●リプレイ本文
●包囲!
バグアに取り囲まれたリズ・A・斉藤(gz0227)と傭兵一行はすぐにリズを囲み、敵をにらみつける。
「さて、いい感じに囲まれちまったな。なんかいい手はあるか?」
セージ(
ga3997)はこの状況を軽口で乗り越えようと、周りの仲間に聞いた。
「この状況だと、1点を撃破してから撤退だと思います」
リズと水上・未早(
ga0049)が即答する。
「そうか」
「鹿島さんはリズさんを! ベルさん、指揮官の動きに注意してください!」
「私が、周りを把握して逐一指示します」
水上の言葉を察したのか、リズが全体指揮を執ると言う。
「わかりました」
鹿嶋 悠(
gb1333)とセージがリズを守るように囲み、ベル(
ga0924)が指揮官であるゲルマの行動に注意を払う。
水上が後方に制圧射撃を撃ち続けると、襲ってくる後方の人型キメラは「キーッ!」と叫びながらも先に進めない。そこで、イレイズ・バークライド(
gc4038)と赤い霧(
gb5521)が飛び出し、
「容赦はせんぞ! 屑共!」
イレイズはカプリコーンで足払いをして転かす。そこで赤い霧のガノが倒れたキメラを叩き斬る。
「この人を護りに来たんだ‥‥護りきらせて貰う!」
後方にいる蜘蛛型キメラを見据え、雑魚の掃討を先にする水上、イレイズ、赤い霧だ。
「リスターさんは血路を開くために。私たちと共に後方を!」
「何?! 俺はリズを守る!」
予想の範囲でリスターは未早の言う事に渋る。別に携帯していた銃で、迫ってきた雑魚キメラを撃ち抜いた。
「リスター! 水上さんの言うことを聞いて!」
「くっ! わかったよ」
リズに言われリスターは渋々剣と銃を構え、未早の指示に従うことにした。
後方の敵は制圧射撃によって動きは鈍くなっているが、他三方から敵は迫ってきている。
「なあ、鹿島さん、1つ競争というのはどうだ?」
リズを庇いながら剣を振るうセージが黒いオーラを纏った鹿島に尋ねた。
「なんですか?」
「キメラを一体倒せば1点。攻撃やその余波を味方に当てたら‥‥マイナス5点でどうだ?」
「‥‥いいですね、受けて立ちましょう」
迫ってくるタイツキメラ2匹に2人は、刃のひと突きで1体ずつ倒す。立て続けに襲いかかる雑魚を、切り裂き、吹き飛ばしていく。
「鹿嶋とセージはリズの傍を離れるんじゃないぞ。その子はレジスタンスにとっては希望だ」
不破 梓(
ga3236)は、敵指揮官の方向を向いて、襲ってくる雑魚キメラを月詠で斬る。
「まず、雑魚を蹴散らしてから‥‥あいつだな」
時枝・悠(
ga8810)は敵指揮官を睨みながら雑魚を紅炎で斬る。一体を掴んでは、蜘蛛型キメラに投げつける。蜘蛛型キメラは体の部分から電撃を発して、投げた雑魚キメラを焼き殺した。
「ふ、無駄なあがきを」
ゲルマが蜘蛛型キメラを進軍させる。蜘蛛キメラはガトリング砲を撃ち続けてきた。
「あぶない!」
「悠さん!?」
鹿嶋がリズを抱きかかえるように庇い転がる。セージ達も四方から来るガトリングを何とか躱した。
「やはり厄介だな!」
赤い霧がガノを掲げて雑魚敵を蹴散らし、蜘蛛キメラの足までたどり着く。雑魚キメラは赤い霧に襲いかかろうとするところに、水上の制圧射撃で押され、リスターとイレイズの攻撃で倒されていく。
「ウゴオオオオオ!」
獣の叫びでガノを蜘蛛キメラの足にたたきつける。赤い壁が一瞬見え、弾かれるがそれでも赤い霧は攻撃を止めない。
「敵指揮官は動こうとしない‥‥」
ベルが制圧射撃で雑魚を足止めしている。蜘蛛キメラも一定距離まで進んだが、止まったままだ。
「‥‥いまです!」
不破と時枝が動けない敵の中を突っ走り、指揮官〜ゲルマ〜の所まで一太刀浴びせようとする。しかし、剣で受けきった。
「早くも殺されに来たか!」
「違うな! 倒れるのはお前だ」
「ゴチャゴチャ言うのはキャラじゃないな。シンプルに行こうか。殺れるものなら殺ってみろ、だ」
不破は月詠を納刀して拳と刀で連撃を試み、時枝の連撃で圧倒しようとするが、ゲルマは剣を巧みに操って、躱したり受け止めたりしていた。
「同じ二刀流か! 面白い!」
彼は剣で二人を払い、構えをとった。
●リズを守る二人
「今で10だ! どうだ?」
「こっちは12ですね」
「かぁ!」
鹿嶋とセージの勝負は鹿嶋がリードのようだ。
「なんとか稼がないと‥‥おっと!」
後ろから迫ってくる敵を、真デヴァステイターで撃ち殺す。
「勝敗の景品はあるのですか?」
鹿嶋は牛鬼蛇神を振るって周りのキメラを屠る。
「ああ、それは考えて‥‥」
と、急接近していた雑魚キメラがシミターを掲げているところで対応が遅れる‥‥。
(「やばい」)
しかし、そのキメラは倒れた。
「余裕ばかり見せては駄目ですよ」
リズがウィンクしていた。スコーピオンでお互いの背中を守っていてくれたのだ。
「リズに言われると申し訳なくなるな」
男2人は苦笑して、襲いかかってくる雑魚キメラを倒して行く。
「蜘蛛キメラは一体だけに集中! もし蜘蛛キメラ一体だけ倒したら、お願い!」
と、リズは叫ぶ。
●活路
(「他に活路はなるのかしら!」)
水上は頭の中でどうすればいいかを一生懸命考えていた。今の状況はリズの言うとおり、蜘蛛型に集中することが正しいだろう。
赤い霧はガノを大きく振るって、蜘蛛型キメラの足を切り裂く。バランスを崩しかけるキメラが口から何かをはき出した。赤い霧は何とか躱す。近くにいた雑魚キメラが絡め取られて身動きできなくなっていた。苛ついたのかガトリング砲で赤い霧を攻撃する。ガノで防いで跳んで躱す赤い霧。水上が制圧射撃で雑魚と蜘蛛型の動きを止めてくれたので、彼は体勢を立て直せた。
「予想通りと行ったところですね‥‥」
水上は銃撃を止めない。
●刹那の勝負
時枝の連撃を何とか躱し続けているゲルマに、不意を突くような一閃を繰り出す不破、援護射撃のベル。しかし、ゲルマはその攻撃を剣で全て受け流す。さらに彼は豪快な剣撃で、彼女たちの肌を徐々に傷つけている。時枝の紅炎の袈裟斬りをゲルマはロングソードで受け流してから、彼女の腹に蹴りを入れて吹き飛ばした。
「流石強化人間といったところか‥‥」
時枝が受け身ですぐに起き上がり、口から流れる血をぬぐう。
不破は月詠も刀も納刀し、特殊な構えになっている。
「ジャパンの『Iaijutsu』か! ふっ、やれるならやってみるがいい!」
ゲルマがあざ笑う。
「試してみるか?」
「上等!」
にじり寄る両者。仕掛けたのはゲルマが先だった。視覚を付いての一撃!
「ここからなら抜けまい!」
しかし、不破は剣が伸びる腕側に半円のように躱してから、更に後ろに回る。流し斬りだ。
「なに!?」
「はぁ!」
それと共に紅蓮衝撃を篭めた居合がゲルマの延髄を斬る!
ゲルマが倒れ、周りの人型キメラが花火のように爆発する。
「!‥‥戻ってきてください‥‥!」
ベルはすぐさま制圧射撃で爆発しないキメラを足止めした。
同じ頃、赤い霧とイレイズ、リスターが蜘蛛の攻撃を躱す。
「――■■■ッ!」
「焼き切れ‥蛍火!」
「いい加減おとなしくしろ!」
ガトリングや粘着弾を躱すためにジグザクに動き、脚や胴体を斬る。水上が制圧射撃や、援護射撃を駆使して、サポートしていき、ついには赤い霧とイレイズが蜘蛛キメラへ胴体に渾身の一撃を見舞って沈黙させる。それを見た水上が、
「いまです!」
と、叫ぶ。セージが閃光手榴弾を放り投げる。
「伏せろ!」
激しく光る閃光でまだ動くキメラ達の目をくらました。ゲルマが倒れたことと閃光による相乗効果で、相手はほとんど何も出来ない。
「指揮官を倒した! いそげ!」
不破と時枝が戻ってくる。その殿にベルがいる。追いかけてくる蜘蛛キメラ一体に対して、ベルが貫通弾を使い、足止めする。
「‥‥いそいで!」
全員は必死に走った。後ろを振り向くと、集落全体が爆発して煙を上げているように見える。
「何とか逃げ延びたな‥‥」
呼吸を整え、まだキメラが騒いでいる集落を後にした。
●希望砦では
何とか希望砦に戻ったリズと傭兵一行は、怪我の治療や報告で忙しかった。
「本来は向こうで弔いたかったが‥‥。ここの指導者を逃がすことが優先だからな」
と、簡単な墓を建て、バグアの罠のために殺されてしまった集落の人々のために弔う。墓には鈴の髪飾りが添えられていた。
リズはリスターと共に、「今回は罠であった」報告のあと、警戒を強める話をする。しかし、リズが交渉に向かう方針は変えないことになっていた。今回の事件だけで、引きこもるわけにはいかないのだ。
傭兵達が怪我を治しているとき、リズだけは一人になった。そこに、後ろから「リズさん」と声がかかる。鹿嶋がやってきた。
「悠さん」
「まだ気が張り詰めていますよ」
「‥‥」
その言葉でリズは黙ってしまう。悠は溜息をついた後、リズを抱きしめる。
「ウィルソンさんのことは聞ききました。今回の間もずっと辛かったでしょうけど、頑張りましたね。でも、貴女は故郷奪還のリーダーや能力者である前に『一人の女の子』ですし‥‥。辛い事も一人で抱え込まずに俺も一緒に背負わせて貰えませんか? 小さな存在でしかない俺ですけど、貴女一人分くらいは受止めることはできますよ」
「悠‥‥さん」
リズは鹿嶋の胸の中で、静かに泣いていた。
解放の道はまだ遠い。