●リプレイ本文
●広場でのこと
椎野 のぞみ(
ga8736)が広場でストリートライヴをしていた。ほどよく人が集まる中で、元気に歌う。トークをしたり、リクエストに応えたりと色々忙しく充実した時間であった。
「今日は本当にありがとう!」
椎野はそう言って、締めくくる。
帰り支度をしていたときに、視界には知った顔が猫と遊んでいることに気付いた。リズ・A・斉藤(gz0227)だった。
「あれは‥‥リズさん」
片付けも急いで、リズの所に寄っていく。
「おひさ〜リズさん」
「椎野さん」
「珍しいね、LHにいるって」
「ええ、休暇なの」
野良猫を抱っこして、椎野の話にリズは答えた。
「今日の健診、悪い所も無くてよかったですね、ゆき」
風雪 時雨(
gb3678)が愛猫のゆきを動物病院に看て貰った帰りのことである。猫が何かに気付いてニャーと鳴いている。
「どうかしましたか?」
と、ある方向に行きたがる猫にしたがってついていくと、椎野とリズが居た。
鹿嶋 悠(
gb1333)は重体からの回復の検診を終えて広場にいる、そこに
「よう、元気か?」
暑さでノックダウン中のセージ(
ga3997)が呼び止めた。
「こんにちは、暑いですね」
「ああ、まったく、こんなに暑いのはかなわないな。で、お前は何処に行ってた?」
「病院です」
「‥‥そうか、重体から回復してないのか」
「最後の検診でしたよ」
など、よく会う2人はそう言う事を話していた。鹿嶋はそれ以外に少し考えていた。
(「リズさんはあれで持ち直してくれればいいのですけど‥‥」)
と。
噴水から出る水が涼しさを呼ぶが、全体的に暑いので、動くことが苦行に近い。もしここから離れるにしても、早く涼しい場所に行きたいと思う。
「とはいっても、男だけで茶店に行ってもな〜」
セージがぼやくと鹿嶋は苦笑していた。
鹿嶋は少し周りを見ると、一部賑やかな場所があった。椎野が少女と話をしていたのだ。その姿はとても見覚えがある。
「セージさん一寸」
「ん? なんだ? あれは‥‥」
そう、リズが広場のベンチに座っていたのだ。その周りに見知った顔が居る。2人はそちらに向かい、こんにちはと挨拶したのであった。
「あ、こんにちは」
リズは微笑んで挨拶を返す。
「悠さんはもう大丈夫ですか?」
「ええ、もう大丈夫です。心配をおかけしました」
リズと話をしながら猫を撫でる鹿嶋。猫はぐるぐる喉をならしていた。
「セージさんは暑さでばてている顔になってます」
「ああ、暑さで半死半生だ。涼しい場所に行きたいな」
●何となく集まって計画
涼しい喫茶店に向かう一行。歩くだけでも汗が出て暑い。セージが早歩きをしていることが一寸可笑しかった。クーラーの効いた涼しい喫茶店に入った時、「ふー極楽極楽‥‥」と気持ちよさそうだ。
「なるほど、休みの過ごし方が分からないと」
「はい」
リズにとって長期休暇を過ごす方法が今ひとつ分からなかったことを歩きながら話していたのだ。
「話によると明日まで休みなのですよね?」
椎野の問いにリズは頷く。
「では、プールと行きましょう!」
「ぷ、プールってなんですか?」
「うん、水着に着替えて思いっきり遊ぶんです。え? プールを知らない?」
「‥‥はい」
真っ赤になってリズは答えた。
プールとは何かと4人は説明する。遊ぶ事に関して無知な彼女は、「はあ」と返事出来るぐらいであった。
「では、早速水着を買いに行きましょう!」
椎野の提案に皆は頷いた。
「そうですね。俺も用意しておかなければ」
鹿嶋も楽しみで仕方ないらしい。
「荷物もちは俺に任せろ」
セージが胸を叩いた。
水着売り場に向かった5人は、男衆2名だけ水着を買い、女性陣が決まるまで待つことになる。しかし、リズはその辺のファッションを知らない。戸惑うことばかりで水着をずっと睨んでいる。
「もしかして選べない?」
「‥‥はい‥‥」
椎野がニコニコしてリズに合う水着のチョイスをしていく。
一方、セージが鹿嶋に、
「男が薦めたいのを言うのもアリだと思うぜ」
「そんなわけ無いじゃないですか」
「まあ、俺らも分からないからな‥‥」
男達はその手のファッションに疎かったため、口出すことを憚られた。
椎野は赤い花柄のタンキニを選び、リズにはピンクのパレオビキニを勧めた。
「‥‥こ、こんな格好‥‥恥ずかしい」
「なになに。大丈夫だって。鹿嶋さんにアピールできるよ」
「‥‥!」
リズの顔は真っ赤になる。ごく普通のビキニでパレオなのだが、それでも刺激が強かったらしい。
「でも、のぞみさんはなぜその水着を選んでいるの?」
「だ、だって、リズさんと‥‥ちがって‥‥ここが」
胸をぽんぽんと叩いて、溜息をついた。しかし、リズはその辺がよく分かっていなかったので、首をかしげるのであった。
「では、私はこれが良いかな」
リズは、パレオだと動きづらいだろうと言う事で、パーカーとビキニにした。
各々決まった水着や道具を買うと、待ち合わせ場所を決めてから一旦解散となる。
椎野はリズにこう耳打ちした。
「あした、早く起きてボクの兵舎にこない? お弁当一緒に作ろう」
「はい」
●プール!
早朝にリズは椎野の兵舎に向かった。
「おはよう」
「おはようございます」
ふたりで、おにぎりやサンドウィッチを作る。唐揚げなどもさくっり揚げて盛りつける。
「みんな、美味しいって言ってくれればいいね」
「はい」
と、和気藹々な雰囲気。
そして、指定時間に皆が集まり、プールに向かった。
男達は、海パン1つで充分なのですぐにしたくは整うが、女性はそうはいかない。しばらく待ったあと、赤い花柄のタンキニの椎野と水色のビキニでパーカーを羽織った姿であった。
セージは2人に見とれている。鹿嶋は真っ赤になりながら
「リズさん、似合ってますよ」
と、褒める。
「あ、ありがとう‥‥悠さん」
「初々しいですね〜」
「うん、初々しいな」
「‥‥」
椎野とセージ、風雪は、立ち尽くしている鹿嶋とリズの2人をほほえましく見るのであった。
しかし、容赦ない日差しで我に返るわけであり、セージは勢いよくプールに入る。リズはどうやって遊ぶのか分からない顔をしているので、鹿嶋と椎野がプールというのはこうやって遊ぶものだと教えていた。
「そう‥‥なのですか」
本当に遊び方を知らない。否、遊ぶと言う事をしらない少女。
「こうやるんだよ」
椎野が手本で流水プールの流れにしたがって流れてみる。
「なんとなくわかった気がします」
リズはおっかなびっくりプールに浸かる。しかし、流水プールに慣れていないため、おかしな流れ方をしてしまった。決して溺れているわけではないが、不安になる。
「あ‥‥きゃー」
「リズさん!」
急いで鹿嶋がプールに入りリズを抱き留める。安堵するリズだが、今度は鹿嶋と肌と肌が重なることで真っ赤になっていた。鹿嶋も真っ赤になるが、リズが流れに慣れるまではこのままがいいのではと思った。
「あまり泳ぐのは‥‥苦手で‥‥」
「では泳ぎの練習を後でしましょうか?」
風雪はあまり泳がず、荷物番をしているという。セージの方は思いっきり楽しんで流水プールを泳いでいた。しかし、泳げるが上手くはない程度で、普通の人と変わらない。椎野も加わって、しばらく流水プールで身を任せて流れておき、そのあと50mプールに移動して、今回の事で、リズがあまり泳げないと知った鹿嶋が泳ぎの練習に変わっていく。椎野とセージ、風雪はそれを見守っていた。
「力を入れないで」
「こう‥‥ですか?」
流石に運動神経などはいいのか、リズは泳ぎをすぐに覚えたようだ。
お昼時になったら、皆が集合し、昼食をとる。
「じゃーん、リズさんと合作です!」
椎野がバスケットやタッパを広げる。
「お、2人で作ったのか?」
セージは椎野とリズを見ては訊くと、リズは恥ずかしそうにこくんと頷いた。
「サンドウィッチはリズさんが作りました!」
「どれどれ‥‥うん、美味いな。前に斉藤さんところで食べたシチューより美味くなってる」
セージはサンドウィッチを頬張って言うと、リズはありがとうと照れながら言った。
「うん、美味しいですよ。リズさん」
「悠さん‥‥」
リズの顔はどんどん真っ赤になっていた。
「おにぎりうめぇ」
セージはご機嫌だった。
「デザートでシャーベットを作っていますので、よろしかったらどうぞ」
と、風雪がクーラーボックスを開けて自作のシャーベットを見せた。
こうして、プールでのんびりと楽しく遊ぶ時間を過ごしていく。水中バレーを楽しんだり、流水プールのリベンジをしたり、一寸水泳競争したりと、思いっきり楽しんでいった。
●おわり
ほどよく肌が焼けた5人はプールから上がり、広場に着く。
「今日は楽しかったな。また来年もこうやって泳ぎに来ようぜ」
セージはリズや一緒にきた3人に言って、其処で別れた。
「リズさん、いつかまた心から、一緒に遊びましょ! またね!」
と、のぞみが言って手を振って去っていった。
「では、自分も。今日は楽しかったです」
風雪も一礼して帰って行く。
残ったのは、鹿嶋とリズだけになった。
「ホテルまで送ります」
「ありがとう、悠さん」
ホテルまでリズは笑顔で今日の出来事を鹿嶋と話していた。笑顔はあどけない少女で、鹿嶋も心の底から明るい彼女になったと嬉しく思った。
ホテルのリズの部屋まで着くと鹿嶋は、
「リズさん」
「悠さん‥‥?!」
鹿嶋はリズを抱きしめる。リズは少し驚いたものの、抱きしめ返した。そして、鹿嶋は彼女の額にそっとキスをする。
「また暫く会えませんし‥‥その、お守り代わりです」
照れ隠しにそっぽを向いて鹿嶋はそう言った。
「ありがとう‥‥悠さん」
リズは微笑んで、強く抱きしめた。
こうしてリズの休暇は終わった。また再び故郷解放のために、戦い続けるのだろう。