タイトル:忍び寄る驚異マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/11/05 15:34

●オープニング本文


*忍び寄る驚異*
 北アメリカのとある牧場集落。まだ自然が残り、自給自足で生活できるぐらいの安定したところだった。バグアの脅威にさらされていないように見える。だが、各地のニュースで恐怖におびえて、「いつ、ここが襲われるか」と思っているのだ。

 それは予想するより、早く訪れた。

 ジェニーという娘が、消息を絶つ。そこから、集落は恐怖におびえ始める。
 噂は瞬く間に広がり、ジェニーが消えた次は他の人も消えていき、森の方で奇怪な、叫び声がするというのだ。
「あの森に入ってはいけない。」
「ジェニーを救い出さないと! でも、我々では!」
「俺たちは‥‥無力だ。」
 平和な時代であれば、熊のような猛獣に襲われたとしても、山狩りが出来るだろう。
 しかし、今の時代、“熊に襲われた”より、“バグア関係に襲われた”が濃厚になる。
 恐怖の対象は、常にバグアにある。
 数日後、青年・ボブが、森の近くで血みどろになり倒れていた。一命は取り留めているが、近くの州病院に入院する。
「だれか、ジェニーを、‥た、‥助けてくれ。」
 と、譫言のように言う。
 森の中には、キメラが棲んでいるというのだと、まだ意識があった時の彼は言う。
 集落の人は、やはりここまで奴らが来たかという絶望を隠しきれなかった。

*ラスト・ホープ*
「‥‥と、言うわけだが、指令だ。森のキメラを駆逐してくれないかね?」
 UPCの依頼がそうだった。
 キメラが、完全にこの集落を襲う前に、叩くと言う依頼である。
「可能なら、ジェニーと言う、娘の救出もあるのだが、希望は薄いな。」
 依頼内容を教えてくれた彼は、ため息をついた。
「出発はいつでも可能だ。準備を怠るな。」

●参加者一覧

結城 朋也(ga0170
40歳・♂・ST
時任 結香(ga0831
17歳・♀・FT
リチャード・ガーランド(ga1631
10歳・♂・ER
戌亥 ユキ(ga3014
17歳・♀・JG
青山 凍綺(ga3259
24歳・♀・FT
加藤正弘(ga3302
55歳・♂・GP
亜鍬 九朗(ga3324
18歳・♂・FT
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN

●リプレイ本文

●病院
 ボブは入院中で、面会謝絶であった。
「なにか聞き出したかったけどムリね。」
 時任 結香(ga0831)は、ICUの入り口に立っていた。
 遠くの方で、ボブがいろいろな器機につながれ眠っている、医師や看護士の声が慌ただしく動いていた。
「急ごう、結香姉。皆が待ってる。」
「あ、うん。」
 リチャード・ガーランド(ga1631)と時任はその場を去った。

●作戦会議
 まず、いろいろなものを用意し、作戦を立てて、出発する。備えがなければ、非常事態に対応できない。
「一人でいくのですか?」
 青山 凍綺(ga3259)は驚く。
「ああ、年寄りの頼みを聞いてくれんか?」
 捜索で、土地勘がないこの一行で、単独行動はあまりにも危険なのだが、加藤正弘(ga3302)は単独で探したいと申し出居ていた。
「あなたがそれほどの自信があるというなら、僕はそれでかまわない。」
 結城 朋也(ga0170)が、眼鏡の位置を直しながら言う。
「ああ、俺もそう思う。」
 亜鍬 九朗(ga3324)も同意した。
「班分けは4人と3人と1人‥‥の3班と、いうことですね? それで皆さん問題ないですか?」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)は、皆に尋ねると、頷く。
「すまない。でも、死ぬつもりはないですから」
 加藤政弘は笑って答える。
「それじゃ、病院に行っていた二人が戻れば、始めよう」
 そして、二人は戻ってきた。
「ただいま。はじめましょう」

 初依頼者もいる。戌亥 ユキ(ga3014)がその1人である。不安を押し殺すように、たまに頭を振っているようだ。
「そう、緊張しないように皆さんでがんばりましょう」
 と、誰かが声をかける。櫻小路・なでしこである。
「そうね。でも、絶対にキメラはたおさなきゃ!」
 皆は頷く。
 森の地理を徹底的に調べるのは時間がかかる。急を要するのだ。それぞれの思いはあるが、喧嘩になることは一言も言わなく、スムーズに班分けが完了した。
「部隊は、第一小隊・結香姉となでしこ姉と俺。第二小隊は朋也おじさんと九朗兄、ユキ姉、凍綺姉。後、加藤のおじさんは単独で探すんだね? 連絡は1時間つき1回、探索した場所を目印のリボンを結びつけてわかり易くして。あと、森の地図とコンパス。必要でしょ?」
 リチャードが、テーブルに色々な道具を広げてきた。
「これぐらい持っていれば、なんとかなるね」
 皆は同意する。
 各自装備チェックと連携確認を終えると、集落近くの森に入っていった。


●捜索
「青山。こちら異常なし。ジェニーもキメラも発見されてない」
 1時間の定時連絡。青山が各班に報告する。
「時任。異常なし」
「加藤。異常なし」
 どうも、この森の地盤が緩い意味は、あちこちに人がすっぽり入りそうな空洞があることだ。まさに、天然の落とし穴。これは、キメラがでる前に存在していることらしい。
「もしかすると、この中に入って難を逃れているのでしょう」
「かもしれないな。それだと、ボブが言っている『ジェニーが生きている』事にもわかりやすい」
「問題は、キメラがこれを本能的に使っている可能性もある。気をつけよう」
 迷わないように、目印を付ける。

 加藤は、キメラ道を見つけ、ゆっくりと進む。
「む。この先は、時任の第一小隊の方角?」
 時任は、ボブが向かったと思われる場所に向かっていると聞く。
 地図を見れば、自分が彼女たちの隊に近い。
「加藤だ。いま、キメラ道を見つけた。慎重に追跡開始する。時任、その先気をつけてください」
「青山、了解」
「時任、了解。どうして?」
「あなたが推測した方が正解だと言うことです」
 つまり、ボブが倒れる前に、ボブが向かった先が、ジェニーが居るという可能性が高いのだと言うのだ。また、彼女の近くにキメラが居る可能性が高いのだと思うのも至極当然。

「OK。気をつける」
「ビンゴ! 結香姉。すごいや」
 リチャードが笑う。
「でも、気をつけましょう。キメラが隠れているかもしれません」
 櫻小路が、言った。

 青山の隊もゆっくり、時任の隊に近づくように動く。地図とコンパスで何とか迷う事も防ぐが、危うく穴に落ちかける者もいた。これといった怪我はしていない。

 二時間半ぐらいに、時任の隊が薬草の密集地にたどり着いた。ここに、奇妙な足跡と、ぽっかり開いた穴があった。
「まさかここ?」
 3人は耳を澄ませる。
 確かに、人の気配、息を殺しているような‥‥気配を感じた。
 慎重に調べ、リチャードが穴をのぞき込む、
「あ、眠れる森のジェニーみっけ」
「あ」
 16歳そこらの若い少女が、穴の底で震えていた。
 時任はジェニーを優しく引っ張り上げる。
「助けに来たわ。良かった無事で」
「こちら時任隊、なでしこ。ジェニーさんを発見しました」
 すぐさま、連絡を入れる。
「了解」
「了解 合流する」
 他の隊、加藤も返答した。


●遭遇!
 各隊の距離はおそらく2kmは離れているだろうか。視界も悪いので、実際どうかは分からない。合流するのに若干時間はかかるだろう。
 合流するにしても移動すると、すれ違うか迷う可能性があるため、時任、リチャード、櫻小路はその場に待機している。
「後はキメラを倒すだけですね」
 時任と櫻小路達は周りを警戒している。
 リチャードは、ジェニーにくっついている。
「ねね、お姉ちゃんの料理をたべたいな!」
 と、危機感なしのように思えるが、安心感を与えるためだ。
 しばらく‥‥すると、なにかを知らせている。緊張する。
 他の隊とは別の方角から、藪などを踏みつけ、木々を折って進む音がその場にいる4人に聞こえた。
「なにかくる!」
 視認できる範囲で‥‥、それは、大きな虫であった! 全長2mはあろうかという巨大な甲虫‥‥ビートル種のキメラだ!
「キメラだ!」
 櫻小路が、すぐに覚醒し照明銃を天に掲げ撃つ。

 他の隊は、その銃声と光を見て、走り出した!
「間に合ってくれ!」
 誰もがそう思って現場に急ぐ!

「心の痛み! 集落のみんなの恐怖、償わせてやる!」
 時任が覚醒し、キメラの前に出る。この先は通さない! という意気込みで! そのまま突撃し、一太刀浴びせるが、外骨格が堅い! あまり効いていないように見える!
「この!」
 リチャードも覚醒し、ジェニーを下がらせた。
「ジェニー、後ろに下がって! 姉ちゃん達、援護する!」
 櫻小路と時任の持っている武器を強化させた。
 二人の武器が仄かに光る。
「がんばれー 結香姉〜」
 キメラが時任に体当たりをしてくる!
「この先は‥‥、行かせない!」
 時任は武器と体を張って、体当たりを‥‥受け止めた! 地面に足をしっかりつけ(幸い、ここは地面が堅かったようだ)、数mは押しやられたものの、しっかり受け止めていた。
「投げるから、撃って! なでしこ、リチャード!」
 彼女は筋肉を常人以上に隆起させ、そのまま、キメラの巨体を放り投げる!
 あまり高くは飛ばなかったが、確かにキメラは『宙』に浮いた!
 それが合図。
 リチャードの超機械γと櫻小路の鋭い矢が、キメラに命中する! そのままキメラは地に落ちてしまうが、むっくりと起きあがってきた。
「しぶとい! これでもくらえ!」
 リチャードがすぐに追撃!
 電磁波がキメラを焼き切り、そしてそれは動かなくなった。
「いぇーい。ぶい!」
 リチャードは子供らしい笑みでVサインをする。
「キメラ撃退」
 時任が連絡を入れた。


●そして
 ジェニーを救ったこと、そして、村が怯える驚異を排除したことで、村は喜びに満ちあふれていた。この後もキメラが他にいないか森の捜索は続けたが、一体だけだったようである。しかし、キメラ一体だけでも、普通の人には驚異なのだ。故に能力者が必要なのである。
 約束通りにリチャードは、ジェニーの料理を食べて満足するし、他の者も若干の練力消費で怪我もなく無事だった。是は幸運もあるが、連携、意志の強さから成せたことだろう。
 ボブは大けがをしていることに、ジェニーはショックを受けたが、命に別状はな異事を知ると安堵する。数日後には彼は意識が戻り、兄妹は再会を果たせたと報告が入る。
「家族をなくす悲しみを作らずに済みました。‥‥これ以上、悲しみを増やしてはならないです」
 加藤が仕事の終わりに言った。
 結城も全員が頷いたのであった。

END