タイトル:DLAシリーズ新開発2マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/05 14:36

●オープニング本文


 北米にある廃空港。そこはエスティヴィア(gz0070)の研究室兼自宅である。なぜ空港を私物化しているのは、KVを動かすにふさわしい広さと、彼女が求めている研究をしやすい為だ。それは、大型の映像装置であり、映像粒子の研究である。
 数年前にSESの動力炉系統さえあれば長時間空中に映像を映せる(注:わかりやすく言うと現実のアニメやSF映画で見られる、何もないところの画面が表示されるもの)装置を作った。そこで、粒子に対してSESから生まれるエネルギーによる強化で、エネルギーを遮断できる盾やフレームを開発し、試作型ピンポイントフィールドやDLAなどを開発した。そして、戦闘が激化する今、求められているものがある。
 それは、物理防御も抵抗防御も同威力で防ぐことが出来るKV装備であった。
 いくつかの実験、考察を重ねて、試作品が出来たのである。

「これが、成功すれば長く続く戦いにも変化は起きるかも」
 エスティヴィアは液晶画面に映る試作機のスライドショーを見て呟く。
「通常のHWやレックスキャノンのプロトン砲にも耐えられるなら、画期的よねぇ」
 北米では戦闘はかなり激化している。そこに実践投入し、UPC軍にも彼女が所属しているドロームにも良い宣伝になるだろうと思った。ただ、エスティは現在の戦況は把握していない。趣味であったコミレザの事も忘れて、ずっと研究していたのだ。
 勿論、ドローム上層部のいざこざの話はここにも届いていたが、彼女の開発室や研究には大きく影響しなかったため、詳しくは知らない。
 ついに、そのときは来た。
 サンプルは4機。それ以外は予算関係により作れなかった。
「私は、偶然からこういう装置を作ったわぁ。でも本当は‥‥いいえ、いまさらなにを言ってるのよ」
 彼女は、ラボの奥にある書庫を開ける。
 そこには生物学、医学、遺伝子学の書籍が本棚に入っていた。
「個人で研究していたけど‥‥ねぇ」
 昔を思い出す。彼女の探求心はどこから来たのかを思い出そうとしたが、思い出せなかった。

 友人のウィルソン・斉藤(gz0075)へ連絡し、アメリカ国内でKV戦になる戦場を教えて貰う。内陸部バグア軍の掃討もしくは撃退という任務であった。敵戦力もゴーレムとビーム兵器を装備している蜘蛛型の各3機で飛ぶ敵はいないと言う。エスティヴィアが理想とする戦場だった。
 その掃討に実験武装の使用許可を取り付け、参加する傭兵のKVに装着して貰う事になった。
「やつれてないか?」
 斉藤が心配そうに訊く。
「気のせいよ。私は大丈夫」
 彼女は今回の試作品DLAX−003の事を傭兵に伝える。
「このシールドは、私が属している研究所で開発したものです。今までのレーザーフィールドではプロトン砲などの非物理にしか抵抗できませんでした。しかし、今はこの武装を盾として使用する際、物理攻撃を受け流す事も可能です。また見た目は盾に見えますが、全体に薄いフィールドを貼っている状態になるので、ビーム兵器にも対抗できる仕様です。サンプルのシールドは4機。副兵装2番に装備し使ってください」
 さらに彼女は続ける。
「なお、これによるデータはUPCやドロームに提出し、何らかの形で市場流通を目指します。よろしくお願いします」
 言い終えると彼女は会釈をした。

 戦いに有利になる武装と認められるか否かは、この戦いで決まるのだ。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
リチャード・ガーランド(ga1631
10歳・♂・ER
阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
水円・一(gb0495
25歳・♂・EP
風見斗真(gb0908
20歳・♂・AA
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD

●リプレイ本文

 整備倉庫に6機のKVが並んでいた。整備員達が、副兵装のDLAX−003を設置している。整備員達の声が響くなか、エスティヴィア(gz0070)がデータ収集用の機器を設置・調整をしていた。
「スチムソン君がアンナ状態だから遊んでいる暇がなくなっただろう〜」
 やつれ、生気がないような表情のドクター・ウェスト(ga0241)がエスティに声をかけた。
「そうねぇ、一気に周りが慌ただしくなったから、こっちも大変だったわよぉ。上層部がてんやわんやな話もあったし。遊んでいる暇はなかったわ」
 エスティは、苦笑混じりで答える。
「ま、1つの夢に近づく一歩は確実にってことよねぇ」
 エスティはデータ採取用機器のモニターを指さす。そこに映っているのは、DLAX−003の画像とパラメーターだった。ステータスは緑色で問題はないらしい。
「エスティ質問。このシールドの表面に映像って映せるんだっけ。周りの映像とか映して姿隠しのマントとか」
 阿野次 のもじ(ga5480)がやって来てはそう質問した。
「うーん、それは出来ないのよ」
「へ? どうして?」
「映像装置のコンパクト化は進んだけど、武装化になるとそういった映像粒子へのレーザーによる信号は送れないのよぉ」
 エスティは答えると、のもじは頭を抱えて残念がった。
「ああ、残念だー! 夢が−! でも、格好良く決めるよ! あともう一つ! 盾って取り回しは?」
「それは、下腕部に着けるような物だから、武器を取り回す際には邪魔にならないわぁ」
「そっか。わかった」
 のもじは色々質問して、アピールの方法に修正しようと思った。
「ついに‥‥ついに完成したー! 新型ビームシールド! リアル系アニメのエース機御用達の対ビームコーティングシールド! これぞ燃えだあ!」
 リチャード・ガーランド(ga1631)が大喜びして、自分のKVグリフォン――東海青龍王敖広――を見ていた。歳相応な可愛い笑顔で大喜びしていた、テンションは最高のようだ。
「そうそう、エスティヴィアさん、これって武器として殴れる?」
「防御だけよぉ。FFを破る為に必要な物は装着してないのよ。なので、レーザー部分で殴ろうとしても、バグアやその兵器のFFは貫通できないわぁ。それは前の試作型と同じねぇ」
「うーん、そうなんだ」
 彼は他に、耐久性をはかるためにFFが貫通しなくてもいいから、ワームをこれで殴っていいかと訊くと、エスティはいいよと答えた。接近しすぎて膠着状態からの脱出などで使われる事も想定した耐久テストは重要だ。
 風見斗真(gb0908)が自分のシコン――ヨシナカ――の個人整備を終えたあと、エスティの所にやって来て、彼女にこう言った。
「レーザーシールドなんて実際にできるんだな。さすがドローム。トンデモ技術やらせたら最高だな」
「長いこと研究と開発はしていたからねぇ」
 戦闘の作戦会議の時に挨拶は済ませている。いまは整備をして、出撃に備えるだけだ。
「これだけでは終わらんのだろ?」
「レーザーシールド、期待させてもらうぞ」
 水円・一(gb0495)とヘイル(gc4085)がデータ採取機器の筐体に手をおいて、エスティに言う。
「そうね。性能をアピールしていかないと。そこからさらにアップデートしていくのよ」
 と、エスティは答えた。
「そう、気になっていることが一つある」
 水円とヘイルが揃えて言う。
「「宇宙での使用は可能なのか?」」
 その問いに対しては、
「想定はしてるわぁ。でも、今のシールドは地球上だけでの使用になってるのよ。理由は、『宇宙空間においてしっかりレーザーが粒子を固定するか』を考えないと行けないの」
「そうか。そのときにまたテストってことか」
「だから、あたしたちは、しっかりアピールして行かなくてはならないのよ! カメラもちゃんと用意して!」
 のもじがGOD真拳の荒ぶる構えで、今回の依頼でみんなそろって格好いいところを映像などで納める必要性を主張する。
「撮影は好きにやってくれればいいけどさ‥‥俺からすると、必要かと思うんだが?」
 ヘイルがかなり疑問を抱いているが、
「なにを言う! 格好いいアピールと感動的な展開が、人の心を動かすのよ! つまり、努力、友情、勝利への道!」
「俺ものもじ姉ちゃんの意見には大賛成だ!」
「いや、その熱意は充分に伝わった! 分かったから、その荒ぶる鷹のポーズみたいな構えは止めてくれ! リチャードも一緒に真似て構えるな!」
 のもじとリチャードの体も張った(?)主張にヘイルはたじろぐ。
「さて、テストお願いね」
 エスティが言うと、傭兵達はそれぞれの言葉で「わかった」とKVの方へ向かっていき、飛行機形態で戦闘区域まで飛んでいった。


 ゴーレムやワームが進軍している事をレーダーや目視で確認した後着陸、変形。距離は人型で詰めていく。しかし、のもじの日輪装甲ゴッド・ノモディは違った。
「千の希望を光に変えて。灯せ未来のシャイニングロード。ゴッド☆ノモディ、ただ今見参!」
 彼女は日輪装甲ゴッド‥‥(以後ゴッド・ノモディ)を空中で変形させ、垂直離着陸能力を駆使して、のもじ的に格好いい剣と盾の構えを取りながら、綺麗に着地した。後方にいる風見のヨシナカや水円機がゴッド・ノモディへカメラを向けていたが、後ろ姿だったので、後で撮り直しするかと考える(全機に一応カメラはついている。
 敵は着陸したKV達を見てゴーレムは近接武器を構えては前進し、蜘蛛型ワームがビームを放つ。プロトン砲のような強力な威力ではないようだ。4機のKVは(ゴッド・ノモディは既にだが)シールドを展開、剣や銃などを持ち、シールドで攻撃を受け、ビームからの影響を見ていた。抵抗能力はしっかり働いている。
 けん制射撃を行うのは、風見のヨシナカや水円機のディスタン。しばらく蜘蛛ワームの相手を銃撃戦でしのぐ。シールドを持ったKV4機がゴーレムと距離を詰めていく。ゴッド・ノモディは持っている武器を色々取り替えて、盾が邪魔にならないかも確認する。ドクターのスレイヤーもアサルトライフルなどで中距離戦から盾によって相手の射撃武器を受け流し、ゴーレムに突撃する。
「さあスレイヤー! ソノ名に恥じぬよう、叩き切ってやれ!」
 ブーステッドソードを振りあげ、ゴーレムを叩き切る。ゴーレムは肩から胸にかけて切られるも、ゴーレムは反撃するも、ドクター機はレーザーシールドがしっかり受け止めた。そして、ドクター機は第二撃目。それによってゴーレムは片方の腕を切り落とされる。
 リチャードの東海青龍王敖広は、突撃ガトリング砲を打ち続けて、ゴーレムに詰め寄っていく。ゴーレムも銃器による射撃を行うが、東海青龍王敖広はレーザーシールドですべて受け止める。さらに、蜘蛛型ワームからのビーム攻撃も盾で受けていく。確かに物理と非物理の攻撃に耐えていることが分かった。
「くー! やっぱり! 燃える! 楯の耐久性能試験代わりだ!どんどん攻撃してきやがれ!」
 リチャードは盾の性能を確認しながら、テンションが上がっていた。
 ガトリング砲の射撃から今度はライトディフェンダーに持ち替えゴーレムを切ろうとする。ゴーレムは持っている剣で受け止め、鍔迫り合いに。均衡が破られる気配はないと思ったリチャードは、レーザーシールドでゴーレムを殴った。出発前にエスティが言ったように、FFを貫通してない。赤い壁がゴーレムに展開する。しかし、それによっていったんゴーレムはよろけ、体勢を立て直すためにバックステップする。それにまた迫る東海青龍王敖広。今度はゴーレムが迎撃のために剣が振り下ろされる。それを盾で受け止めた。確かに、レーザーシールドは物理攻撃を受け止めている。夢にまで見たこの浪漫はリチャードにとって感動する。
 ヘイルのは、本来このレーザーシールドで敵を切れるかと試したかったが、出発前に「無理」と言われたため、本体の耐久力テストで、もう一気のゴーレムを叩き、道を開く。そのタイミングで、ヨシナカと水円機の援護射撃。HSII−テンペストはその援護者機の恩恵を受け、蜘蛛型ワームに接近する。避けるべきビームはしっかりと避け、受けることが有効だと思う攻撃はシールドで受け止める。その盾の性能がしっかり相手の攻撃を受け止めていることを確認する。
「なるほど! これほどの物か! ではこちらも攻撃させもらおう!」
 機槍「キジャ」がうなり、蜘蛛型ワームを貫いた。相手は足で攻撃するが、それもシールドと槍捌きで受け止める。シールドで殴りひるませた後、もう一撃をキジャで蜘蛛型ワームを突き刺した。しかし、蜘蛛型ワームはそのままテンペストをつかもうと襲いかかる。
「まさか自爆?!」
 ヘイルはバックステップで躱そうとする。しかし、相手が覆い被さろうとした! しかし後ろから銃弾が放たれ、ワームは丁度破損部分に直撃し大破、爆発炎上した。
「援護をメインだったが、間に合って良かった」
 水円の真スラスターライフルだった。
「助かった、ありがとう」
「仲間だからな。助けるのは当たり前だ」
 通信で礼を言うヘイル。それをクールに答える水円だった。
 ゴッド・ノモディはヘイルが押しやったゴーレムと接敵。盾を上手く使いながら、攻撃をうけてからブレイブソードで切る。相手は剣で受け止めるが、GPSh−30mm重機関砲でボディを撃つ。ゴーレムはいったんゴッド・ノモディから離れようとしたが、のもじはPRMとブーストを起動し、ゴッド・ノモディは接近する。そしてブレイブソードでゴーレムを切り裂く。相手は突き刺そうとしたがレーザーシールドの防御に阻まれこのシュテルン急所に届かなかった。
「これがこれからのナイト(フォゲール)のメイン盾。一味違った!」
 使いやすいことをアピールするオーバーアクションで、そのゴーレムを横一文字に切る。完全な分断までは行かなかったが、のもじは相手が起動不能になったのは確信が持てる手応えだった。

 ある程度シールドの検証(実際に物理を止めているか、耐久性はあるか)をしていると思った水円が、エスティに通信で訊ねる。
「もう充分か?」
『ええ、良質なデータが取れたわぁ、あとは一気につぶしてもいいわよぉ!』
 と、全員に通信を送る。
「よし! ならば即行に片付けてやるぜ!」
 残るのは蜘蛛ワーム2体だけ。新機種や愛着をもってチューニングされた6機のKV相手では、今の蜘蛛型ワーム2体では太刀打ちできないのは、言うまでもないだろう。


 傭兵6人はKVを整備士に任せて、どれだけデータが取れたかをエスティに訊いてみた。彼女はニコニコして、
「本当にありがとうねぇ。これでさらに改良していけるわぁ」
 礼を言う。
「これで、後はプレゼンテーションへ持ち込めるわぁ」
 エスティはかなり興奮しているようだった。
「ちょっとまったー!」
 のもじが叫ぶ。
「??」
「アピール映像や写真がまだ! 整備後、取り損ねたシーンの撮り直し!」
「写真や空中参上を撮り直すのか?」
 ヘイルや水円、風見が訊くと、のもじは「そう!」と元気に答えた。
 そうして、また戦場であった場所に向かい、カメラなどおいて撮影を行う。エスティにも見てもらって、いいアピール映像を作っていく。シールド展開した4機のKVの写真も撮った(後で気づくのだが、風見のKV、ヨシナカがこっそり写っていたなので、計五体)。

 余談であるが、のもじが希望した展開を聞いた。それは、
「仲間をかばい、スキルをほとんど使っての、ヴィクトリーレーザーSPを放つ!」
 と言う物らしい。
「いや、シールドと関係ないだろ!!」
 みんなに突っ込まれて、てへっと舌を出しておどけるのもじであった。