターライフルを3発全部くらう。つづいて、交差するなかで、剣翼により深手を負ったHWは徐々に墜落して空中で爆発した。
「CWの妨害電波は無いようです!」
「なら、ボクの出番だね! 今の内だよ!」
 鷲羽は複合式ミサイル誘導システムIIを起動させるパネルを開いて、スイッチオン。アジュールが、一気にKA−01を放った! 確実に墜とされていくCWは4。止まって何かをしかけようとするCWにはLe cielが一気にスラスターライフルで確実に撃破した。
「蟻塚要塞なんか叩き潰してやるさ、俺達はお前らなんかに屈しない! 人間を舐めるなよ!」
 龍深城は叫ぶ。彼の雷電がもう一機のHWとの間合いに入ったとき、ライフルで牽制して、CWと離れさせる。リズも情報管制に徹して、素早いHWを追い、CWの妨害電波の発生警告につとめていた。
「龍深城、一気に押し切るッスよ〜」
「わかった!」
 HW対応の六堂と龍深城が、もう一機のワームに向かう。
 CWが電波をはしようとする刹那!
「残り‥‥2! させない!」
 アジュールとLe cielが残りのCWを墜とすと同時に、六堂機が旋回して後ろから残ったHWに突撃する。剣翼でHWの1/3を切り裂き、それは地上に落ちていくのであった。
「空は抑えたッス!」
 あと、問題のゴーレムやキメラの群だが、六堂が見る限り、こちらが優勢なので万が一にも大破もない確信があった。

●強襲の成果
 一気にブーストした空戦班の行動が、地上でも一種の『不意を突かれた状態』になっているようだ。
「いま、攻めるチャンスだな!」
 セージ(ga3997)のリゲルがVTOLをつかって先に降り、人型機に変形する。
 熊谷は風雲真帆城を着陸し変形。各機も、見事に道路などを利用して着陸と変形する。
「ではいくよぉ」
 ゼンラー(gb8572)がMilestoneにブーストをかけて走り出す。巨大バイクが一気に走り抜けていく様は豪快だ。
 空のように同時ではないため、1手遅くなっているが、空の攻撃の成果で、相手の動きが鈍い。忠勝と帝虎が走っては、周りの蟻キメラを薙ぎ払って行くとすぐにゴーレムに手が届く。ゴーレムは何とか牽制の銃撃などを行うのだが、この2機の雷電の装甲を貫通し、大きなダメージを与えるほどの力はなかったようだ。
「そこをどけぇ!」
 鹿嶋が咆え、帝虎がデモンズ・オブ・ラウンドをゴーレムに向かって振るう! 盾で受けようとしたゴーレムだが盾ごと切り裂さかれた。鹿嶋はコクピットの中でゴーレムの機械部分から放電音が聞こえることで、手応えを感じ、もう一撃に構え直す。もう一機のゴーレムには忠勝がロンゴミニアトで貫いて、近くの家屋ごとゴーレムを吹き飛ばしていた。忠勝はそのまま走り抜ける形になって、互いが背中を向けている状態である。ゴーレムは慣性制御を使って、躱したため一撃大破を免れているが、吹き飛ばされたために膝を突いている状態だった。しかし、そこで神撫(gb0167)が牽制して、ゴーレムの動きを鈍らせる。
「今だもう一撃!」
「了解!」
「ぬおおお!」
 帝虎はそのまま横切りで反撃を仕掛けるゴーレムを真っ二つにする。二つのパーツは、その場で爆発しるなか、帝虎は向きを変えて蟻塚の塔を見た。忠勝は突進した影響で、相手との距離が開いているが、向きを変えて再び突進。受けが間に合わないゴーレムは胸を貫かれオイルらしい液体を噴出してから大爆発する。煙の中にはほぼ無傷の忠勝のシルエットだけが浮かぶ。二機とも、次の作戦に移行するのであった。
 リゲルと風雲真帆城は、地上に残ったCWを確実に仕留めた後、ゼンラーがキメラを走り回って倒している援護をしている。2〜3体程度のCWの妨害電波を浴びれば苦痛なのだが、素早い行動が功を奏したことで、それほど時間もかからずCWが妨害電波を発す前に、倒せたのである。
「流石に蟻。倒してもきりがない気がするな」
 這い寄られて来るのを避けるために、銃器で一気に殲滅する。
 しかし、20秒程度でゴーレムが倒されたのを知ったあとは、3機とも一気に蟻塚に向かっていった。

●総攻撃
 リズはデータなどを解析して、周りにワーム級の敵影がないことを何度も確認した。
「援軍の気配は無いです!」
 リズが全機に通達する。
「今が絶好のチャンス!」
 空からはロケットランチャーや温存していたミサイルを蟻塚にロックオンして投下。陸からもミサイルポッドや近接物理の武装で根本を破壊していく。
 しかし、やたらと頑丈なのか、全攻撃を含めても、倒れる気配は無い。その間に蟻キメラが防衛しようと迫り寄ってくる。榊やセージ達が「しつこい!」と銃器で屠っていくのだが、無限にいるような錯覚にもとらわれるほど周りは黒くなっていった。
「只の土塊みたいにはいかないようだねぃ。しかし蟻が邪魔だねぇ‥‥ここはすまないけど‥‥」
 Milestoneがまたも爆走する。タイヤに引かれ潰れる蟻キメラが、カメラに写るのを見て、ゼンラーは申し訳なさそうな表情をする。彼は僧侶故による心情だ。彼のKVが爆走していると言っても、町にある道路に従って走っているだけである。多少KVからでる風圧で飛ばされている家屋もあるが、許容できる範囲だろう。
「この道路から退いてねぃ!」
 ゼンラーが陸で蟻塚破壊を行っている僚機に、自分が通る道にいるなら退いて貰うよう通達する。全員が退いた確認をすると、彼はアクセルを踏みきり、キャバリーチャージボタンを押した。Milestoneのキャバリーチャージをこめた突進が蟻塚に向かって激突する。
「揺れた!」
 僅かな揺れ。しかし、今までの攻撃に大きな効果をもたらすキャバリーチャージだ!
「今だ! 持てるだけ全ての攻撃だ! 目標は根本!」
 全機の総攻撃が再度行われる。
 その結果、爆音と土煙のなかで‥‥、地響きの音‥‥そして塔が真下へ『倒壊する』轟音が響いた。

「南西10kmにHW5機を発見‥‥!」
 リズが全機に通達する、その声は焦りも混じっているようだ。
「‥‥援軍か‥‥?」
 空戦班が臨戦体勢に入る。しかし、
「えっと、しばらく停滞‥‥撤退しているようです。こっちに向かってきません」
「なら、安心か‥‥あきらめたようだな」
 蟻塚の倒壊の土煙は、人類側の勝利狼煙の様に見えても不思議ではないだろう。

●解放と
 傭兵達があの町の警戒をするか、補給のために一旦近くの臨時キャンプに戻ったりする中で、リズは件のレジスタンスの元へ報告しにいっていた。鹿嶋が護衛としている。今までの均衡が崩れたためリズ1人では危険だと言う事だからだ。
「本当に墜とすとは」
 地元レジスタンスは驚きを隠せなかった。人類側の力を信用するに足る結果を残したのだから。
「約束通り、あんたを信用しよう」
「これで、援助をしやすくなるかも知れません」
「ああ、やっと、こちらも大きく動く事が出来る」
 要塞が陥落したお陰で、地下にあった牢屋を探すのは至極簡単に終わり、リズの要請で『ファウンダー』が多少のバックアップをしてくれた。
「次は、どうやって本拠を叩くかです‥‥」
 リズは次の方法を考える。
 鹿嶋は彼女の肩に手をおいて、
「今は、休みましょう。そして、解放の一歩おめでとうございます」
「ありがとう、悠さん」
 リズは微笑んだ。

●冷やかしタイム→結果はおわかりいただける
 リズと鹿嶋が作戦キャンプに戻ってきた。
「では、俺は帝虎の整備をしますので、これで」
「はい、護衛ありがとうございます」
 と、彼女は鹿嶋と一旦別れることとなったのだが‥‥。
 そこで、休憩中であった神撫やセージがリズを呼ぶ。
「ようリズ!」
「おーい、リズさん」
「はい?」
 3人とも170cm台という長身なので、目線がほぼ同じだった。なので会話し易い。軍用のコーヒーを淹れて飲む3人は今回の交渉はどうだったのか訊ねる。良好だとこたえると、「それは良かった」と笑ってくれる。
 しかし、2人の目的は別にあった。
「そうそう『天然たらし』とうまくいってる?」
 神撫はそう言い出すと、リズは咽せる。
「い、いきなり何を!」
「彼、天然で色々フラグ立てるから浮気してないかなぁと心配で」
 神撫ははっはっはと、とんでもないことを口にしていた。
「あうあう」
 真っ赤になるリズをみては、神撫は手応えアリとして、今度は鹿嶋を弄ろうと思い始めていた。さすが、しっ闘士だ(意味あるのか?)。
「リズ、アドバイスだ。男ってのはな、好きな女のためなら愚者にも勇者にもなるもんだ。だからしっかり手綱を‥‥そうだ、尻に敷く位でちょうど良いはず‥‥」
 セージは、真面目に語り出す。しかし、後ろの影に気がつかない。
「あう‥‥。あう‥‥お心遣いは、ありがたいんですけど‥‥」
「イヤイヤこれはちゃんとしたな‥‥」
「あう‥‥後ろ‥‥」
 リズが指さすと、
「え?」
 神撫とセージは後ろを見る。
「2人とも何を話しているんです‥‥?」
 彼らより背の高いリズの恋人さんが戻ってきました。しかも覚醒して黒いオーラを纏っています。数割は別の意味でのオーラかもしれない。
「鹿嶋!?」
「悠?!」
「リズさんに何を話しているか聞かせて頂けますでしょうか? ええ、むこうで‥‥」
 鹿嶋はこの冷やかし組をヘッドロックして、引きずっていった。しばらくすると、セージと神撫の必死の言い訳に近い悲鳴が聞こえていた。鹿嶋は怒ると怖いのだ。彼らを見送っているリズは苦笑するしかなかった。
「快勝だったから良いような物、苦戦だったらこんな冗談言えないな。あまり冷やかす物じゃない」
 大人な榊もそれを一部始終見ていたので、そのやり取りを見て溜息をついていた。
「榊さん。今回の助力ありがとうございます」
「うん、解放の一歩おめでとう」
「はい!」
 続々と整備と休憩を終えた傭兵達もリズに解放の第一歩の祝いに来た。

 しかし、これは一歩でしかない。まだ、解放への道は険しいのだ。