●リプレイ本文
北米内陸部のある地点。そこに、バグアのワーム達が集まっていた。東部解放をしているUPC軍を後ろから叩くために。つまりは挟み撃ちにすることだ。それを防ぐためにUPC軍は動き出す。傭兵達の遊撃参加を募集したのだ。
今はベースキャンプで8人の傭兵が作戦を練っている。
「‥‥ん。突撃して。やられる前に。粉砕する。単純明快」
最上 憐 (
gb0002)は、エレベストカレーを『飲んで』つぶやく。「カレーは飲み物」と誰かが言ったかは知らないが、彼女は『飲んだ』から間違いないのであろう。実際起こったことを素直に受け止めよう。4〜5人分はありそうな超特盛りカレーだったが。
「旧型って言っても、まだまだ現役な連中ですよねぇ‥‥」
御守 剣清(
gb6210)がワームの数や種類の情報を聞いて、つぶやく。
「敵の増援部隊を放置しておくわけにはいけませんからね。速やかに撃退して憂いを無くすことにしましょう」
乾 幸香(
ga8460)がそう答えると、漸 王零(
ga2930)は頷きこう言った。
「今の軍の勢いを殺さないためにも、乾の言うとおり一気に掃討するべきだな。は3つに分かれて、掃討する。それでいいか?」
と。そのあと、彼はプランを提示する。
「ええ、その案はおおむね問題有りません。出来れば‥‥」
ベル(
ga0924)が静かに個人的な意見を言う。
「私も‥‥お手伝い‥‥します。なので‥‥こうすればと‥‥」
ミナ(
gc7456)がおどおどとしながらも勇気を出して提案してきた。
「防衛はこうしてラインを確保する‥‥低空組は‥‥」
煌 闇虎(
gc6768)も漸の方針に賛同しており、好意的な意見を出してくる。
「空は任せて」
雪村 風華(
ga4900)は割り当てられた任務に従おうと考えた。
(数だけは多いなあ‥‥)
作戦会議は1時間ほど経った。突撃、防衛、低空の3班に分かれて行動する。低空班がいるのは、HWが空を飛ぶという情報を得ていたからだ。
突撃班は、漸、最上、ベル。防衛班は乾、ミナ、煌、低空班は御守、雪村である。
低空班は直ぐに空を飛び、突撃班、防衛班は人型形態で進む。
「上空からの目視で敵影発見。相手も気づいて向かって来てる」
雪村が全員に通達。
「こちらからも目視確認。これから戦闘を開始する」
「「了解」」
地上の班は車輪走行で相手が撃ってくるプロトン砲を回避し、低空班も旋回して相手の攻撃をよけた。
平野は轟音とともに硝煙渦巻く戦場と変わる。
「まずは亀、お前達は邪魔だ!」
漸のKV『アンラ・マンユ』がM−181を全弾発射。プロトン砲を撃ち続けているタートルワームがひるむ。
「‥‥ん。一直線に。最速。最短距離を。目指して。亀に。つっこむ。援護。お願い」
「‥‥援護します」
最上の『オホソラ』が突撃する援護で、ベルのKVシュテルンからは向かってくるキメラを掃討するため、ファランクス・アテナイを打ち続ける。絡みついてきそうなキメラの群は、それでかなりの数が吹き飛んだ。相手の反撃を巧く躱しながら、『アンラ・マンユ』と『オホソラ』はタートルワームに接近。
「我の猛攻止められるか!」
『アンラ・マンユ』はジャイレイトフィアーでタートルワームの首を切断する。ワームの噛みつきをバックでよけて、近づいてくるゴーレムが振り下ろす剣を受け流した。
『オホソラ』は真・ツインブレイドを巧く扱い、突進してくるタートルワームのプロトン砲の砲門を切断。他のワームの反撃も受け流すか躱しては、攪乱をしている。ベルのシュテルンも合流し、一気に3体のタートルワームを無力化した。
しかし、敵も黙っては居ない。まだ健在のタートルワームがいきなりの突進をする。
「なに!? 倒れたふりをしていたのか?!」
躱しきれなく吹き飛ぶ『アンラ・マンユ』。漸は操縦桿を思いっきり押し、アクセルを全力で踏んで体制を整えた。その隙にゴーレムが分厚い剣で襲いかかるところを、ベルのシュテルンが横からゴーレムを殴り飛ばした。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、助かった。悪知恵が働くらしいな」
「‥‥ん。油断大敵」
『オホソラ』の真ツインブレイドがタートルワームを切り刻んで倒した。
「下は問題なさそうだね」
低空班の雪村が地上の快進撃をみて呟いた。
「飛んでいる相手に集中できますね」
「そうだね」
御守が頷く。
既に地上からのプロトン砲はこない。HWは3機だ。雪村の竜牙と御守の『鬼吼刃牙』がUK−10AAMを放ち、まず一機にかなりダメージを与える。そして、2機のKVがガトリングやミサイルでとどめを刺す。HWはゆらゆらと墜ちていった。
「まず1機!」
「死角から、プロトン砲?! 回避!」
雪村のコクピットの中で警戒音が鳴り響く。残る2機のプロトン砲攻撃に掠ってしまうが、持ち直した。
「全くちょこまかと、サソリの形をしてるくせに動きはハエみたいなの?」
「大丈夫か?」
「これぐらい大丈夫!」
雪村は旋回し、攻撃してきたHWに向かってR−703を放つ。HWの中央を貫通させて空中で爆発した。
「死角に回り込まれるのはやっかいですね‥‥」
「油断したつもりはないけど、まだまだね」
2人が空を押さえて、残りの飛んでいるHWを確実に1機ずつ撃破していく。
突撃版が取り残したのはほとんどキメラと1体のゴーレム。それを迎え撃つのは防衛班の3機。乾の『バロール』、煌のスルト、ミナのワイバーンMk. IIだ。
「作戦通り、俺が敵を引きつける! スルト(門番)の力を見せてやるぜ!」
煌が2人へ通達する。
「わかりましたわ。こちらは【殺虫剤】を巻き、そして一緒にグレネードを投げます」
「私も‥‥お手伝い‥‥します。大きめの敵を狙い‥‥撃ち‥‥ます」
「システムSURT起動!」
ミナは大きめのキメラをD−02の射撃で倒す。バロールはロックオンキャンセラーを使い、敵を弱体化させながら、十式高性能長距離バルカンでキメラをスルトの方向に進ませるように撃つ。ある程度キメラやゴーレムが固まったとき。
「どんどんこい! グレネード行くぞ!」
「いきますわよ!」
煌がH−112グレネードランチャーと乾のバロールのG44が炸裂。固められたキメラは爆発に飲まれ塵となる。ゴーレムだけは危険と判断したのか、その範囲からかろうじて離れていた。しかし、ミナのライフルがそのゴーレムの足を貫く。
「‥‥逃がしません‥‥」
慣性制御で逃げるつもりだったゴーレムに直ぐに近づいたのは、『バロール』だ。
「最前線をはれる電子戦機として鍛え上げた私の『バロール』をなめてもらっては困りますね!」
ヒートディフェンダーがゴーレムの腹部を斬り爆発に巻き込まれないように蹴り飛ばす。ゴーレムは爆発炎上した。
「残るは突撃班のエリアよね‥‥合流しましょう」
「‥‥これがとどめです‥‥」
ベル機のG・シュラークの拳がゴーレムの頭部を砕く。
「お前達は運がなかったな。この誓約者の敵ではない!」
『アンラ・マンユ』のジャイレイトフィアーが敵HWを両断し、周りのキメラもなぎ払っていく。
「‥‥ん。てぃ、おー」
オホソラの真・ツインブレイドが雑魚キメラを一気になぎ払い、ゴーレムを切り刻む。
「空は制圧完了! そちらと合流する!」
雪村と御守が突撃班に連絡を取り、その数秒後にも、防衛班が向かっていた敵軍を排除したと報告が入った。
残りワームやキメラは8機のKVからすれば障害にならないだろう。
今回の作戦で敵軍の増援が少し遅れることは間違いない。傭兵達は現場指揮官からの感謝の言葉をもらい、報酬を受け取る事が出来た。
「これで東は安全に作戦を実行できるわけだな」
「‥‥ん。お腹。すいた」
「さっきカレー食べてなかった?」
「‥‥ん。カレーは。飲み物」
「えー? うそだろ?」
ラスト・ホープに帰ったら、最上が通う店でお疲れ会の様なことをしようと言う話になった。そのときにカレー談義になるのかは、わからないだろう。
北米の戦いはまだ続く。彼らの力はまだ必要とされるだろう。