●リプレイ本文
●病院
ボブは入院中で、面会謝絶であった。
「なにか聞き出したかったけどムリね。」
時任 結香(
ga0831)は、ICUの入り口に立っていた。
遠くの方で、ボブがいろいろな器機につながれ眠っている、医師や看護士の声が慌ただしく動いていた。
「急ごう、結香姉。皆が待ってる。」
「あ、うん。」
リチャード・ガーランド(
ga1631)と時任はその場を去った。
●作戦会議
まず、いろいろなものを用意し、作戦を立てて、出発する。備えがなければ、非常事態に対応できない。
「一人でいくのですか?」
青山 凍綺(
ga3259)は驚く。
「ああ、年寄りの頼みを聞いてくれんか?」
捜索で、土地勘がないこの一行で、単独行動はあまりにも危険なのだが、加藤正弘(
ga3302)は単独で探したいと申し出居ていた。
「あなたがそれほどの自信があるというなら、僕はそれでかまわない。」
結城 朋也(
ga0170)が、眼鏡の位置を直しながら言う。
「ああ、俺もそう思う。」
亜鍬 九朗(
ga3324)も同意した。
「班分けは4人と3人と1人‥‥の3班と、いうことですね? それで皆さん問題ないですか?」
櫻小路・なでしこ(
ga3607)は、皆に尋ねると、頷く。
「すまない。でも、死ぬつもりはないですから」
加藤政弘は笑って答える。
「それじゃ、病院に行っていた二人が戻れば、始めよう」
そして、二人は戻ってきた。
「ただいま。はじめましょう」
初依頼者もいる。戌亥 ユキ(
ga3014)がその1人である。不安を押し殺すように、たまに頭を振っているようだ。
「そう、緊張しないように皆さんでがんばりましょう」
と、誰かが声をかける。櫻小路・なでしこである。
「そうね。でも、絶対にキメラはたおさなきゃ!」
皆は頷く。
森の地理を徹底的に調べるのは時間がかかる。急を要するのだ。それぞれの思いはあるが、喧嘩になることは一言も言わなく、スムーズに班分けが完了した。
「部隊は、第一小隊・結香姉となでしこ姉と俺。第二小隊は朋也おじさんと九朗兄、ユキ姉、凍綺姉。後、加藤のおじさんは単独で探すんだね? 連絡は1時間つき1回、探索した場所を目印のリボンを結びつけてわかり易くして。あと、森の地図とコンパス。必要でしょ?」
リチャードが、テーブルに色々な道具を広げてきた。
「これぐらい持っていれば、なんとかなるね」
皆は同意する。
各自装備チェックと連携確認を終えると、集落近くの森に入っていった。
●捜索
「青山。こちら異常なし。ジェニーもキメラも発見されてない」
1時間の定時連絡。青山が各班に報告する。
「時任。異常なし」
「加藤。異常なし」
どうも、この森の地盤が緩い意味は、あちこちに人がすっぽり入りそうな空洞があることだ。まさに、天然の落とし穴。これは、キメラがでる前に存在していることらしい。
「もしかすると、この中に入って難を逃れているのでしょう」
「かもしれないな。それだと、ボブが言っている『ジェニーが生きている』事にもわかりやすい」
「問題は、キメラがこれを本能的に使っている可能性もある。気をつけよう」
迷わないように、目印を付ける。
加藤は、キメラ道を見つけ、ゆっくりと進む。
「む。この先は、時任の第一小隊の方角?」
時任は、ボブが向かったと思われる場所に向かっていると聞く。
地図を見れば、自分が彼女たちの隊に近い。
「加藤だ。いま、キメラ道を見つけた。慎重に追跡開始する。時任、その先気をつけてください」
「青山、了解」
「時任、了解。どうして?」
「あなたが推測した方が正解だと言うことです」
つまり、ボブが倒れる前に、ボブが向かった先が、ジェニーが居るという可能性が高いのだと言うのだ。また、彼女の近くにキメラが居る可能性が高いのだと思うのも至極当然。
「OK。気をつける」
「ビンゴ! 結香姉。すごいや」
リチャードが笑う。
「でも、気をつけましょう。キメラが隠れているかもしれません」
櫻小路が、言った。
青山の隊もゆっくり、時任の隊に近づくように動く。地図とコンパスで何とか迷う事も防ぐが、危うく穴に落ちかける者もいた。これといった怪我はしていない。
二時間半ぐらいに、時任の隊が薬草の密集地にたどり着いた。ここに、奇妙な足跡と、ぽっかり開いた穴があった。
「まさかここ?」
3人は耳を澄ませる。
確かに、人の気配、息を殺しているような‥‥気配を感じた。
慎重に調べ、リチャードが穴をのぞき込む、
「あ、眠れる森のジェニーみっけ」
「あ」
16歳そこらの若い少女が、穴の底で震えていた。
時任はジェニーを優しく引っ張り上げる。
「助けに来たわ。良かった無事で」
「こちら時任隊、なでしこ。ジェニーさんを発見しました」
すぐさま、連絡を入れる。
「了解」
「了解 合流する」
他の隊、加藤も返答した。
●遭遇!
各隊の距離はおそらく2kmは離れているだろうか。視界も悪いので、実際どうかは分からない。合流するのに若干時間はかかるだろう。
合流するにしても移動すると、すれ違うか迷う可能性があるため、時任、リチャード、櫻小路はその場に待機している。
「後はキメラを倒すだけですね」
時任と櫻小路達は周りを警戒している。
リチャードは、ジェニーにくっついている。
「ねね、お姉ちゃんの料理をたべたいな!」
と、危機感なしのように思えるが、安心感を与えるためだ。
しばらく‥‥すると、なにかを知らせている。緊張する。
他の隊とは別の方角から、藪などを踏みつけ、木々を折って進む音がその場にいる4人に聞こえた。
「なにかくる!」
視認できる範囲で‥‥、それは、大きな虫であった! 全長2mはあろうかという巨大な甲虫‥‥ビートル種のキメラだ!
「キメラだ!」
櫻小路が、すぐに覚醒し照明銃を天に掲げ撃つ。
他の隊は、その銃声と光を見て、走り出した!
「間に合ってくれ!」
誰もがそう思って現場に急ぐ!
「心の痛み! 集落のみんなの恐怖、償わせてやる!」
時任が覚醒し、キメラの前に出る。この先は通さない! という意気込みで! そのまま突撃し、一太刀浴びせるが、外骨格が堅い! あまり効いていないように見える!
「この!」
リチャードも覚醒し、ジェニーを下がらせた。
「ジェニー、後ろに下がって! 姉ちゃん達、援護する!」
櫻小路と時任の持っている武器を強化させた。
二人の武器が仄かに光る。
「がんばれー 結香姉〜」
キメラが時任に体当たりをしてくる!
「この先は‥‥、行かせない!」
時任は武器と体を張って、体当たりを‥‥受け止めた! 地面に足をしっかりつけ(幸い、ここは地面が堅かったようだ)、数mは押しやられたものの、しっかり受け止めていた。
「投げるから、撃って! なでしこ、リチャード!」
彼女は筋肉を常人以上に隆起させ、そのまま、キメラの巨体を放り投げる!
あまり高くは飛ばなかったが、確かにキメラは『宙』に浮いた!
それが合図。
リチャードの超機械γと櫻小路の鋭い矢が、キメラに命中する! そのままキメラは地に落ちてしまうが、むっくりと起きあがってきた。
「しぶとい! これでもくらえ!」
リチャードがすぐに追撃!
電磁波がキメラを焼き切り、そしてそれは動かなくなった。
「いぇーい。ぶい!」
リチャードは子供らしい笑みでVサインをする。
「キメラ撃退」
時任が連絡を入れた。
●そして
ジェニーを救ったこと、そして、村が怯える驚異を排除したことで、村は喜びに満ちあふれていた。この後もキメラが他にいないか森の捜索は続けたが、一体だけだったようである。しかし、キメラ一体だけでも、普通の人には驚異なのだ。故に能力者が必要なのである。
約束通りにリチャードは、ジェニーの料理を食べて満足するし、他の者も若干の練力消費で怪我もなく無事だった。是は幸運もあるが、連携、意志の強さから成せたことだろう。
ボブは大けがをしていることに、ジェニーはショックを受けたが、命に別状はな異事を知ると安堵する。数日後には彼は意識が戻り、兄妹は再会を果たせたと報告が入る。
「家族をなくす悲しみを作らずに済みました。‥‥これ以上、悲しみを増やしてはならないです」
加藤が仕事の終わりに言った。
結城も全員が頷いたのであった。
END