タイトル:【コミ】冬の原稿模様マスター:タカキ

シナリオ形態: イベント
難易度: 不明
参加人数: 20 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/18 04:09

●オープニング本文


 冬。
 クリスマスや年末年始もあるし、遠方では何かしら大きな戦いもある。しかし、ヲタクは二次創作への飽くなき想像力を発揮するイベントに向けて創作活動に入っていた!
 そう、大きな戦いがあろうとも、世界が滅亡に貧していてもヲタクの熱意は燃え尽きない(萌え尽きないに変えても可能な点に注意)!
「今回のコミレザ、1月に延期だって」
「その分修羅場を回避できるという物だ! 抜かるな!」
「おー!」
 ヲタク達は闘志を燃やし、机に向かっていた。

 で、ラストホープのとあるホテル。そのホテルにエスティヴィア(gz0070)が居た。本業の方も一段落付いたのだが、原稿に悩んでいる。
「あー原稿どうしようかなぁ‥‥。『息娘弄り』のモデル募集しようかなぁ。でもいまは私の中じゃ男の娘ブームは過ぎ去りそうだけど、またピンと来るモデルが来たら違うかも知れない‥‥」
 パソコンを弄り、新しいモデルを探すために、友人あたりに訊ねようと考えた。既に本としての原稿の方は完成している。『魔法と少女と肉体言語』の学園物設定集とショートマンガであった。

 フィアナ・ローデン(gz0020)は来年に行われるコミレザに、どのように変装していくかを考えている。

 さて、貴方もコミレザに向けて原稿を書くか、こうした創作活動を手伝いにいくか、冬の『お祭り』(とかいて『せんじょう』と読む)への前哨戦が今始まろうとしているのだ。

●参加者一覧

/ ドクター・ウェスト(ga0241) / 伊藤 毅(ga2610) / 葵 コハル(ga3897) / 鈴葉・シロウ(ga4772) / アルヴァイム(ga5051) / 秋月 祐介(ga6378) / アキト=柿崎(ga7330) / 葛城・観琴(ga8227) / 風間・夕姫(ga8525) / Anbar(ga9009) / 三枝 雄二(ga9107) / リリー・W・オオトリ(gb2834) / 矢神小雪(gb3650) / 風雪 時雨(gb3678) / ティム・ウェンライト(gb4274) / 鹿島 綾(gb4549) / 流叶・デュノフガリオ(gb6275) / ラナ・ヴェクサー(gc1748) / 春夏秋冬 立花(gc3009) / エレシア・ハートネス(gc3040

●リプレイ本文

●【M&W】裏取引?
 子狐屋では、秋月 祐介(ga6378)とアルヴァイム(ga5051)(以下黒子)は店長の矢神小雪(gb3650)となにやら話をしていた。雰囲気はなにか裏取引の緊迫感があふれていた。
「例のブツを1月9日に委託販売するために、ある程度値引きできないだろうか?」
「そうですねー。売れ行きなどがどうなるかによりますが」
「一部はこちらで出そう」
 黒子が封筒を小雪に渡す。小雪はその中身を見ると笑顔でこう答えた。
「予想人数だと、これだけでも足りそうですよ。飲み物などはそちらで用意してくれれば食べ物でまかなえます」
 秋月はその中身が何かを気にすることもなく、指で眼鏡を押さえる仕草をしてから、
「助かりました。では‥‥、今回の打ち上げはお願いします」
「はい」
 なんてことはない、ただの打ち上げの話であった‥‥様子だが? 委託、売り上げと、なにやら小雪が作ったものを秋月のサークルで委託販売するらしい。いったい何を委託販売するのだろう?

●ネタに悩むドクター
「ぬおおお〜、ネタが、ネタが〜!」
 頭抱えて泣きのように涙を流すドクター・ウェスト(ga0241)がもがいている。ネタは浮かんだが、それが書けるかどうかは別問題というわけだ。
 彼は趣味の場合基本1人で何かをする。しかし、厚意でアシスタントに来てくれる人はいるが断ることはしない。
「く、肉体言語2の学園ラブコメドラマにしようかね〜」
 なんとか決まったようだが‥‥ネームやコンテを書き始めると彼の顔がゆがんでいく。

●熊
 鈴葉・シロウ(ga4772)は再びKV美少女関係の本を作ろうと考えている。
「前回は血涙を流す事になったが、今度はそうはいかんよ。このふわもこに賭けて!」
 覚醒して熊頭部になってから、キリリと原稿に取りかかる。
「KV戦での黎明期による初期機体達で、親切丁寧に大部隊の運営方法や小隊戦術を教えるテキストにする。決まりだ」
 かなり時間があったためネタは大丈夫だったようだ。しかし、ほぼ一人でするためその負担は大きいだろう。
「おっと、フィアナにちょっとコスプレアドバイスを送っておこう」
 と、ポチッとメールを送信した。

●集合【M&W】
 大規模作戦などで散らかっている秋月邸に葛城・観琴(ga8227)が掃除機をかけている。エプロン姿で色っぽい。秋月が出かけているので、客の対応などは彼女だ。なぜ彼女がここにいるのは、秋月が観琴に合い鍵を渡していたからである。
「どういったもの作ろうかしら♪ ふんふふんふ〜ん♪」
 今月いっぱいの献立など考えている。気分は新妻。
「ただいま戻りました。参加の人はまだ来てないのですね」
「お帰りなさい、祐介さん。そうですね〜」
 先に帰ってきたのは秋月と黒子だったので、家事に専念できる。
「では、私は後半のシナリオプロットをまとめていこう。書斎を借りるぞ」
 黒子が山となっている今回に出す予定である『鉄の騎士物語・後編』を秋月の原稿を調べるようだ。大きな話の流れはできあがっているのだが、スタッフによってルートが異なるため、同人誌媒体でどこまで作れるかが打ち合わせなどの焦点となるだろう。
「今日の晩ご飯は何にしますか?」
 観琴が秋月に尋ねると、
「そうですね‥‥」
 秋月は希望の食事を話す。これは今まで『狂気の教授』としてLHやカンパネラの混沌の渦に関わった人物とは思えないさわやかさである。
 そんな時に、ピンポーンとインターフォンが鳴った。
「はい‥‥」
 秋月がインターフォンをとろうとする前に、ドアが開く。
「ラナ・パトリシア・エレイン・ヴェクサー‥‥秋月さんの危機を聞いて、自宅より泳いで参りました!」
 どうやって泳いで来たのた分からないが、スク水でずぶ濡れのラナ・ヴェクサー(gc1748)がそこにいた。
「‥‥!?」
 唖然とする秋月と観琴だった。
「‥‥まぁ、その、何だ。そんなスク水で大丈夫か?」
 後ろで、ういろうをたくさん持ってきた鹿島 綾(gb4549)がラナに訊く。
「‥‥寒いです。タオル貸してください」
 当然の答えが来た。
 こんな真冬に泳いでくるのはどうなんだろう。風邪を引いても知らないぞと総ツッコミ。
「ん‥‥2人とも楽しそうだね‥‥」
 エレシア・ハートネス(gc3040)が綾とラナの後ろから声をかけてきた。
「俺も唖然としているんだけど」
 綾がほおを書いて苦笑している。
 その後しばらくしてから、
「教授、また手伝いに来ました」
 伊藤 毅(ga2610)が、
「またデバッグで手伝いに来ました〜」
 三枝 雄二(ga9107)がやってくる。
「おばさん、重いよー」
「男の子でしょ? それぐらい持たないとだめだよ。こんにちは! 今回も一緒にがんばろう!」
 画材がいっぱい入っている車輪付き鞄を重そうに引っ張っているティム・ウェンライト(gb4274)と身軽な格好なリリー・W・オオトリ(gb2834)も秋月邸にやってきた。
「今回もよろしくお願いします」
 春夏秋冬 立花(gc3009)や風間・夕姫(ga8525)、Anbar(ga9009)と流叶・デュノフガリオ(gb6275)など前回に参加した人物が続々やってきた。
 小綺麗になったリビングで13人がいる中、【MODE−AUTUMN】のリーダー秋月が、
「では、冬のコミレザのために後編を作るぞ」
 と、宣言した。

●アキトとエスティヴィア
(「‥‥この機会を逃したら男が廃る‥んでしょうかね〜」)
 ホテルのロビーでアキト=柿崎(ga7330)がフロントに頼んでここでしばらく原稿を書いているある人物を呼んでもらった。その相手は‥‥エスティヴィア(gz0070)。彼女は「誰だろう?」と思いロビーに向かって、アキトの姿を見てにっこりと笑う。
「お久しぶりねぇ‥‥アキト」
「エスティヴィアさん、お疲れ様です。原稿の方は捗ってますか? 何か手伝える事が有ればと思いまして」
「まあ、今回はゲストとして原稿を描くものもないし、自分が出すものはほぼ出来ているから仕上げぐらいかしらねぇ」
「仕事の合間に描いていたんですね」
「描き直しぐらいの箇所の修正かしらねぇ。手伝ってほしいと言えば、読んで感想を聞かせてほしいぐらいかしらね」
 エスティヴィアはクススと笑う。
「フィアナにも12日呼ばれてるのよ。ライヴがあるって」
「そうなのですか」
 と、ロビーにあるカフェで普通に会話をしていた。そのあと、2人は部屋に入って、仕上げや修正作業に入るのである。
(「タイミングを考えないと」)
 アキトは胸にしまっている『あるもの』を大事にしていた。

●ドクターの苦悩
『肉体言語ラブコメ』
 主人公は魔法王国の伯爵で金髪眼鏡というが、ごく普通の青年がきらびやかな貴族衣装をまとったような人だ。
 ある日、パーティが催されることを知るのだが、
「此度のライジングサン(パーティの名前)‥‥どうしよう」
 このパーティはペアでの参加なのだ。彼は何人かの女性と知り合いなのだが、意中の人などは決まっていないのだ。
「伯爵様〜、美味しいパーティに誘ってくださるって本当?!」
「ひかりさん?!」
 いきなりやってきたのは【ひかり】。
「ちょっと、ひかりさん! 私が先ですわ! すてきな舞踏会が開かれるそうなのですね!」
 【ひかり】を押しのけてやってくるのは【かなた】
 と、伯爵モテモテらしい。このあと、リーゼロッテやシャルロッテもやってきててんやわんや。
「いきなりきて、え? ええ? そこで格闘? やめてくれー!」
 4人でバトルロイヤル状態になって、劇画技で吹っ飛ぶ主人公。
 その先にいたのは執事のアレックスだった。
「私めを選ぶとは、伯爵も罪ですよね‥‥」

 ‥‥。
 ドクターは固まった。
 ほかにネタはなかったのかという自問と、展開を考えるとドクター的に怖気が走る。
「描けるか〜!」
 原稿を放り投げるドクターの背中は泣いていた。

●打ち合わせ【M&W】
 【MODE−AUTUMN】と【ウェンライト工房】の合作はかなりの回数になっている。すでに、仕事場の位置はいつもの通りといわんばかりに自然と決まり、各々が作業に取りかかっていた。流叶、Anbar、エレシアはリリーから絵を教えてもらっている。秋月の所有するパソコンは起動状態で、各自が持ち寄ったパソコンでちょっとした暖房にもなりそうだった。
「‥‥という訳なのだが」
 秋月と黒子がスタッフに大まかなシナリオを教える。ラスボスは黒子と決まっていようだ。短期間で作るには限界はあるだろう。ちなみに、ノーマルエンドでは黒子の存在は知られず世界は一時の平和だけになるそうだ。ベストルートにて、敵将も仲間にしていくという難易度の高いものらしい。あと、各自ヒロインルートがある恋愛ゲームにもなっているようだ。
「ふむ、私がラスボスということはまず揺るがないのだな」
「大規模になる度に歓喜しているからな、ブレはないだろう」
 ユニットグラフィックなどは前作からのデータがあるのだが、共通ゲームエンジンを使用している事で時間短縮は図れる。今回ゲストはいないため、『原稿待ち』のロスはない。
「各位の役割の提示をしてほしい」
「私は姉御肌タイプのサブヒロインで‥‥主人公側でね。なんだ、あまりいかがわしい本がないな。同人誌は除いて」
「意見を言いながら、自分の部屋を物色しないでくれたまえ! 風間君!」
 秋月がテーブルをどんとたたきながら夕姫に突っ込む。夕姫はどうも、怪しい本を探していたようだ。秋月の彼女は寛容なので見つかっても怒りもしないし破棄はしないから隠す必要性がない‥‥はず(羞恥から隠すのもあるが)。
「私たちはラナの部下で」
「そうそう。ラナが少佐という設定」
 敵側で流叶と綾がラナの部下と言う設定で敵役になり、最終的なラスボス・黒子を倒すフラグとして、仲間になるという形にしたいという。
「俺は黒幕(ラスボス)のエージェントという形で」
「ふむ、了解」
 Anbarの案はすぐに了解を得られた。秋月(外交官)、三枝(敵国の枢機卿)、伊藤(大隊長)と役は変わってない。
「では、ラナを中心とした3人はどういう事に?」
「まあ、こんな会話が予想されるな」

〜〜〜
 たぶん陣で展開前。
 ラナは指揮を執りながら相手の行動を読もうと考える。
「‥‥」
 しかし、目線は部下である綾と流叶の『たゆん』なところだった。
「‥‥くっ」
「どうしました少佐?」
「なんでもない!」
「‥‥ははぁ。これですか? でも戦闘時にはす・ご・く邪魔ですよ?」
「そうそう、肩がこります」
 流叶と綾はそういう。
 ほかの部下たちもラナの方を見るため、
「公開処刑?」
 と、主人公達のヒロインにもいろいろ言われ、
「公開処刑って言うな――っ!」
 と、ラナは叫ぶのであった。
〜〜〜

「ふむ、会話の度に2人や参戦ユニットのヒロインの胸が揺れる(春夏秋冬は除く)となおよいな。採用」
 教授の業として、『たゆん』は外せない。
「採用された!?」
 驚いたのはラナだった。
「貧乳言うな!」
「まだ言ってない!」
 春夏秋冬にもその話で反応してしまう。

「さて立花君の設定が深かったな」
「そうよね。ラスボスの娘で、どっちも許せないって言うことで。後で裏ボスになるの」
 春夏秋冬の設定などはラスボスの娘であると言うことがあったのだが、黒子が親であるという事を知ったときに、主人公の選択次第で一緒に離反や彼女だけ敵に回るという設定(シナリオ)らしい。
「すみません、時間的問題でそこまで複雑に出来ないかもしれませんね‥‥」
 デバッグ組と伊藤と三枝が止める。そして、メインシナリオのプロット上、秋月もその話を作ろうとすると、制作難易度が上がるのだ。
「やっぱりだめですか」
「すまないな、その設定では難しい。もう少しソフトにしないとこの1ヶ月で完成できるか希望が持てないね」
 そう、各種ヒロインルートがあるために、実際プログラムとシナリオを手がける秋月に大きな負担となる。戦闘関係のバランスは黒子に任せてもいいだろうが(全員「モンガーだし」)、ドラマなどを考えると、メディアの容量ではなく秋月の仕事量で無理があるだろう。
「むむ、次回作でいい役をとらせてもらいます」
「メインヒロインだしいい役でしょうに!」
「設定練り直すというのは? 俺もそうしようか?」
 綾がういろうをもぐもぐ食べながら難しい部分があるなら直してもいいという。
 一方、イラスト担当スペースでは、
「ペンの握り方はこうだね」
「こう?」
「そうそう」
「難しい‥‥ね」
「なかなか奥が深いな‥‥」
 リリーが流叶やエレシア、Anbarに絵の書き方を教えている。若手育成にやる気を出すリリーさんと、パソコンの前で画像取り込みなどに追われるティム。和気藹々としているが、短期間で仕上げないといけないため、リリーとティムは実は大忙しだ。
「手が疲れたー! でもまだやらないと!」
「疲れ目用の目薬ない?」
 ウェンライト家はすでに修羅場模様だった。

 すでに設定ができあがっているため、コスプレ衣装は初参加となるラナぐらい。綾のほうも少し手を加えるだけらしい。流叶や観琴が彼女の寸法を測り、一緒に作っていく。
「今回、エスティヴィアさんは呼ばないのですか?」
 誰かが秋月に尋ねると、
「今回はいいでしょう、毎回というのも相手に迷惑ですし。それに、2人の問題がありますから」
「2人?」
 秋月は意味深な事を言いながら、シナリオとプログラムをくみ上げていく。

 作画のチェックやドラマ性の演出の打ち合わせは徐々に激化していく中で、着々とゲームが作られていくのであった。

●コハルから
 原稿がほぼ終わり、入稿準備に取りかかっているところだった。
「む、メール?」
 作業中のエスティヴィアがメールを見て首をかしげる。葵 コハル(ga3897)とフィアナ・ローデン(gz0020)が話があるというのだ。
「何の用件だったのでしょうか?」
「何か頼みたいことがある‥‥って何だろう?」
 まだ首をかしげたままのエスティだが、アキトも一緒にコハルの指定した場所に行く。フィアナもいるし、コハルは仮面コスプレイヤー‥‥エスティはだんだん不安になっていった。
 ローデン事務所が待ち合わせで、裏にあるフィアナの自宅でのんびりお茶を飲んでる、コハルに風雪 時雨(gb3678)、フィアナがいた。
「いらっしゃい」
「どうしよう〜エスティ」
「どういう事なの? メール内容が用事書いてなかった分、わからなかったんだけど」
「実は、ニヒヒ」
 コハルは何か企んでいる顔をして笑い、簡単な企画書をエスティに見せた。
「エスティも一緒にコスプレしよう!」
「‥‥ええっ! 私は作る専門だからいいわ!」
 驚くエスティは全力で拒否する。
「えー楽しよ〜。『恥ずかしいのは一瞬だけ』だから」
 コハルがニコニコしている。
 フィアナ的には変装する手間が省けるのでこういう誘いはOKなのだが、エスティ的には自分が着るというのに抵抗があるのだ。
「楽しそうではありませんか」
 アキトがニコニコしている。
「ちょっと、アキトそこは否定‥‥ファントム仮面だしむりか」
「ええ?! ひどいなぁ」
「テーマは『肉体言語2』のキャラ4人だよ!」
「本にするの?」
「もちろん!」
 頭を抱えるエスティと『どや顔』のコハルは対照的であった。
「いいじゃない、ほとんどスーツに白衣でしょ? 【かなた】のようなきらびやかな服を着たら、あの人が「きれいですよって」褒めてくれるんじゃない?」
「そんな人いないって‥‥!」
 わたわたするエスティがおもしろいのかコハルはいじり続ける。
「アキトさんも見たいよね?」
「‥‥ええ、みたいですね」
「ちょっと!」
 コハル主導のエスティいじりが続くわけだが、フィアナと時雨が止める
「本に出すコスプレテーマはいいとして、写真を撮るスタジオをどうするの?」
「前回とった場所〜」
「ならいいかな」
 配役はエスティが【かなた】、フィアナが【リーゼロッテ】、コハルが【ひかり】となった。エスティは原稿のこともあるので、それほど長くはいられないが、渋々参加してくれる。
「恥ずかしい‥‥」
 メイド姿のエスティはスカートを弄りながらもじもじしている。
「でも楽しいでしょ? ふひひ」
「‥‥!」
 否定できない自分がいることに、エスティはガックリとうなだれる。
「エスティさん、きれいですよ」
「アキト!?」
 追い打ちにアキトの褒め言葉。真っ赤な顔が余計に真っ赤になって、撮影スタジオから出て行ってしまった。
「怒った‥‥んじゃなく、恥ずかしすぎてだね‥‥ぷひひ」
「もう、エスティいじめないの」
 そんな和やかな(?)雰囲気で新しいコスプレ原稿は完成したようだった。

●【M&W】デバッグとか
 テキストを起こし、一通りくみ上げたゲームを各自のパソコンにインストールし、ほぼ全員で遊んでみる。すると‥‥
「致命的な不具合がー!」
 三枝が悲鳴を上げる。
「どこのスクリプトだ?」
「シーン06のフラグを無視してしまいます!」
「な‥‥」
「ねー、こっちは強制終了したよ〜!」
「うおお」
 どんどんあがる不具合。秋月がバグの要因のスクリプトを教えてもらっては解決していく。それがおそらく一週間は続く。
「温泉イベントでフラグが立ってないバグも!」
「そこは重要だから、ちゃんと打ち込んだハズなのに!」
 もう、見ているとパニックになっているように見える。
 観琴以外の女性陣はある時間になると帰って行くが、システム担当の男性陣は延々とデバッグだ。 しまいには、
「秋月さん、このペースで終わるのですか?」
 春夏秋冬が心配する。
「大丈夫だ、間に合わせる!」
「戦闘のバグは私が、教授はドラマ部分をつぶしてくれ」
「そうだな」
「また発見しました〜!」
「ぬおおおおお」
 ドリンク剤を飲みながら、バグをつぶしていく秋月はまさに修羅を凌駕しそうな勢いであった。

 リリーは別のところで流叶やAnbar、エレシアに絵を教えてながら、ほかのゲームで交流を深めている。
「しかし、彼らだけにして大丈夫なのか? こう、のんきに‥‥この『少女と魔法と肉体言語2』って言うゲームしてて?」
「ボク達が今の状態を手伝っても、ちんぷんかんぷんだと思うよ? 誤字程度なら教授が自分で見つけられるだろうし‥‥出来上がったときは手伝ったけどね」
「ふむ、起動したとたん止まったのは驚いたな‥‥」
「隙あり!」
「げえ!」
 と、格闘ゲームをしているとしたら、今度双六ゲームなどをして和気藹々(?)な雰囲気になっていた。
 イラスト担当などは出来上がると、よほどのことがないとリテイクはない。流叶やエレシア、Anbarの絵の能力は上がったとリリーは思っていた。ティムの方もソフトの扱いも慣れてきている(ただ、壁紙は嫁の写真だ。携帯電話の待ち受けも)。

 衣装の方はラナの分も完成し、ほかの売り子の衣装も微調整だけで終わった。
「結構この服、露出があるね‥‥」
 と、ラナは恥ずかしそうであった。

●時雨とフィアナ
 気分のよいフィアナと時雨はコミレザの変装用衣装を探していた。コハルからの提案も候補に入っているが悩んでいる。
「何か考えているものはほかにもありそうですね?」
 時雨が訊くと、フィアナは頷いている。
「でも、熊さんからメールが」
「?」
 二人で熊さんこと、シロウから届いたメールを見る。
『今年の冬は、ハイスクール的制服がオススメ』
「候補に挙げてもいいんだけど‥‥」
「ペアルックか‥‥同じ制服っていうのはどうでしょう?」
「でも、時雨学生じゃない」
 確かに彼は学生だ。
「制服ファッションなどあると聞いてますし」
「それでいくのも手かなぁ」
 と、デートも含めてフィアナのコミレザの衣装を考えていたのであった。
 どうなるかは当日まで分からないってことで。

●メディア【M&W】
 そして、バグをつぶし完成したのだが、
「マスターは出来た。問題はプレスする業者に頼むには時間がない‥‥」
「焼くしかないか‥‥」
 と、一気にメディアコピー作業になる。パソコンを持っている人全員がかり出されての作業だ。
「何枚?」
「最低でも100だな」
「ぐは‥‥」
 メディアが回っている音をBGMとしながら、今後どうするかを話し合う秋月と黒子、伊藤と三枝。
「お疲れ様です」
 観琴がお茶を持ってきた。
「あ、ありがとう、観琴さん」
 温かいお茶を飲むと、疲れがとれてくる。
「ふう、何とか間に合いました。あとは打ち上げですね」
 リビングの方でわいわい遊んでいる、リリーと風間達をみる秋月。
「君がいるおかげで、いろいろ助かりましたよ」
 秋月が観琴にお礼を言う。
「いえいえ」
 観琴はのほほんとした笑顔だった。

●様々な完成模様
 個人で書いていた、ドクターとシロウは何とか原稿を書き終えた。あとは印刷会社に任せて来年に備えるだけだ(二人は別行動だが)。
「内容をかなり変えて‥‥かなりの調整はいったがなんとかなった。体験談的なものになったけど‥‥いいだろう‥‥」
 がくりとうなだれるドクターに反して、
「よしこれなら、血涙土下座をしなくてすむ!」
 と、ふわもこ頭で満足していた。
 または、
「見本誌できたよ!」
 コハルが持ってきた写真集を見るやいなや、エスティは猛ダッシュで逃げてしまった。
「そこまで恥ずかしがることないでしょ!」

●打ち上げ【M&A】
 【M&A】のメンツは完成打ち上げのために子狐屋に向かった。
「立花さんがいませんね」
「先に小雪さんに呼ばれたようです」
「ふむ‥‥今回はお世話になります〜」
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
「「ってなんだその格好?!」」
 という会話をする中で店に入ると、メイド姿の春夏秋冬が出迎えてくれた。
「立花たんにお手伝いしてもらいます♪」
「ううう! どうしてこんな‥‥いやみんなのため‥‥みんなのため」
 ぶつぶつ言う春夏秋冬。
「いろいろ着てくださいね〜たくさんありますよ。チャイナに、今回のゲームソフトの軍服とか」
「うう」
 いろいろ遊ばれているようだ。
 各自が持ち寄った飲み物と、小雪が用意したメニューがテーブルに並ぶ。鶏肉メインなのはAnbarに配慮してだ。
「では、ゲーム完成を祝って乾杯!」
 秋月の音頭で宴会が始まる。
 ティムが早速、
「嫁と一緒にいる時間がなくて寂しい‥‥っ!」
 嫁との時間がとれなくて泣く。
「おちついて! 寂しいのはわかるから!」
 流叶が彼をなだめようとする。
 しかし、風間のように静かに飲む人もいれば、
「もっと飲むの〜♪」
 子供っぽくはしゃぐ綾に、
「この唐揚げ美味しいよ‥‥はい、お酒」
 エレシアがお酌する。
「慣れというものは恐ろしいな。まあ長いつきあいだからよろしくな教授」と、鶏肉を食べるAnbar。彼は酒をたしなむことはない。ラナも酒を飲むとティムと一緒に泣き始め、いろいろ騒いでいる。流叶が世話する人が増えた。
 秋月、観琴はゆっくりと飲んでおり、伊藤も三枝も自分のペースで飲む。賑やかなれど和気藹々とした打ち上げであった。

 宴会も終わりそれぞれが帰路につく中、秋月は観琴と一緒に歩く。
「みんな帰っちゃったね」
「ええ、楽しそうでした。疲れてませんか?」
「大丈夫だよ‥‥そうだ‥‥」
 と、秋月は彼女の手を握る。観琴も握り返す。
「いつも面倒ばかりかけちゃってだから‥‥良かったらだけど‥‥これから落ち着いて、どこかに飲みにでも行かない? いつも色々とありがとう‥‥って事で‥‥」
「はい、いいですよ」
 観琴は首を縦に振った。

●告白
 エスティとアキトは近くのバーで飲んでいた。24日はあいていたので、エスティもその頃には原稿が完成しているため、断ることもなかった(独りじゃ寂しいのもあるからいろいろ思っていたのだろう)。
「原稿完成お疲れ様です」
「ありがとぉ」
 メールでのやりとりだけだが、各自が原稿を仕上げたようで陣中見舞いも楽しいだろうと思った。
 アキトとエスティはゆっくりと落ち着いた感じで話し、いい雰囲気になっていた。
 店を出たときに、
「エスティヴィアさん」
「なあに?」
「そして、これを‥‥」
 彼はエスティに指輪の箱を渡した。
「これは?」
「今回『は』友人としてのクリスマスプレゼントです。それでですね、もし、エスティヴィアさんさえ良ければ、お付き合い‥して頂けないでしょうか?」
「‥‥!」
 告白のような(告白だろう)ことを言われてエスティは固まる。
「えっと、それはちょっと‥‥もうちょっと考えさせてくれない? 私はいつフラグたてたのか分からないし‥‥ええと、その‥‥なんていうか‥‥!」
 思わず雰囲気台無しなことを口走る。混乱しているようだ。
 そのことを察してから、アキトは、
「待っていますね」
 とにこり微笑むのであった。

 こうして、来年のイベントに向けた原稿模様は終わる。よいお年を。