●リプレイ本文
●挨拶
「宇宙でも使えるとなれば、それだけでも利点だからな」
水円・一(
gb0495)が今回の訓練場が見える窓から眺めて呟いた。
「いつも来てくれて助かるわぁ」
エスティヴィア(gz0070)は宇宙用のドリンクパックを持ちながら落ち着かない感じに浮かんでいる。
「もう少し、落ち着いたらどうだ?」
「落ち着ける訳無いじゃない〜。DLAの4つめが今回の命運にかかっているのだから〜」
「‥‥気持ちは分かるが」
「俺もワクワクして、落ち着かないな」
ジェームス・ブレスト(gz0047)もうーんと唸りながら浮かんでいる。
水円とジェームスは軽く自己紹介と挨拶していたが、
「エースも落ち着かないのか。冷静であると思ったが」
「浪漫が詰まってるテストだ。責任重大だぜ」
浮きながら、真面目な顔をするもその体勢では説得力がない。
「おちつけ」
水円はため息をついた。
訓練場では作業員が色々指示を出しては、環境作りを頑張っているようである。
広さは幅30、奥行き100といったところ。宇宙区域から考えるとかなり狭いが、実験をするには充分すぎるほどの広さだ。なにより、DLAX−004は盾である。近接や、遠くて200mの場所からの攻撃を受け止めて損傷を抑える防具である。宇宙空間での粒子の安定を確かめるにも、充分だ。
「けっひゃっひゃっ。エスティヴィア君、順調のようだね〜」
ドクター・ウェスト(
ga0241)が狂気に満ちた笑いでエスティヴィアを呼ぶ。
「ドクター。お久しぶりねぇ。調子はどう?」
「いい塩梅かもね〜。我が輩の頭脳を持ってすれば、この実験は成功したも同然だね〜。ま、手伝うだけ手伝うわけだけどね〜」
「ドクターらしい」
ちなみに、彼も、無重力体験を楽しんでいるかと思ったが、しっかり『地面』となる方に足を付けていた。
「ジェームス君。君の父親にはいつも世話になっているね〜。初めまして、我が輩はドクター・ウェストだ〜」
「俺はジェームス。よろしく。親父が憎まれているのはよく耳にしているが、よく親父の研究(強化)につきあってくれて感謝するぜ」
浮いていたジェームスは『地面』に降り立ち、挨拶の握手を交わした。
「レーザーシールドは浪漫ですけど、より一層実用的になる事を願いたいです」
赤宮 リア(
ga9958)が、軽やかに宙を浮かびながらやってくる。
「お久しぶりです、エスティヴィアさん」
「お久しぶりねぇ」
軽い挨拶のハグから握手をして、再会を喜び合う。そして、ジェームスと自己紹介をしては握手を交わした。
「お久しぶりですね‥‥」
「おお、終夜、久しぶりだな」
終夜・無月(
ga3084)がジェームスと再会をし、そしてエスティヴィアとお互い自己紹介をしては握手する。
「宇宙向けになるというのは嬉しいことだ」
最後にヘイル(
gc4085)がやってきて、エスティヴィアとジェームスに向かって、
「エスティヴィアは久しぶり。ジェームスは初めましてだ」
「お久しぶり」
「初めまして」
順に握手を交わした。
「では、説明を始めるわよぉ」
エスティが『地面』に降りると、浮いていた傭兵やエースも『地面』に降り、今回のテストの説明を受けた。
「なるほど、無重力状態での粒子の安定と強度か」
「それなら、まかせたまえ〜! 我が輩が持っているG放電装置で!」
ドクターは胸を張って、強度試験に適した装備を高らかに言うのだが、
「盾だから、人型形態よぉ」
「しまった〜!」
ツッコミを受けて、口から魂を飛び出していた。多分魂が聴いているから、そのまま放置で説明が続けられた。
30秒でドクターは復活したことを記しておく。
●出力加減
まず、終夜からテストを開始する。一応ジェームスのKVリヴァティー・シューティングスターもDLAX−004を装備できるようにしていた。しかし攻撃側として今はいる。
「こっちはOK」
「スロット開けていないのはどうして?」
エスティは無月のミカガミの装備を見ては疑問を投げかける。練剣や盾、地上用の武装に1つだけの宇宙用兵装で、空きスペースがないからだ。
「この盾と強度の違いを知りたいため‥‥」
「そっか、時間がかかるけど‥‥いっか‥‥」
機盾「ウル」の強度は、既存の盾の中では高い性能を誇るだけあって、物理・非物理ともに優れた防御力を発揮した。今度はDLAX−004に取り替えて、起動。
「比率は1:3:3」
展開する。しっかりDLA−003の様に安定しているように見える。
「攻撃してきてください」
「OK」
シューティングスターが機刀「陰」で盾を狙う。しかし、レーザー部分をすり抜けてしまって危うく白皇を切り倒すところだった。寸止めでとまる。
「あぶねーあぶねー」
今度は、非物理の高分子レーザーガンで撃つと、しっかり抵抗している。しかし、その一撃で白皇が停止した。
「オーバーヒート‥‥したようです」
「この比率は無理と」
と、エスティはチェックを付けていく。
次にドクターの出番であった。天に乗り込む。
「ここは、フルに3:3:3だ!」
「えええ?!」
全員が驚く。
すべてMAXになると、盾のレーザーと粒子が剣のような刃の形を作り出す。そこで一気に、
「せいぎょがあああああ!」
ぼかーん。
DLAXが破損し、持っていた腕がもげた。
「メガネがなければ即死だったね〜」
と、口から魂をだしてはコクピットから出てくるドクターであった。コクピット内部でも蒸気爆発的なことが起こったらしい。
「無茶なことを」
真面目な水円がこめかみを押さえていた。
赤宮が熾天姫にのり、「1:3:1」で起動する。
「し、出力があまりでませんし、あああ!」
どうやら、粒子とレーザーの結合力が足りず、霧散してしまったようだ。
「ということは、練力の比率は中間ぐらいなのかな?」
と、水円達も考え始める。
「では次ヘイル」
「OK」
彼のHSIII−セリアに装備したDLAXが綺麗な菱形となる。結合もうまくいっているようで、振り回しても霧散しない。
「これはいい感じだ」
そして、物理と非物理の耐久度テストを行ってみると、抵抗は充分だが、物理の受けがもう一つという結果を出した。つまり、無月のよりそのまますり抜ける事は無いのだが、10%の確率ですり抜ける状態になる。これでは盾としての役目はない。
傭兵側の最後として、水円が3:1:2で挑むと、今度は抵抗が低くて、普通の物理盾のような状態になった。
●話し合ってみた結果の答え
ドクターは今、コアーとエスティヴィア、そして自力の錬成治療で怪我を治している。
「極端過ぎるのは駄目」
「もちろんドクターのような設定では事故がでる」
「練力は2として、‥‥3:3:2?」
「いや、それだと暴発する恐れがある」
「元々は、抵抗自体メインだったはずですね?」
リアの提案。
「なら、3:2:2か?」
「かも‥‥しれません」
と、最後に実験をしていないジェームスに目を向けた。
「OKまかせろ!」
と、シューティングスターに乗り込んでは、その設定で起動する。
「オールグリーン」
無月が自分の白皇フルアタック組み手の案を出したが、いくら何でもそれはやり過ぎだとエスティがいうので(そもテスト以外の結果が出る)、ヘイルのセリアの槍の突撃、水円のレーザーライフルで幾度か強度テストをする。すると、うまく両方とも受け止め、耐えていたのだ。
「やったー! 成功だ!」
怪我をしていない傭兵達はエスティにハイタッチしていった。
●KV談義にサンドウィッチと‥‥その先
充力がある区画に移動する一行。
「ろくなものを食べてないと聞いて」
ヘイルがサンドウィッチを用意していた。無重力か軽重力だと、多分えらいことになっていただろう。
「手作りはあまり食べてないのよぉ。ありがとねぇ」
ほくほくとエスティはサンドウィッチを頬張っていた。
「で、一つ提案だけど、巨大シールドとかできないのか?」
ヘイルが色々訊ねる。
「論理的には出来るけど、コストとアピールが必要よねぇ。巨大映像装置を各艦に乗せるというプランもあったけど、これが精一杯。単に詰むのは簡単だけど、軍の許可が下りないのよ。今のところ」
「武器については?」
「レーザービーム兵器? むりむり。これは、元は平和利用をする為の映像粒子が、偶然防具として使えるようになった産物なのよぉ。高エネルギーで相手のフォースフィールドをぶち破る力は粒子自体にないわぁ」
「そうか‥‥残念だな」
はっきり答えを言われて、肩を落とす。
「でも、巨大映像装置‥‥。それがあったらフィアナさん達が歌って‥‥いいですよね」
赤宮がうっとりする。
「それも夢ね〜。私はただの研究員だから、権限はないわよぉ。ライヴに使うというならOKだすけどねぇ」
と、映像装置の夢を語り合う。
「大画面の映像装置でフィアナのライヴか‥‥いいな」
ジェームスはコーヒーを飲んで、ワクワクしていた。
「ところで‥‥ジェームス」
「? 無月なんだ?」
「今度白皇との組み手をお願いします」
「まてまて、俺のシューティングスター(S−02)はつい最近テスト用で得たばかりだ。一気にお前達のように強く強化できん」
「それは‥‥残念です」
終夜はガックリ肩をおとすと、ジェームスは困ったように、
「俺は、地上の空を守るために艦を降りたんだ。そのためのスレイヤー・シグマホークはしっかり強化するから、模擬戦ができたらな」
「はい」
と、約束を交わした。
「あの、ジェームスさん」
今度は赤宮がジェームスに話しかける。
「宇宙機がでていることで、どう思われてます?」
「そうだな‥‥。なんと言っていいか難しいが、そろそろ戦争も佳境なんだなって思ってるな。ただ、俺は地球を守りたいし、宇宙はお前達傭兵や若い奴に任せたい。後ろはまかせろっていうやつだな」
ジェームスが笑顔で答え、
「先の戦いで、俺の操縦テクニックではフェニックスに限界が来たから、シグマホークに切り替えて守りを固めるつもりだ」
と、続けた。
「私は、アンジェリカの熾天姫で頑張っていこうと思います!」
赤宮は、今まで
「ああ、それはいいことだ。俺が言っても説得力はないが、愛情を注いだ機体はその情熱に答えてくれるってもんだ! 俺は別の機体でその愛を語った女の子を知っている。元気な子だよ」
と、子供っぽい笑みで赤宮に答えた。
「ああ、早く片を付けて、思いっきり夢を追いたいわ」
「『地球が戦うための武器』になったのにそれはどういうことかね〜?」
エスティの言葉に、ドクターが言う。
「たしかに、エミタを移植した傭兵は『武器』。それは否定しないわ。でも、血の通った人間でもある。その極論は今までの過去を否定することにもなるのよ? 人間楽しく生きて行かなきゃ」
「過去と良心はもう置いてきた。そして、娯楽とは決別している」
ドクターの迷いのない言葉が空気を凍らせる。
「‥‥そこは意見の相違ね。このままいくと平行線をたどる問題だわ‥‥。武器だけど命と言うことをわすれないで?」
「‥‥」
武器として先を見ないか、打ち克った後、武器だが人として生きる術を見いだすか。それは、この戦いが終わらないとわからない。
手が届く、解放の刻、夢を見る。