●オープニング本文
前回のリプレイを見る ナッシュビルを守る壁の一部を破壊したリズ・A・斉藤(gz0227)率いる義勇軍は、今度は中央にある蟻塚司令塔を包囲する作戦に出る。
「暴君・ガドルを逃がさず完全に包囲します」
おそらく、敵はガドルを守るために死ぬ気で戦うだろう。特に強化人間は投降するメリットがないのだ。逃げる訳にもいかない。もし、逃げるとしても先にあるのは、絶望だけだろう。投降するメリットも彼らにはないハズだ。虜囚になった時に埋め込まれた爆弾や毒などで即死する可能性がある。彼らに逃げ場はないだろう。
「中央の蟻塚を包囲、防衛網を突破します」
作戦は、歩兵とKVでの市街地戦。KVで道を開き、歩兵が司令塔周辺を制圧だ。基本的にUPCからの派遣兵がKV戦を引き継ぎ、義勇軍が突破する。電撃的に行う事で、ガドルの奇策、もしくは逃亡を阻むというものだ。
「作戦名『フライング・バルーン』フェイズ2開始します」
リズは、全員に通達する。すると、兵士達が歓声を上げ、作戦行動を開始した。
一方、司令塔の執務室では、ガドルがあたふたとしていた、血が出るほど頭をかきむしり、うわごとを言っている。
「なぜだ? 私のすばらしい罠もなぜうごかん! いや、この司令塔は大丈夫だ! ここは私の考え抜いた罠があるからだ! それと、アーベスト! アーベスト!」
顔面蒼白で部下を呼ぶ。
「ガドル様如何なされました?」
通信モニタからアーベストが応答した。司令室にいるようだ。
「なぜ、あいつらが攻めてくる?! なんとかしろ! 私のすばらしい発明を使ってでもいい!」
「わかりました」
と、アーベストは通信を切った。
「うひひひ、これであの小娘がつくったゴミ屑どもは‥‥ひひひ」
ガドルは、安堵と狂気と恐怖がない交ぜになった笑いを浮かべて、支離滅裂な事を呟き始めた。
アーベストはため息をついた。
「死を賭して戦いましょう」
「もうガドルに‥‥その価値は」
分になった1人の部下がアーベストに進言した。
「忘れましたか? 我々は人類側に投降すると待っているは死だけです。あれに従うのではなく、生きるためにまたはバグアに忠誠を見せ、今は亡きリリア様の思いに応える為に戦うのです。ただ、ここで暮らしていた一般人は解放すべきでしょう」
「はい‥‥」
シェルターへの通路だけはロックを解除し、ここで雑務として働いていた一般人へは『すべてが終わった後、義勇軍に投降し、保護を求めるよう』と伝えた。
「ただし、アレを放置しては、私自身、怒りを抑えられない」
「どういう事ですか?」
「役立たずのガドルは、何としても死んで貰うしかないと言うことです」
アーベストは憎しみのこもった目をしていた。
その目を、進軍している義勇軍に向けていた。
「リズ。あなたが先か、私が先かです」
●リプレイ本文
●開戦
破壊した門に陣を張り、目に見える範囲にこれ以上の敵の侵入を阻むためにワームやキメラが壁となって立ちはだかっている。蟻塚が各所にありそれが見張り台や砲台になっており、アメリカ内陸部でよく見かける低い建物は少なくなっていた。お互いの軍は、何かの切欠が無ければ動かない。しかし、些細な事でも開戦する気配は漂っていた。
「ここまで来たか、退く気はねぇけどな」
セージ(
ga3997)がリゲルのコクピットの中で拳を鳴らす。
「伍長の分も暴れますよ。親友」
「分かりました。お願いします」
鈴葉・シロウ(
ga4772)は飛熊(雷電)に大きなドリル「ブレイクドリル」とツイストドリルを装着し、鹿嶋 悠(
gb1333)に言った。
「では諸君、Ahead Ahead Go Aheadだ。なぁに問題ない。指揮官の顔を見ろ、古今美少女に率いられた軍は無敵だよ?」
シロウはシロクマの頭で萌えていた。
「んじゃ、わしと鹿嶋君で偵察行きますかね」
時雨・奏(
ga4779)が鹿嶋とともに生身での偵察を行う。先に罠があるか、狙撃手がどこにいるかどうかを調べるためだ。
「‥‥リズさんは、俺が守ります‥‥」
小さい声だが強い意志でベル(
ga0924)が呟いた。
「アメール、チナール、これは遊びじゃないんだぞ」
「「わかってるってー」」
鹿嶋が、義妹2名アメール(gc6923)、チナール(gc6924)に、釘を刺してから配置につく。この双子は歩兵参加するそうだ。
全員が配置についた時。義勇軍の長は深呼吸をして、
「進撃開始!」
リズ・A・斉藤(gz0227)のウーフーIIから全体に向かって号令が発せられると、義勇軍が一斉に動き出した。同時に、ワームとキメラが銃撃を始める。
「一番槍、いただきます!」
GIN(gb1904)が種子島で、ワームの壁を焼き払う。
そこに、シロウの飛熊と義勇軍の突撃部隊が突撃する。
「ア−スクエイクには気をつけながら、突破しますよ!」
飛熊はツイストドリルで弱いワームをぶち抜き、血路を開いていく。飛熊を守る突撃部隊も、彼に負けじと襲いかかるワームやキメラを潰していった。
「おまつりだ――!」
双子は、嬉々としてキメラを屠っている。
「振動は‥‥EQの物は無いですね‥‥これは?」
ベルが地殻変化計測器1機を設置、地下からの敵がいないかを確認しては、リズを守る。
「何か分かりますか?」
リズがベルに聞くと、
「‥‥動力炉のような、振動があります‥‥」
「罠の可能性があるのね」
「‥‥おそらく‥‥」
しかし、感知できるだけでそれがどういうものかは分からない。偵察に行った鹿嶋と時雨が情報を持ってくることを願う。
●偵察1
鹿嶋と時雨は、路地裏から路地裏へ移動して徐々に司令塔へ向かう。幸いにもキメラや他の強化人間と出会わず、かなりの距離まで近づけた。
「その地図ってなんや?」
「希望砦にあった蟻塚内部です。参考にしようかと」
「なるほどねぇ」
そう、会話しながらも、敵はいないかはぐれキメラはいないか慎重に、近づく。
「‥‥?! 危ない!」
時雨が鹿嶋をつかんで瞬速縮地でその場を離れた。丁度その地点に弾が穿った。ピシュンという音が同時に聞こえてくる。
「いるな、狙撃手」
上手く受け身を取った鹿嶋が、近くの蟻塚ビルに光る何かを見つける。
「まずはあそこを制圧しますよ」
「その方がええな」
連続して撃ってくる銃撃を2人は避け、蟻塚に入る。そして、待っていたのは護衛キメラだ。
「どけ!」
鹿嶋のトルマリンソードが横凪でキメラを屠っていく。
「やっぱ、伍長は違うわ」
時雨は鹿嶋の背中を守りながら、後ろからやってくる小型キメラを始末していく。
それほど時間がかからずに、狙撃手を無力化しては、1つの蟻塚を制圧した。鹿嶋が、他に危険がないか見張っている間に、時雨が蟻塚にあるバグア軍の通信機を引っ張ってくる。
「この無線機、人間が使用しているのとかわらんな。違うことはキメラやワームのやっかいな電磁波を無視出来るって事ぐらいか」
これがあると、どこでないが起こっているか分かる。大きな収穫だった。
「これで罠などの位置が分かりますね」
「そうやな」
一度これを持って、リズの元へ戻ることにした。
そこで、大事な情報を手に入れる。通信機から聞こえたのだ。
「‥‥地下にトラップ発動装置があると?」
●罠とドリル
「振動は、罠だと」
「内容までは把握してませんが、シロウさん達突撃部隊には注意を」
「分かりました」
戻ってきた鹿嶋達がリズに連絡。通信機をずっと聞いているため、どこに狙撃手がいるか罠があるか把握できていた。リズが通信統制をつかって、突撃部隊などに地下や蟻塚から罠があると伝える。狙撃ポイントとなる場所はKVがそのまま蟻塚を破壊するか、近くの歩兵が制圧し被害を最小限に食い止め、残るところは罠が何であるかであった。
「一度1部を起動させるように動いてみましょう。シロウさんお願い」
「ふむ、そのほうがいいというなら従いましょうか」
シロウは突撃部隊と一緒に少しペースを上げて突き進む。
すると、ベルから「そこです!」と通信が入ると同時に、地面から槍衾が飛び出してきた。一部蟻塚からも槍が飛び出す。
「なるほど! そういう罠ですか!」
受けたり避けたりしては、飛熊はダメージを微少に抑えてはツイストドリルで槍衾を突き破った。もちろん同行している義勇軍も槍の破壊と、各ポイントへミサイル爆撃にて無効化していく。
「さっくり勧めていい感じ。EQの心配はしていたけど、油断は禁物」
その勢いで、全軍包囲を順調に進めていった。
●退路確保
リズを守るのはベル達の他セージがリゲルの建御雷が、猛威を振るった。
「この先は進ません」
レバーを押し引きしては、使い慣れたこのリゲルを操り、やってくるワームを斬る。遠くから狙いを定めてきた、タートルワームに対して、R−703を撃ち、撃破する。
突破口は既にシロウの突撃部隊がおこなっているので、セージのリズがいる本隊を守る仕事は比較的楽だった。
「ありがとう、セージさん」
「なに。礼には及ばないさ。先に進みな」
「はい。進軍します!」
リズの礼に軽く返事をするセージは、退路を確保する仕事にうつった。
「頑張れ」
横から来るキメラやワームも武装をフルに活用しては倒していくセージのリゲルであった。
●偵察2
小休憩をとった時雨と鹿嶋は再び別方向から偵察する。
「アーベストのことが気になる」
鹿嶋はいう。
「アイツがいると言うのは危険だ」
「たぶん、わしが狙ってきたのもそいつやと思うねん」
制圧ポイントからまた抜け、慎重に進む。
そして、彼らは義勇軍の進軍方向に垂直の部分から蟻塚司令塔まで近づけた。
「!? 地揺れ?」
2人は壁に手を突き、踏ん張る。
地面から、巨大な壁と奇妙な砲台がせり上がってきたのだ!
「急いで、通達しよう!」
「それなら、わしに任せとき!」
時雨が瞬速縮地で、リズがいる場所へ戻る。鹿嶋は死角になりそうな建物の中に隠れた。
「巨大な壁が出来てそこに砲台が?」
リズがうむと唸る。
「レディ、そこはこの私目に任せてください」
「シロウさん?」
快進撃を続けている、シロウは壁の所まで突撃する。
「壁をぶっ壊すから守ってくださいね!」
『了解』
目の前にある砲台付き壁をシロウはブレイクドリルで突き破る。1発目は3分の1ほど穿ったのだろうか? そこに一斉に砲撃! しかし、義勇軍が盾となってシロウのリロードを守りきる。
「では、もう一発!」
ブレイクドリルリロード完了。渾身の一撃を見舞う!
轟音とともに壁を破壊した。
壁を破壊したと同時に、各部隊が包囲に乗り出した。
●ガドルの発明品と‥‥
「ばかな! ばかな!」
ガドルはほぼすべての罠を突破されなすすべがなかった。
「アーベストは!? アーベスト!」
『どうなされました?』
「わ、私は怒ったぞ! 私の最高の発明品をだせ!」
『わかりました』
「ひひひ、これで、これで、あいつらはおわりだ!」
壁を壊され、蟻塚塔を包囲した義勇軍は司令塔から出てくる「あるもの」に驚いた。
「なんだ、あれ!」
いくつもの触手に丸い物体、そこに四足の不気味な巨大な生物が現れたのだ。見るにおぞましい生き物‥‥いや、ワームである。よく見ると、その一つ一つが、人間の肉体であるようだ。ベースはタートルワームらしい。
「なんて物を作っているの‥‥」
リズは青ざめた。
長い触手は、壁もろとも近くにいた義勇軍をなぎ払おうと襲いかかってくる。
「これが、門番って所ですか。リズさん。落ち着いてください」
シロウが、もう一度ブレイクドリルをリロードしては、まず装備しているC−200を発射。それにならい、突撃部隊も持っている銃器や陸専用ミサイルで化け物ワームを撃つ。ひるんだ化け物ワームの隙をみては、飛熊が飛び出した。
「これでとどめ!」
触手の間にある頭部に向かってブレイクドリルを突き刺し、大回転。ワームは苦痛を上げるように暴れ回るが、10秒もしないうちに沈黙した。
「わ、わしの‥‥なぜだ! アキラの護衛と匹敵、それ以上のハズなのに!」
ガドルは、最大の発明が倒れたところを見て、青ざめた。わたわたと、地下格納庫に向かい、昔の戦いで奪っていたR−01に乗り込む。
「にげて、中米に‥‥。わ、わしはしにたく。いやアーベス‥‥」
「呼びましたか? ガドル?」
アーベストが
「わ、わしをたすけてくれ! アーベスト?」
「‥‥」
アーベストの表情は周りの空気が冷たくなるほど冷酷だった。
●突入
リズはウーフーIIを降り、鹿嶋と時雨(セージやシロウ、ベルも義勇軍の誰かに持ち場を代わって貰った)、幹部数名と合流し司令室に向かい、ガドルを探した。しかし、司令室にはガドルは見つけられなかった。
「ここに、地下へのエレベーター?」
皆が探して発見した秘密の脱出路。リズ達はそれを降りていく。
地下の格納庫についた時に、悲鳴が聞こえた。
「何?!」
鹿嶋やリズ達は急いでエレベーターから出ると、それを見た。剣で刺され、けいれんしているガドルと、それを冷酷に見ているアーベストの姿を。
「ガドルは、ここの統治者として失格だった。それだけのことです」
「狂気に犯されても、上司ではなかったのか?」
鹿嶋が問う。
「ここまで攻め込まれて、逃げようとする腰抜けは要りませんからね。私が願うのは残り1つ」
冷気を感じさせる口調が徐々に怒気を帯びていた。
「‥‥」
その怒気にその場にいた全員が、アーベストの言葉を待つしかなくなった。怒気をそのままに、しかし冷静にアーベストは言葉を続けた。
「リズ、あなたの首です。そうすればナッシュビルは人類の手には完全に取り戻せない」
「そうはさせない!」
鹿嶋が剣を構えてリズを守る。アーベストもガドルを刺した剣を抜いて、構えた。周りから、彼に付き従う強化人間達が集まってくる!
最後の戦いが始まる。