●リプレイ本文
●ラスト・ホープにて
一番乗りで作戦会議室に入ったのは、ラン 桐生(
ga0382)であった。
「うわー! 広いなー!」
10人以上が余裕で入る部屋なので1人で居ると広く感じる。学校に一番乗りにて教室にはいるような感覚さえもある。「此処であっていた?」とか、「ひょっとして今日休み?」とか思うぐらい。
空っぽだった。
「早く来すぎたかなぁ」
苦笑混じりのランは適当な椅子に座って、人を待つ。
そして徐々に集まってきた。
ゲオルグ・シュナイダー(
ga3306)とソフィア・シュナイダー(
ga4313)の兄妹。クラウド・ストライフ(
ga4846)、榊 刑部(
ga7524)、木花咲耶(
ga5139)、内藤新(
ga3460)、シェスチ(
ga7729)がこの作戦に参加するようだ。
「モグラ叩きをいたしますわ!」
ソフィアがゲームセンターにあるモグラ叩きゲームで遊ぶような仕草をする。
「‥‥確かに、そうですわね。相手はキメラなので容赦しなくて言い訳ですが」
木花が笑う。
確かにモグラ叩きだ。
ハンマー系武器がないのが一寸残念かもしれない。
「萌えキメラでない分良いと思うだぁ」
内藤が、前のラッコ戦を思い出す。
「いまでも作物は大事な我々の食料。其れを荒らすキメラは赦さない」
クラウドや榊達などは、キメラ退治に熱意を燃やしていた。
「プレイリードックの掃除機みたいなのがあればいいのですけど」
ソフィアが言う。
「其れは‥‥豪州のものだろう。米国には‥‥ないだろう」
兄のゲオルグがその案は無いなと言う。
「此処はやはり燻りだしや水攻めだろうな」
ほぼ、全員がその方法が良いかもしれないという。実のところソフィアもその案を提示している。
「そういう作戦でいきましょう。用意出来そうなものを調達しましょうか」
榊がメモをとる。
「耕運機借りられるか交渉しようと思う」
と、ラン。
「其れはナイスアイデアですわ! 黄色くぬって! ロードローラーっ!」
「耕運機だぞ‥‥ソフィア」
耕運機は地面を耕す。ロードローラーは平坦にする。車自体の仕事の内容が違う。しかし、でかいことは確かだ。
「農家の人ならトラックなど運搬車両があるはずだし、安全な道だと思われる場所では、其れで移動して、情報を集めよう」
あとは、2〜3人で一組にて班分けして、燻りだし、各個撃破か、まとめてそこでモグラ叩き大会になるようだ。
●広大な農地にて
現場にたどり着く。
高速艇は、一行を降ろすと、あっという間に姿を消した。
「荒れてる方が懐かしいってのも‥‥皮肉だね‥‥」
シェスチが呟く。
「‥‥農家出身か?」
ゲオルグが尋ねる。
「‥‥いや、ロシアがこんな感じだったから。あまり覚えてないけど」
「そうか」
そう、目の前に広がるのは、荒れた農地だ。
前もって調べていたことでは、まず球場数個分はあるということ。規模は広いわけだが、ある程度範囲は絞り込めていた。ただ、一部、作物が実り始めている田畑にも浸食しているため、まず其処にモグラが居ると言うことだろう。
「そっちを優先に追い払ってまとめていきましょう」
となる。
アフロを外したランは農家の人と耕運機の交渉している。握手を交わし、一生懸命に説明した。
「そろそろ廃棄処分の物1台でいいか?」
幸い、農場主は、新しく買い換えたばかりだったらしい。廃車にするので、気にせず使えるものを貸してくれた。
「ありがとうございます」
ランはお辞儀をした。
廃車するとは言っても、すんなり動く。元々この耕運機の寿命が近いからなのだろう。
こうした物が出来れば、作戦は更に整えられた。
1.桐生が耕運機で穴などを潰す。
2.農地の穴から水や煙で燻り出す
3.作物がなっている土地から、追い出し、一定の地点で固めてみる
4.襲いかかるなどすると、班で各個撃破
5.遊撃と射撃支援と各班の距離は40m程度で考える。
班も分かれたことで、早速作戦に取りかかる。
「さて行きますか!」
ランが被ったのは作業用ヘルメットではない。
アフロだ。
「DJとかダンス系に良い感じですね」
「はいー、皆、頭のことは気にしないで仕事しよ〜」
ランは耕運機のエンジンをかけた。最後の仕事として唸りを上げている。
「いや、気になる頭にするので、絶対見てしまうんだがな」
クラウドは苦笑した。
煙をたく道具や大きなホースとタンク車を借り受け、無線のチェックをする。ゲオルグは、匂いのきつい農薬を入れた業務用噴霧器を担いでいる。
全員から、
「かなり似合うね」
と、言われたが、彼は苦笑するだけだった。
晴れた空のなか、各地で水が流れる音、耕運機のエンジン音と、煙、妙な匂いが農場を支配していた。事情を知らない旅人が見たらなんと思うだろう。
●遭遇
作物が育っている区画には、シュナイダー兄妹と木花がいる。遠くからはしっかり耕運機が見えているし、あぜ道みたいなところにシェスチが待機していた。
ゲオルグが、噴霧器で薬をまく。
本当なら大きな車両が欲しかったが、借りられたのは耕運機一台と移動用のトラックのみなので仕方ない。畑内は徒歩でなんとかするしかないだろう、と思いつつ黙々と作業をする。背中には愛用のパイルスピアが揺れていた。
「あ、これですわね」
と、穴を見つけた木花はそこに発煙筒かネズミ花火を投げ入れ穴をふさぐ。煙があちらこちらの別の穴から出てくる。
「かなり荒らされている事がわかりますわねぇ」
ソフィアが大がかりな煙発生の材料を煮込んでいたのかかなり酷い匂いがする。
「匂いはどうあれ! はやり作物に無害であるべきですわ! 天然重視!」
目がしみては嫌なのでゴーグルを着用し、穴に、その燻り出しようの材料をねじ込み、燃やし始めた。
目の前で黙々と作業をしていたゲオルグが、咽せていた。
「するなら言ってくれ‥‥」
「いいましたよーお兄様♪」
反対方向のクラウドと榊も水攻めを行っている。
「こっちは貯水タンクがあったのが幸いだな」
クラウドが言う。
「上手くおびき寄せればいいわけですが」
「なに、最終的にランの方に逃げ込むだろう。それかこっちに怒って襲いかかるはずだ」
「ですね」
一方ランは鼻歌交じりで耕運機を動かしていた。
「反応はありますか? オーバー?」
『A班反応無し、オーバー』
『B班反応無しですわ』
それから、1時間ぐらいだろうか?
ほぼ同時に、A班とランの耕運機の間からモグラが出てきた。ほぼ300フィート。
「くしゃー!」
「へっぷち」
何か妙な泣き声だが、ずぶ濡れのモグラである。
しかし、話を聞く通り、確かに黄色のヘルメットとグラサンを付けていた。
「でてきた!」
顔を出したのは2匹。
抗議の泣き声をだして、威嚇している。
B班の方も同じように出てきた。
「けほけほ、きしゃー!」
なんか間抜けに聞こえある泣き声である。
内藤は、その姿を見て爆笑した。
「なんで、なんでモグラが工事用のヘルメットとサングラスかけてるだよ。まるでマンガに出てくるモグラじゃねーだか」
全くそのまんまである。
「今は2匹のようだが、気を付けろ!」
クラウドが覚醒し、武器を構える。黒いオーラが体を包む。
榊も覚醒し、体に青祖白い光に包まれながら、フロスティアを構える。
囲まれないように警戒したので、後ろからの不意打ちも気づき‥‥、素早く対応できた。
「は!」
「とう!」
2人は華麗な武器捌きで、襲いかかるモグラを仕留める。クラウドの体は一瞬赤い炎に包まれていた。
残っているモグラは、危険を感じたのか、水で埋もれ始めている穴の中に自ら入り、逃げていく。追いかけようとする2人だが、足下がぬかるみ始めたため、一旦退避し水を止める。
ランが耕運機の上から、別のモグラキメラを撃ち、倒したら陰に隠れた。モグラはどこから撃ってきたのか分からずキョロキョロするだけであった。そこでゆっくりとゆっくりと耕運機を逃すように動かす桐生。
モグラは爆笑中の内藤をみてうなり声をあげてから襲いかかろうとするも。距離がある。
しかし‥‥、
「おっと。爆笑するのもこれぐらいにしておくだ」
笑いを止めて覚醒し、丁度彼の目の前に現れたモグラに向かって、超機械一号が唸る。そこには『ずぶ濡れ』のように見えるモグラの丸焼きができあがった。
「はい一丁あがりだよ」
ゲオルグは、噴霧器を投げ捨て、少し先に威嚇しているモグラに向かって突き進む。
「土から追い出す」
パイルスピアを振り回し、一匹を穴から打ち出した。不格好なゴルフのスイングにも似てたが気にしない。ころころ転がるモグラをシェスチが銃で撃ち倒す。
妹ソフィアは、斧の平たい部分をハンマーと見立ててまだ顔だけ出しているモグラを叩こうとするが、素早くモグラは穴の中に潜った。キメラは別の穴で、馬鹿を見ているような顔で威嚇している。
「むきー!」
ソフィアは地団駄を踏む。
木花は、氷雨で穴にいるモグラを『突く』。堅いヘルメットで弾かれた。
「ヘルメットは伊達ではないわけですね‥‥」
モグラが反撃に転じる。
一度地面に潜る。
そして、モグラでは想像できない跳躍で榊に飛びかかる!
「痛!」
腕を押さえる。其処から血が出てきた。
「大丈夫か!」
クラウドが彼を庇う。その襲ってきたモグラは3匹。その爪はかなり鋭利であった。
「ぐは!」
クラウドの背中や腕にかなりの爪痕。出欠がかなり酷い。
「クラウドさん!」
「なに、大丈夫だ。これぐらい」
苦痛に顔を歪める。黒いオーラが薄れているようだ。
しかし、反撃に、地面に立っている(!?)モグラを斬ろうとするが、ヘルメットに当たり、彼の攻撃を弾いていた!
「この化け物!」
しかし、次に彼の体全体が赤く燃え上がるようなオーラに包まれ、渾身の力を込めた一撃がモグラをヘルメットごと切り裂いた。
榊が反撃で踏み込み、別のモグラの胴体を貫いた。
「数がまだわからないな!」
ランが射撃し、確実にモグラを撃ち倒していく。
内藤はすぐに榊やクラウド、シュナイダー兄妹、木花に練成強化を施し、次に備えた。
ゲオルグが、他のモグラを地面で出すため器用に槍を操るも、モグラの作った穴の所為で、足を取られた!
「しまった!」
「どじですわ、お兄様!」
酷い妹だとか思う前に(いつものことだしと半ば諦め?)、モグラキメラが3匹襲いかかる!
「きしゃー!」
しかし、足をとられて動きが悪いのに彼は、全部かわしたのだ! さらに、スピアで、その襲いかかったモグラを2匹たたき落とす! モグラキメラは転がって仰向けになった。じたばたとしている。
「いまだ! シェスチ!」
シェスチが銃を撃つ。
転がっていたモグラは穴だらけになって絶命した。
ゆっくりと足を上げ、構え直すゲオルグ。
「ほかには‥‥?」
別のモグラを探す。
ソフィアは相変わらず、斧をハンマー代わりに『叩こう』としているので、まさしくモグラ叩きになっていた。当然、穴に隠れる速さは尋常ではない。もっとも、中が煙だらけなので、すぐに顔を出す。それでもなかなか当たらない。木花は確実に一匹を仕留めていた。
ランも援護射撃をするも‥‥、
「うわ、こんな近くで抗議ですか!」
目の前(正確には大型耕運機足下)に現れたモグラ数匹が耕運機に爪を立てる。恐ろしい震動が、ランを襲った。黒板に爪を立てるような嫌な音もする。
「うー、思いっきり頭撃ったー! アフロカツラは‥‥ずれてない‥‥。てえい! 廃車予定でも、やっぱり壊したくないんだ!」
ランが小銃「S−01」撃つ。
一匹は倒したが、残りはすぐ地面に逃げた。
「どれだけ居るんだ! きりがないよ!」
しかし、それでも確実に、数は減って、暫くするとモグラを固め遭遇した分のモグラは退治できた。
●警備と‥‥
そろそろ欠伸が出る。最後の見張りは誰もそうだった。
先ほどのように1〜20匹群ででる感じではなく、2〜3匹でては、迎撃していく。その繰り返しをしている。
数時間ぐらいはそうしていると、キメラの気配はなくなった。慎重に調べた結果(燻りだしなども再度来なって‥‥)、まず大丈夫だろうという判断する。
作物ができている場所にも被害が及んだが、依頼主からすると、
「被害が予想するより少なくて良かった。助かったよ」
満足顔で言うのだ。
内藤と桐生の治療で、一行の怪我はある程度治った。
農家の人からは感謝され、
「此で安心して、仕事が出来ます。ありがとうございます」
主人が各人に握手した。
そのごつい、農家たる手が不思議と気持ちよかった。
任務は完了したと言えるだろう。
高速艇では、モグラの姿について語っていた。
「本当に可愛くないモグラだったな。あいつらに少しでも可愛さがあれば状況は違ってたかもな」
「ですね。ホント不細工でした‥‥」
「でも、萌えキメラは恐ろしいだよ」
「‥‥」
「それにしても」
榊は苦笑混じりで言う。
「まさか、習い覚えた榊流の技をモグラ相手に使う事になろうとは思いませんでしたね」
と。
モグラネタで、暫く盛り上がった。
解散後、榊はクラウドを呼び止める。
「クラウドさん、あなたのおかげで助かりました」
榊は深々とクラウドに礼を言う。
「なに、気にするな、そう言う性分なんだ」
クラウドはタバコを吸う。まだ体は痛むが我慢していた。