●リプレイ本文
●荒野にたたずむ廃墟
元は小麦畑だったのだろう。枯れた穂が垂れている。
ジープとバイクのエンジン音と砂煙。風が枯れ葉を丸めていく。まだ解放戦の爪痕が残る荒野に、8人の猛者が立っていた。目標地点の距離まで約200ヤードと言ったところだ。
比留間・トナリノ(
ga1355)が、双眼鏡から遠くを眺める。
「ありましたです。うっうー!」
ウィルソン・斉藤(gz0075)の情報通りに、農家の家が点在し、まともな一軒家と納屋が見える。良い遮蔽となるだろう。勿論山賊ブルーフリーダムの移動車両数台も発見した。
「では、計画通りに3つに別れて素早く対処しましょう」
優(
ga8480)が、トナリノから双眼鏡を借りて眺めている。前もって計画した3つに分散し、正面班が派手に暴れ、移動手段とKVを破壊した後に挟撃という作戦である。彼女の黒髪が、風になびいていた。
「ああ、前の仕事の時と変わらないことをするような物だ。しかし能力者では勝手が違うだろうな」
SWAT、PMCからの出身である月村・心(
ga8293)が言った。状況などはあまり変わらないが能力者というだけで、何か飛躍的な物が変わるだろう。昔の時間の流れと今との流れを考える‥‥。
「人を撃つのは気乗りしないけど‥‥」
月森 花(
ga0053)が戸惑いがちにいう。いつもキメラだワームだと戦っていたが、流石に人間を撃つのは罪悪感を持つ。しかし、彼女が覚醒するとそう言う感情はなく戦闘マシーンとなる。故に誰もそれに文句は言わない。
既に2名は別行動に移って、今居るのは6人。
トナリノが、周りに鳴子、自動トラップがないかを注意深く探す。そして、見つけると気を付けるようにサインを送り、慎重に罠を外す。
「クリアーです! うっうー!」
後ろに待機していたメンバーは『Good JoB』のサインをだす。
「少し斜めから向かうのでいい?」
日本人だがエミタ移植により金髪になった女性、瞳 豹雅(
ga4592)が言う。
作戦会議で、彼女はこう言っていた。
「陽動と言っても、真正面から堂々と行くのは、露骨すぎるし相手に失礼ですわ」
彼女の考えはシンプルであった。
「ああ、本当は拡声器で警告することだったんだが。‥‥それで良いだろう」
「その分、攻撃時は派手に、側面から来る2人の仕事がしやすいようにしよう‥‥まったく、力を得たのに何を考えているのか‥‥。愚かな」
八神零(
ga7992)が溜息混じりで言った。
何かの動機。犯罪者だが、罪を償う道を選んだ者はいる。しかし、様々な理由で最悪な抜け出し方をすると言う。結末が決まっているのに。
●ミッションスタート
「カウント‥‥。5、4、3、2、1」
「スタート!」
6人は覚醒し走る。若干、正面より斜めから‥‥。
36ヤード、そこで相手は気付く。屋内が慌ただしくなるのがよく分かり、一気に銃声が辺りに響いた。一気に散開し、散らばっているテーブルや廃車に隠れてやり過ごし、接近戦に向かう者が一気に詰め寄りたいが、弾幕がきつく、足止めを喰らっている。
トナリノが叫ぶ。
「!? 手榴弾です! うっうー!」
窓から何かを飛んできたのだ。
「させない!」
花が、宙に浮いたままの手榴弾を撃ち着弾前に破壊。爆発音と爆風が辺りを包む! その隙に、トナリノは隠密潜伏をつかいじわりと詰め寄っていく。
母屋や納屋から出来てきた山賊に対し、スナイパー陣のトナリノと花が、銃を撃つ。的確に命中し倒していく。しかし、数が多くて、すぐに弾幕で隠れなければならない。
「かなり一般人がおおい!」
「上手く近寄れるように、何とかしないと行けません! うっうー!」
「なら、私に任せて下さい」
優が立ち上がる。
銃弾がかすめることもあるが、臆せず、彼女は月詠を上段に構えて‥‥、気合い一閃にてソニックブームを一気に4発放つ! そこで何かが分かる。
すぐに飛び退いて致命傷を逃れたものが、能力者と。外に出ているのでは5人だ。
「ならば!」
八神が飛び出し、構え直す能力者山賊に斬りかかる。相手も能力者で、剣で受け止めようとするが、彼は、すぐに後ろに回り込む! 流し斬りだ!
「はああ!」
「ちぃ!」
しかし、相手もしぶとく、受け止めた。だが、八神の力が強く、渾身の一太刀で相手のSES製の剣すら破壊し、絶命させた。
「‥‥逃さない。ねらい撃つ‥‥っ!」
花が、強弾撃を込めてもう1人の能力者をねらい撃つ。相手は吹っ飛び、ぴくりともしなくなった。
一方、瞳は5人とは少しずれて‥‥瞬天速をつかい、接近していた。
(「うーん、どれが能力者か分かりませんなぁ」)
隠れて窓から見ている。手には菖蒲とスコーピオン。
相手は、銃撃戦で彼女に気がついてないようだ。
(「では、これで」)
照明銃に持ち替え、もう片方で転がっている物を投げ入れて相手の注意をそらす。その瞬間に、照明銃を撃った。
部屋内に眩しい光が満ちる
「うわ! まぶっ!」
屋内の山賊が怯む。
瞳の素早い菖蒲の斬撃、忍術で培った体術・暗殺術でそのフロアにいた全員を始末した。
「1フロア制圧。そのまま続ける」
異常を知った別の部屋の連中が入ってくる。ここまで視認できれば気配で分かる。雑魚ばかりだ。
「さて、汚れは引き受けます。ニンニン」
瞳は無表情に、山賊を蹴散らしていった。
外にいる能力者は、3名。しかし、花と八神、優、トナリノ、月村の連携でものの2〜30秒にて1名に。その状態を見た雑魚は逃げるが、トナリノと花の銃弾から逃れることはなかった。
「こいつ強いね。」
花が、背中に背負うライフルを構えて逃げていく
相手は、無口な巨漢の男だった。そう、この山賊の頭領ボビー・ブラックベアだ。
今対峙しているのは、月村。ナイフ二刀流で構えている。
「‥‥」
月村は、長髪でナイフを自分ののど元に当てて斬るような動作をする。
しかし、相手は『挑発』であるとわかり、すぐに仕掛けてこない。
「‥‥‥流石ボスと言いたいところ‥‥だが!」
「ぬん!」
2人が爆ぜる。
武器と蹴り、様々な格闘技術の接戦。他の仲間も割り込みたいが、間違って仲間を撃てない。さらには、遠くの方から、まだ雑魚が抵抗している。
「此処は任せろ!」
月村が叫ぶ。
その言葉で全員はかけていった。そこでまた1対1の戦い。
お互い傷を負うのだが、月村は気合いを入れる。するとボビーから受けた傷が回復していく。
「俺はもう自由に生きるんだ! バグアとかもう関係ない! 世界がどうこう関係ないんだよ!」
今まで無口だったボビーが叫ぶ。
「愚かなことだ!」
月村は、冷静にボビーの爪をかわし、アーミーナイフで一撃が、全てを終わらせていた。月村の両断斬が、ボビーのルベウスの爪を破壊し、心の臓に届いていた。
「終わりだ‥‥」
同時に、納屋を中心に爆発音が聞こえ、こちらに、強風が彼の髪をなでていった。
●爆破作戦
枯れ葉の草原に、唐草模様のマントみたいなものが動く。
自動車を破壊し側面攻撃をする担当の、漸 王零(
ga2930)だ。
「ふむ、向こうはうまくやっているな」
手榴弾が宙で爆発するのをみながら、忍び足にて歩く。
納屋から、数名飛び出しては、銃弾に倒れている。
その瞬間に、漸が駆ける。
「【狂える仮面】よ! 我が元に!」
仮面が現れ、それを被る。
「行こう、国士無双」
手に入れた国士無双。
それを使うときが来た。
一気に走り抜け、国士無双にて、途中にあった車を切り捨てていく。その威力は絶大。鉄を斬り、ハンドルまで切り裂いた。
ぞろぞろ出てくる雑魚達はいきなりの横からの襲来に、驚きを隠せない。
「横からだと!」
反応したのは能力者だ。漸は確信した。数は、3か?
「我が名は漸王零!! 万魂を断ち斬り葬る刃なりっ!! 貴様らに許されるは我が刃にて死ぬまで舞い狂う事のみと知れ!!」
とまどっている雑魚をなぎ払い、そのまま能力者3人に肉薄する。1人の屈強な山賊が、大きな剣で国士無双を受け止めるが吹っ飛ばされている。奇妙な機械を持った男が、その吹っ飛ばされた者にかけよって、練成治癒をしていた。
かなり数が多い。しかし、雑魚は雑魚。漸は何も動じない。
納屋に元からあった、耕運機が迫り狂う。漸はそれに飛び乗り、国士無双を運転している者に突き刺した。インテークから煙が出る。同時に耕運機は止まった。
彼めがけて一気に周りから銃声と、滑車つきクレーンフックが迫る。
「!?」
滑車は、彼と耕運機もろとも破壊されたかのように見えた。
しかし、落ちてきたのは、上に来ていた唐草模様のマントのようで何か異なる『何か』。周りの者はそれが何だったか分からない‥‥。
漸はフックに上手く飛び乗っていた、多少、衝撃で怪我を負ったが、かすり傷。この不意打ちをのがれ‥‥‥、3人の能力者のまえに飛び降りる!
「!? 生きている!」
誰かが叫ぶ。
「悪魂聖浄‥‥流派裏奥義‥‥無明、我が刃にて聖闇へと還るがいい!!」
漸は飛び降りざまに、超機械を持った男は突き殺した。残るは先ほどの剣使いと、クレーンをうごかしていたスナイパーらしき男だ。
更にもう2人加勢に来た。腕が光るのでよく分かる。しかし、マシンガンで威嚇射撃するだけだ。漸は耕運機に隠れる。
「逃げるぞ! 分が悪い!」
「ああ、わかった!」
そのまま退散する残りの能力者山賊。
だが、後ろの綺麗な着物女性が立っていることに気付くのが遅かった。
和服美人にて鬼戦姫、鳴神 伊織(
ga0421)。彼女の体から青白い炎が溢れていた。
「‥‥。追いつめました。終わりです」
そう言うや否や、月詠が5人を切り裂く。
その太刀は、華麗で戦慄を覚える。彼女が敵でないことが、安堵するものだと感じずに居られないだろう。
雑魚は、それに恐怖する前に、漸の国士無双の錆となった。
「さて、KVは?」
「ここに来るまでに、3機ほど」
「早く破壊するか」
「そうしましょう、色々厄介になります」
2人はKVを見ると、装備に呆れる。
機体はR−01やS−01などの装甲、機器を無理矢理くっつけたようないびつさで、SES装備ではない兵装だった。斉藤から聞くところでは、KVは人型やSES兵装以外でなくても、かなり高性能な機体として空を駆れるというのだ。それを思い出せば納得いくものだ。
「能力者の寿命が無くなると考えれば、納得いく装備だろうな」
納屋にあったKVの燃料タンクや、ガソリンをばらまく漸。
人が使える武器庫ないようだが、普通の火薬を使う航空兵装だけはたくさんあるようだ。下手に弄れば大惨事になるミサイルなどがある。
「確かに此一個で十分のようですね」
「ああ、上手く設置しよう」
誘爆する用上手く爆弾を設置し、2人は母屋のほうに向かう。1分で爆発するようにした。
丁度、5人が、母屋を完全制圧したようだ。
「こっちは準備OKだ。離脱する!」
全員が離れたあと、納屋を中心に、大爆発が起こった。山賊退治を成功した合図でもあった。
少し治療の後、回収できるエミタは回収する。
優は、彼らの墓を建てていた。
誰かが「なぜ?」と訊くと、
「敵(バグア)なら墓など作りませんが、彼らは敵ではありませんので‥‥」
と、答えるのみだった。
彼女の考えを否定するわけも行かない。
彼女の名前は優。『優しい』の優なのだから‥‥。
●斉藤は
無事に帰ってきた一行は、対策本部はかなり慌ただしいものに驚く。斉藤のデスクは書類の山。部屋は数多い段ボール箱の山。とパソコン多数。引っ越しでもするかのようだ。
「なんなんだ? これ?」
漸。
「忙しそうですね」
伊織。
「なにか、始める気なのかな?」
花。
この本部の慌ただしさ。誰もがそういう感想を口にしてしまうほどだ。
「あ、これは、俺の新部隊の準備だよ。詳しいことはまだ言えないけどな」
苦笑している斉藤は、癖毛な頭をぼりぼりと掻いている。どうも、先にある事件が厄介ごとらしく悩んでいるようだ。デスクに書類の山が重みで崩れ落ちる。事務員らしい人が急いでそれをかき集めていた。
「さて、今回の任務は有能過ぎる君たちなので、簡単だったな。事後処理はこちらで任せろ。本当ご苦労だった。又何かあったら、頼む」
彼は皆に労をねぎらった。
「後々クレジットは振り込まれる。今回の報酬はこれぐらいだ」
と、彼は言う。
「今度ともよろしくな。おっと電話がかかってきた。一寸失礼」
彼は、丁度電話がかかってきたため、対応に追われていた。時には怒鳴っている。
どうも、この先長い縁があるだろうと、思う傭兵達であった。